2019/03/24 のログ
ご案内:「路地裏」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 「………。」

昼と夜の間の時間帯。
路地裏の一角で、街に不釣り合いな格好の女性が足を止めていた。

(………ここまでしか、追跡出来ませんか)

探査術式を再度、慎重に周囲に走らせ…落胆の息を吐く。

クローデット > 錬金術関係の魔術大会の発表資料の中に気になる項目があり、「自分の知らない錬金術素材提供元」について、周辺を個人的に洗っていたのだが。
…調べて行き着いた先が、落第街近くの私書箱だったのである。断定するものではないが、どうにも怪しすぎる。
そんなわけで、私書箱周辺の、関係者と思しき人間の足取りを辿っていたのだが…よりによってこんな場所で、追跡が出来なくなってしまったのである。

(これは…魔術的な隠蔽ではありませんわね?)

魔術的に気配を消したのであれば、発動の痕跡から追跡するのはそこまで難しくない。
しかし…よほど上手く隠しているのか、魔術以外の手段でまかれてしまったのか。

(恐らく後者だと思いますが…もう少し探りを入れてみましょう。
あまり、周囲を刺激したくはないのですが)

「自己責任」を承知の上で足を踏み入れているとはいえ、委員会の権限も今はない。
…委員会の倫理に縛られていない、とも言えはするが、正直に言えば、委員会の倫理よりも、自分自身の倫理観の方が、今は慎重になりうる自信があった。

そんなわけで、周囲を刺激し得ることはリスクでしかないのは承知の上で、探査魔術を詳細に仕掛ける。
どのように「消えた」のか、魔力の流れだけでも理解するために。

クローデット > 「………。」
(…やはり、術式発動の痕跡がありませんわね。魔術道具を使った形跡すら…)

探査して起こった事象を認識し、無言で片眉を動かす。
異能などによる隠蔽や移動は魔術と違って「理屈がない」ことが多く、魔術による追跡の難易度が上がりがちだ。

(…よりによってこんなところでこんな消え方をするとは…何と念の入ったことかしら)

青い瞳が宿す光の温度がガンガン冷えていく。本当に、怪しい要素しかない。

クローデット > (さて…今のわたしにこれ以上出来ることは…)

その場で、羽根扇子で顔を隠しながらしばし思案する。

一応、今の所は合法な団体というか法人というか部活というか、そういうことになっている。
委員会権限のない自分が調査することは出来ないし、委員会権限があったとしても、踏み込むにはあと一手が欲しい。
囮として利用するか?追跡確度は恐らく上がるが、一時的にとはいえ適法性の疑われる相手に金銭の提供をしてしまうのはひどく気が咎める。
…そもそも、委員会を退いて金銭的な余裕が目減りしている自分は、特に生活に困るまではいかないにしろ余計な出費もしたくはないし。

「………。」

羽根扇子で隠していない目元が、不機嫌に細くなる。

クローデット > (…いっそ、調べる経路を変えれば…)

クローデットは、ここで一度発想の転換を試みる。
錬金術の素材が違法に採取・提供されているとして…一番の問題になるのは、そういった材料を生み出す生命…特に、本来ならば社会に溶け込むことが可能なはずのもの達…が、不当に虐げられている可能性だ。
であるならば、転移荒野や落第街界隈でそういった存在の消息などを調べていけば、何か手がかりがあるかもしれない。
しかし…

(随分と、手間のかかることになりそうですし…何より、今のわたしに…そういった形で人々に関与する、資格などあるのでしょうか)

羽根扇子で隠せない視線が、物思いに沈んで地に落ちる。

クローデット > (………もう少しだけ、この手法で探ってみましょう。
微かでも手がかりが得られれば、人手のある委員会に持ち込んで、適切に処理して頂けば良いことですし…

…わたしはここに長く留まるべきではありませんから…今日は、ここまでといたしましょう)

かつて、公安の魔女として、随分ここの住人を痛めつけた。
あまり長居して、下手に刺激すべきではない。

一つ嘆息した後、クローデットは路地裏から姿を消したのだった。

ご案内:「路地裏」からクローデットさんが去りました。