2021/02/21 のログ
迦具楽 >  
「へえ、私の事知ってるんだ?
 もう覚えてるヒトなんて少ないと思ってたけど」

 路地裏から離れてもう久しい。
 当時付き合いのあった連中以外は、もう自分の事なんて忘れていると思ったのだが。

「いいのいいの、今更私をどうこうしようなんて、風紀も考えてないでしょ?
 今はしがない異邦人。
 別に敵同士じゃないんだから、フランクにいきましょ」

 ね、とウィンクをして、笑う彼女を見上げる。

「それより、ソノバカギリ、って貴女が?
 へえ、ふぅん?」

 こちらもまた、好奇心たっぷりに上から下までじっくり眺めて。

「うん、思ったより普通なんだ。
 お礼、言っておくわね。
 昔からこの街を気に掛けてくれてるでしょ?
 貴女に助けられた連中も少なくないって聞いてるわ」

 「ありがとね」と、この街を好む一人として、感謝を伝えた。
 

園刃華霧 >  
「ンー……まァ、アタシは長イかンねェ」

そういえば、最近とんと活動の話は聞かない。
新陳代謝もあるし、今更過去になった存在のことを覚えている奴もそう多くはないか。
珍しがられても仕方ないかも知れない。


「ま、確かに今更ダな。
 今更じゃナくてモ、どーコースる気はナいけドさ?」

そんな面倒事を一々やらかす気もしない。
そりゃ、凶悪犯っていうことなら1ミリくらい考えたりはするかも知れないが。

例えば……ああいや、やめよう。
噂をすればなんとやら、なんてことになったら目も当てられない。


「ウん?アタシなんザ、なんも珍しイこと……」

ジロジロ見られるのは、まあないわけではないが。
妙に好意的に見られるのはどこかむずかゆい。
そんな気持ちが言葉に出たところで……お礼を言われた。


「アー……ナに。その感じで、アタシのコト知ってタってワケ?
 気にスんなッテ。仕事ダし。まあ、アタシにも理由はあるシ。」

改めて礼を言われたりすると、やっぱりむず痒かったりする。


「……ふーン、でモ。ンなこトで礼を言っタりとか、昔の活動トか。
 ネ―……アー……カグッちっテ、此処が好き、ナのカ?」

嫌な思い出ばかりが残る街ではあるが、自分も確かにこの街に愛着は在る。
方向性とかは違うにしても、似たようなものだろうか、とふと思った。

迦具楽 >  
「好きに決まってるじゃない」

 此処が好きか。
 その問いには即答を返した。

「この街は、私が生まれた街で、死んだ場所で、生まれ変わった場所。
 友人に出会って、親友に出会って――恋人と出会えた場所、だもの」

 最後は少し、はにかむように言って。

「だからこそ『やりすぎてる』連中は見過ごせないし、未だに手を出しちゃうんだけどね。
 本当はもう、関わるべきじゃないのはわかってるんだけど、さ」

 少し困ったよ緒に頬を掻く。
 体制側も、落第街側も、どちらだって『やり過ぎる』ヤツは迦具楽の敵だった。
 だからこそ、危うい取引は潰すし――あの鉄火のバケモノも狩らなくちゃいけない。

「――そういうカギリこそ、この街が好きなんじゃないの?
 好きでもなかったら、こんなところ、積極的に関わったりしないでしょ」

 

園刃華霧 >  
「そりゃマた……盛りダくさん、ダな」

生まれて、死んで、生まれ変わった場所
……やはり、どことなく自分に重なる

いや、勿論死んだことなんざないが。
向こうだって比喩だろう……いや、マジで死んでることだってあり得るかも知れないが。

まあそれに、親友とかはともかく……ねえ
そりゃ、どこまでも同じだったら逆に気持ち悪いか


「――『やりすぎてる』連中は見過ごせない、か」


おそらく、そこにはあの鉄火巻も含まれてたりするんだろうな
しかし、となると――
其処まで考えて


「ア? アタシ? アタシ、か……
 いや、アタシの場合ハ……うン……
 好きッテか……染みツいたモンってトコ、かナ」

今度はこちらが困ったように頬をかいた。
なんとも、この気持はうまく言い表せなかった。


「……しカし、そッカ……ァー……ン―……」


向こうも気づいているかも知れない。ひょっとしたら、気づいていないかも知れない。
きな臭い気配。そして、『こっち側』が持つ情報。
しかし、未だ少しだけ話すか悩んでしまう。

普段なら、おくびにも出さないのだが……しかし、相手が悪い。
少しだけ、ガードが緩んでしまっている。

迦具楽 >  
「染みついたもの、かぁ。
 うん、それもなんだか、わかるかも」

 元々立場で相手を判断するタイプの性格じゃなかったが。
 噂に聞いた事のある相手が、思った以上に好感を持てそうなのは嬉しいところだった。

「んー、どうしたの?
 なにか困りごとでもあるのかしら」

 歯切れの悪い様子を見せる彼女に、首を傾げた。
 

園刃華霧 >  
「アー、もー、いーヤ。どうセ、遅かレ早かれ、ダしナ」


悩んで、結局爆発する。
どうせ、すでにばらしているようなものだし今更だ


「ウん。実は、ナ。近いウちにデかい花火があがリそうデね。」


そこまでぶっちゃけてしまっては今更であるが、人差し指でしーっというポーズを取る。
ときすでに遅し、ではある。


「時間がアりゃ、行きタいやつにゃトットと正規学生の道開けるンだけどナ。
 ちと時間が足りなソ―なんデ、ダからま―、アタシは避難勧告?ミたいなコトしてタのサ。
 そンだけノ話。」

肩をすくめてみせる。
まあそりゃ、叩けば叩いただけ反発するやつはでるだろう。
そのへんの加減を考えてほしいものである。

「カグっちも、友人だノがこの辺いルんなら……忠告はシたホ―が良いかもシれんヨ」

迦具楽 >  
「あー、そう、そういう話」

 ああ、と額を抑える。

「ううん、大丈夫、親しい人はもうこのあたりにはいないし。
 昔から使ってる連中も、その手の話には耳聡いから」

 情報屋も売人も、それなりの相手と取引している。
 うっかり火種の近くをうろつくような事はないだろう。
 しかし。

「そっかぁ。
 それは、なんていうか、困ったなぁ」

 別にその花火とやらに首を突っ込むつもりはない。
 ただ、そんな事があれば――風紀と交渉するのも上手くいかなくなりそうだ。

 

園刃華霧 >  
「うン? なンで其処でカグっちが困るノさ?」

はてな、と首を傾げる。
友人知人は問題なし。本人もまあ、問題ないだろう。

なら、なんだ?

なんだか立場がさっきと逆になった気分だ。


「別に、喧嘩にマざる気もナいだロ?」

迦具楽 >  
「あー、ないない。
 どっちも問答無用で潰していいんならともかく。
 そうじゃないんなら、私が手を出しちゃまずいでしょ」

 自分がどの程度の戦力として数える事が出来るか。
 低く見積もっても、肩入れした側に天秤が傾く程度にはなるだろう。

「んー、いや、ね。
 カギリならわかると思うけど、今の私、不法居住者になるの。
 だから、私には身分を示せるものが何もない」

 両手を腰に当てて、一つため息を吐く。

「ただ生きる分には問題なかったんだけどさ。
 恋人と暮らす事になって、ちゃんとした身分が欲しくなったの。
 だから、ね、話の分かる風紀と取引の一つもしたかったんだけど」

 経歴を調べられれば、どうしたって落第街での活動が見つかるだろう。
 そうなると正攻法はかなり難しくなる。
 それに、証拠は残っていなくとも少なからず殺人歴もあるのだ。
 そこまで掘り返されるとは思わないが――その時は猶更、まっとうな手順は取れなくなる。
 

園刃華霧 >  
「アー……そウいう……
 そりゃおメでとサん……ッテ、簡単にイかんわナ」


恋人と共にいるために、ある種の自由を捨てる。
そこに至るまでには色々と考えることもあっただろう。

恋、か

ああ――
告白っていうのは――追い詰められたものがすることだ
だったか?

カグラも、ある意味、追い詰められたのだろうか?


「ン―……そウだナ。
 ぶっちゃケ、ある程度の犯罪歴クらいナら目は瞑れるンだ。
 つカ、アレか。もシかしテ、正規学生への引き上ゲってシらん?」


実際、自分がそうだった。
どこの馬の骨ともわからないのを、色々と都合してもらったわけだ。
まあ、割と無茶ではあったんだが。

迦具楽 >  
「はは、うん、ありがと」

 誰かに祝われるのは嬉しい物で。
 それでハッピーエンド、と行かないのが困ってるところなわけだが。

「ううん、大丈夫、その辺りの事は知ってるよ。
 ただ、学生になりたいわけじゃないんだ。
 出来るなら、講師か職員か。
 学生になると、不都合が多くてさ。
 だからこう、話を繋いでくれる相手を見つけたくて」

 ほしいのは身分だけだ。
 学生として、勉学や部活、委員会に励みたいわけじゃない。
 そもそも、仕事はすでにあるのだ。

「今は一時的に、島外からの出店企業に保護されてる、って形になってる。
 出来るならこのまま職員として、大手を振るって働けるようになりたいの。
 でも、普通の引き上げ制度だと、そううまくはいかないでしょ?」

 

園刃華霧 >  
「そッチかー……ン―……
 職員ッテなるトな―。話が雲の上なンだヨな……」


なにしろ、財団だかなんだかが関わることになる。
そうなると、風紀ってより生徒会な感じはある。
できるだけ力にはなりたいが……

でもなー、職員なんて……ン?んん?


「アー……役に立ツかどーカ、アタシにも分かラんけど。
 一個、手は浮かンだかモ知れン。」


今までの会話を思い出す。
ああ、確かに、そんなことを言っていた。

「サっきさー、『しがない異邦人』ッテ、言ったヨな?
 なラ、ソレが手っ取り早イんじゃナいかネ。
 『異邦人保護』ッテのがアるかラさ。」

記憶の片隅に放り込まれた知識をなんとか引きずり出す。


「元々、此処の存在じゃナいってコトなラ……
 不法滞在もへったクレもなイだろ?
 晴れテ、此処の身分が手に入ッテめでタしーって……どーカね?」

言うだけ言ってみたが、さて問題は相手の意志だったりするわけだ。
エイリアンか何か扱いされるのが嫌だ、とかまあ色々あるかもしれん。

迦具楽 >  
「――ああ、そっか。
 ほんとうに『ただの異邦人』として保護される、って手があるのか」

 それは目から鱗だった、とでも言うように手を打つ。

「それなら、今の雇い主に、一時的に保護されてた事と業務歴でも用意してもらって。
 このまま雇用したい、って申請でもして貰えば正規職員の出来上がり?
 それは確かに都合がいい、かな」

 そうすれば、正規の居住権と身分が手に入る。
 自分が島産まれだからか、思いつかなかった方法だ。

「んー、そしたら事務に強いヒトに伝手が欲しいところかな。
 私があんまり制度に詳しい訳じゃないし。
 正攻法が使えるなら、出来るだけ上手くやりたいもんね」

 うーんと頭を捻る。
 裏道を考える必要はなくなりそうだが。
 正攻法はそれはそれで、手続きに手間がかかるのは予想に難くない。
 書類に強い味方が居てくれると、大変心強い限りだが。
 

園刃華霧 >  
「ソんで問題ナけりゃ、そノ方向で行クかね」

どうせ、彼我の差なんてそうそう分かるものでなし。
わかったところで、まあ、異邦の民っぽい存在なのは多分変わらないのだろう。
それなら、大して問題でもない……といいな?

「事務、事務……ネぇ……
 そウなると正確にハ、生活委員の範疇ダけド……」

別に交流がないわけでもないが、信頼を置けるほど仲がいいってなると難しいな。
と、ふとやたらでかくて丸っこい頭の映像が脳裏をよぎった。

「アー。そウいや、エイジのやつ確か知り合い居たヨな……
 アイツ、物理的ニも顔広いシな。ちト聞いてミっか……」

まあ、アレの知り合いならある程度信用してもいいだろう。
けどまあ……


「基本的ニはコッチの仕事じゃナいけド、まあ、アレ。
 乗りかかった船ッテやつ。アタシもできル限りは手伝うサ。」


これはもう、仕方がない。

迦具楽 >  
「あ、そうなんだ?
 生活委員、生活委員なぁ。
 私も全然知ってるヒトいないや」

 困ったな、と首を捻る。
 しかし、ありがたい言葉を貰えると、表情を明るくするが、目を丸くした。

「それは、ありがたいんだけどさ。
 風紀委員の管轄じゃないなら、これ以上手間をかけさせるのも悪くない?」

 もちろん、手を貸してもらえるのは純粋にありがたい。
 単純に住んでる時間はそれなりになりつつあるが、制度や法規に関しては詳しくないのだ。
 そこを補ってもらえるのなら、これ以上に心強い事はない、のだが。
 

園刃華霧 >  
「マ、知り合イに顔広いノいるシ、其処あたルさ。
 そレにまー、アタシが振った話ダから丸投げッテのもネ?」

基本的にはサボり屋ではあるが、やるならまあやるのだ。
特にまあ、親近感のようなものが湧いている相手のためなら、
多少はいいだろうと思う。


「だカら、気にシなクてもいいヨ。
 ……アー」


そこで、ふと思いつく


「ンー……アレだ。もしモ、だ。
 嫌じゃ、ナけりゃデいいけドさ」

少し考えながら、確認するように小出しに口にする。


「そノ、手間賃代わりに。カグっちがシてる恋ノ話、聞かセて貰ってモ、いい?
 駄目なら駄目で良いヨ。そンで手伝わナい、なンてことはナいかラ」」


そう、切り出した

迦具楽 >  
「そんなの気にしなくたっていいのに。
 でも、そう言ってもらえるなら」

 とてもありがたい話だ。
 面倒見が良いというのか、こういうところがこの街でも頼られてる理由なんだろう。
 ただ、手間賃替わりにと言われた内容には、きょとんとした表情を浮かべる。

「え、うん、まあ、それくらいなら構わないけど。
 別に多分、特別な話なんてないと思うよ?」

 確かに、出逢いこそこの街であって、殺し合うような仲だったり。
 そのうちに仲良くなったりとか、文化の違いですれ違って、誤解させたことが始まりだったり。
 話せることは色々あるけれど。

「最初はまあ、私がね、恋とか愛とか、さっぱりでよくわからなかったんだけど。
 一緒に暮らしてたら、だんだん、こう、一緒にいたら安心できたり、甘えられたり――って、ごめんちょっと待って」

 と、ざっくりと言葉にしつつ思い返してみたが。
 急に恥ずかしくなってきて、顔が熱くなってきた。

「うっわ、なんかめっちゃ恥ずかしいんだけどこれー!」

 話したくないわけじゃなかったが、今まで経験したことのない羞恥を覚えた。
 「うわぁ」と言いながら、両手で顔を抑えて蹲ってしまう。
 

園刃華霧 >  
両手で顔を抑えて蹲ってしまった相手を見て、
少し気の毒になる。


「まア、無理にトは言わナいよ。
 タだ、ちょッと知りタかっタだけダから……さ。」

そういって、落ち着かせようとする。
だけど


――恋とか愛とか、さっぱりでよくわからなかった


ああ、まさにそれは……一番、知りたかった話だ。


「ンだか、ら……モし、いいナら。ゆっくリ、後でも良いシ。
 駄目なラ、そレでいい。」


少し、残念ではあるけれど。
無理をさせてまで聞き出す話でもない。

迦具楽 >  
「いや、ごめん!
 無理とか嫌とかそういうんじゃないんだけど!
 改まって話そうと思ったら滅茶苦茶恥ずかしい!」

 がばっと顔を上げて、間違いなく寒さ以外で赤くなった顔を見せる。

「というか、そんな事聞くって事は、カギリもなにか悩んでるの?
 まあ詳しい話は、またゆっくり話すとして。
 そうだなぁ、私は一緒に暮らしてから色々わかったかな」

 うーん、と頬を掻きつつ、立ち上がって。

「ほら、普段の生活を一緒にすればさ、好きなところも嫌なところも、気が合うところとか合わないところとか、そういうのもわかるじゃない?
 だから、最初はそう、お互いをもっと知るために、一緒に暮らそうって言ったの。
 私が意識するようになったのって、多分それからしばらく経ってだもんなあ」

 思い返しても、それまでは大切な親友と、恋人と、色んな関係性に区別が出来なかった。
 けれど、そう、たしか決定的だったのは多分、肉体関係に進んでから。

「んー、だからなんだろう、私たちの関係って、友人からの延長にあるんだ。
 仲のいい友達から、大切な親友になって、一緒に生きていきたいパートナーになって――ごめんまた恥ずかしくなってきた!」

 片手で顔を隠して、背けた。
 そういえばこうした羞恥心というのも、愛情を知ってから感じるようになった気がする。
 少し前までは、なんてことないように話せていたはずなのだが。

「えっと、だからそう、こんな話でよければ、聞かせてあげられるけど。
 こんなのでいいの?」
 

園刃華霧 >  
「まあ、色々とネ。
 いや、十分ダよ」

仲のいい友達から、大切な親友になって、一緒に生きていきたいパートナーになって――


こんな相手がいま、こうなっているのだし。
何れ何処かで、自分も同じようになる瞬間は、訪れるだろうか。


「あンがとネ。」


少しだけ、遠い目をして礼を言った。


「さテ、ぼちぼち手続きの下準備はジめよッカ?」

そう言って笑った

迦具楽 >  
「ありがと、はこっちのセリフでしょ。
 カギリに話さなかったら、正攻法なんて思いつかなかったもの」

 ずっと裏向きに生きていたからか、どうしても裏道を探してしまう癖がある。
 正道が使えるとなれば、それはもうこの上ないのだ。

「下準備、か。
 私はなにからしたらいいのかしら。
 あ、とりあえず連絡先は教えておいた方がいいよね、あと今の住所と仕事先かな」

 手を握り込むようにしてから、広げる。
 そこにはいつの間にか一枚の名刺が創られていた。

『葛原工房 常世島支部所属
 魔道具開発部門 テストユーザー
 焔誼 迦具楽
 TEL ※※※-※※※-※※※※
 住所 異邦人街 宗教施設群 ※※※』

 

園刃華霧 >  
「こりゃドーモ。
 アタシは名刺なんて気の利イたモンはないから……」

ほいっと気軽に名刺を預かり。
代わりに自分の番号を伝える。


「まズは、保護の手続キ、だな。
 この辺は、アレだな。
 この世界のルールとか、よク知らないでーす、みタいな顔で突っ込めば?
 向こうが勝手に色々世話して詳しく説明してくれるはずサ」

そういって、けらけらと笑う

「んじゃ、まずは委員ノ場所ダな。
 学生街とか、行った?
 マだなラ、案内スるよ。」

手始めはそんなところだろう。

迦具楽 >  
「学生街か、あんまり行った事ないんだよね。
 委員会街だっけ?
 そっちの方なんかさっぱりだし、案内してくれると助かるなあ」

 そう言いながら、もう案内される気満々である。

「詳しいルールとかしりませーん、でもむがいでーす、って顔してればいい?
 ヒトなんて殴った事ないですー、みたいな?」

 なんて冗談めかして笑いつつ、新たな知人に頼るだろう。
 なんにせよ、自分の先行きに新たな展望が見えたのだ。
 来た時とは打って変わって、足取りは軽くなっていた。
 

園刃華霧 >  
「そーソー、そんナ感じ。
 まー多少ノアレはさ。ルール知らなかったからー?みたいな顔でOKダろ」

けたけたと笑いながら先に立って歩く。
考えてみれば、委員としてはあまり言っていいアドバイスではない気がするが
まあ、些細なことだ。

そう悪いようにはならないだろう。
……多分だけど。

ご案内:「落第街大通り」から園刃華霧さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に迦具楽さんが現れました。
ご案内:「落第街大通り」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に火光雷鳥さんが現れました。
火光雷鳥 > 今、現在この街で起きている状況を少年は知らない――当然だ、一般学生の彼は風紀でも違反部活や組織の面子でもない。

ただ、何時ものように日常を過ごし、配達のバイトを終えた帰り道――気が付いたら此処に居た訳だ。

「………あーー……うん、おかしいな。俺、確かバイト帰りだった筈なんだけど。」

右を見る、左を見る、あと何となく後ろを見てから顔を前へと戻す。
暫しの沈黙。この場所は覚えがある…まず、自分みたいな『凡人』には縁が無いであろう場所。

そう、つまり此処は―ー…

火光雷鳥 > 「落第街じゃねえええええかああああああ!!!!???え?何!?『また』やべー場所に飛ばされたの俺!?』
火光雷鳥 > しかも何か周囲が妙に大人しいというか、凄いすごーい遠くから爆撃音?何か知らないが明らかにやべー音が微かに聞こえてくるような。

「……あ、うん。普通にやばい所じゃねーな。凡人の俺でも分かるわ。」

おかしいな?ここはやべー場所なのは俺なりにぼんやり理解してはいたが、戦争でもおっ始めてるのか?
ともあれ、君子危うきに何とやら。明らかにアレだ、興味本位で行ったら死ぬヤツだ。俺でも分かるぞ!!

「つーか、これどうやって戻ったらいいんだ?こっちの土地勘なんて全然ねーんだぞ、俺は…!」

主な行動範囲がそもそも学生街や商店街、歓楽街辺りが限界だ。落第街なんて勿論地理も場所も把握していない。
と、いうかそもそも一般学生は普通は訪れない場所だ。勿論、俺も自発的に来る気はまっっったく無い!!

(無いんだけど、気が付いたらここに居るんだもんよぉ!どうしようもねぇーー!!)

火光雷鳥 > 『――小僧。あちらから良い闘争と殺戮の気配がする。今すぐ向かえ。』

唐突に頭の中から直接聞こえてくる声。一瞬赤い瞳を丸くするが直ぐにしかめっ面になり。

「お前は俺を殺す気ですか!?俺は凡人なの!一般学生なの!ゲームで言うと村人Aなの!ギャルゲーで言うと主人公のこう、悪友ポジションとかそういうの!!」

最後の例えは兎も角、物事の中心には決して入れない脇役だと俺は思っている。
そりゃ、自分の人生は俺が主役だけど。でもその人生は平凡なもの――に、なるはずだったんだけどなぁ。

「……アレか、俺が《門》とかいう奴だからか?いや、どっちにしても勝手に変な場所に飛ばされるのは命が幾つあっても足りねーんだけど…。」

まぁ、凡人が異能持ってたり頭の中にやべーのが居たり、ついでに門?とかいう奴だったりは無いんだ、分かってる。
でも俺の性格?気質はやっぱり平和な一般家庭で育った凡人なんだ。情け無いけどそれは俺の誇りでもある。

火光雷鳥 > 「取り敢えず、誰かにあっちに帰るルートというかそういうの?教えて貰うしかねー……な……。」

周囲を見渡す。店構えも建物も、ついでに往来の連中も明らかに向こうとは質が違う。
要するにこう、声を掛け辛い。割と社交的だとは思っているがハードル高くねぇかな?

(そもそも素直に教えてくれる保証もねーし…あ、何かカツアゲとかされそう。そしたら逃げるしかねぇ!)

一対一なら何とか、一対二はギリギリ、それ以上は迷わず逃げる!!いや、喧嘩レベルの話なら、だけど。
生憎とバイトの帰り道だったので、左手に嵌めるグローブ型の異能制御装置も持参していない。
つまり、制御もまだまだ課題が多い発火能力と自前の体一つでどうこうするしかない。

(うん、母さん、ついでにクソ親父。俺の人生最近刺激的になってきてるんだけど、まず生きて本土に帰れる気がしません!)

火光雷鳥 > 取り敢えず、頭の中の『奴』が興味を示している方角には絶対に近寄らない事にして反対側に取り敢えず歩き出してみる。

そもそも、土地勘が云々以前に落第街に直に足を踏み入れたのはこれが二度目だ。
以前はどこかの路地裏みたいな場所で、とある先輩に偶然遭遇して安全な所まで案内して貰ったが。

「そうそう都合よく知り合いとかダチが居る訳も無し。自力でどうにかするしかねーってのはきっついぞ。」

周囲となるべく目線を合わせないようにして道のど真ん中!!は、俺の精神が死ぬので端っこを歩く。
こう、明らかに目が合っただけで因縁を吹っ掛けてきそうなのも居るに違いない、いや、居る!多分!!

(変なのに絡まれませんように!無事に帰れますように!あと、そもそも俺の変な体質?何とかなりますように!!)

と、普段はしない神頼み?をしつつ落第街の大通りの何処かを歩き続ける。が、似たような光景ばかりで現在地どころか、近づいているのか遠ざかっているのかも全く分からない。

ご案内:「落第街大通り」にユラさんが現れました。
ユラ > 「何してんの?」

めちゃくちゃ怪しい人が居たので、声をかける。
それも真上。クモのごとく壁に張り付いたユラ。
たぶんすごくビビらせると思う。

「こっち危ないよ。
 キミたまーーーに見るけど、こっち来るような人じゃないよね」

文字通りの上から目線で話を続ける。
降りてくる気配が無い。

火光雷鳥 > 「うぉわああああああああああああ!?!?」
火光雷鳥 > いきなり有り得ない方角から声を掛けられて、そちらに顔を向けると同時に思わず叫んだ。
いや、だって真上に蜘蛛の如く壁に張り付いているヤツが居たら普通は驚くだろ!!え?俺だけ?ごめんね凡人で!!

「い、い、いきなり驚かすなよ吃驚したぁ!!つーか、何でアンタ壁に張り付いてんの!?あと、偶に見るってどういう事!?俺、ここに来るの二度目なんだけど!!」

上から目線(位置的な意味で)とかそういうのより、まずその登場の仕方がホラーだよ!!心臓に悪いわ!!と、俺は相手に言いたい。
ともあれ、ちょっと落ち着いたのか呼吸を整えつつ。

「いや、ここ落第街?だろ。前もそうなんだけど、気が付いたらここに『迷い込んでた』んだよ。
あーー…つまり、何と言うか…うん、俺の意志でここに来てる訳じゃねぇっつうか。」

説明になって無いかもしれないが事実だ。少なくとも凡人がわざわざ危険を承知で来る場所ではないし。

ユラ > 「いやここでじゃなくて。学生街とかで。
 その頭の色、目立つし。
 オレは人に見つからないように散歩しようと思った結果、壁かなって思っただけ」

特徴的な赤い髪を指さす。
片手と両足だけで張り付いてるので、まともに掴まってるわけではなさそう。

「ふーん、迷い込んだね……まあそういうこともあるでしょ。
 この辺、今日は特にうるさそうだから、早いとこ向こう戻ったほうがいいと思う。
 帰り道はわかる?」

大体こっちだけど、とあいまいに指さした。
壁を貫いていけるなら、間違いなくそちらが学生街の方である。

ご案内:「落第街大通り」に火光雷鳥さんが現れました。
火光雷鳥 > 「あぁ、あっちでね。まぁ、俺の頭と目の色は確かに目立つよな…どっちも真っ赤だし…。」

そりゃオレからすれば初対面でも、相手からすればもしかしたら見覚えがある、というのも有り得る話だ。
自分の赤い頭髪を軽く指先で摘みながら苦笑を浮かべて。分かり易い特徴なのは良い事なのかどうなのか。

「いや、つーか人に見付からないように散歩するならこう、空を飛ぶとか屋根の上を移動するとかすればいいんじゃねーか?
まさか壁に張り付いてスパイダーウォークとかしてるとは思わないぜ流石に。」

まぁ、そもそも少年はそんな芸当は絶対に出来ないので何とも言えないのだが。
あと、片手と両足だけで壁に張り付いているがアレは魔術か異能なんだろーか?
ただの驚異的な身体能力?とかでやってるなら、何と言うかやべーな、と思う。

「…まぁ、落第街どころか裏常世渋谷とか転移荒野とか、禁書庫?とか、何かアレな場所にばかり迷い込むんだけどな…。」

ちょっと遠い目をしつつ。おまけに迷い込むタイミングが完全にランダムなのでいきなり来るのだ。
場所の指定どころか、迷い込む過程や法則も未だによく分かっていないのである。

「あーー戻りたいのはもっともなんだけどさ?こっちは土地勘さっぱりだから現在地も――…え?あっち?」

彼が指指した方角を見る。壁である。もう一度見る。壁である。え?壁を貫いて行けと!?

「あーー…俺、初歩的な発火能力くらいしかできることねーんだけど。」

壁を一直線に破壊して移動するパワフルさは残念ながら俺には無いのだ。

ご案内:「落第街大通り」に火光雷鳥さんが現れました。
ユラ > 「屋根の上は見つからなさすぎるし、空は見えなさすぎる。
 壁がちょうどよかった感じ」

飛べるには飛べるし、それらの案も試したのだが、手ごたえが無かった。
というわけで壁である。

「……つまり、異能かなんかのせいでワープしちゃうってこと?
 だったら大変だな。キミが地中とか上空2000メートルとかに飛ばないように祈っておく」

両手を組んでお祈りのポーズ。
彼の無事を祈っておいた。
問題は今日の無事の確保だけど。

「えっ、命に関わるじゃん。
 発火だけじゃさすがに壁は抜けないよな……じゃあ連れてくか。
 この辺は大丈夫だと思うけど、万が一流れ弾とか飛んできたら死なないようにお祈りだけしといてね」

壁から飛び降りてすとんと着地し、こっちこっちと手招き。
最短で帰れる道をナビゲートすることにする。

火光雷鳥 > 「お、おぅ…その謎の拘りは俺にはサッパリ分からんが、アンタ的には大事なポイントなのは理解した。」

手ごたえとかそういうのは、少なくとも空は飛べないし空中歩行も出来ない凡人にはサッパリ分からない感覚だ。
が、まぁ彼にとっては大事な事なのだろうというのは理解したようで。

「あーー異能というか体質?俺も実はよく分からん!
まぁ、要するに俺の意志に関係なく、時間もタイミングもランダムでやべー場所にばかり飛ばされるって感じ?」

あと、地中とか上空2000mとかどう頑張っても即死コースじゃねぇか!あと祈らないで!?
あと、それ以前にまず今日を無事に生き延びないといかんのだ。具体的には早く自分の部屋に帰りたい。

「そりゃ俺は割と凡人(のつもり)だからな!!ぶっちゃけ、こっち側に居ても何もできねーし。
自衛するのが手一杯、というかそれすら怪しいしなぁ。」

あと、流れ弾とか止めてくれる?怖いんだけど!俺にはどうしようもねじーじゃんそれ!?
ともあれ、壁から飛び降りて着地した彼の手招きに一先ず従う事にしよう。

彼は何となくだが悪い奴ではなさそうだし、現状、彼のな美ゲートに頼るしかないのが事実。

ご案内:「落第街大通り」に火光雷鳥さんが現れました。
ユラ > 「オレの異能も体質に近いし、そういうのって結構密接な関係にあると思うけど。
 もしかしたら、そのワープもいつか自分で制御できる日が来るかもよ?
 ヤバい場所を選んで飛べるようになるかもね」

多分彼はそんなことは望んでないだろうけど、正直起きたら面白そうな気がする。
アカの他人の身に起きる不思議な出来事は笑い話。

「走って逃げられれば十分でしょ。
 自衛って言っても、迎撃と逃走は違うよ。
 キミの目的がここからの脱出なら、走って逃げて帰れたら十分だろ」

力の有無に良し悪しは無い。
ただユラの側にも、あまり気合を入れて守る気は無さそうである。

ご案内:「落第街大通り」に火光雷鳥さんが現れました。
火光雷鳥 > 「アンタの異能?…あ、悪いそういや自己紹介まだだった。
俺は常世学園の1年の火光雷鳥ってんだ。雷鳥でいいぜ?
…で、制御ねぇ?正直、発火能力の制御すら課題が多いのに何時になるやら…。」

そもそも制御出来るのかこれ?と、思わないでもない。
あと、やばい場所に自分からワープする気は無い!ただの自殺行為だろうそれ!?
「…つーか、制御できたとして自分から虎穴に入りたくねーよ」と、そこはジト目で突っ込みは入れつつ。

「そりゃ俺は迷わず逃げる方だな。ただ、逃げ切れるかどうかはわかんねーだろ?
俺がどんなに頑張っても所詮は凡人だしな。別に超人でも異能や魔術のスペシャリストでもねーんだし。」

自分の限界は自分なりに把握している。少なくとも、腕に覚えのある連中から逃げ切れる自信は無い。
まぁ、そもそもこの少年は自分を過小評価する傾向が少なからずあるが。

「まぁ、でもアンタの意見は賛成だな。俺は別に強い力とかいらねーし。自分と家族、あとはダチを最低限守れればそれで十分だしな。」

それが凡人としての彼の拘りの一つだ。強い力なんてまったく『望んでいない』。

ユラ > 「……あーそういえば……カギロイ? ライチョウ?
 えっ、どっちが名前? ライチョウのほう?
 じゃあ雷鳥でいいんだな?」

名字と名前が文化圏によって逆転することにあまり慣れていない。
素で混乱している。

「あ、オレはユラ。ユラ・リィヤ。同じ一年生。
 オレも異能の制御の練習中。まだ気を抜くと変なこと起きるから、そういうのはよくわかる」

よろしく、と手を後ろに向けて振っておく。

「じゃあどんな状況でも逃げられるように考えはまとめといたほうがいいかもね。
 まず大声出すクセから直した方がいいよ。
 自分の位置教えながらじゃ逃げる意味無いし」

危険が迫った時に声を上げるのは、彼が凡人だからだろうか。
それとも危険が迫ったとしても『声を上げられるほど、内心の奥底では余裕がある』のだろうか。
なんてことを考えるが、それ以上の興味を失ったように思考を止めた。

「いいんじゃない、それで。オレもそう思うよ。
 その守るってのも腕力だけじゃなくて、経済的にだったり健康的にだったり、いろんな意味があるし。
 その中で雷鳥が何を選ぶかって話だよね」

きょろきょろとあたりを見渡して、もう少し進む。
少しずつ明るい場所が近付いてきた。
帰れる瞬間は目の前だ。

火光雷鳥 > 「ん?ああ、カギロイが苗字でライチョウが名前。んで、雷鳥の方が多分呼びやすいと思うし。」

素で混乱してる彼に不思議そうに。あぁ、アレか?外国だと先に名前、それから苗字の並びだからそのせいだろうか?

「おぅ、よろしくなユラ!ってか、お仲間かぁ。俺の場合は、気を抜かなくてもアレだからなぁ。発火能力はまぁいいとしても。」

気を抜いても抜かなくても、今回みたいに唐突にやべー場所に転移するのは本当にどうにかして欲しい。
が、現状だと対策が浮かばないので甘んじるしかないのである。ちくしょう。

「…あ、うん。それは自覚してるんだがつい、なぁ。
けど、咄嗟に声が出ちまうのを直すのは中々難しいな…。」

凡人、というのもあるが叫びがある種の芸風になってきているのが問題だ。
そもそも、駆け引きや逃走や自衛のノウハウが全く少年意は無いのだ。
ど素人な訳で、咄嗟に大声を出しそうになるのを抑える、あるいは声を出さないように気をつける、というのは意識していても難しい。

「まぁ、そもそも力がでかくても俺的には正直扱いに困るしなぁ。
自称凡人としちゃあ、身の丈にあった力があればそれで十分ってやつだよ。
まぁ、健康は大事だし経済的あれこれも生活に直結するしなぁ。
ま、どれを選ぶかどうかってのは今の俺にゃよくわかんねーけどさ。」

うん、まぁ凡人でもあり馬鹿だから。ただ、少なくとも――…

(俺の手の届く範囲…自分も含めて最低限守れる力。目標はせいぜい『そこ』だよな)

武力だろうが経済力だろうが健康だろうが。基準はそこに集約される。
向上心が無い、という訳ではないし力は欲しい。ただ、その望むラインが割と低めというだけだ。

と、会話をしている間にも彼の道案内で明るい場所へと少しずつ近づいてきた。それだけでホッとする。

(まぁ、俺はやっぱりあっち側の凡人でこっちの側じゃねーって事だわな。)

当たり前の事かもしれないけれど、それを再確認した。
問題はそんな凡人の意向を無視して転移現象が起きる事だが。

ユラ > 「……ライチョウのほうが名前な。おっけー」

判断に困る名前は、聞いておかないとわからない。
カギロイが名前でも違和感がなかった。気がする。

「……ホラーゲームとかやってみたら?
 ネットで配信プレイでもしたら、絶叫芸人として人気出るよ多分」

直らないなら活用しよう。
またしても他人事だと思って、面白い方向性に話を持っていこうとする。

「そういうの含めて考えるのが学園だしな。力も、今後も、将来も。
 雷鳥もそうだろうけど、オレもそう」

魔術が使えて、人間離れした力がそれなりにあるユラでも、それが普通の世界ならば凡人である。
少なくとも、こっちでも勝てなさそうな相手は結構居る。
力でも、何かしらの技術でも。

そんな話をしているうちに、明るい場所まで帰り着いた。

「……ここまで来たら帰れるよな?
 寮まで送らなきゃいけないとか言ったら、さすがにオレもめんどくさいけど」

大丈夫?と雷鳥を見る。

火光雷鳥 > 「まぁ、変な苗字や名前だとは思うけどな。」

少なくとも、苗字のほうは多分かなりレアなのではないだろうか。漢字はともかく、読み方的な意味で。

「いやいや、絶叫プレイ動画とか俺の喉が潰れそうだからパス。
それにネット配信とか変に身元特定やら話題になりそうだからそれも嫌だな。」

見る側なら別に構わないが、実況配信する側にはなりたくないのが本音だ。
生憎と、叫びがちょっと芸風になりつつあるが面白人間枠になるつもりはない!
いや、ちょっとなりかけてるかもしれないけどそれはそれである。

「――だなぁ。とはいえ、俺は魔術とか正直サッパリ付いていけんけど。」

苦笑いで肩を竦める。そりゃそうだ、この島に来るまで魔術とは無縁だったのだから。
異能に関しても制御に難があり――前途多難だ。せめて留年だけは避けたいが。両親に顔向けが出来ん。

――そして。力も技術も勝てる・勝てない以前の問題として少年は未だに自覚と覚悟が足りないのだ。
自分自身の事も『よく分かっていない』のだから、一番の課題は自分自身への理解だろう。

ともあれ、流石にここまで来れば後は一人でも何とかなるだろう。
ユラへと顔を向ければ、笑顔で頷きつつ。

「おぅ、ここまでくりゃじゅーぶんだって。ありがとなーユラ!今度飯でも奢るわ。」

そう礼を気軽に述べつつ、そんじゃありがとなー!と、手を振りつつ、表側へと凡人は戻っていこうと。

――彼は『闇』を知らない。

――彼は『影』を知らない。

――彼は『自分自身』を知らない。


――だから、その『戦争』も何もかもを知らない。


故に。――凡人の苦悩はこれからが本番なのだ。