2020/11/12 のログ
ご案内:「落第街大通り」にF.U.R.Yさんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」にソレイユさんが現れました。
F.U.R.Y >  
「何処だ‥‥ッ!!!」

怒る男が、そこにはいた。

「何処だァ‥‥…ッ!!!」

瓦礫をかき分けながら、男が吼える。
血走った瞳は人のそれではなく、振り払う左腕もまた、人のそれではなく。
降り出した雨など知った事ではないとでもいうかのように、男は怒号の如き声を上げながら進んでゆく。

人のいない落第街の一角。
そこは、数日前風紀委員…特務広報部と言うらしい部隊によって”調査”を行われた地域だった。

男が来た時、既にそこに住んでいた人の姿はなく。
あったのは骸と、煙と、空の薬きょう程度。

扉は破壊され、家屋は破壊され。
”お前たちは人間じゃない”とでも言うかのように道具類を片っ端から破壊されていた。

しかしてその張本人たちは、既におらず。
運よく隠れきれた者と、様子を伺いに来た者も、ふりしきる雨に濡れぬように屋根のある場所へと去っていった。

この一角に、屋根はもうない。

「何処だ……カミシロリオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!」

雨の音すらもかき消すほどの叫びだけが、無人となった街の一角にこだまする。

ソレイユ >  
「……」

女は静かに歩く。
機械のごとく冷徹に、心を動かすこともなく。
死骸の群れを眺めて、歩く。


「……なるほど」


最近、風紀委員の一部に妙な動きがあることはわかっていた。
しかしまあ、あくまでソレは向こうの事情だ。
だから、することはいつもどおりの様子見であった。
そして……


「いつものこと、といえば其の通り、ではあるが……」


しかし、どこか違和感がある。
此処まで強行的だったであろうか。
しばし、思考を……


そこに、咆哮が響いた。

「……なんだ?」


こんなところに獣でもあるまい。
そちらに顔を向け……憤怒の叫びを上げるソレを目にした。

「あれは……」

人であって人ではない
獣であって獣ではない

彼の者は、一体、なんだ

F.U.R.Y >  
「ッ!!!!」

聞えた声。
衝動が、怒りが、体を動かす。
尋常ではない力で足元を爆ぜさせるかのように距離を詰める姿は、人のそれというよりは獣が駆ける姿にそっくりで。
その姿もまた、人というよりも獣のそれに近く感じるだろう。
見開いた瞳、噛み締めた牙のように尖った歯。
左半身……左腕から左足にかけては、まるで溶岩を塗り固めたかのような禍々しい異形のそれへとなっている。
異形のそれらの肩からは、3本の鎖で出来たような尾。
その先端にはかぎ爪のようなものがつけられており、まるで一つ一つが意志を持つかのように蠢く。



「で、め、エ…がァあアァァ!!!!!!」


少女へと迫るそれは、そのまま少女が何者かを確認もせずに左腕を降り下ろそうとするだろう。

当たれば、唯ではすまない。
そう思わせるには十分な圧を少女が一身に受けると共に、拳は眼前へと迫ってゆく。
そこに理性というものが存在しているとはにわかに感じられず、あるのは唯……溢れんばかりの怒りだけ。

ソレイユ >  
「……やれやれ」

此方を睨めつける眼、怒りの顔
そして、異形としか言えない姿。
それは、いい。よくあることでしかないし、人のことを言えた義理ではない。
しかし、言葉も通じなさそうなところはいただけない。


「……」

案の定、弾かれ、打ち出された弾丸のように獣が此方に飛び込んでくる。
思考が加速する。

――殺せ
――止めたほうがいいよ
――折れ
――流そう
――逃げれば?

ついで、無数の声が脳裏に響く。
やれやれ、緊急だというのに。

これが任務であれば答えは一つしかない。
しかし、これはそうではない。
この冷静さを欠く相手をどうしたものか……


「仕方ないな。」

ため息を一つ。全身の力を抜く。
すでに狂気と凶器を合わせた拳は眼前に迫っている。


みしり


鈍い音がした。肉がひしゃげる感触、硬い骨と異形の何かがぶつかり合う音。

木っ端のように、女の体はぐるりと回転しながら吹き飛んだ。

F.U.R.Y >  
拳のぶつかる感触。
肉を潰す感触。
吹き飛んだ少女は瓦礫に叩きつけられ、まるでパチンコ玉か何かのように吹き飛んで行く。

しかし獣は、未だ収まりがつかぬようで。
吹き飛ぶ少女にさらに追撃をせんと、転がる少女へと駆ける。

獣の肩から伸びた3つの触手が、まるで少女の逃げ道を奪うかのように突き刺さり。
相手の体を押し倒すかのように少女へ跨れば……少女の頭蓋めがけ二度目の拳を振るう。


………
‥‥…………………‥‥
‥‥……………………………………‥‥

その拳は、少女の顔の数センチ先にある岩盤を砕いた。
寸での所で理性が利いたのか。
あるいは、単に狙いが逸れたのか。
どちらであるかは分からない。

眼前に迫った男の顔。
ぽたりと落ちてくる、涎。
雨音に紛れる、荒れた息の音。
獣としか言いようのない男の姿は、段々と人のそれへと戻っていく。

「――――――ッ

 …、…‥‥オィ。
 ッ……はァ、はァ…、…クソッ、生きてるか…!」

自分が襲ったにも関わらず、向けられた最初の言葉は少女を案じるものだった。
それに答えられる状態であるかは分からぬが……少なくとも目の前の男がこれ以上襲ってこないであろうことだけは、分かるかもしれない。

ソレイユ >  
あえて、拳を受けた。
この身に刻まれ記憶された拳法の道理に従い、
脱力し、衝撃を受け流し、ダメージを最小限に。

しかし、その力のなんと強きことか。
受け流しただけ体は浮き、派手に吹き飛んだ。

瓦礫に叩きつけられながら、受け身を取り衝撃を殺す。
その間に、男は自分の上に馬乗りになる。
凶暴な拳が、今まさに振り下ろそうとされ……


「……やれやれ、やっと正気に戻ったか。
 流石にそれを振り下ろされると少々面倒だったのでよかったよ。」

それと、これは口にはしなかったが。
これでようやく会話になるというものだ。


「……で? 私は、君に殴られる覚えはないのだが。
 いや、ひょっとしたら何かあったか。
 其のあたり、どうなのかな?」

女は、押し倒され跨がられたままのんびりと口にした。

F.U.R.Y >  
「――――ッ、―――ッハー……ッ」

怒りを鎮める。
目の前のこいつは、俺がぶちのめす相手じゃねェ。
風紀委員では、ねェ。
だから、やめろ。
自分の中の煮えたぎる”なにか”に、そう言い聞かせる。

それと共に、消える触手のような尾と足の異形。
腕の異形だけは形を変えながらも残るが、しかして先ほどのそれよりも纏う怒気は小さく。
落ち着いた…と言っていいのだろうか。
その様子が伝わる。

「――――ただの、人違いだ…ッ
 テメェ……”ここ”のモンか。
 
 だったら…、…はァ、…ハァッ…、……悪かった、な」

未だ残る猛りを抑え、女性から離れる。
立てるか?と言いながら、触れようとすればまた力が暴れかねないので、手は差し出さなかった。

ソレイユ >  
「……ふむ」

相手の燃えたぎるような怒りはどうやら静まったようだ。
この手の手合はどうせ話しても始まらないとは思ったが、
『とりあえず受ける』は功を奏しただろうか。

まあ、どちらでもいいが。


「人違い? なるほど?」

少なくとも、自分が記憶を失っていたわけではなさそうだ。
それはよかった。
そうなれば、逆にこの相手の情報を探る必要はあるだろう。

「で。事情を聞かせてもらってもいいか?
 なにしろ、勘違いで何度も殴り飛ばされてはキリがないからな」

手を差し伸べられるのを少し待ってみたが、残念ながらそこまでサービスは良くなかった。
まあ別に立てるからいいのだが。

F.U.R.Y >  
「……とりあえず雨凌げる場所いッてからだ。
 もうズブ濡れだろ、傷に障んだろォが」

雨に濡れる少女にそう告げ、それ以上言わずに歩み始める。
一応、少し進んでから様子を見るように振り返り、そして大丈夫なのを確認すれば再び歩き出す。

そうして、小さな家屋跡…‥ほんの二人分ぎりぎり雨を凌げるかどうかというスペースを見つけ、その端に座り込む。
座れとばかりに、おおきめにスペースを残して。


「……ココがどうしてこうなってるのか、テメェ…知らねェ訳じゃねェだろ。
 じゃなきゃこんな場所にゃこねェだろうからな。
 
 ……トクムコーホーブ。
 耳にしてねェか」

座ったのを確認すれば、雨の降りしきる街を見ながらそう告げる。
特務広報部。
この付近に起きた事を知っているなら、その名を知らぬ者はいないだろう。

ソレイユ >  
「……」

なるほど、どうやら冷静なときのこの相手はどちらかといえばお人好しに部類される方らしい。
性質的にはクロロに近い感じであろうか。

「特務広報部か。
 それは、まあ……流石に、あれだけ派手にされれば、な。」

忘れっぽい自分ではあるが、最近お騒がせの案件ともなれば流石に記憶にはまだある。
この人物はアレに因縁があるということだろうか。


「……知ってはいるが。それとこれと、どうつながるんだ?
 まさか、私が構成員に似ている、と?」

其の可能性もないではないか。


「そうであれば、まあ復讐の対象にでもされた、とかか?」


あれだけやっていれば、そういうこともあるだろう。
しかし、こういう手合がもし増えるとなれば……考えものだ。

F.U.R.Y >  
「全然違ェ。
 そもそも一部以外の顔なんざ知りゃしねェよ」

風紀委員の顔など、覚えてなどいない。
余程の事がない限りは。

「ただ、動いてた。
 生き残りを狩りにでも戻ってきたんじゃねェかと思っただけだ。

 さっきみてェに、時折自分でも抑えらんねェ。
 気がつきゃ廻り殴っちまってる。
 特に”ああいう”事が起きてっとな。
 チッ……」

ああいう、と言いながら見るのは、雨に濡れた廃墟たち。
未だ片付けられてもおらぬ遺体すら散見される、凄惨な現場。

別にこの場所を住処にしていた訳でもない。
親しいものがいた訳でもないが……どちらにせよここで行われたのは”気に入らない”行為だった。

「……テメェは。
 テメェは何でここに来た。
 見ての通り、何もねェぞ」

ソレイユ >  
「……なるほど?」

――動いていた
ただその事実一つのみで殴りかかってきたわけだ。
とんでもない理性のなさ、ではある。

……もっとも、暴君、などという仇名を冠する自分も人のことを言えた義理ではない。


「随分と、難儀な性情を抱えているようだな。
 其の引き金である怒りは、それなりに正当ではあるかもしれないがね。
 しかし、それで拳を振るうべきではない相手に振るってしまうようでは……」


別に非難するつもりはない。
ただただ、生きにくいだろうな、という思いと。

私であったから良かったものの、
そうでなければ彼自身が自分を許せない事態になっていたかもしれない。
そう思えばこそ、忠告めいた苦言。


「私か? 私は……そう、だな。
 彼らの真実を確認に、といったところかな」

諜報の一環であり、ある種機密ではあるが。
どうせこれくらいなら言ってしまっても構わない範囲だろう、と正直に口にする。

F.U.R.Y >  
「分かってらァ。
 ビョーキみてェなモンでな、どうにか付き合うしかねェ……
 チッ、厄介な左腕になっちまったモンだ」

ハンッ、と吐き出すように言うその姿は、随分と苛立っているように見える。
冷静にはなったとはいえ、その身には未だ怒りがくすぶっているのだろう。

「ヤジウマって事かい、いい根性してやがる。
 で、イイモン見えたか? オホシサマならさっき見えただろうけどな」

一発いいのを入れたからな、なんて思いつつ。
自分の左腕を受けて、普通にしてるだけたいしたモンだと彼女の様子を見る。
普通なら頭が砕け飛んでいる。
コンクリだろうが鋼だろうが、ビルだろうがこの腕は砕き得るのだから。

ソレイユ >  
「ああ」

そういえば、先程の変化といい、妙な腕ではあった。
厄介な腕になった、ということは別に好んで手に入れたわけでもなさそうだ。


「何だ、其の腕、制御できていないのか?
 その性情もセット、ということか。」

能力の暴走、というわけだろうか。
少し親近感、ではないが妙な同情心というか……なんとも言えない気持ちが浮かぶ。


「イイモノ、ね。
 君が何を意図しているかは知らないが……
 とりあえず、彼らが今までより妙な動きをしていることはわかった、かな。」

これも、相手に思い入れのある相手なら別に違和感もなかろう、と素直に口にする。
それにしても……


「オホシサマ? 君自身が雨、といっただろうに。
 そんなもの、見ることもできなかろう。
 ……いや、皮肉か?」

どうにも、冗談の類はまだうまく理解ができない。
逆に相手を不快にしただろうか、と少し真面目に考え込む。

F.U.R.Y >  
「チッ、冗談の理解できねェ奴だな……」

意図を読み切れないというようにとぼけた返しに舌打ちをする。
別にこの位どうでもいいはずだが、こんな身になってからは些細な事でも苛立ちが抑えられない。

「あァ、訳あって…ってヤツだ。
 怒りが原動力らしくてな、怒りで力が出やがるが…代わりにそうじゃねェと普通に出すのすらままならねェ上……さっきの通りだ。

 コイツが求めてくんだよ。
 『もっと怒れ、もっと許すな』…ってな」

異形のまま戻らぬ左腕を見ながらそう言う。
今の自分は、この異形の腕と綱引きをしてるような状態だ。
異形の腕が力を出せば出すほど、自分の領分が減ってゆく。
そうなれば自分でも抑えはきかなくなる。

その状態すら、苛立ちの元になる。
安寧はない、と言わんがばかりに。

「……で、だ。
 それを知ってテメェは何する。
 ただの物見遊山でこんな場所こねェだろ?
 
 どうせテメェもここらの人間だろ。この現状見て、どうすんだ」