2022/02/15 のログ
ご案内:「落第街大通り 商店街」に萌良 さだめさんが現れました。
■萌良 さだめ > 落第街は無法地帯だと言われるが、売り物だって例外ではない。
すなわち、合法的に所有を許されない禁書の類であるとか、リスクが強すぎるマジックアイテム、
違法改造された機械部品…学生街を正規の商店街とするならば、ここはブラックマーケットだ。
道路の中心を挟むようにずらりと並んだ露天に、ゆっくりと視線を向けながら歩く。
探しているのは魔術に関する指南書、そして魔術書だ。
中には自分の顔を見て慄く相手もいるが、腕章をつけていない腕を無言で指し示す。
「ガサ入れでもないんだ。 素直にほしいものを売ってくれりゃあいいよ。ところで、例のやつはどうだ?」
…なにかわかったら教えてくれ。 そっちで仕入れてくれてもいい。」
首を横に振る相手に頷いてから、露天を後にする。
自分が探し求めているのは、異世界への転移術だ。
いわゆる<次元移動>の魔術は、魔術に習熟した教師たちが集まっている学園ですら発明出来ていない。
偶然『穴』が生まれることがあっても、人為的に作成することはできない。
とはいえ、研究されてきた痕跡や蓄積されたデータぐらいはあるはずだ。
魔術関連を扱う露店に顔を出しては、確認して、首を横に振られる。
何十回、何百回やったかわからない繰り返しだが、諦めるつもりはなかった。
ご案内:「落第街大通り 商店街」に清水千里さんが現れました。
■清水千里 >
ブラック・マーケットの売り物は禁書やアーティファクトの類だけではない。
清水が求めていたのはそのもう一方のほう――情報だ。
違反部活や違反組織が活動するとき、金が流れ、モノが動くのは必然の理。
いかに隠匿しようと試みても、公安委員会や風紀委員会の厳重な監視の中では、
正々堂々表ルートから入っていくのは困難だ。
清水たちはこの地域に一種の情報網を構築している。
それは公的なものもあれば非公的なものもあり、
時には”公的ながら機密”の場合もある。
今日彼女が探していたのは、魔術考古学の講師が手を染めていた犯罪の具体的物証である。
「――それで、だが。
もしかしたらすでに島内を出てしまっているかもしれないな。
通関局が見逃したとは思いたくないが、なにせ本物じゃないから。
……ああ、ニセモノでも十分危険だものな。
どうもムジャーヒディーンが関わっているらしい、面倒だな。ISI絡みかもしれん。
それじゃあ、またあとで」
そう言って、電話を切る。
ふと、露店で魔術書を探している少女を目撃する。
こんなところで求めるなんていうのは、よっぽど手に入りにくいものを探しているに違いない。
不老不死、生命蘇生、因果律改変、時間跳躍。まあ、そんなところか。
少し気になって、声をかけてみる。
「もしもし、そこのお嬢さん。何かお探しか?」
■萌良 さだめ > 商品のチェックを続ける。 魔術書を見つけるたびに丁寧に確認するも、
次元移動の魔術など出てくるわけもなく、ただの初歩的な魔術…ならまだマシなほう。
魔法にもなっていないデタラメな記述のなにかなどばかりだ。
今日も外れかと諦めかけていたその時に、聞こえて着たのは自分を指していると思わしき声。
「……?」
顔をあげ、一応自分を指差して確認。 周囲にお嬢さんらしい人影はない。
自分のことで間違いはないだろう。
男らしいつもりもないが、面と向かって”お嬢さん”と言われると、ちょっとだけ気恥ずかしかった。
「この辺に詳しそうだね。 俺は次元移動に関する魔術の手がかりを探してる…。
研究資料や情報の断片でもいいんだけどね…。 まあ、なかなか見つかるものでもないよ。」
肩をすくめて見せる。 そこまで言ったところで、忘れていたとばかりに頭を下げた。
「萌良(もいら) さだめだ。よろしく。」
男とも女ともつかぬ、幼い容姿。相手が間違えるのもおかしい話ではない。
極めて平然とした態度で、相手に名前を名乗った。
■清水千里 >
「萌良さだめ……モイラと呼ばせてもらっても?
それとああ、すまない、とんだ失礼をしてしまったようだ、彼の方」
と、彼の性別を間違えた非礼を詫びて。
「次元移動? それはまた、妙なものを探しているものだな?」
と、苦笑いをして。
「ここに詳しいかどうかは分からないが。
知っての通り、ここに出回るほとんどはジャンクか、詐欺か、
そうでなければ人の手には負えない危険物ばかりだよ。
いや、それ以外ないと言ってもいいかもしれないな。
そういう魔術資料を探すなら禁書庫の立ち入り許可を得るか、
あるいは瀛洲の古書店街を漁ったほうがいいと思うがね」
次元移動。まあ、知らないわけではない。
だが、そのことを彼に知らせる価値も意味もない。
「私は清水千里だ。なんと呼んでもらってもかまわないよ。
一応、図書委員をしている。いつもは庁舎のほうにいるがね」
そう言って、自然な笑顔とと判別しがたい、いつもの営業スマイルを浮かべる。
■萌良 さだめ > 「構わないよ。 名字でも名前でも。
覚えてくれるならどっちでも大歓迎だ。
この姿なのもちょっと色々あってね、混乱させてすまんね。」
相手の言葉に落ち着いた調子で答えたあと、少しだけ頭を下げる。
妖精の血が混じっている上に、姉のそれに似た服を着ているのだ。
勘違いされるような見た目をしているのはこちらの問題である。
「妙っていえば妙かもしれないけどね、どうしても研究したくて…。」
腕を組んで唸る。 彼女のいう通り、ここで売っているものは、出自が明らかでないものばかりだ。
偽物ならまだしも、ただの詐欺、もっとひどい場合は、彼女のいうように制御不可能な代物すらある。
「やっぱり禁書庫と古書街だよね~…。 まあ可能性としてね、ここも回ってるってわけでね。」
名前を聞いて、なるほどと頷いて見せた。
「千里…千里か、覚えたよ。 なるほど、図書委員か! 道理で詳しいわけだ。
でも、図書委員がこのへんで何を? 売られた本の回収でもしているのかい?」
彼女の所属に声を上げる。 書籍に詳しいのもうなずける。
しかし、だ。 そんな彼女がなぜここに? 首をかしげて問いかける。
■清水千里 >
「まあ、似たようなものだな」と清水は笑う。
「回収しようとしているのはアーティファクト……といっても、それの贋作さ。
偽造に長けた人間がそれを作って、この落第街に流してしまった。
おそらく贋作であると知ってか知らずか、大金を支払った収集家がいたんだな。
それ自体が別に特段危険というわけではないんだが、まあ――仮にもアーティファクトだ、いろいろ問題があってね」
この程度のことは、話しても問題はない。
落第街ではそのたぐいの詐欺はよくあることだからだ。
問題はその偽造者が図書委員会の顧問教師であるということと、
その”収集家”がどこかの国の諜報機関の息のかかった人間だということだ。
「私はそういうことの”後始末”をする仕事をしているんだよ」
だからこの言葉は、嘘ではない。意図的に事実を隠してはいるが。
「そんなに次元転移の研究に熱中するなんて、何か理由があるのかい?
いや、ただの興味本位でのことなんだ。話したくなければ別にかまわないよ」
■萌良 さだめ > 「アーティファクトの偽物だあ……?」
声が大きくなりそうになったことに気づいて、慌てて口を手で抑えた。
周囲を確認し、誰も興味を持っていないことを確認してから胸を撫で下ろす。
「確かに、アーティファクトはそれってだけで価値があるし…。
実際にオリジナルの機能を再現していなかったり、
もしくは一部再現していたとしても騙し通すには十分だろうし…。
しかし、とんでもない話もあるもんだ…。」
自分で話しながら、確認するように何度かうなずく。
回収なり破壊なりの末路はわからないけれど、彼女がそういった”後始末”をしているのはわかった。
「俺が小さい時に、姉が”穴”に落ちたんだ。
もちろん、今に至るまで見つかってないんだよ。
”穴”を作ったり、維持する術ないと見つける手段もないってわけだ。
まあ、生きているのかどうかもわからないけどね。」
あまり湿っぽくならないように、つとめて明るく振る舞う。
別離となるとどうしても不憫がられてしまうが、これは過去のことであり…。
いうなれば、自分が乗り越えるべき問題なのだ。
「俺からも質問させてくれよ。 アーティファクトの形とかわかってるのか?
俺の方でもなにか情報を仕入れたら千里に教えるよ。」
同じように”探しもの”に難儀している相手だ。 ちょっと優しくしたくもなる。
■清水千里 >
「落第街ではよくあることだよ。モイラ。
君もそういうものに金を払うなら気を付けることだ。正規の方法で入手したと思っても、
ブローカーによっては信頼できない場所から買っているケースもある。
そういうものは機能しないだけならまだいいが、有害なほうに働くこともあるからね。
――まあ、そういう時は専門的知識を持った図書委員に鑑定を任せることをお任せするよ」
私のようなね、と笑って。
「それで――そうか、なるほど。それは、君たち二人にとっては大変なことだったな。
大丈夫、君の姉は生きているさ。それに、会える方法もいつか見つかる。
少なくとも私はそう信じるよ」
とはいえ、次元移動に関する知識を提供するわけにはいかない。
それはあまりに過ぎた知識なのだ。
自分にできることは、彼の心を慰めることぐらいしかできない。
「君が出会ったばかりの私のを心配してくれるのはとてもうれしいのだが、多分、知る必要はないと思う。
いや、君の協力が別に邪魔だというわけではないんだよ。それは十分に感謝している。
しかし、どうも面倒な連中が関わっているらしくてな。この件において私は君の安全を保障できない」
相手の正体の全容が分からない以上、迂闊に手を広げるのは危険だ、そういう判断だった。
■萌良 さだめ > 「プロフェッショナルに言われちゃあどうにもならんな…。
俺だって魔術書には知識はあるつもりだけど、あくまでも魔術に関してだ。
書物そのものの真贋まできちんとわかるわけじゃないしね…。
図書委員を頼らせてもらうか、もしくは……禁書庫にこっそり入るかにしておくよ。」
相手の笑顔に笑顔で返す。
自分の家族について悼むような言葉を受けると、力強く頷いた。
「俺もそう思ってる。 こういうのは、なんか…あるんだよ。 姉弟のリンクみたいなやつがさ。
あやふやな感覚的なもので、証拠もなんもないけどね。 まあ、気長に探すよ。」
妖精と人間のハーフである自分、そして姉は寿命も人間とは異なるはずだ。
きっとなんとかなる。どこか確信にみちた感じの答えを返した。
「ええ…そのレベルのやつなのか? その話を聞いた後じゃ、『それでも手伝うよ!』とは言えないな…。
千里も気をつけて行動するんだぞ。 なんかあってからじゃコトだしな。」
協力についてやんわりと不要だと返されると、心配だと言わんばかりの表情で答えた。
アーティファクトはそうでもなくても、それを嗅ぎつけた連中が厄介だという話なのだろう。
それなら、彼女のいうように自分が変にちょっかいを出すべきではないのだ。
■清水千里 >
「魔術の知識か、そういえばモイラ、君はどこかの委員会に所属してるのか?
そういう人間は放っては置かれないだろう。どこも人材不足だからな」
と、ここで彼に話を振る。
別に他意はなく、自分のことばかり喋りすぎたな、と感じたからだ。
「その意気だよ、モイラ。なにせ世界は広い。
お姉さんが迷い込んだ次元がどこなのか分からないために途方に暮れることもあるかもしれないが、
同時にその広さはその次元を見つける手助けもしてくれるはずさ。それだけ使えるもの、知り得ることが多いってことでもあるからな」
と、彼の確信的な言葉を後押しするように、彼を励ます。
「そうだな、それがいい。気持ちだけありがたく受け取っておくよ。
もちろん私も気を付けて行動するが、モイラ、君も危険を感じたらすぐに逃げることだ。
……まあ、禁書庫に忍び込んだり、落第街で魔術資料を漁ってる君に言うのもなんだとは思うがね?」
■萌良 さだめ > 「うん。 公安の魔術専門セクションだ。 魔術絡みのことならいつでも相談してくれ。
今の千里の話からして、そのヤマは公安にも影響するだろうし。」
どうにもきな臭い話となると、やはり風紀より公安のほうが強いだろう。
自分の所属部署について明かして、小さくうなずきかける。
もちろん、個人単体では手伝うべきではないが、組織犯罪ともなれば
話は別ということだ。
「なんとかなる…なんとかなるよ。たぶんね。 ありがとう、千里。
でもさ~~~、そのためにあるかないかもわからん次元移動に
関する資料を集めるのは、骨が折れるんだよな~~~…。」
相手の励ましににっこりと笑いながら、わざとらしくがっくりと肩を落とした。
禁書であろうが古書街であろうが、巡っていても未だに有用な資料に出会えない。
もちろん、落第街でも。 なかなかにレアなものだと理解はしていはいるのだ。
「自分の身を守るぐらいなら得意でね。 ”撃退する”なんて大それたことを考えなければ、
概ねうまくやってみせるさ。 お互い気をつけよう。」
彼女の言葉に真面目に返事してから、そっと自分のコートのポケットに触れる。
すぐに使えるマジックアイテムは常備している。 彼女のいうように、逃げる準備は大丈夫だ。
「よし、じゃあそろそろ今日は引き上げるかな…。 露天も成果がないみたいだし。」
あたりを見回してから、わざとらしくため息を一つ。 盗品であろうが偽造品であろうが、
少なくても有効な資料は今日も見つからなかった。
■清水千里 >
「……なるほど、公安か」
少しだけ表情が硬くなった。
「ああ、何かあれば相談させてもらうよ。君は話が通じる人のようだ。
気を悪くしないでほしいが、公安にはあまりいい思い出がなくてね」
と、苦笑いをした。
「――あるさ。次元移動術は”ある”」
と、少し真剣な表情で。そう信じている、とも違うように見えて、
どこか説得力さえ感じるかもしれない。
「……いや、詳しくは知らないけどね?」
取ってつけたように、そう誤魔化して。
「十分注意しよう、お互いにな。君も何かあったら、オフィスにいつでも来てくれ。
図書委員会本庁舎の6階だよ――不在の時は、書置きでもしておいてくれれば、後で連絡しよう」
■萌良 さだめ > 「そんな顔しないでくれよ。 確かに、うちは公安の下にあるけど…。
ほら、魔術やる連中って秘密主義だろ。 親組織の公安と平気で揉めたりするんだ。
公安にいい思い出がないってなると…まあ個人的に信頼してもらうしかないな!」
ワハハ、と元気よく笑い返す。
「…なんだかそれだけ自信ありげに言われると、
近いうちに技術が確立されるんじゃないかって思うね。」
柔和な表情とは少しだけ違う、真剣な面持ち。
ちょっとだけ驚いた表情になった後、にっこりと笑いかけた。
「本庁舎の6階ね、わかった。 俺のところは……。
俺を探してもらうほうが早いかもしれないな。
魔術関連の授業をやってる教室を探してもらればすぐ見つかるさ。」
戒魔局はその特性上、極めて秘密主義である。
メンバーの本名、その他諸々を自分すら知らないのだ。
「さて、と…。 居場所の確認もできたし! またな、千里!」
元気よく相手に手を振ってから、落第街を後にするのでした。
ご案内:「落第街大通り 商店街」から萌良 さだめさんが去りました。
ご案内:「落第街大通り 商店街」から清水千里さんが去りました。