2021/11/03 のログ
ご案内:「落第街」に黛 薫さんが現れました。
■黛 薫 >
落第街に生きる者、落第街でしか生きられない者。
側から見れば大差ないけれど、当事者にとっては
雲泥の差。
平等に不平等な表の街とは逆に不平等に平等な街。
表の街の平等が背の低い人に踏み台を与えて目線を
揃える概念なら、裏の街の平等は誰にも踏み台を
与えず同じ待遇を強いるもの。
自然、表の街なら貰えたはずの踏み台がない
弱者にとって、落第街は生きづらい街だが……
裏を返せば縛りがないということでもある。
「……あぁもぅ。割に合わね……」
例えば、未成年の少女が情報を集めるために
酒の席に付き合う、なんてことも出来る。
残念ながら、空振りも良いところだったが。
■黛 薫 >
欲しかったのはつい最近出回り始めた麻薬、及び
魔導科学具の情報と、中小規模の違反組織周りの
きな臭い動きの情報。あと欲を言えば共同研究の
現状打開に繋がりそうな魔術関連の情報。
ところが、費用は此方持ちで酒を奢らされた挙句
飲みたくもないのに飲まされて聞かされた情報は
願いが叶う七色の紅葉だの今年も常世祭の季節が
やってきただの、世間話のレベルでしかなかった。
「気持ち悪ぃ……」
黛薫の飲める酒の量は500mlのロング缶が限界。
それさえ買うたび飲み過ぎたと後悔するのだから、
瓶を開けられたらたまったものではない。
■黛 薫 >
めぼしい情報が得られなかったので、アルコールで
ふわふわしている頭で手持ちの情報を整理してみる。
まず、最近出回り始めた麻薬について。
曰く、求める異能を得られるクスリらしい。
どちらが目的の効能でどちらが副作用かは不明だが
麻薬的な効果としては多幸、万能感、恐怖や痛覚の
鈍化、倫理や道徳の欠如、性的興奮の増大があると
噂されている。
(異能じゃなくて魔術だったら欲しかったかも。
いぁ、どーせあーしには効果ねーんだろーけぉ。
倫理や道徳につぃては、ヤクキメてるヤツなら
最初から持ってなかった線もあるだろーし……
情報が新し過ぎて真偽の確認が出来ねーのよな)
広まるまで待てば確実な情報は手に入るだろうが、
それでは遅すぎる。新しい薬物が出回った直後は
気が大きくなった中毒者による暴行被害が増える。
割を食うのは自分を含む女子供などの弱者たちだ。
性的興奮の増大が謳われているなら尚更。
「……何事もなく過ぎてくれりゃイィけぉよぉ」
こういうときに限って悪い予感はよく当たる。
嫌な想像ばかりが膨らんで重苦しくため息を吐く。
■黛 薫 >
次に、およそ同時期に出回り始めた魔導科学具。
急成長する人工生命を内包し、極めて短時間だが
無差別に周囲を破壊させるという危険な代物。
時期はともかく出所が麻薬と同じかまでは不明。
(同時期に揃って暴動向きのブツが入ってくるとか。
傍迷惑にもほどがあんだよ、クソ……意図的なら
巻き込む前提ってことだろーし)
関係性は不明だが、落第街の小規模組織の間でも
きな臭い動きがある。曰く行方不明になっていた
風紀委員がどこかの組織のトップを籠絡したとか。
お陰でいくつかの組織の統率に揺らぎが生まれて、
情報を抜くには悪くない機会に見えるのだが……。
(何か、迂闊に触れたらヤバぃよーな気ぃする)
縁あって件の風紀委員の人と形を知っているから、
彼女が自己意思でそんな手段を取るだろうか、と
些細な違和感を覚えたのがきっかけ。
統率が取れなくなったために漏れたはずの情報は、
その違和感を重ねると裏で糸を引く者がいるかの
ような不気味さを感じさせる。
もう少し深入りすれば具体的にどの組織の話かまで
入手出来そうだったが……安全を取って手を引いた。
■黛 薫 >
総括すると、今の落第街の情勢は黛薫のような
弱者にはあまりありがたくないものだ。情報を
得るために出歩けば危険に晒されるかもしれず、
しかし安全のために大人しくしていれば後手に
回って痛い目に遭いかねない。
強いて良い知らせを挙げるなら酒宴で聞いた話題
……七色の紅葉は眉唾物なので、常世祭の時期が
やってきたことくらいだろう。しかし……
「あーーしにゃ縁のねー催しなんだよなぁ……」
黛薫の異能は人の集まる催しとの相性が悪い。
以前ですらそれが障害になって大きな祭になど
参加した経験がなかったし、悪い方に進化した
現在ともなれば尚更だ。
屋台の食べ物とか、お祭りの雰囲気とか。
参加出来ないが故の憧れも込みではあるものの
人並みに興味はあるし、羨ましいとも思う。
■黛 薫 >
差し当たっての懸念事項は新しい薬物が出回って
増えるであろう暴行事件の増加。薬が広まる前に
出来る限り情報を集めておきたい。
(時間かければかけるほど襲われるリスクは上がる。
でも手持ちの情報が半端だと余計に危ねーのよな。
あぁもぅ……そーゆーどっち選んでもハズレ的な
運ゲー、向ぃてねーのに……)
嘆息しつつ、我慢できる範囲の『視線』を許容して
情報集めを再開する。何事もなく済むことを祈って。
ご案内:「落第街」から黛 薫さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に角鹿建悟さんが現れました。
■角鹿建悟 > 学生街や異邦人街、商店街に歓楽街など、修理や修繕の依頼は途切れる事が無い。
それはこの落第街でも同じ事で、最近は少しずつだが依頼も増え始めている。
「……さて。」
落第街の大通りの一角。とある建物の修理修繕を終えれば、一息零す。幾ばくかの汗が頬や体を伝う。
今日の依頼はこれで最後だ――流石に疲れたので一息ついてもいいだろう。
「………?」
何気なく、無表情と銀の双眸を大通りの往来へと向ける。
人の流れにおかしな所は無い。誰かに見られている訳でも無い。
…ただ、何処となく肌がひりつくような嫌な感覚がある。
きな臭い、と言って良いのかは分からないが。
相変わらず、直す事に彼は自身を注いでいる――故に、情報については少々疎い。
何か騒がしくなっているのは理解していても、それが何なのかは分かっていない。
(…少なくとも、碌な事にはならなそうではあるが。)
そうなると、暫くはこちらに仕事で出向くのは控えた方がいいだろうか?
軽く額に浮いた汗を拭い落としながら、暫く往来を眺めながら考えに耽る。
(――論外だな。賢明な判断が出来ているなら、こんな誰から見ても無駄な事はしちゃいない。)
結論は割と直ぐに出た。――例え、ここが戦場になろうと彼のやる事は一つも変わらない。
■角鹿建悟 > 自身に人を含めた生物は治せない――直せるものは物だけだ。
そして、死んだ者は物として認識され自身の異能で修復が出来る。
…だが、蘇る事は決して無い。ただ損傷の無い死体が佇むだけなのだ。
不意に、とある母娘と白い少女の事が思い浮かぶが、緩く頭を振って。
もう、あんな思いはしたくないがそんなものはこの街の何処でも起こっている事だ。
「……何時になったら――」
俺は誰かを助けられた、と胸を張って言えるのだろう?
本当は、物を直すよりも人を治す力の方が欲しかった。
だけど、自分が持つ力はこれだから、間接的でも誰かを救えればいいと。
そう、思って毎日毎日地味にコツコツ――一挫折も経験して、それでも無様に中途半端に立ち上がって。
「――いっそ、全部ぶっ壊れてしまえばいいと…。」
ふと己の口から出た言葉に僅かに眉を潜める。
壊すのは簡単だ――だけど、そっちに逃げたくは無い。
そっちに逃げてしまえば、それはもう自分ではない。
角鹿建悟という皮を被ったただのクソ野郎だ。
■角鹿建悟 > 「……駄目だな。」
後ろ向きになってもしょうがない。
矢張り完全には立ち直れていないのか、ふとマイナス思考が時々顔を覗かせる。
自分に出来る事は何かを直す事だけ。ただ、物を、街を直し続けるだけだ。
工具箱に一通りの工具を仕舞えば、改めて修繕した建物を見上げる。
流石に大部分は能力で直したが細かい場所は手作業だ。
こういう時、とっくに出奔した実家の技巧が役に立ったと思う。
暫くそうして出来栄えを確認していれば、依頼人の初老の男が声を掛けてくる。
そちらに軽く会釈を一度してから、修繕した建物を示して。
『成程、噂に違わぬ出来栄えですね…流石、『直し屋』と呼ばれるだけの事はある。』
『…ですが、わざわざこの街の建物を直そうとする貴方は本当に変わり者ですね。』
壊れる事が日常茶飯事で、直す事を目的としてこの街を歩き回る馬鹿はまぁ、そんなに居ないだろう。
依頼人の言葉に曖昧に相槌を打って合わせつつ、多少の謝礼は受け取るが小額だ。
その様子に依頼人は苦笑を浮かべて。『そして噂通り、金銭への執着が少ないようで。』と。
「……仕事でやってますが、別に金銭の為という訳では無いので。」
生活委員会の仕事とは違う。こっちの仕事はあくまで個人でやっている事だ。
身も蓋も無い言い方をしてしまえば趣味や道楽になるのだろう、おそらくは。
依頼人と別れて歩き出せば、矢張り街のざわつきめいたものを感じるのか、時々足を止めて往来を窺う。
「……調べてみようにも、情報には疎いからな…。」