2021/06/12 のログ
フィーナ > 「…は」
反応が遅れた。
気づいたときには目の前で…大剣が、振り下ろされる。

すぱりと、一刀両断される。

手応えが、おかしい。まるで、『水でも切っているような感触』。

そして、魔力が込められる。
瞬間、姿が消え、マディファの後ろに、姿を表す。『縦に裂けた状態で』

マディファ=オルナ > 「!?」

妙な手応えにマディファも驚愕する。

(スライムが、人間に擬態しておるのか?
 じゃが、今の手応えは抵抗が無さすぎる……世界の違い故か?)

センサーが後ろに出現したのを感知。
疑問を拭えぬまま、振り向きざまの横薙ぎを放つ。
だがその精度は、先程までと比べれば甘い。

フィーナ > 「あー、酷いなぁ、一刀両断なんて」
ぐにゅぐにゅと原型に戻っていった…かと思えば今度は首が飛んだ。

「いやほんと容赦なさすぎでしょ」
首から顔が生えてくる。変幻自在に、形を成す。

「本体に当たらなくてよかったよかった」
嘘である。本体は『ここにはない』。本物は近くの影から遠隔操作しているだけなのだ。

「じゃあ、次は私の番かな」
杖を、構える。距離を取りながら、術式を組み上げていく。

マディファ=オルナ > 「ふむ、やはりスライムか。
 手応えが無さすぎるが、まあ儂の知るスライムとは異なるんじゃろうな」

(奴は本体と言った……まあ、核のことじゃろうな。
 じゃが、体幹を一刀両断されて其処にないのはおかしいのう)

攻撃の手を休め、分析する。
センサーの情報も、目の前の少女からはスライムであることを踏まえてもおかしな点は示さない。

「ならば、分かるまで踊るしかあるまいの」

言いながら駆け出しつつ、懐からマグネシウムライトを三本取り出してばらまくように投げる。
山なりながら一本たりと当たるような軌道ではないが、そもそもそれを狙うものではない。
そしてそれぞれのライトに視線を巡らせて、少女を強烈な光で照らす。
この光が何の影響も及ぼさなければ、少女にマディファが追いつくことなく術式が組み上がるだろう。

フィーナ > 「…ふぅん?」
3方向から、照らされる。
成程、こちらの核を探そうという腹づもりか。
しかし見えることはない。『人を再現できるのだから』。

そして、術式が完成する。ざわざわと、マディファを取り込めるだけの水の塊が、出来上がっていく。

「さぁ、これはどう対処する?」
それを、マディファに向け、放つ。

マディファ=オルナ > マグネシウムライトの光は何の効果も及ぼさず。
核の手掛かりも得られなかった。

「外れか……む!?」

放たれた水の塊。
このまま直進すれば取り込まれるのは間違いない。
ブースターで突破……はできないだろう。
ならばとブースターを吹かして横に飛び。

「『真空断ち』!」

大剣を振るって真空の刃を放つ。
真空の刃が水の塊を両断したのを見て、再び距離を詰める。

フィーナ > 「ざぁんねん」
すぱり、と切れた水は、再び塊と成す。

そしてそのまま、突っ込んできたマディファを迎えるだろう。

マディファ=オルナ > 「ッ!!」

判断を誤った。
水の塊に突っ込む直前で横っ飛びにブースターを吹かし、なんとか飲み込まれるのを避ける。

「これは参ったのう……」

身体の制御を自動操縦に切り替えて回避に専念させる。
その間、マディファは詠唱を開始する。

フィーナ > 「ち、勘のいい」
水の塊を追わせながら、相手の詠唱を『読む』。
さぁ、どんな魔術を使ってくる?

興味を持ちながら、防御用のスクロールを取り出した。

マディファ=オルナ > 詠唱が完成する。

「顕現せよ、雷帝の鉄槌!『ロードオブヴァーミリオン』!!」

強烈な雷撃が、少女と水の塊を巻き込むように広範囲に荒れ狂う。
周辺のものを巻き込み、電撃が一切合切を薙ぎ払う。
だが、その余波でマディファの操縦機能とセンサーが一時停止してしまう。

(これじゃから使いたくなかったんじゃが、背に腹は変えられんしのう……
 水の塊がこれでなんともならねば儂は終わりじゃな)

フィーナ > 「うわぉ」
思ったより高度…というより魔力に物を言わせた電撃。
水の塊を操作し、一部を『傘』として自らを覆う。

当然、水は電気により分解されていく。

そして、マディファの様子がおかしいことに、気付く。

「…そっちも唯じゃ済まない…にしては、可怪しいわね?」

生物であるのならば。電撃の余波で痙攣するのなら、わかる。

動けない、というのは。

それは、電気を受けた生物には有り得ない挙動。

水に近づくことを忌避した理由。

小さき体であそこまでの出力を出せる理由。

「成程、機械か!」

これは、僥倖だ。こいつの使う魔術を解明すれば、『電気から魔術を生み出す術』が見つかるかもしれない―――――

目を、輝かせて。マディファを見た。

「機械が魔術とは!成程、興味深い!!!もっと見せてはくれないだろうか!?」

マディファ=オルナ > 少女が何を言っているのかは、音声センサーの停止したマディファには分からない。
だが、聞こえていたとしてマディファは少女の期待には応えられないだろう。
何故ならば、電気から魔力を得ては居ないからだ。

「むううんっ、『真空断ち』!」

操縦機能が沈黙したために魔力で体を動かし、視覚などのセンサーが沈黙したために魔力で周囲を感知する。
故に動きは重く、これまでの動きからはとても劣化した一撃。
だがこれで一手稼げれば、機能は復帰する。
そして相手は魔術師である以上、魔力を感じた方向に居るだろうと予測を立てて、真空の刃を放った。

フィーナ > 「っと、そろそろ時間切れ――――うぇっ!?」
魔力を感知されたがゆえに。
本体がいる壁に、真空の刃が飛んできた。

分体はもう殆ど魔力は残っておらず、今にも崩れそうになっていた。

そして本体は、というと――――

「いやいや、残念!時間切れだ!それでは、おさらば!!!」

貴重な資料を見つけたのだ。持ち帰らなくてはもったいない。
記憶に留めたマディファの詠唱を反芻しつつ、空間転移の魔術を使い、自分の住処へと飛んで帰って行った。

形を保てなくなった分体はバシャリと崩れ、黒ずんだ結晶――――それは最近になって流行り、白く大きいものは上物として、小さく黒ずんだものは安物として売られている『麻薬』――――が、液体に混じってばら撒かれた。

マディファ=オルナ > 手応えはなく、追撃も来ない。
なんとか回復したセンサーで周囲を検索するも、やってきつつある風紀委員以外は見当たらない。

「……ふむ、逃げられた、か」

先程まで少女が居たと思しき場所には、結晶が散乱していた。
何の危険も見当たらないためそれを拾えば、最近流行りだしている『麻薬』。

「うーむ、これはこれは。
 あの娘、この『麻薬』の売人じゃったのかの?」

もう少し粘ればよかったのかもしれない、と知らぬまま一人ごちる。
少女の去り際の独白も、センサーの稼働していないマディファには届かなかったのだ。

その後やってきた風紀委員に、顛末を説明し、映像記録も提出するマディファであった。

ご案内:「違反部活跡地」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「違反部活跡地」からマディファ=オルナさんが去りました。