2022/11/04 のログ
ご案内:「落第街大通り」に狭間在処さんが現れました。
■狭間在処 > 熱狂の祭が通り過ぎても、未だもう片方の賑わい――『破壊者』に関しては沈静は窺えない。
風紀委員だけでなく、公安委員会辺りも既に動いているのだろうか…等と。
全く関係ない自分が余計な考えを巡らせてもしょうがないのだけれど。
(…喋れないと、考え事に耽る時間も多い気がするな…今はそれも解消されてはきたが。)
右肩を定位置として、じっと留まっている三本足が特徴のカラス…の、使い魔。
知己である【大道具】の女に用意して貰ったものだが、かなり役立ってくれている。
何せ、擬似的とはいえ音声会話…スムーズな他者との意思疎通が出来るというのがとても有り難い。
「――まぁ、自分は喋らずに右肩のカラスから声が出る、というのはまだ少し慣れないが。」
その呟きも、彼自身の口からではなく右肩のカラスの嘴が開いて発したものだ。
声のイメージは大まかに今の自分の外見年齢に合わせているが、それが合っているかズレているかは分からない。
(…大体、15年前後も喋れなかったから自分の今の声なんて想像も付かないからな…。)
だから、使い魔のカラスから発せられる声は完全に『イメージ』でしかない。
大通りは、しかし何時もと変わらぬ混沌とした賑わいを見せている…あっちの賑わいは屋台通りの方か。
「……まだ小腹は空いていないな。」
今日はそこまで動いてはいないというのもある。自身の『八つ当たり』の為の情報収集でほぼ引き篭もっていた。
元より単独行動で地味で目立たないとはいえ、ハロウィンのライブと『破壊者』の活動…。
それらを隠れ蓑にして、こちらは黙々と虱潰しだ…どのみち、終わりというものは見えないが。
ご案内:「落第街大通り」にエボルバーさんが現れました。
■エボルバー > >
>対象をスキャン...
>特異性:未検出
>対象をスキャン...
>特異性:未検出
いつも通りの無秩序な賑わいを見せる群衆の中に一つ奇妙な影が。
それは落第街には似つかわしい小綺麗なスーツに身を包んだ男。
一切の乱れ無い姿勢で一定の歩幅を刻みながら、
感情を感じない虚ろな瞳を左右に振って通りすがる人を見る。
その手には有象無象の違反部活が良く使用している旧式の自動小銃。
不相応な格好と物騒な持ち物、不可解な様相は明らかに浮いていた。
>対象をスキャン...
>特異性:検出
ソレの動きが止まったのはある人物とすれ違った時。
右肩に鳥類を乗せた銀髪の男、
ソレは振り返り虚ろな視線を彼に向け...
「こんばんは、青年。」
そして擦れあうような金属音。
右手に持っていた自動小銃の銃口が彼に向けられた。
■狭間在処 > ふと、右肩に留まっていたカラスが一声「カァ」と鳴いた。
何て事は無い鳴き声のように思えるが、それは何処か『警戒』を滲ませたものだ。
それに気付けば、カラスを一瞥しつつも、次いで落ち着いた碧眼の眼差しは前方から歩いてくる人物に向かう。
(―――…ふむ。)
この落第街では少々浮いた小奇麗でパリッとしたスーツ姿。
乱れの無い歩調は何処か機械的にも思えるほどに見事なものである。
何処か無機質な色合いを垣間見せる瞳は、先程から誰かを探しているのか視線を彷徨わせているが…。
(――さて、やり過ごすか仕掛けるか…。)
軽く、カラスの頭を指先でツンツンと三度だけ突いた。
それは合図だ。「飛んで逃げろ」というシンプルな合図。
件のスーツの男が手に持っているのは、旧式の自動小銃…また堂々と持ち歩くものだ。
擦れ違う直前、男を一瞥するが何食わぬ顔で彼と一羽はそのまま男と擦れ違い――
「――ご挨拶だな、俺に何か用でも?」
声は青年の口ではなく、右肩に留まるカラスから発せられて。
しかし、直ぐにそのカラスは男の右肩から飛び上がって安全圏へと退避していく。
こうなると、最早音声会話は不可能だがいきなり銃口を向けてくる輩だ。
(――恨まれる心当たりはそれなりにあるが、あの手の連中が宿った用心棒か殺し屋…でもなさそうだ。)
自動小銃の銃口を向けられても、落ち着いた態度は崩さずに…ただ、いつでも動けるように体ごとそちらへと振り向く。
――得体の知れない不気味な男。未知の存在への対処能力。
この街で長く生き残りたいならば、その手の嗅覚や技能は半ば必須に近い。
ただ、青年から仕掛ける事はせずに一先ずは様子見だ。
カラスも、安全圏に退避はしつつも建物の屋上に留まって二人の様子を窺っており。
■エボルバー > 「この声は、君の意思だろうか?」
人の言葉を喋り、飛び去って行く烏を見て一言漏らす。
あの鳥類はこの男の代弁者という事だろうか。
この銀髪の青年からは特異性が見つかった。
特異性とは、超自然的な力を持つ異常存在から
検出されるようになっている。
異能者、魔術師、あるいは...
「僕は、一つ疑問を持っている。」
貴方に向けた銃口は一切のブレなどなく。
無機質に淡々と口を動かす。
「怪異は音速を超える銃弾を、どう回避するのか。」
無機的な視線が銀髪の青年を貫く。
この青年、銃口を向けられているのにかなり落ち着いている。
姿勢分析から迅速に動ける準備をしているのも確か、
つまり、彼は荒事に慣れている。
学ぶに値する。
ソレは引き金に指をかける。
そして大通りに乾いた銃声が一つ鳴り響く。
一発の7.62mm弾が貴方へ吸い込まれる。
■狭間在処 > カラスと距離が出来た今の状態だと、言葉で応答する事は出来ない。
なので、ただ無言で小さく一つ頷く事で『肯定』の返事を返す。
もっとも、『喋れない』だけでその他、青年の身体機能などに問題は無く。
(…と、言えたらいいんだがそうも行かない。)
かつての『実験』の後遺症で、青年は偏頭痛と貧血が突発的に襲ってくる難儀な体質だ。
今はまだどちらも兆候は見られないが、仮に本格的に交戦状態になった場合は致命的な隙になりかねない。
男のサーチ能力には、この青年の肉体から『人体』と『怪異』の両方を感じ取れるだろう。
もっとも、怪異の気配は微弱なものであり、低級怪異より幾らかマシ、という程度の反応だが。
(――疑問?……いや、そもそも俺が怪異の端くれと一発で見抜いたのか…。)
正確には、怪異の『失敗作』だが、それでも概ねこちらの素性を看破している様子。
無機質なスーツ姿の男は、どうやら何らかの感知手段を備えているのは半ば確定か。
(――音速の弾丸をどう回避する、か)
答えはシンプルだ。彼の銃口の位置を確認しながら、視線は男の指先に向く。
引き金が引かれて弾丸が発射される直前、僅かに淀みの無い動きで左へと一歩ズレるように体を動かす。
…若干目測が甘かったのか、コートの右袖を弾丸が掠めるが…回避した事に違いは無く。
「………。」
一方、男は無造作に右足を振り上げる。何時の間にか、靴先に小石が乗っかっており…
真上に跳ね上げた小石を、そのまま右手で掴んで指で弾いた。指弾、という技巧だ。
音速には届かないが、それでも異様な速度で『射出』された小石は男の眉間を性格に狙い撃っており――
■エボルバー > この怪異、青年の特異性は純正の怪異というより
人間のバイタルサインとそれが共存しているところにあった。
まるでキメラのように組み合わせられた様相は
生まれたというよりも作られたように見える。
その青年は放たれた銃弾に対して何か力を使ったという訳ではなく。
姿勢をずらすことで弾丸を文字通り回避した。
銃弾の軌跡を読み取る鋭さと動じない度胸。
直後に青年から何かが放たれる。
武器は検出されていない。がそれは人体の技で射出されるには異常で...
ソレの眉間に加速された何かが直撃する。ソレは反動でたじろぎ
姿勢を地面に落とし、顔を垂らす。
しかし、ソレは時間を経たずに立ち上がって顔を上げた、
その眉間に小石ほどの穴を開けた状態で。
「興味深い。」
右手に持った自動小銃、残弾残り30発。
引き金を押し込み、残った弾をすべて吐き出すべく
容赦のないフルオート射撃。
■狭間在処 > 青年の体は、あくまで人間の肉体をベースにした『人造怪異』である。
故に、怪異の反応は見られても微弱で肉体的な後遺症など欠陥も多い。
それでも、『失敗作』ながら一定の成果は出ている――先の銃弾の回避もそうだ。
観察眼、動体視力、そこからのカウンター。場慣れもあるが根幹の身体能力は人間離れしている。
もっとも…突発的に襲い来る『後遺症』の問題もあるので、青年としては短時間でケリを着けるか…
(…この男が引いてくれればいいんだが、そう事は上手くは運ばないだろうな。)
まだ兆候は無い…眉間を撃ち抜いた小石は、道端に転がっていた何の変哲も無いものだ。
それで人体に風穴を開けられる速度と勢いを指弾で叶えるのは、矢張り通常の身体能力では不可能。
「………。」
矢張り、この程度の『挨拶返し』は然程意味は無いか。
眉間に穴を開けたまま、平然としている男がさて…人外の類か、別のモノかと。
「……!」
それを考える暇も無く、咄嗟に今度は大きく身を横に飛ばすように。
転がるというより、俊敏な獣が跳びはねる様な動きでフルオートを射撃を回避。
左右ジグザグの軌道は、照準させ辛くする為と、周囲に流れ弾が及ぶのを最小限にする為。
落第街の住人ならば、この手の戦闘は日常茶飯事なので既に周りの住人は退避している。
こうなると、風紀の連中などがうっかり警邏で通り掛からない事を祈りたいが。
「―――!?」
フルオートの最後の一発が、逃げ遅れたのか地面に転んで泣いている少女に飛ぶ。
反射的に右手を突き出すように立ち塞がり、銃弾が右手から青年の体に減り込み――…
「……っ!」
そのまま、右腕を振り抜くようにして弾丸の軌道を少女から逸らしつつ貫通させる。
ちらり、と少女を一瞥すれば怯えたようにこちらと男の方を見ており。
「………。」
ふぅ、と吐息。左手で軽く「早く逃げろ」とジェスチャーをしておく。
少女も理解したのか、よろよろと立ち上がれば、近くの建物の影へと逃げ込んでいく。
それを見届けてからゆっくりとスーツの男へと顔を戻す。
勿論、少女に気を配っている間も男の動きへの警戒は怠ってはいなかったが。
右手の中心から、腕の中を通り二の腕辺りから抜けた銃創。
動かせない程ではないが、流石に少々痛みもあるし動きが鈍い。
青年は弱くは無いが――かといって、飛び抜けて化物のように強くは無い。
少なくとも、肉体面は人間ベースの怪異なのだから、どうしても『本物』より劣る。
■エボルバー > 彼の人間離れした機動力は照準を逸らすに十分なほど、
撃ち尽くし、弾が無くなった小銃をソレは地面へ投げ捨てる。
だが不可解なのがこの青年、奇妙なほど口を開かない。
寡黙である性格の問題で片付くものだろうか。
銃弾を受けたというのに呻き声を上げないのは
生物としてみればいささか異常に思える。
「君が、守る必要は無かった筈だ。」
無関係な子供を、自らが傷を受けながら守るという
青年の行動にソレは疑問を持つ。
群衆が捌け、どこか静けさが漂う大通りに二つの存在。
その間に無機質な言葉が投げ掛けられる。
■狭間在処 > 彼の疑問は最もであろう。だが、青年は単独では喋る事が全く出来ない。
これも『実験』の後遺症なのだが、声帯がぐちゃぐちゃになっており、再生すらしない。
闇医者に掛け合った事もあるが、『外科医療では厳しい』との有り難いお言葉を賜った。
ならば、魔術や異能で…と、行きたいが自身の肉体の不安定さを考えると迂闊に治療系の術式も使えない。
要するに、呻き声などそもそも上げたくても無理な話なのだ。
右腕の様子を確認しつつ、二の腕と右手の平の銃創からボタボタと鮮血が垂れ落ちる。
流石に、筆談やジェスチャーで答えられる事でもないので、左手で軽く指笛を一つ。
直ぐに先ほどの三本足のカラスが舞い降りてくれば、青年の右肩に留まる。
「―そうだな、たかが逃げ遅れた子供一人にわざわざ右腕を負傷するのも馬鹿なんだろう。」
その声は、落ち着いた青年のものだが声が発せられるのは彼ではなくカラスの方から。
周囲から住民が一時退避したせいか、奇妙な静けさに互いの声だけが木霊する。
「――だから、その疑問には俺はこう答えるしかない。『つい体が動いてしまった』、と。」
理屈や打算や、まして感情ですら無かったかもしれない。咄嗟の行動、というやつだ。
それは、青年の人間としての部分…『甘さ』の証左でもあり――…
「…だから、悪いがそこまで深い理由や考えがある訳ではない。」
そう、付け加えるように青年が――カラスが口にする。