2021/12/02 のログ
ご案内:「落第街大通り」に桃田舞子さんが現れました。
桃田舞子 >  
昼間。
……今も人通りが多く、雑然とした落第街の大通り。
ここにダスクスレイが現れたわけで。
日中、奴はほとんど活動しない。

         ・・・
それでも……私には歓楽街の家屋崩落事故、その検分という仕事がある。
落第街に来たのは初めてだけど。
随分と私が見てきた常世とは違う姿をしている。

周囲を見渡しながら、ダスクスレイが“斬った”家屋を調べる。

桃田舞子 >  
鋭利な刃物で家屋の下部を斬り飛ばした。
そうとしか形容しきれない切断面。

鉄の支柱まで一刀両断。
試しに支柱の断面にボールペンを近づけたら、スパッと切れた。
つまりは、そういうことなんだろう。

昨日の夜、ダスクスレイは何者かと戦い。
質量攻撃のためだけに家屋を一軒、斬った。

こんなに人が多い通りで? 狂っている…

桃田舞子 >  
いやに喉が渇く。
理由はわかる。視線が冷たいから。
見たことのない風紀委員である私を過激派とでも思っているのか。
理由が因数分解できても……平々凡々と生きてきた私は、こういう視線に不慣れだ。

今日だって強行偵察や切った張ったの大捕物じゃない。
異能犯罪者のやったことを調べ、上層部と生活委員会の人に報告する。
それだけなのに。

……あっちゃんは。こういうの、慣れてたのかな。
あっちゃん、死ぬ気はないって言ってた。
だから……どんな状況でも生き残るつもりでいたんだ。

私もだ。こんな簡単なおつかいで死んだ気になるのは早い。

桃田舞子 >  
一方でこっち。
理解不能。倒れてきた家屋が球形に抉れている。
抉れている、というのもなんか違う気がする。
鋭利な切断面。拒絶した……ううん。

斬った、かな。

どうやったら球形にモノが斬れるのか。
かの悪名高き剣鬼、東郷月新の仕業だろうか。
わからない。ただ一つ。

これで斬られたら為す術もない。
自分が球形に切り取られる姿をリアルに想像して気分が悪くなる。
調書にあるのは、その場に居合わせたのは長い紫銀の髪の女性。
……女性剣士? 異能者? わからない。

わかるのは、ダスクスレイとやり合うスゴウデということ。

桃田舞子 >  
紫銀の髪……すごく目立つ。
異能に覚醒したヒトは時々、眼や髪の色が変わることがある。
その類なら、異能者。

もし、染めているのなら。
この落第街で目立つ格好をわざわざしている女性ということになる。
その上で高度な戦闘能力を秘めているのなら。
目的は戦闘そのもの……?

思考をメモにまとめようとして。
さっきボールペンは斬れたことを思い出す。
まぁ、考えながら頭の中でまとめよう。

ダスクスレイと、紫銀の髪の女性は。
ここで戦った。
痕跡を見て、チョークで線を線を結ぶ。

……随分と距離が遠い。
これが剣客の戦闘距離(キル・ゾーン)だというのならゾッとする。

桃田舞子 >  
私がどちらかと戦ったとして。
もって4秒。
異能をフル活用できたとして、12秒かな……
でも、そんな仮定を怖がっていて。

守れる風紀なんてない。

気合を入れ直して、とにかく効率よく検分をした。
後から合流した人たちにも、自分なりの考えを説明して。
これを直す生活委員会の『直し屋』の人たちは大変だろうな。

そんなことを、ぼんやりとした空を見ながら考えていた。

ご案内:「落第街大通り」から桃田舞子さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に角鹿建悟さんが現れました。
角鹿建悟 > 「――で、これを直して欲しい…と。」

風紀委員会経由で連絡を受け、生活委員会の一員として、そして元・修繕部隊の一員で今は個人の『直し屋』として。
連絡を受けて、何時もの作業着に工具箱を携えて現場へと足を運んでその有様を確認する。

(…このくらいなら、十数秒…ついでだから、その周辺も纏めて直すとすれば、3分弱…)

頭の中で、己の能力による修繕の時間をザッと計算しながら工具箱を足元に置いて。
流石に、この有様だと能力をメインとした修繕を行うしかないだろう。

最近、”表向き”は無茶が減ったと上が判断したのか、手首に巻かれていた異能抑制装置はもう外されている。
お陰で、万全の状態で能力を使えるようにはなったが、なまじ抑制していた反動か…困った事も実はある。

(…抑制していたのに、解放されたら前より能力の精度が向上しているのはどういう事なんだろうな。)

勿論、ノーリスクではない。能力を使う時間、範囲によって相応の負荷は相変わらずだ。…無茶をして倒れる訳にもいかない。

角鹿建悟 > 「――始めるか。」

検分は済んだ。徐にその場に片膝を付けば、右手は地面へと触れさせる。…集中――更に集中。

(――構築設定…完了(クリア)。範囲指定…完了(クリア)。誤差予測…完了(クリア)。)

青年の右手と背後に、それぞれ大きさは異なるがホログラムのように時計盤が浮かび上がる。
その時計の針が逆しまに刻み始めて――

「――ここを基点に半径50メートル圏内の一定以上損壊のある”全建造物”対象。時間指定は200秒ジャスト。

―――回れ、戻れ、――逆巻け。」

瞬間、時計盤の針の動きが加速――同時に、指定した条件・範囲に合致する全ての建造物が修復されていく。
――ただの修復ではない。まるで時間を巻き戻すかのように…壊れる以前の状態へと復元を始めて。

(……30秒経過…今の所は誤差無し。……速度はこのまま一定。不測の事態も備えておく。)

今度は左手を地面に付いた。そちらの手の甲辺りにもホログラムのような時計盤が浮かび上がるが、針が動かない。
こちらはいざ、トラブルが生じた場合の代替、または保険。メインを補助するサブプログラムのようなものだ。

角鹿建悟 > 「――60秒経過…誤差コンマ4秒……もうちょっと精度を詰めないと駄目だな…。」

能力を発動しながら、ブツブツと小さく独り言を漏らしてリアルタイムで能力の発動状況を精査。
直す事に昔は――或いは今も、狂気的な執念を持つ男からすれば、コンマの誤差も納得出来ない。
直す以上は元の形へと、きっちり直してこその修繕だ。半端な仕事をする気は無い。

「90秒――誤差コンマ2秒……もうちょっと詰めるか。」

左手に浮かび上がった時計盤の針が少しだけ動き始める。コンマ2秒の誤差を微調整……同時作業は少しきつい。

「120秒――誤差0秒――…このまま行けるか。」

左右の手の甲と背中から3つの時計盤を浮かび上がらせながら修復を続ける。
遠巻きに眺めている人も居れば、興味無しに通り過ぎる人も居る。

だが、青年はそんな周りに目を向けていない。ただ、ひたすら直す事に全力集中だ。

「180秒――……ッ…!」

少し眩暈がしたが、唇を思い切り噛んで集中は無理矢理維持する。
残り20秒、最後まできっちりとやり通す。……その根性だけは誰にも負けるつもりはない。

角鹿建悟 > 「200秒――修復完了。…停止(フリーズ)」

きっかり修復を開始してから200秒。件の無残に破壊された建造物を含めて半径50メートル圏内の修復終了。
同時に能力を解除。両手と背中に浮かび上がっていた機械仕掛けの時計盤が霞むように消えていく。

…流石に、少し疲労が見えているが額の浮いた汗を無造作に拭って立ち上がる。
ぽたり、と地面に垂れ落ちる一滴の赤い斑点。…血?唇から鉄の味がする。

(…あぁ、そうか。集中を切らさないように唇を噛んでたのか。)

確か、一度眩暈がしたからその時だろう。僅か数十秒前の事だが、修復に全神経と意識を傾けていたので記憶が曖昧だ。

「……こちら生活委員会の角鹿…例の現場及び半径50メートル圏内の建造物の修復完了しました。」

『報告ご苦労様。相変わらず仕事が早いね『直し屋』さん。この後はそのまま直帰していいからねー。』

「…了解。報告書その他は後日提出します。それではお疲れ様でした。」

無線で生活委員会、及び風紀委員会へと修復完了の旨を簡潔に伝えておく。これで仕事は終わりだ。

「―――…疲れた。」

ぽそり、と漏らした言葉は以前は漏らさなかった本音だ。
それだけでも、”挫折する前”よりは幾らかマシにはなったのだろう。

そのまま、傍らの工具箱を片手に立ち上が――ろうとしてコケた。…思ったより疲労感が凄かった。
まだまだ、自分の体の限界点を完全には把握し切れていないらしい。これは反省点だな、と内心で呟く。

角鹿建悟 > 流石に、このまま寝転がっている訳にもいかないので緩慢な動作で身を起こして。
軽く、衣服を払って土埃を落としつつ、工具箱を改めて片手に持ちながらゆっくりと立ち上がる。

「……体が重い…な。」

今終えた仕事もそうだが、その前に10件ほど仕事をこなしてきたのでハードワークである。
しかも、本人が仕事をきっちりしないと気がすまない性分なので、無自覚の精神的負荷もある。

ちょっと、このまま直ぐには歩けそうにもないと悟ったか、今しがた修復した建造物の壁に背中を預けて。

「……もうちょっと体力を付けるべきか…。」

それ以前にハードワークを抑えろ、という話なのだがこれでも以前よりはマシになっているのが現実だ。
ある程度、疲労感と眩暈が落ち着くまではそのままぼんやりと落第街の往来を眺めており。

(…能力自体は以前より少し強まっているが、相応に負荷も増しているのは…まぁ、当然のリスクか。)

ただ、修復するだけでなく訓練でもうちょっと突き詰めた方がいいかもしれない。能力の効率化というべきか。
自身の身近に同系統の能力者が殆ど居ないので、こういう時に相談相手が居ないのはちょっと厳しい。
正確には、修復系能力者は一定数居るけれど、自分のような巻き戻しタイプが割合珍しいかもしれない、というくらいだが。