2020/07/05 のログ
不凋花 ひぐれ > そうして得た力を最大限活用できるならばそれはそれで冥利に尽きるというものだろう。
日々人員不足に悩まされるのはどこの委員会も同じやもしれん。とはいえ今回は己達が暴れ回った後の修復である。負い目という程ではないが、気に掛けるところはあった。
程なくして完璧に終えたことを確認すると、彼の元へと近づく。一歩、二歩、三歩。
五間を割り、間近に迫りながら己のバッグを漁る。

「異能疲労で消耗しているならこちらを。元気が出ますよ」

そう言って未開封のペットボトルを差し出す。異能者用のスポーツドリンクである。
テープが貼られてまだまだ冷えた内容物は、どうにも買ったばかりの品らしい。

「いえ、限りなく全盲に近い弱視です。光には反応しますし形も僅かに分かります。
 最もこのように薄暗い場所のビルは全部同じに視えますし、人も同様ですけど」
 
 そうして彼が考察を重ね、己の素性に理解を示すと己の顎に指を当てながらしたり顔で頷いた。

「はい、名を不凋花ひぐれ、と。能力の発動を無効化する異能を保有している風紀委員特別攻撃課所属。
 特殊学級たちばなに籍を置く2年です。そちらでも私のことは噂されているのですね。なんだかこそばゆい感覚です」
 
 そうして少し恥じらうように、困ったように微笑んで首を傾げて見せた。

角鹿建悟 > 気が付いたら何時の間にか汗が凄い。タオルは持参しているので、それで汗を拭ってから一息。
頭痛、呼吸の乱れ、その他諸々は能力をかなりフル活用した反動みたいなものだ。
と、そこでこちらに近付いてくる風紀の少女に気付いて改めて意識をそちらに戻して。

「…む?…有難いが、俺が貰ってもいいのか?君の分だったろうに」

確かに汗だくで疲労の蓄積が凄いし、実は未だに頭痛がしているのだが無表情を保ちながら問い掛ける。
とはいえ、折角差し出されたそれを受け取らないのもむしろ失礼かと、結局は素直に異能者用のスポーツドリンクを右手で受け取って礼を述べる。

「…成る程、極度の弱視、というものか。俺は所詮、噂に聞いた程度だから情報が間違っているのも無理は無い、か。
…と、自己紹介が遅れたな。俺は1年の角鹿建悟だ。生活委員会傘下の【第九修繕特務隊】所属の新入りだ。…今やっていたように、依頼に応じて建造物や器物の修理・復元を主にやっている」

と、彼女の自己紹介にこちらも名前と学年、所属をきちんと名乗りつつ小さく会釈を。
思い出したようにペットボトルの蓋を開けて中身を一口…うん、味は正直普通だが効果は高いらしいので問題は無い。

「ふぅ…。あくまで一部の噂だけどな。ひぐれ…先輩の能力は強力だが……苦労も多そうだな」

ぽつり、と一言。能力の無効化――それは非常に強力だ。
少なくとも、異能を主とする相手には天敵とも言えるだろう。だけれど。

「――例えば、仲間との連携が難しい。異能を阻害してしまうからな。それに…おそらく治癒の異能なども無効化してしまうだろうから恩恵を受けられない。
…先輩の能力が任意で使えるのか、それとも常に発動しているかは分からないが…後者だったら尚更難儀でもあるな。」

と、そんな懸念と考察を堂々と述べる。こういうのは本人の前でも遠慮なく、悪気無く口にするのがこの男であった。

不凋花 ひぐれ > 「構いません。困っている人がいたら助けるのが人としての仕事です。
 人と人とが支え合うから人と書く、と言いましょう。
 
 それに、殿方の汗を嗅ぐのが好きなフェチズムもございませんので」

 眼を極限まで低下させ、その他の感覚に全振りしている己にとって、嗅覚もまた常人以上に理解が及ぶ。
 知覚する彼のそれは決して悪い意味もないし他意もないが、己が言うように汗で興奮する性癖とて存在しない。
 女性にとって男のそれは良いものだという人もいるが、他所は他所、ウチはウチ。その手の才能に開花するには経験値が足りない。
 よって普通に、からかうように己の鼻先に指を立てた。

「修繕特務……嗚呼なるほど、生活委員はそのようなところも担当しているのですね。一つ勉強になりました。
 こんな場所の修繕作業まで行うとは、とても大変だったでしょう。ご苦労様です」
 
 深々と己は頭を下げた。彼一人に負わせる仕事としてはハードなものだろう。恭しく下げられた頭に飾られた簪は揺れ、鈴が鳴る。

「別にひぐれでも構いませんよ。喋りやすいようにしてもらって構いません。
 ――さて、そうですね。勿論、治癒の異能は私にはすべて効きません。良い効果も悪い効果もすべて無効化してしまいます。
 困ったことに常時発動型でオンオフの切り替えも出来ず無差別に発動してしまう。丁度私が歩いて三歩ほどの距離でそうなってしまう。今あなたが修繕したそれも異能でしょう。だから発動することは叶わなくなるのです。
 ワンマンアーミーと言えば聞こえは良いですが、協調性のない生徒とも揶揄されこうして一人でいる機会も自然と多くなります」

 実の所、この異能には抜け穴がいくつかあるので、掻い潜って異能の効果を適応させることもできるのだが。今はまだ話す時ではない。

角鹿建悟 > 「――良い事を言ってるのは分かるんだが、最後の追加で台無しな気がするんだが?」

と、無表情のまま首を傾げて僅かに困ったような空気を。
彼女のからかうような仕草に悪気も何もないのは分かる。分かるのだが…。

(…参ったな、この手のジョークというか会話には俺は慣れてないんだが)

ほぼ仕事に全振りなので、会話は出来るが気の利いた言い回しや冗句のやり取りは不得手である。
つまりは不器用なのだ…だから、彼女のからかいにも馬鹿正直に己の考えを述べるしか出来ない。
――ちなみに、男も別にその手のフェチシズムには現時点では目覚めてはおらず。

「――いいや?大変なのは当たり前で、それは他の仕事をしている連中も同じだろう…先輩の特別攻撃課も含めて、な。
俺はただ、直したいから直す。直せる技能と力を持っているから、それを磨いて全力で目の前の仕事をこなすだけだ。
それに、依頼があれば何処であろうと何であろうと俺は”必ず直す”。…それが俺の誓いであり自分の中のルールだからな」

それが、どんなに無理でも無茶でも無謀でも構わない。
努力が足りない?なら足りるまで努力するだけだ。
才能が足りない?なら、それを補う程にやり抜くだけだ。
思いが足りない?――それは絶対に有り得ない。角鹿建悟は直す事に己を賭けているのだから。

深々と頭を下げる少女に、気にしないでいいとぶっきらぼうに空いた左手を緩く振って顔を上げるように頼もうか。
簪に付いた鈴が彼女の動きに合わせて涼やかな音を立てる。耳にその余韻を残しながらペットボトルの中身をまた一口。

「――先輩を呼び捨てにするのもどうかと思うが…分かった、じゃあ…遠慮なくひぐれ、と呼ばせて貰う。
――成る程、俺が思っていたよりも難儀みたいだな…ワンマンアーミーか」

考えるように彼女から一度視線を外す。彼女と組めるとしたら、それこそ異能も魔術も使えない者だろうか?
道具、あるいは技巧のみで戦闘をこなせる者などが相性が良いかもしれない。
とはいえ、男は直す専門なので戦いに関しては完全に門外漢でしかないが。

「――確かに、それは揶揄されるだろうが今はこうして話しているから一人ではないし…。
そもそも、ひぐれの事情をきちんと知っていれば、そんな揶揄を飛ばす奴の理解が足りないだけだろう」

と、素直かつ割とぶっちゃけるくらいに言いのける。
能力が能力でも、それはそれで彼女の人格には関係ないのだから。そう思うのは間違いだろうか?

「確かに仕事中にひぐれが射程内に近付けば俺の力は無効化されて仕事は台無しになるだろうが。
だったら、”何度でも直せば良い”だけだ。別に問題は無いな」

いや、大いにあるのだがこの男は真顔かつ本気でそう言っているのである。
直す事に関しては一切諦めないし折れないので、彼女の能力無効化など――そもそも”気にしていない”のだ。

不凋花 ひぐれ > 「ドラマや映画ではないのですから、キメ台詞を台無しにしたって構わないでしょう」

存外――というよりも彼はその手の話題は得意ではないらしい。
ジョークを交えても彼はしっかりと軸のある返しをパスしてくる。
遊びが無いと揶揄出来るし、実直で硬派なイイ人、とも評価できる。
台無し、という言葉にそれもそうですねと短く返し、こほんと咳払い。

「自分の価値を理解し、それを世の役に立てるべく奔走する。その思想は大変立派で素晴らしいものです。
 私も、私も何か役に立ちたいという思いから特別攻撃課に在籍しています。剣の修行に明け暮れて得たこの技術は、学園の治安の為、正義のためになると信じて。
 未だ未熟ながら、人々が笑えるように正義を執行するこの仕事をしていると、彼らの笑顔を想像して頑張ろうと思うのです」

質実剛健、ストイックな精神。彼の在り方に己もまた共感し、何度も己は頷く。

「とはいえ、あまり己を酷使する真似はいけませんからね。そうやって呼吸が乱れたのでは不調を来します。
 呼吸法から体作りまで、異能の使用に耐えうるアプローチも試みるべきです」

武術家にとって、呼吸とは全てである。
呼吸が乱れれば集中力が途切れるのは言わずもがな、盲目的になり視野が狭まる。結果的にそれは死に繋がる。
オーバーではあるが、安定した仕事をするなら、そういう風にして『追い込む』のも悪くないと提案する。

「よろしい。ではこちらも建悟と呼びましょう。
 私、小柄なりに腕は立ちますが、集団の中にいるのは難儀しているんです。事情を理解してもらおうにも、私は特殊学級の曰く付き。異能の影響で人と離れているのが常なので。
 勿論、理解が足りていない事情を知らない人の声も聞こえはしますし基本は流しますけど」

ん、と考え込むように眉を垂らす。

「私は建築学に詳しくないですが、工事現場で鉄骨を落下させてからもう一度上げ直す面倒さを考えると一塩です。
 問題はないですが、効率的ではありません。
 
 そう、歯牙にもかけない勢いなのは驚嘆しますが」

たとえば己が何かを壊しながら敵対した相手を封じ込めたら、きっと彼は破損した構造物を丁寧に直そうとするに違いない。場所、時間、壊した対象、壊される原因となった人。怨恨とか怨嗟とか、面倒な蟠りも無視してやってのけるに違いない。
それは裏表のない今までの発言からして、彼はそういう人間なんだろうと感心するに至った。

角鹿建悟 > 「…すまん、ドラマとか映画はあまり見ないんだが」

無表情だが、何処か申し訳無さそうにぼそり、と答えようか。若者らしいあれこれに疎いのである。
よく言えば真面目で実直だが、悪く言えば遊びが無い気質なのだ。
その辺りの己の気質に自覚は多少あるのだが、直せるかどうかは分からない。

「――そうか。だが、俺はひぐれのように立派な志みたいなものでは無いぞ。
…俺は誰かの為にやってる訳じゃない。ただ、”自分が我慢ならないから”直してるようなものだ。
壊れてるものをそのまま放置して風化させるのは、どうしても我慢がならない。だったら誰が直す?…誰もやらないなら俺がやるしかないだろう。
――結局、ただの身勝手なわがままでエゴなんだ俺のは…それでも…俺は直す事に己の全てを賭けてもいい」

自分が歪なくらいに直す事に振り切っているのは承知済み。だが、それはそれだ。
今更そんな己を変える気は無いし、こうある事こそが角鹿建悟の本懐でもある。
後悔するくらいなら最初からこの道に進んではいないのだから。

「…待った、体作りはきちんとしているつもりだぞ。…いや、そちらからは殆ど見えないかもしれないが。
…ああ、でも呼吸法は確かにそうだな。…今から、とは言わないが今度俺に呼吸法の助言を頼めないだろうか?」

と、前者は兎も角として、後者は確かに全く素人だからと彼女に教えを請おうか。
呼吸法がしっかりすれば、疲労も抑えられて能力の効率も上昇するかもしれない。

「俺にとって、効率そのものは大して問題じゃない。…大事ではあるが、それが全てじゃないからな。
大事なのは諦めず折れず曲げない事だ。手間が掛かろうが時間が掛かろうが、俺は絶対に直す。」

ひぐれの指摘は最もであり、まず効率的ではないし現実的ではない。
だが、そういう不条理や理不尽を通す意気だけは本気であり、だからこそ或る意味でこの男は”狂人”なのだ。
自分を通す芯を貫き、絶対に何があろうと己が果てようと曲げることが無い。

ただ、ふと思った事があるのでこう提案してみようか。

「そういう話なら、俺はひぐれと会話してそちらの単独行動の事情や大まかな能力の事も聞いた。
…なら、仕事中は兎も角偶々遭遇した時には、雑談相手くらいにはなれると思うぞ。
――友達、というのも変かもしれないが、少なくともひぐれを避ける理由は無いしな。」

と、結局というか矢張りというか、能力無効化の事を充分に理解しつつも、それはそれ、という事らしい。
男が重視しているのは、彼女の能力なんかではなくその人柄なのだから。

不凋花 ひぐれ > 「おや、私は聴読していますよ。図書館の聴読室にあるものくらいですけど」

専ら時代劇とか過去の有名映画作品とかその手のものばかりなので時代は周回遅れも甚だしい。
時代には追い付いていないが本当に最低限の話題提供ならば出来る。己とてその程度だから彼を嗤うことは出来ない。
ドラマや映画を見なくとも人は死なぬし、精々コミュニティーでの話題探しが天気から始まる引き出しの狭さが漏洩するくらいだ。コミュニティー形成においてそういった時代遅れでさえ、当人がネタに出来ればそういうキャラクターと認識されるので考え方次第ではどうとでもなる。
閑話休題。

「己の心の安定のために行い、それが結果的に人々の役に立っているのならば、エゴでも自己満足でも良いでしょう。
 道端にゴミが捨てられているから積極的にゴミ箱に捨てたりする人もいれば、私のように盲目の人間を見返りも無く介助しようと肩を優しく叩いてくれる人もいます。
 面倒臭いから拾わない人もいれば、関わり合いになりたくないから弱視者を避ける人もいる。
 
 あなたは自分の為に自分で動ける人間です。それが立派でないならなんと言うのでしょう」

彼自身研鑽を弛まぬ努力家で、己のやることに価値を置いている。職人気質という手合いだが、ならばそれは紛れもなく世のためになっているのだ。
誰が使うかも分からない場所を元に戻して影ながら頑張る姿に心打たれない人がいようものか。

「確かにがっちりとした骨格と、それに見合った骨と筋肉の動きはよく聞こえます。
 もう少し体を虐め抜けば一皮むけそうなのですけど。剣道にご興味などは?」

 本気か冗談か。そんなことを軽口で言ってのけながら己の胸に手を当てた。

「呼吸法の伝授でしたら、もちろんよろしいですよ。私の知識と経験で良ければ、余さずあなたに教えましょう。
 疲労を感じさせないようにしたり、痛みを我慢したり、精神の安定化を図ったり、集中力を伸ばしたり。
 やり方次第でいくらでも伸びはありますよ。立ち方、歩き方、呼吸に身振り。人の基本的な動作は全てに通ずるのです。
 ……まあこんな場所では何ですから、やはりまた後日ということで。今はあなたも異能を使ったばかりで御疲れでしょうから」

 かつ、と刀の鞘で地面を突きながら苦笑いを零した。

「猪突猛進……いえ、そう揶揄うのは無粋でしょうか。あなたは本気でそうあれと思っていらっしゃる。
 私に止める権利も無ければ待ったをかけることも出来ませんが。
 私のことを友人と仰るなら、多少は心配もしますからね、私」

 人に心配をかけるな、迷惑をかけるな。人の中のコミュニティーで生きる者の鉄則である。
 拘束性も強制力もない、ただの戯言ではある。

「フフッ、なら遠慮なく近づいてきてください。私は人に近づくのが不得手なので。
 こうして目を閉じていると何も見えませんし、鞘で足を叩いたら大変です」

寄りかかるようにして地面に突き立てた鞘を掌で弄びながら冗談めかしてそう口にする。
眼は閉じたままだが、それとなく表情筋は動くらしい。相手が年下ということもあってよく笑っていた。

角鹿建悟 > 「…何だろう、俺より話題は豊富だと思うんだが、内容が偏っている気がしないでもないんだが」

こちらが無知ならば彼女は周回遅れ…いや、遥かに話題を提供出来るだけ彼女の方がマシなのだろうが。
男の場合、ネタが無いので自らをネタにするしかないのだが。肝心の当人にその発想が無いのである。
まぁ、それはそれとして。

「――立派、か。俺はそういうのは正直よく分からない。
自分の為にしか動いていない人間が賞賛される、というのも俺にはさっぱりだ」

正直に述べる。自分の為に直しているようなものなのに、どうして褒められるのか、立派だと評されるのか。
単純なことなのだろうが、それがこの男には理解できていないのだ。
そういう意味ではズレており矢張り狂人なのだろう。致命的なまでに”真っ直ぐ過ぎる”のだ。
心を打たれる人が居ても、「何故だ?」とまず疑問に思ってしまう。
ただ、己のエゴをひたすら突き詰めているだけ。結果的にそれが賞賛され、褒められ、認められても彼には”理解できない”のだ。

「剣道か…誰かや何かを倒す・壊す技術は俺には向いてないしやる気は無いが。
…肉体の鍛錬に繋がるなら教えて欲しい。勿論、呼吸法も一緒に頼む。」

或る意味で目の前の知り合ったばかりの先輩が師匠になるようなものか。
剣道――自分にとって禁忌でもある”何かを壊す”手段でもあるが。
だからこそ、体を鍛える意味合いに限定すれば今よりもっと効率的に能力を運営できる肉体になれるかもしれない。
それに呼吸法が加われば――”もっと直せる”。

「そうか、じゃあ今度ひぐれや俺がお互い非番の時にでも――…連絡先交換、はしておいたほうがいいか?」

後日は勿論異論は無い。何せドリンクのお蔭で持ち直したが、消耗はしているのだから。
ともあれ、偶然また会うのに期待するのもいいが、連絡手段を確立しておくのもいいのでは?と疑問に思ったのもあり。

「――む…それは…まぁ…善処はする」

確かに、友人を心配させるのは己とて思うところは或る訳で。
少し悩むような顔をしつつも、善処するという彼にとってギリギリの妥協ラインを口にした。
完全に直せないのは前提であるのは、少年の気質の問題であるのだろう。

「そうか、なら遠慮なく見かけたら声を掛けさせて貰うとしよう。
まぁ、お互い忙しい時は忙しいだろうがな」

と、肩を竦めてこの日初めて僅かだが苦笑じみた笑みを浮かべてみせた。表情は一応まだ生きてるらしい。

不凋花 ひぐれ > 「図書館にリクエストを送らなければいけませんね。恋愛ものもプレスして置いて貰えるようにすれば青春的な話題にもついていけるでしょうし」

視覚に困難を極める人間が有する娯楽は常人のそれと比べると格段に選択肢は下がるのは無論のこと、内容の偏りとて『図書館みたい』『古臭い』とはいえ、不朽の名作とて話題に事欠かさないのは事実である。
友人が増えればそういった話題提供もしやすくなるのだろう。話をするために映画を聴くわけでもないが。

「その様子だと正当な評価を受けたいと思うこともなさそうですね。承認欲求とか、その類のものです。
 六階建てのビルを直したから誉めてくれとあなたは思わない。きっと次の直せるものを探したり聞いたりするのでしょう。

 武術であれば昇段や、より高度な技術を身に着けて自己を研鑽したり、強い人と戦うことを望むことが自然と目標になります。
 自分の為に動くというのであれば、武家も同じです。広くても御家の家名を広めること、専らは自分の肉体を磨き上げること、或いは対戦し勝利すること。
 パフォーマンスと体作り以外は何も産み出すことのないものです。それでも私は御家の為に、自分の為に自分を磨きます」
 
 口にはしないが、己はふと思う。
 嗚呼、彼もまた狂人の類だと。
 普通に接する分には何の問題もないし実害を生まない良心的な狂人だ。世の為と嘯く人よりも性質の悪いタイプである。
 およそ人の生き方とは程遠い思考回路だ。己とて褒められたものではないが。

「では今度セットで教えてあげます。私も型に倣った方が教えやすいので好都合です」

 心身を錬磨して旺盛なる気力を養い、剣道の特性を通じて礼節を尊ぶ。
 礼にはじまり礼に終わり、修養に励み、気を得る。
 柔道程直接的でないにしろ、人体を破壊したりする目的は本来毛頭ないのである。
 強者が武術をやっているからとマウントを取り、素人相手に手を出すのは愚かの極み。精神性の鍛練としてあるべきなのだ。

「そうですね。電話番号を交換しておきましょう」

 自分のスマートフォンを取り出し、番号の書かれた画面を表示する。SNSは出来ても既存のアプリでは十全に使いこなせないのが世知辛いところである。

「約束ですからね。精々頑張ってください」

また揶揄うように、唇に手を当てながら微笑む。悪戯の成功した子供のように愉快そうにする。
そうして相手が電話番号の登録を終え、無事に交換できたところで「さて」と一言。

「まだ周囲の見回りが残っていますので私はこれでお暇します。どうか気を付けてくださいね、建悟」

そうして背を向ける。

角鹿建悟 > 「…俺が一番苦手そうな部類のリクエストだなそれは…。」

恋愛もの、という言葉に無表情だが何とも言えない空気を。
別に恋愛がどうの、とか思う所がある訳ではないが何となく自分には縁が無いものだという思いがある。


「結果的に直すのに都合がいいから今の立場に居るだけだからな。
承認欲求なんてどうでもいいし、誰かに褒められたい気持ちなんて最初から無い。
勿論、次の直せる物を直すさ――それが俺だからな」

望んでこうなって、望んでこうしている。誰かに言われたから、誰かの真似をして、誰かに影響を受けたのではない。
自分で選択した道だ――例え狂人であろうと歪であろうと。
そう決めたのだからその道を進む以外に他の選択肢は無いのだから。

「――だったら、俺は今より肉体運用の効率を上げて、能力使用時の効率と持久力の引き上げだな。
筋力もまぁもう少しつけておきたい所だが、まぁそこは追々とひぐれに教わっていくさ」

良心的な狂人――或る意味で凄く性質の悪いタイプ。
勿論、男はそういうのは無自覚だから輪を掛けて酷いだろう。
悪意が無くても善行と同時に悪行を成すとしたら、このようなタイプなのかもしれない。
どのみち、結局――男の根幹は揺るがないし変わりはしないのだから。

「分かった。一度で全部は無理だろうから、合間を見てちょくちょく教えてもらう形になるかもしれないが。
――と、じゃあこれが俺の番号だ」

こちらも携帯を取り出せば、画面の番号を登録しつつ一度コールして確認と同時に彼女の携帯へと番号の通知などを済ませて。
ただ、約束については渋々というか微妙な表情ではあった。連絡先交換を終えれば携帯を懐に戻しつつ。

「ああ、俺もそろそろ引き揚げるからそこは問題ない。――――ひぐれ」

背を向ける彼女に一度だけ呼び掛けて。

角鹿建悟 > 「――色々迷惑を掛けるかもしれない”弟子(ゆうじん)”になるかもしれないが、よろしく頼む」

そう、声を掛けて会釈を一度してから、帰り支度をして彼女と別の方角に歩いて帰路につくのだろう。

不凋花 ひぐれ > 「何事も経験です。食わず嫌いはいけませんよ」

人生何が起こるか分からない。苦手そうなものを怪訝な顔をして退けるのは勿体ない。
2時間聞き続けて、「あ、やっぱり無駄だった」と今後の人生の為に2時間を投資するのも、無駄に見えて効率的に生きることが出来る手法である。

「なるほど。その真っ直ぐな芯はとても良いですね。危ういのに脆くない、頑丈すぎるきらいもありますね。
 一度根っこから叩き折った方が良いでしょうかね」

 これも冗談なのかそうでないのか。先の修練のメニューをふと考えながら指を回す。
 彼も彼でやりたいことの方針があるならばその方が何から教えたら良いか道が示しやすい。
 蹴りを入れたら反動で吹き飛びそうな程の頑固な在り方は、はてさてどう柔らかくしていこうか。
 ある程度は柔らかな反応を見せるが、ここぞという時は渋い顔をする。己は見えんが、相手の息遣いや一音のトーンで何となく察することが出来る。
 これは少しずつ慣らして行く方が良いだろう。概ねそう結論付けて考えを終えたところで、己の名を呼ぶ声で背を震わせた。

「――そうですか」

 背を向けた儘、顎を引く。ほんの僅かに頷く動作をしてから。

「"師匠(ともだち)"としてこれからはズケズケ言いますからね。覚悟しておいてください」

含み笑いを載せた声色はほんの僅かに上機嫌そうに軽やかだった。
彼が支度をしている間に、己は早々と次の仕事へ向かう。
からころん、かつんかつん。
己の通る道は、闇に紛れて小気味の良い音が舞っていた。

ご案内:「違反組織跡地」から不凋花 ひぐれさんが去りました。
ご案内:「違反組織跡地」から角鹿建悟さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に水無月 沙羅さんが現れました。
水無月 沙羅 > 「……ぁー……。」

風紀委員の任務を終えた直後、少女は一人たたずんでいる。
辺りには、先ほどまで少女に襲い掛かっていたはずの暴漢の群れ。
凶器で、拳で、足で、リンチの様に一方的に殴られていたはずの彼女は、なぜか一瞬のうちにその立場を逆転させていた。

『いてぇ、いてぇよぉ……』

と、取り締まる対象が呻く声が聞こえてくる。
少女は意識が朦朧としながらも、その傷は恐ろしいスピードで回復していく。

ゆっくりと立ち上がり、ごく簡単な身体強化の魔術を己にかけ。

蹲る対象を、一人、二人、三人。
口で数えながら念を押すように、『殴り』 『蹴とばし』 『絞め落とし』。

最後に立っているのは息を粗くした少女一人のみ。

全てを終えた、任務は終わったと確認した少女は、風紀委員の別のメンバーに後処理を依頼し、その場を後にした。

少し離れた、安全な地区で少しだけ休憩する。
まだ、痛みは消えていない。

「…………。」

怪我というより熱中症で倒れそうだ、そんなことを考えながら、空を見上げていた。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」にフィスティアさんが現れました。
フィスティア > 「お疲れ様です。水無月先輩。
...話には聞いていますが...本当に大丈夫でしょうか?」

これどうぞ、ととても大丈夫には見えないといった不安気な表情で沙羅に水筒の水を付属のコップに入れて差し出す。
随分と辛そうです。水筒を持ってきて正解でした。
...にしても、何故私がついて行くように指示されたのでしょうか?
よくわかりませんが...『見てこい』...と言われたことだけは覚えてます。

「怪我は治ると聞いていますが...あの....痛くないのでしょうか?」

簡単な回復魔法と痛みを緩和する魔法をかけながらそう尋ねる。
怪我が治るどころか死なないと事前に聞いて、実際今も怪我は見当たらないが、彼女が制圧任務を行っている際の音を聞いている限り辛そうだな、と。
彼女が今も疲労の見える表情でいるのを見て、白い少女も辛そうな表情をしており。

水無月 沙羅 > 「んぅ……? あぁ……うん、ありがとう……先輩? 」

差し出されるコップを、まだ揺れる視界で何とか捉えて受け取る。
水分を喉に流し込み、失われた水分を確保する。
塩分が少しほしい気がしたけど、贅沢は言えない。
こうして施しを貰うだけでも感謝しなければ。
しかし、先輩……? このひとは、私と同じ一年生ではなかっただろうか。

「うん、痛いよ? すごく。」

質問に答える、別に痛みがないわけじゃない。
痛みを消す魔法を使うと、私の異能は意味がなくなってしまうし。
ただ、これが一番効率がいい、唯それだけ。
痛みには慣れている。

「……わざわざ、ありがとう、ございます?」

傷を治癒される、痛みが和らいでいく。
それが目の前の少女がしていることだと気がついて、お礼を言う。
相手に向ける目に、感情は籠っていないのだが。
お礼を言う、ということが大事なのだ、ということは学園で教わったことだ。

「あなたも、何処か、痛いの? 治癒魔法、かけましょうか?」

辛そうな顔を見て訪ねる、離れて見ていたはずだが、巻き込まれたりしたのだろうか。
だとしたら、自分の失態だ。
もっと精進しないと。

フィスティア > 「はい、先輩です。私はこの世界に来てそんなに経っていないので。

...確か...痛みとかをそのまま相手に返す異能...でしたっけ」

すごく痛い、と。当たり前のように言い放った彼女の様子に悲しそうに眉を潜める。
悲しいことに慣れてしまっている、と。
だから、任務中に回復させるような真似はするなよと事前に言われました。
中で何が起きているのか考えると胸が苦しくなりましたが...邪魔してしまうのは違います。
私は風紀委員会ですから、立場としての義務を優先すべきです。
それに、死なないのであれば...最悪の事態はないですから。

「私に出来ることはこれぐらいですから。
...痛み、引きましたか?」

任務も終わった様子だし、治癒しても問題ないだろう、と勝手に回復してしまったが、問題なかったようで少し安心。
感謝を述べる少女の瞳に感情はあまり見受けられず、ちゃんと回復できているか不安になってついそう尋ねて。

「いえ...私はどこも痛くないですから。
大丈夫です」

ただ勝手に彼女の様子を見て、勝手に心配しているだけである。
そんな表情をしていたとは思わなかったため、誤魔化すように笑って見せるが苦々しい色が見て取れるだろうか。

水無月 沙羅 > 「……はい。 そうです、私が感じている、痛みや苦しみなど、不快感を感じているものを、対象に与える、そういった異能です。」

質問に答える。
彼女はなぜ落ち込んだような反応をしているのだろうか。
私には、その感情はよくわからないものだけれど、良い感情ではないのだろう、ということは辛うじて理解できる。
これが一番効率的だから、それではいけないのだろうか?

「はい、おかげで、もう問題はありません、次の任務にも支障はないかと。
 重ね重ね感謝を。」

深く、頭を下げる。
自分を心配してくれた、ということだけはわかる。
ならばやはりお礼は言うべきなのだろう。

「……では、なぜそのような顔をしていらっしゃるのでしょうか。
 あ、いえ、顔が悪い、ということではなく、表情が、暗く?
 感じましたので。」

私が痛みを覚えるときと同じような表情をしているのは、気のせいだっただろうか。
だとしたら、なぜ?

フィスティア > この少女は痛いという感覚に慣れすぎている。
普通は痛いことは望ましくない事のはずなのに。
少女のその感覚を『正そう』なんて傲慢なことは考えないし、そこを変に刺激しても彼女は辛いだけなのではないだろうか、なんて思っており。

「こんな事を聞くのは....よくないかもしれませんが。辛く、ないのですか?
痛いとか苦しいとか。辛く、ないんでしょうか?」

でも、聞かずにはいられなかった。
聞かない方が彼女にとっては良いのだろうか、などと思いつつも。
その胸中を聞き出せずにはいられなかった。
彼女が辛いかどうかではなく、彼女が辛くないと口にすれば自分の中でメビウスの輪のように回り続ける感情に区切りがつく。
そんなエゴ。

実際はどっちであっても永遠に回り続けるその場しのぎにすらないらない。質問で。

「次の任務でまた同じような事をすると考えると...私は悲しいんです。
あなたは何も悪くないのに。任務を、義務を果たしているだけなのになんでそんなに痛い思いをしなければならないのか...って。
すみません...私は先輩ではないのに...」

わかったような気持ちと言葉と表情。
彼女にしかわからない事を自分が知ったように語って、思っていいのか。
内心ではわかっていても、わかったような事をしてしまう。
情けなくなる。

水無月 沙羅 > 「はい。 辛くはありません。 これが私の存在価値ですから。」

あっさりと言い切る。 沙羅にとって、痛みは生まれた時から共にしてきた感覚で。
それがないことの方がおかしく感じるほどに。
周りからの目線を見ていれば、自分が異常なのだということは理解できる。
異常は目立つ、排除される、そういう事が在るのも、良く知っている。

「……気味が、わるいと、思っていらっしゃいますか。 でしたら、申し訳ありません。 これ以外のやり方を知らないので。」

彼女もそういった手合いだろう。
沙羅はそう判断した、私が居ることで不快感を与えたのならば、謝らなければならない。

「悲しい……?」

その感情は、まだよく知らない。
痛みや怒りを感じるときに発生する感情の動き、というのは習った気がする。

「それは、私が、不死者で、この異能を持っているから、この方法が、一番効率がいいからです。」

淡々と、答える。

フィスティア > 「いえそんな...!気味が悪いなんて思っていません...
ただ、...そんな痛い方法しか知らないのは...私だったら耐えられない...と...
そんな存在価値は...ぁ」

悲しくなってしまう。、と言おうとして口を噤む。
一体何を言おうとしているんだ私は。気味悪がっているようなものではないか。
水無月沙羅という人間の感じている存在価値を否定するような。なんて事を言おうとしているんだ私は。

とんでもない事を言いかけた、と自責の念に潰されそうになる。
最後まで言わなかっただけであって途中までは言ってしまった。どう思われてしまっても取り返しがつかない。

「...効率がいい...そうですか...」

ああダメだ。やっぱり感情論では同じ事を繰り返すだけになってしまう。
彼女にはもう彼女の価値観がある。
自分が何を言ってもそれを揺るがすことはできないどころかお互いの間に変な感情や空気が生まれるだけである。
最初にわかったはずだろう。何故こんなになるまで続けたのか。
自責の念に押し潰される。まさにその通り。
勝手に自分を責め出した少女は心の痛みでとても苦しそうな、それはもう苦しそうに見えるだろう。

水無月 沙羅 > 「あの……」

私の存在が、彼女に何か悪い影響を与えている、と言うことは理解できた。
でも、何と声をかけていいのかわからない。
それはまだ、教わっていない。

「……えっと、うまく言えないんですが。」

自分の中に存在する言葉で、かけられる言葉を絞り出す。
なんといえば、この少女の暗い顔は解けるだろうか。

「わたしは、気にしていないから……じゃなくて、えっと……」

やはり、うまく言葉にできない、感情が理解できないというのは、
思っているよりも不便らしい。

「悲しい……? かお、しなくて、いい、です。 あなたが、その顔するの……、うれしくは、無いです。 ので。」

なんとか、絞り出す。
言葉遣いが変になる、人を気遣うというのは存外難しい。

フィスティア > 「...ぁ....」

『あなたが、その顔するの……、うれしくは、無いです。 ので。』
ハッとした表情で。その一言で正気に引き戻される。
勝手に悩んで勝手に潰れそうになって。
それで誰かに悲しい思いをさせるのであれば、それは自分が望むところではない。

「あの....えっと...すみません...勝手に悩んでしまって...

それと...ありがとうございます。引き戻してくれて。」

申し訳ない、といった。
決して明るさを持った表情ではないが、暗い表情でもなく。
まだ心中残っている部分はあるが、一先ず忘れることにしたようだ。

そして、そういう時に告げる言葉は感謝であるべきだろう。
申し訳なさこそ前面に押し出されているが、感謝の気持ちも見て取れるだろうか。

水無月 沙羅 > 「……?」

なんでお礼を言われたのだろう。
よくわからない、本当に、よくわからない。

「えっと、こういう時なんていうんだっけ……えっと。」

頭を叩いて、出て来い、出て来いという風に。

「おきになさらず?」

こういう時は笑顔で……笑顔で……。
自然に作れないので、両手の指でほほを押し上げる。

「かえり、ますか?」

仕事も終わったので、もうここには用もないだろう。
また、次の任務が待っているのだろうけど。

フィスティア > 「...はい」

沙羅が何故感謝されたのか理解できていない様子にフィスティアも理解できない何かを感じ取ってじっと待っていれば。
ずっと悩んだすえに出てきた『お気になさらず』に先ほどの自分の考えである『価値観が揺らがない』が間違っていると感じて。
彼女なりにどうすればいいのか考えているのだろう、と。
よく考えればずっとそうしていたのに、気づかなかった自分を嘲るように、それでいて彼女の意思に安心したように笑って見せて。

「そうです、笑顔はやっぱり良いものですよ。水無月先輩」

沙羅の笑顔を作ろうとする動きに対して失礼にもつい小さく吹き出して。

「そうですね。帰りましょう。
水無月先輩の考えはわかりましたが、無理はしないでください。それと、何かあったら私に話してください」

どっちが先輩なんだかわからない発言を残しつつ、歩き出した。
その歩みには先ほどまでのややこしい思考はかけらもみられなかった。

水無月 沙羅 > 「…………?」

よくわからないけど、笑われた。
嘲りではないから、たぶんこれでよかったんだと思う。
悲しい顔は晴れたみたいだ。

「……無理、って何だろう。」

自分にとって、肉体の限界はないし、死ぬこともないし……無理?
いろいろ。難しい。

「なにかあったら、うん。 わかった。」

なんとなく、こちらを気遣ってくれていることだけはわかる。
風紀委員の中でも彼女は特に、そういった面が多いのも。

「……ありがとう。」

ちいさく呟いて、後ろを着いて歩くように少女もまたその場から姿を消した。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からフィスティアさんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」に持流 童男さんが現れました。
違法部活生 > 下卑た男たちの、笑い声が路地裏に響く
どうやら、連れ込み部屋に女子生徒が連れ去られ
今から言えないことをされそうになっている

「おいおい、もっと丁寧に扱えよ。これから楽しむんだから」

女子生徒 > 「いや・・・こないで・・!!」

抵抗も虚しく猿ぐつわをされ、そして、これからされそうになりかけて
本当に嫌で怖くて気持ち悪い・・!

誰か助けて!!目をつむり、願う

違法部活生2 > 「誰もこねぇよ!!!こんなところになぁ!!!!」

笑いながらもゲスなことをしたその時。

持流 童男 > 凄まじい轟音とともに、窓をぶち破り一体の巨体が舞う。

そして女子生徒に対して、

「もう大丈夫。なぜかって・・?」
「某が!!!!!来た!!!!!!」

と言いつつ大声で言いつつ目の前には、マントを羽織った男がいた。
「風紀委員!!”ヒーロー”ヘラクレス!!参上でござる!!!」
「お主らの拳で、某を倒せる名で思うなでござる!!!」

ファイティングポーズを取りながらも

違法部部活生 > 「なんだてめえ!!?ヒーロー・・・!?ぎゃはっはは!!」
と思い切り笑った後に、鋭い目つきになりつつ
「随分かっこいい名前じゃねか!。だがなぁ」
パイプと周りの違法部活生たちは武器を持ち
「これでもまだ言えるかな?」
と脅してくる

持流 童男 > 「言えるでござる。某は、”ヒーロー”ヘラクレス」
一息ついて

「かかってこいでござる悪漢共!!!!」
それに応じてガードをしつつ、後ろにいる女子生徒を守る

パイプが、ナイフが、急所を狙ってくる。だがしかし、
「ヒーローは止まらない」

一歩も引かずに傷だらけになりつつも、踏ん張りながらも
女子生徒を守りつつ、最適な場所を選びつつ立ち回りつつ守る

違法部部活生 > 「何だこいつ・・!?急所に刺さって、頭もぶん殴られてるのに一歩も引かねぇ・・!いやそれどころか」
全然引かねぇ・・!?この人数で囲ってるのに・・!?

持流 童男 > 「どうしたでござる!!某はまだ、生きているでござるよ!!!一歩も引かないでござる!」

血だらけになりながら傷だらけになりながらもただ一人のために。
だが知られずの英雄は発動していない。しかしヒーローは屈しない
頸動脈から血が流れようが、頭を思い切り殴打されようが。
「ヒーローは止まらない」

「(守り切るのでござる!!!!もう間違えないように!!もう!!くじけないように!!!)」

おびただしい血が流れるが。だがそれでも一歩も引かずにいる

持流 童男 > 『耐える、守れ、信じろ・・・!!!』
(鬼殿にも、あかね殿にも、色んな人達に助けられたでござる)」
(だから、今まで助けてくれてきた人たちに誇れるような!!そんなヒーローにならないと駄目なんでござる!!)

足が一瞬ぐらつき一瞬意識が朦朧とする。しかし意識を気合ではっきりさせて。
ナイフが体に突き刺さり、尖ったパイプが腕に深々と突き刺さる。急所をそらす。

「(それこそが胸を晴れるようなヒーロー!!真のオタクでござる!!!!)」
「屈せぬでござる!!!!」

女子生徒 > 「なんでそこまで・・・!そこまでして・・!!」
震える声で言いながらも声が震えている

持流 童男 > 「決まってるでござろう!!!!!」
ニット笑いながらも

「”ヒーロー”だから!!!」
頭にゴツンとパイプの暴虐が当たる。気を失いかける。しかし、それでも気合で立ち上がる
(人数がいるでござるな・・!!!!しかし負けぬ!!!!屈せぬ!!守り抜く!!!)
体中を血で染めながらも傷つきながらも足掻く。

違法部活生 > 「これならどうだゴラァ!!」
拳銃を持ち出して、撃鉄を引く。

持流 童男 > 「(お主らが疲れ果てるまで、某は、お主らの攻撃を受けよう・・!!ただし、守り抜く・・!!)」

拳銃の弾が、持流の肩を貫く。だがしかし、それでは届かない。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」

頭に打ち込まれようとも、心臓と頭といった急所をそらしつつ
玉がなくなるまで玉を打ち込まれ続ける。
しかし、ヒーローは立っている。

違法部活生 > 「っち!玉が切れやがった・・!!こいつ!!なんだんだよ!!!」
と言いつつ、毒を吐く。

「くそ・・!風紀にバレたってことはここを変えなきゃいけねぇ・・!てめぇらずらかるぞ!!!」
と言いながら疲労困憊になった様子で出ていく。
その時に発信気をつけられたらしい

持流 童男 > 「へへ・・・・ちょっとは胸を晴れるような、ヒーローになれたでござるかな」
誇らしげに言いながらも
立ったまま気絶している。

持流 童男 > 体からはいくつもの銃痕、腕には刺し傷、急所をそらして入るが殴打の数々しかし、それでもヒーローは立って、女子生徒を守りきった。

(あぁ、このまま死んでは鬼殿とレイチェル殿に怒られてしまうでござるな・・それはだめでござるな。)

体にムチを打ちつつ。「大丈夫でござったか?」
ニコッと笑みを浮かべつつ笑いながらも
膨れた顔で、穏やかに言いつつも。

女子生徒 > 「はい・・!大丈夫です・・!!」

涙を流しながら心の底からお礼を言う。

持流 童男 > 「それは、良かったでござる・・・・」

少し広角をあげて、心底安心したような顔をしつつ。

「風紀委員に連絡を入れてほしいでござる。・・・すこし・・きついでござる・・」

目から光が消えそうになりつつも意識をはっきり保っている。

持流 童男 > 「あ、そうだ・・このマントをお主怖かったでござろう・・・」
振り絞りながらもマントを女子生徒にかける。

「よく頑張ったでござるな」
しんどそうに言いつつも心配させないために笑顔で言いつつ。

持流 童男 > 「この・・携帯番号にかければ・・・風紀委員たちはとんでくるでござるから・・・あとは風紀委員に任せるでゴザ・る」

と携帯電話を渡しつつも。その血塗られた足で、パトロールに向かおうとする。

女子生徒 > 「待って!!それじゃあなた死んじゃう!!!」
救急車を呼ぼうとする。

持流 童男 > 「はは・・大丈夫でござるよ。ここは違反部活郡。救急車はこないでござるよ。だから、某は自力で、病院にいくでござる。」

かすかに笑いながらもおぼつかない足取りで壁を背にしつつ。

移動していこうとうする。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」にナナミさんが現れました。
ナナミ > 「その子の言う通りだよー、お兄さん。
 そのまま歩いて行こうとするのは危険だよー、ヒーローなら女の子に心配させちゃダメだよー」

ピリリとした緊張感張り詰める空気の中、何処か楽観的な声が響く。
最初に大男が飛び込んだ窓から、するりと小柄な影が滑り込んで

「ちょっと遅かったかな……はいストップストーップ。」

周囲の惨状を見て、一番の怪我人であるところの自称ヒーローを見ると、つかつかと歩み寄っていく。

持流 童男 > 「うむ・・?あぁ。大丈夫でござるよ。大丈夫・・ご心配な・・」

少しだけふらつくが、立て直す。

少年が近づいてくるのに対して、心配させないように笑みを浮かべて

ナナミ > 「大丈夫しか言わない奴は大抵大丈夫じゃないって法則があんの。」

無遠慮に歩み寄った後は、少しだけ拗ねるように口を尖らせる。
そして傷を負っているであろう肩を、ぺしりと叩こうと。

「(そんな事言ってさっきの奴らが装備整えてお礼参りに来ないとも限んないっしょ。
 ここはひとつ責任もってあの子と風紀を待つべき。)」

ついでに少女に聞こえないよう小声で囁いて。

持流 童男 > 「(なるほど・・そのことは考えてなかったでござるな。わかったでござる。ありがとうでござる少年)」
と言いながら

「(それならここに待機しておくでござるかな)」
柔和な笑みになりながらも
「すまぬ・・少し疲れた。」といって壁に待機しよう

ナナミ > 「そんな傷だらけでどこに行けると思ってたのさ。
 自分で言ったっしょー、ここ違法部活群だよ?実験体とかにされたっておかしくないんだよー。」

待機に入った自称ヒーローの傍らにしゃがみ、傷の程度を確認する。
銃声がしてたから、まず撃たれたのは間違いないだろうけど、ちゃんと弾は全部貫通してるだろうか、など。

「あ、君もさっさと風紀に連絡して貰って。
 このお兄さんもここでさっきの奴ら来ないか見張ってるって言うからさー。」

少女へと一度振り返り、その後背負っていたショルダーバッグから包帯やら取り出して。

「とりあえず応急処置、常識っしょ。」

女子生徒 > 「は、はい!!!」
携帯電話を持ちつつ風紀委員に連絡を入れる
「はい・・はい・・!お願いします・・!」

持流 童男 > 「・・・すまぬでござる。」

玉は、貫通しているものもあれば、心臓は避けて、急所をそらしているが体の至るところを貫通していた。

生身の腕は傷だらけで、刺し傷もありつつ。
パイプで殴打された打撃痕と内出血が、頭と、肩に多数見られている
足にも銃痕があり、それらは貫通して入る。
「ありがとうでござるよ。少年」
応急手当に関して感謝をしつつ

ナナミ > 少女が風紀委員へと連絡を入れてるのを見て、これでまあ一安心か、と小さく溜息を零す。
傍らの自称ヒーローもだが、少女も少女だ。他人の心配をしてるよりも我が身の安全を確保しろってのに。

「お兄さん、意識をしっかり持ってねー。
 幸い太い血管も避けてるし、骨も大丈夫そうだから。命に別状はないと思う。
 まあ何日か入院するだろうけどね。ほら行くぞー」

慣れた手つきで若干荒っぽく傷を手当てしていく。
自分の数段は物理耐久が高そうな人で良かった、と思いながら。

「ヒーローならもっとスマートにこなせよなー。
 ……とはいえ、ヒーローなんて何をするかじゃなくて何をしたかの世界だもん、お兄さんも立派にヒーローだと思うよ。」

礼なんて要るかよ、と毒づきながらも。
フードで隠していない口元が微かに笑った。

持流 童男 > 「少々無茶をしすぎた・・・」
少しだけ笑いながらも
「いたたたた。」
と少し笑いながらもいてててと言いながら

その「ヒーローだと思うよ」という言葉に、少しだけ涙目になりながらぐっときながらも
「某は、なかなかスマートにこなせぬ不器用な性分なのでござる。そういう泥臭いヒーローも、いいでござろう」
と冗談めかして笑いながら

ナナミ > 「泥臭いのも悪かないと思うけどさ。
 やっぱ無傷で徹すくらいじゃないと、守られる方も不安でしょ?」

ぐるぐると腕、足に包帯を巻き付けながら呆れたと言わんばかりに肩を竦める。
結果として少女を護って生き残っているから良い様な物を、
これで途中で息絶えてたら余計なトラウマまで与えるところだっただろうに。

「はい、これでよし。
 頭の方は既に中身が悪いみたいだからちゃんと病院で診て貰いなよ。
 ……ま、もう手遅れかもしんないけど。」

皮肉と共に口角をにぃっと釣り上げて。

「さてさて、風紀が着く前には逃げとかなきゃなー怒られたくないし。」

持流 童男 > 「そうでござるな・・・確かに無傷で通さなければいけぬでござるな。ありがとうでござる。少年。」
とこれは修行が必要だなと思いつつ。
「頭の方もちゃんと見てもらうでござるよ・・って誰が手遅れでござるか」
皮肉に笑いながらも笑いながら冗談めかして

「この恩は忘れないでござる。必ず返させていただくでござるよ、少年」
真面目にいいつつ

ナナミ > 「ヒーロー名乗るんだったらさ。」

手当てを終え、思いの外自称ヒーローが元気な事を確認して。
広げていた医療セットをバッグへと仕舞う。
そして横目で少女の様子を確認してから、

「泥臭くても汗でも涙でもぐじゃぐじゃになっても良いけどさ。
 血だけは流しちゃダメだよ。人前で、それだけはダメだって。」

フードを目深にかぶり直し、ショルダーバッグを背負い直して。

「別に恩返しなんて要らないからさ。
 その分ちゃんと怪我治して、体鍛えて、一人でも多くを護れる様なヒーローになってよ。」

なれるか知らんけどさ、と付け足して、口を三日月の様に歪めて笑った。

持流 童男 > 「人前で、血だけは流すのは駄目・・・か」

自分の至らなさを思いつつ拳をぐっと握りしめて

「わかったでござる。怪我をなおして、そして体も鍛えて、一人でも多く守れるような!ヒーローに!胸を晴れるようなヒーローになるでござる。いてててて」

決意に満ちた目をしつつ。痛がりながらも。

ナナミ > 「ケヒヒっ。
 ……言ったからにはリタイヤは無しな。
 ま、精々頑張ってみてよ。どっかから見てるからさ、ヒーロー?」

少しだけ満足げに頷いて。
遠くからこちらへと近付いてくる規則的な足音に気付き。

「おっと、流石風紀。早いもんだなあ。
 それじゃあね、今度会う時はボロボロのみっともない姿じゃない事を祈ってるよ。」

そーれずらかるぞ、っと呟いて足音が来るのとは反対側、この場に現れる時に飛び込んだ窓に駆け足で戻っていく。
そして一度だけ、ヒーローに振り返ると、そのまま窓から外へと消えて行ったのだった。

持流 童男 > 「おう!!!!ありがとうでござる!!!」
と感謝をしつつ

「いててて、風紀のみんな来るの早いでござるなぁ
うむ、今度会う時は、みっともない姿じゃない様にやれるだけやってみるでござる」

風紀委員だ!無事でしたか!で・・・持流殿!!風紀委員たちが流れ込んでくる女子生徒も保護しそして違反部活郡から担ぎ上げられて違反部活郡から去った

ご案内:「違反部活群/違反組織群」から持流 童男さんが去りました。
ご案内:「違反部活群/違反組織群」からナナミさんが去りました。