2022/11/09 のログ
ご案内:「違反部活群/違反組織群」にエボルバーさんが現れました。
エボルバー > 日付が変わり月が見下ろす深い夜。
違反部活が犇めく落第街のとある一角は
無数の瓦礫と倒れて動かない人々が転がっていた。

それは落第街の奥地では珍しくもない
違反部活同士で行われたであろう抗争の果ての光景。
湧き上がる欲望に呑まれ、散っていった人たち。

そんな静まり返った残骸だらけの山にただ一つ動いている人影。
綺麗なスーツを身に纏っているその男は
倒れている人から転がる残骸まで眺めつつ散策しているように見える。
まるで何か探し物をしているかのように。
汚れのない綺麗なその身なりはこの場所の空気感とは乖離しており
不可解な印象を残す。

機械は変化のきっかけを探している。

エボルバー > >
>対象をスキャン...
>生命反応:無し
>特異性:未検出

>対象をスキャン...
>生命反応:無し
>特異性:未検出


スーツ姿の奇妙な影は虚ろな瞳を動かして
倒れている違反部活生だった者たちを見ている。
もう物言わぬ彼らの手元には銃火器や魔術用途の杖など・・・
最後まで戦おうとしていた意思が残り続けていた。
明日が保証されてない彼らなりの覚悟がそこにあった。

「・・・。」

そんな中、スーツ姿のソレが目を止めたのは一つの遺体。
その遺体は武器を手にしている訳ではなく
代わりに一枚の写真を血で濡れた手に包んでいた。
ソレは足を止めしゃがみ込み、手を伸ばす。

エボルバー > 伸ばしたソレの手が写真の一端を掴む。
まるですがる様に紅に染まった指で包まれていたそれは
すべるように遺体から離れ持ち上げられてゆく。
掴んでいた血が廻らぬ遺体の手は、名残惜しそうに地面へ落ちる。

「・・・。」

ソレは拾い上げた写真を見る。
それは、ブロマイドとも呼ばれる少し小さめのもの。
戦闘の余波と持ち主の血で汚れ、わかりづらくなっているが
そこに映っていたのは一人の女性。
長い金髪が特徴的で修道服を着た彼女は笑顔を浮かべている。

そして、写真を裏返すと、恐らく持ち主のものであろう筆跡で
こう書かれていた。


【何も無いぼくは、貴方に救われました。】


翡翠色の虚ろな瞳は抗争の最中、大切に持たれていたであろう
その写真を興味深そうに見つめるのみ。

エボルバー > 何故この人間だった者は武器ではなく、
このような写真を掴んでいたのか。
脅威が迫った時にヒトが持つべきものは、
立ち向かうための武器に他ならない。
写真は武器にはなり得ない。
ならば何故。

「・・・。」

ソレは思案する。人間の行動の意味を。
写真を大切に持っていた遺体の表情は死の恐怖に怯えたものではなく
ある種の諦めと何かへの感謝を含んだような穏やかな様相で眠りにつく。
その表情の意味を無機的集合体は理解しない。
一体この写真、被写体は息絶えたこの人間に
どのような影響をもたらしたのか。


>復元処理実行


汚れてしまった写真をよく見れば
端の方にアルファベットで何か書かれているのが分かる。

「・・・シスター、マルレーネ。」

並んでいる文字を無機的に呟く。
シスターとは、修道女の意を持つ単語。
その後に続くのは、被写体の名前だろうか。

エボルバー > ソレは写真を遺体の元へ落とす。
人間を支える未知の力。
必ずしも数値化を図れない力というものは
確かにこの世界に存在している。

「興味深い。」

人間は弱い。身体能力は高いとは言えず
心を持つがゆえに、精神的に折れてしまえば
再起不能になってしまうリスクを孕む。
しかし、心を持つがゆえに
時に絶望的な状況から立ち上がる。
不可能を可能にしてしまう。
だからこそ、弱い人間は長い歴史を築く事が出来た。

変化を求めるソレにとっても関心対象の一つである
人間の心が為せる強さ。
学ぶためか、あるいは打ち勝つためか。
進化を求め、ソレは夜の闇へと消えてゆく・・・。

ご案内:「違反部活群/違反組織群」からエボルバーさんが去りました。