2021/12/16 のログ
角鹿建悟 > 矢張り、立て続けに異能を使うと体力と気力の消耗がそれなりに激しくなる。
若干、歩いていて立ち眩みを起こしそうになるがグッ、と堪えて持ち直し。

「……やっぱり、出来る限り付与魔術を早めに覚えないとな。」

気力、体力の消耗の回復については魔術でフォローする算段はあるが、まだ時間が掛かる。
その回復の前提手段となる付与魔術を現在、地道に勉強している所だ。

「……しかし、相変わらず直す物には事欠かないな…。」

直しても直してもキリが無い――が、それは最初から分かっていた事だ。
【落第街を直す】――前に約束したそれをきっちり守り抜く為に自分は表裏問わず直す仕事をしている。

「……俺はちゃんと『約束』を守れているんだろうか?」

時々、ふとそんな懸念や不安が過ぎる。自分なりに不器用ながら頑張っているつもりだ。
けれど、覚悟はしていたが矢張り自分は無力ではないのか?と、時々無性にそんな思いに駆られる事がある。

――緩く頭を振ってそんな思いを振り払う。違う…無駄ではない、決して。
仮に無駄だとしても、もう心折れて立ち止まるのは二度と御免だ。

「……やっぱり今日の仕事は一度切り上げるべきか。」

以前ならまだ無茶をしていたろうが、この青年も多少は成長している。
疲労具合から考えて、今日は先の店舗の修繕で打ち止めと判断する。

角鹿建悟 > ――あの白い少女は元気にしているだろうか?

そんな事をふと思い出すのは、その交わした約束と――何時かの母娘の事。
母親は亡くなり娘は生き残った。あの娘は白い少女が預かってくれたから大丈夫だとは思いたい。

「――あの時、俺は殆ど何も出来なかった。」

死んだ人間を蘇らせるなんて事は出来ない。
物は直せても人は治せない――ただ、現実として死体となった母親の『修復』をしただけ。

根本にある誰かを救いたいという願いは――まだ、遥かに遠い道先だろう。

「……やっぱり疲れているのかもしれない。」

頭が上手く働いていないのだろうか。集中を要する異能だから、知らず脳も酷使しているのかもしれない。
立ち眩みはもう治まりはしたが、倦怠感を抱えながら落第街をゆっくりと歩く。

見渡せば、先の『戦争』の爪痕はこの短期間で殆ど外見だけは癒えつつある。
自分も手伝いはしたが、人の逞しさというものをしみじみと感じてしまう。

角鹿建悟 > 取り敢えず、今夜の所は切り上げてさっさと休もう。
そのまま、ゆっくりとした足取りで落第街を後にするだろう。

ご案内:「落第街大通り」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「落第街大通り」に紅龍さんが現れました。
紅龍 >  
【前回までの紅龍おじさん!】

 違反部活『蟠桃会』の用心棒、元軍人の紅龍は。
 『斬奪怪盗ダスクスレイ』の情報を集めるために探偵の『ノア』に仕事を依頼する。
 そんな探偵からの情報を得て、『怪盗』との遭遇に備えるため、風紀委員『芥子風菖蒲』が行った戦闘を分析していた。

 そうした日々の中、当たり前の『日常』として仕事を行う龍。
 しかし『闘争の種』の『実験体』を処理する最中を、『マヤ』に目撃されてしまう。
 彼女を殺す事を即断できなかった龍は、『マヤ』を協力者に仕立てる事で、殺さなくて済む方法を選んだ。

『あなたは正しい事をした』

 彼女の言葉は楔のように龍の胸に深く刺さる。
 正しさとはなんなのか。
 その問いかけは、自答するにはあまりに困難な問いだった。

 

紅龍 >  
 ――人間は家畜だ。
 社会という不安定な概念を保つため、生産され消費され続ける、家畜にすぎん。
 どれだけ高尚な理想を掲げようと、どれだけの地位と権力を得ようと、その本質は変わらん。
 世界が変わった今の世の中でも、それは不変の本質だ。

 ならば、その家畜を殺す貴様たちはなんだ。
 家畜を殺す家畜である我々は、畜生にも劣る。
 人殺しはクズだ。
 どんな理由をつけようと、人殺しを行う人間は等しくクズだ。

 だが、我々はただの畜生ではない。
 自分で考え、経験し、理解し、省みる知性がある。
 殺しをクズの行いと心得、恥じる感情がある。
 貴様らは恥知らずか?

 ――そうだ。
 我々は恥知らずの畜生ではない。
 恥を知る家畜だ。

 だからこそ、殺しに理由をつけるべきではない。
 言い訳を用意した殺しなど、恥にクソを塗りたくる所業だ。

 命令で殺すな。
 理性で殺すな。
 惰性で殺すな。

 殺しは必ず、情で殺せ。
 どんな殺しであっても、貴様らの感情で、貴様らの意思で殺せ。
 信義のない殺しなど、もはや畜生ですらないと恥じろ。

 いいか忘れるな。
 いついかなる時であっても。

 ――最後の引き金は自分の意思で引け。

 

紅龍 >  
 ――懐かしい言葉を思い出した。

 オレがまだガキの頃、オレを部下として拾ってくれた中佐の言葉だ。
 他に生きる術がなく軍に入るしかなかったオレを、中佐は自分の部隊に入れ、鍛え上げてくれた。

 もう二十年の前の話だ。
 中佐、オレもあの時のあんたと同じ歳になっちまったよ。

「――ふぅー、時間が経つのは早えなぁ」

 大通りの屋台で椅子に座り、ダラダラと『タバコ』をふかす。
 眺める喧騒はいつもと変わらない。
 その辺で喧嘩があれば、向こうでは盗みがある。
 たいそう治安の悪い、この街の『日常』風景だ。
 

紅龍 >  
「平和なもんだ」

 そんな『日常』を眺めながら、網膜には繰り返し映像を流している。
 『斬奪怪盗ダスクスレイ』と『芥子風菖蒲』が戦闘した際の映像だ。
 なにはなくとも、情報は欲しい。
 生き残る可能性が上がるなら、なんだって構わないんだが。

 ――かち合ってるな。

 『怪盗』の刀と『芥子風』の刀がぶつかっている。
 そう、ぶつかり合って、『斬られていない』のだ。
 それが単純に日本刀の強度なのか、刀に何らかの超常が宿っているのかまでは定かじゃないが。
 少なくとも、『怪盗』の刀も、あらゆるものを切断する、というほどのでたらめさではないらしい。
 となると、気になるのは『芥子風』の刀だ。
 それが普通の刀であるなら、いくらでも対策のしようがある。
 どころか、今の装備でもどうにでも、やりようがある。

「刀には詳しくねえんだよな――■■に聞いてみるか?」

 あいつなら、オレよりは多少詳しいだろう。
 とはいえ、日本刀にまで詳しいかは知らねえが。

「しかし、ある程度の目安にはなるか」

 とりあえず、徹底的に防刃装備で固めておけば間違いはないだろう。
 問題はどこから仕入れるかだが。
 ここは素直に雇い主どものツテをたどるか。

「――平和だねえ」

 今日はとりあえず急ぎの仕事もない。
 屋台の椅子に腰かけて、通りの喧騒を眺めていた。
 

ご案内:「落第街大通り」にノアさんが現れました。
ノア >  
「――平和なもんかよ」

吐き捨てるように、長身の後ろに投げかける。
その背を見かけたのは路地裏の陰、噂にもならない小さな焦げ跡を調べた帰りだった。

「よう、おっさん。元気してんね」

この街に"人"はいない。いない事になっている。
悼む者もいない誰かの死を、誰も知る事なく風がかき消していく。

「この子さ、知ってる?」

一枚の写真を手に問い掛ける。
カメラに映った生気を失ったような女性の姿。
人形のように不可解な歩き方をした、ヒトのナレハテのような物。
目の前の彼は、見覚えがあるという事を確信して突きつける。

とぼけるか、はたまた消しに来るか。五分五分と言ったところだろうか。
それでも――いなかった事になどさせるものか。

紅龍 >  
「平和だろうよ、いつも通りじゃねえか」

 探偵が近づいてきたが、別段態度を変えることもない。。
 知ってるかと差し出された写真はを一瞥し、椅子の背もたれにもたれて、香草の煙を吐き出した。

「知らん。
 なんだ、迷子探しの仕事か?」

 もちろん知っている娘だ。
 雇い主どもの実験台にされた、犠牲者だ。
 今はどこぞの無縁墓地にでも埋葬されている。
 

ノア > 「そうだな、いつも通りだ――気に食わねぇことにな」

 許可を得るでも無く勝手に隣に腰かけると店主に向かって適当に注文を飛ばす。

「まぁ似たようなもん。
ただまぁ、そっちは物のついでだ。

……花ァ育てる趣味があるとは意外だったよ、准佐さん?」

人探しの依頼については、先ほど前金ごと丸っと返金してきたところだ。
灰は見つけたなどと言ったところで慰めにもならない。
探偵からの調査断念という回答が、この街に於いての一つの真理だった。
この件にはカカワルナ。
そんな依頼者に対して毒にも薬にもならないメッセージ。

「芥子風菖蒲の映像、役に立ちそうかい?」

それでも
この男と、その背後にある物に依頼者を巻き込む事の方が危険だと判断しての事だった。

紅龍 >  
「おじさんは意外と多趣味なんだよ。
 でもまあ、花は特別に嫌いじゃねえな」

 見て見ぬふりが出来るほど、麻痺しちゃいねえか。
 それでも勇み足を踏むほど馬鹿でもねえ。
 とはいえ、昨日の事を見ていたとなりゃ、それだけで十分危ない橋だが。

「まあな。
 とりあえず、あの『怪盗』の刀も全能じゃねえ。
 斬れないもんもあるってこたぁわかった。
 今知りてえのは、この坊主の刀がどんなもんか、ってとこだな」

 とはいえそれも、知れたらいいという程度のもんだ。
 刀自体が凡庸なものでも、持ち主の能力で強化されたって可能性もあり得る。
 魔術を使っていないとも言えない。
 その辺は映像だけじゃオレにはわからんところだった。
 

ノア >  
「そうかよ、可愛い趣味してんね」

料理よりも先に出された酒を徳利から猪口に映して一息にあおる。
辛く熱い酒気に喉が焼けるような錯覚を感じるが酔いが回るような事も無い。
これくらいが調度良いくらいに、心は冷え切っているのだから。

「怪盗にも斬れねぇモンもあるってのは確かだけど、
 耐性の類でどうにかなるもんじゃなさそうだからな。
 鎖帷子の類やらケブラー素材なんかも無意味だろうさ」

ツンツン頭の風紀委員――芥子風菖蒲の場合、
最終的に折れたとは言え斬られなかったのは本人の異能と刀の性能もあってか。
ただ確証こそ無いが、彼の見せた最後の一刀を見る限りそれだけという事は無さそうだ。

「ところでおっさんさ、なんであんなイカレポンチ達の御守りなんざやってんだ」

紅龍 >  
「そうだよ?
 花の知識はモテるぜ」

 くっくっく、と忍び笑い。
 実際、それなりに話のネタにはなる。
 どうやらこの探偵は、面白くなさそうだがな。

「となりゃ、超常素材を仕入れるか、魔術の類でも付与してもらうか。
 タングステンと劣化ウランの複層装甲でもダメなら、地球上の自然物質で切れねえもんは存在しねえだろうな」

 となれば、あとは異界の物質か、魔術の力が必要になる。
 やっぱ雇い主に調達させるか。

「――んぁ?
 さて、なんのことやら見当がつかねえが」

 この探偵、キレてやがんな。
 ま、人道的にみりゃ、許せるもんでもねえだろうが。

「用心棒が依頼主の御守りをすんのは、別に不思議でもなんでもねえだろ」
 
 

ノア >  
「防げる前提で挑むもんじゃねぇさ、あんなもん。
 機動性上げる方がよっぽど得策な気はしてっけど、アンタもそっちは限界か」

軍事機密の人工筋肉スーツ、それで人外じみた機動性を確保しているが故の生存だったであろうと推測はできる。
何かしらを追加する事はできるかもしれないが、ヒトの肉体がそれ以上に耐えられるのかという疑念も出る。
なにせ、人工筋肉スーツなどろくに具体的な負荷数値など表に出てくるものでは無い。

「アンタの雇い主が人の命も何でも、毛ほどの感傷も無く使いつぶす連中だったってのが癪だってんだよ」

少女の死や花の事に関しては、異能でその場で起こった事を辿ったに過ぎない。
明確な視覚情報ではなく、おおまかなイメージで伝え聞いたような不明瞭さ。
それでもあの場に居合わせた藤白真夜を、この男は生かして帰している。

「見りゃ分かんだよ。
アンタは人殺せっけどあいつらと違って腐っちゃいねぇ」

――違うかよ。
ほとんど一人ごとのように、最後は酒をあおる手が言葉を潰していた。

紅龍 >  
「無理無理、凡人に出来るのはこのあたりが限界だ。
 当然、技術的には余地があるが、そんなもん使える人間がいねえよ」

 それを使いこなすようなヤツは、凡人じゃねえ。
 このスーツだって、人間が扱えるギリギリの代物だ。
 はじめて実践投入した時にゃ、全身の筋肉も骨も悲鳴を上げて一ヶ月近く寝込まされたからな。

 ――しかし、やっぱそこか。

「――人殺しはクズだ。
 そこに上も下もねえ。
 喩え、どんな理由があったとしてもな」