2020/11/13 のログ
ソレイユ >  
「うん? 冗談だったのか?
 それであれば、申し訳ないな。
 どうも、そういうのは得意じゃなくてね。
 知り合いにも、呆れられたものだ」


至極真面目な顔で謝罪する。
なりきれば、冗談のたぐいも理解できるのだろうが……
"ソレイユは"そういうことを理解できない。


「難儀だな。暴走と紙一重の力か……」

――厄介なやつだな、殺せ
――怖いから、もう関わらないほうがいいよ
――深く探って、味方にすればいい
――得体のしれないやつだ、もう何も言うな

また、無数の声が語りかけてくる
まったく、うるさいことだ。
しかし、この声たちにも一理あるといえばある。


「どうする、か。
 そうだな……どうしたものかな。
 この街の均衡が崩れるというのなら……何か、考えなければいけないかもしれないな。」

それこそが、自分たちが"動く"理由。
それこそが、自分たちの"存在"する理由。

それにしても……我々の刃が彼らに振り下ろされるとしたら……
なんとも皮肉な話ではある。


「……そういう、君こそ。
 どうするつもりだ?」

F.U.R.Y >  
「――――タンジュンな話だ」

手持ち無沙汰に近くにあった家屋の破片を左手で掴み、それを握りしめる。
コンクリで出来たそれは…まるで土の塊かのように軽々と砕かれ、砂利となり地面へと落ちてゆく。

「……潰す。
 ココで死んだ奴が可哀そうだとか、哀れだとかは微塵も思いやしねェ。
 どうせカス共さ、それは間違っちゃいねェ。
 奪って、奪われて、力ねェ奴は失くすだけ。
 そういう街で奪われる奴は、ただ弱い奴だったってだけだ。
 誰も護っちゃくれねェ。
 このシマも、風紀委員も、何もオレたちを守りゃしねェんだ。
 だからテメェで身は守らねぇといけねェ。

 だがな……
 ”守りもしねェ連中が我が物顔で踏みつけて好き勝手する”ってのは……気にいらねェ。

 だから、潰す。
 徹底的にな……ッ」

握りしめた腕と、確かな怒りの灯る瞳。
気に入らない。
奴らが、気に入らない。
それだけで十分なのだ。

単純明快。
”怒り”
それだけが理由だ。

ソレイユ >  
「……ふふ」

思わず笑ってしまう。
"気に入らない"
たったそれだけのことで、立ち向かおうというのだ。
まるでどこかの誰かみたいではないか。


「いや、失礼。
 君を馬鹿にしたわけではないので、許してもらいたい。
 ただ、ね。どうも知り合いの言い分に近いものだったから……つい、ね」

それにしても、任務ではないからといって気を抜きすぎだろうか。
思わず笑ってしまうなど……そういえば、いつぶりだろうか。


「さて……潰す、のはいいが。
 君は、それを、どのように成すつもりだ?
 今のように闇雲に走り回り、衝動に突き動かされるままに、
 ときには無関係のものに手を出しながら、猛り狂うのかな?」


言葉こそ揶揄するようではあるが、至って真面目な口調で問いかける。
表情は……先程の笑いもそうだが、あまり崩れることはなかった。

F.U.R.Y >  
「生憎、育ちが悪いんでな。
 駆け回ってソイツら見つけてブチのめすしか思いつきやしねェ」

そう言いながら立ち上がり、雨の中に身を置く。
怒りの炎は雨では静まらず。
ただ只管に、燃え盛るのみ。

その先、何が待っていようと。
男の知った事ではない。

「次は関係ねェ奴殴る前に抑え込んでやる。
 バケモンの腕だ、そんくれェ荒っぽく躾けるくらいが丁度いいんでな。

 …アンタみてェな丈夫な奴ばかりじゃねェからな。
 チッ……腹立たしいがそこは感謝してら」

もしもの話は好きではないが。
しかしてもしも、この拳を受けたのが目の前の少女でなければ。
次はなどと言ってもいられなかったのだろう。
だから、謝罪ではなく感謝が出た。

「ま……
 頭良い動きは他に任せるぜ」

少女の素性は知らないが。
口ぶりからしてどこぞの組織とやらに属しているのは分かる。
それがどんな組織なのかは知った事ではないが……
ここを見に来るのだから、この惨状に組織としては思う所があるのだろう。

ソレイユ >  
「……そうだな?」

平然としていた顔が、ぐちゃり、と歪む。
それは殴り、潰されたような顔。
首の角度も、どこかおかしくなっている。

「気をつけることだ。
 ミイラ取りがミイラ、という言葉がある。
 君が、風紀委員の不条理に怒るとき。
 君が、風紀委員のような不条理を起こす。
 そうなれば、君はそれらと同じモノに成り下がる。」


砕けた顔が、何事もないように言葉を口にする。
まるで悪夢がこの世に這い出してきたかの光景で……
しかし、死骸だらけのこの場にはふさわしくも見える。


「感謝は、必要ない。
 君が、粛清されるべき存在に成り下がらないほうが大事だ。
 そして、もし……」

ごぎり

首の角度が変わり、潰れた眼が男を見る。

「なにか、しりたければ、落第街の闇に問いかけるといい。
 応える者がいることもあるだろう。」

F.U.R.Y >  
「肝に銘じておk……ッ!?
 オイ、なんだテメ……ブジじゃなかったのかよッ!?」

ひらひらと手を振り去ろうとした瞬間、歪み崩れる顔面に驚愕し。
その姿を信じられないといった様子で見つめる。

明らかに無事ではないすがた。
しかしてその口からは平常な、何事もなかったかのように言葉が綴られる。

「……フシ、って奴か?
 いや、何でもいいや……オイ! ブジじゃねェならさっさとそう言えバカヤロウがッ!!
 チィ……ッ!!」

どさどさと駆け寄り、着ていた服を破り……








顔に巻く。
包帯にしてはゴツゴツしてる。
そして首を掴んでゴキッと無理矢理もとに戻すだろう。

「ふゥ………
 これで大丈夫だろ」

大丈夫じゃないと思う。

ソレイユ >  
「……いや、なにも大丈夫ではないが」

思わず、ツッコミを入れる。
少し、刺激が強すぎたのだろうか。


「不死とはだいぶ違う。
 流石に詳細までは語れないがね」


ごきごき

無理やり戻された首を捻って、また普通に戻す。
顔も……もとに戻したはずだが、今は妙なぐるぐる巻になっているせいで外から見えるか不明である。


「どちらかといえば、こうなって取り返しがつかないこともある、と。
 そう示したかっただけなのだが……
 実際、君の先程の一撃はこの程度で済むものでもなかったからな。」

やれやれ、とため息をつく。

「まあ、多少は分かってもらえたかな?」

F.U.R.Y >  
「ソウシメシタ…?

 あ、オウ。そーか‥…つまりダイジョウブって事だな?」

よくわかってないが、普通にしてるから多分大丈夫なんだろうか。
まぁ、本人が大丈夫そうならいいか。

「結局テメエの体はよくわからねェが……

 ハンッ、テメエに言われなくてもんな事わかってら。
 むやみやたらにブッ壊してェ訳じゃねェからな。

 それやっちまえばオレァ、ただの”外道”だ。
 バケモンになった覚えはあっても外道になったつもりはねェ」

気に入らないものはブッ潰す。
それは法も何も無用の傍若無人のようにも見えるが、男にとってはちゃんとした”線引き”がある。

弱い奴から奪いはしない。
戦えない奴の命まで取りはしない。
そういった事をする奴らに手は貸さない。

男がバケモノになる前、まだ人間だった頃の信条だった。
それを踏み越えれば……人間だろうがバケモノだろうが、ただの”外道”だと、男は思っていた。

「そう言うテメエこそ。
 ”オレの前で外道を晒すんじゃねェぞ”」

ソレイユ >  
「なるほど」

彼は馬鹿ではあるが阿呆ではなかった。
しかし、どうもこちらは正真正銘の馬鹿のようである。
妙な納得をしてしまう。

「外道?
 ああ、それはない。安心しろ」

『悪』が『悪』だからこそ『悪』を成す。
それは確かに自分たちのあり方ではある。
しかし、だからこそ
その矜持があるからこそ

自分たちは、外道の中の外道であり、
外道から最も遠い外道でもある。


「では、ね。次は不幸な出会いにならないことをいの……」

もう大体互いのいうべきことは尽きた。
そろそろ別れのときかと思ったが……

そうだ、忘れっぽいとはいえ肝心なことを忘れていた。


「……ああ、そうだ。
 今更だが、君の名前を聞いてもいいか?」

F.U.R.Y >  
「ハンッ、そーかよ」

それはない、と言われそうとだけ返す。
殴った借りがある。だから、また殴るなんて事は正直したくはない。
出来る事なら恩は仇では返したくないものだ。

「ァ…?
 名か…‥そんなモンねェ、が……
 
 F.U.R.Y
 ヒューリィ、だ。
 今はそう呼ばれてら」

そう言うと再び、雨の中を歩きだし……

「殴った分借り一つ、にしてやる。
 何かありゃ声かけな。

 ムカつく奴ブチのめす程度のカンタンなモンなら、手貸してやら」

そのまま、男は進んでゆくだろう。
降りしきる雨に濡れながら……

ソレイユ >  
「F.U.R.Y……ああ、なるほど。
 君が、ね。なるほど……」

手早く手元のメモ帳に書き込む。

――F.U.R.Y
――単純にして粗暴
――知能程度も低い
――しかし


「……こっちの件はまあいいか。
 ただ、件の人物と会ったときが厄介そうではあるな。
 さて……どうするかな、お嬢。」

ぽつり、とつぶやく。
そこから先は、自分ではなく組織が決めることだ。


「さて、改めて。
 君とは良い付き合いであることを祈るよ」

そういって……男とは逆の方に向かって歩き始めた。

ご案内:「落第街大通り」からF.U.R.Yさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」からソレイユさんが去りました。