2019/05/19 のログ
■金剛経太郎 > 「……むぅ。」
閉じていた瞳に熱がこもる。
視覚を共有するとはいえ、そもそも操作権は経太郎にあるのだから、本体の目が閉じていたとしても疲労してしまう。
暫くは乱闘の様相に変化は訪れないだろうと見て経太郎は静かに目を開けて【弓兵】との視覚共有を終了した。
「これは慣れていくしかなさそうだ……スキルレベルに近いな。
ふ、面白い……生身ではこうなるんだな。」
ゲーム内では疲労なんて感じることは無かったからな、と物陰で息を潜め、しかし楽しそうに経太郎は肩を揺らした。
■金剛経太郎 > 「ふ、くくく……この力には他にどんな機能があるんだろうな。」
自分の手を見ながら経太郎は不気味に笑う。
ゲーム中でのアバターを自分の分身として顕現させられる力、と経太郎自身は認識しているが、
では果たしてどこまで自分と同調させられるのかという疑問が以前からあった。
少なくとも動くことと視覚の共有は可能で、どちらも特別な所作を必要とはしない。
自分の身体を動かす様に念じる、あるいは意識を分身へと集中させることによってほぼ思い通りに行える。
「とはいえゲーム内のスキルのようなものは扱えなかったが。
当然と言えば当然か。ここはゲームの中などではないからな。」
手を意味も無く握り、開き、口の端を釣り上げてから目を閉じる。
再び視界を弓兵の物へと切り替えれば、喧嘩していた連中は共倒れになって道の端に積み重なっていた。
■金剛経太郎 > 「ふむ、どうやら片付いたようだ。
これ以上留まっていれば次に何か起きた時に巻き込まれかねんな……」
死屍累々といった見た目でこそあれど、死人はどうやら出なかったらしい。
気絶した男たちが引き摺られ、近くの酒場に放り込まれていく様子を“視て”から、経太郎はそっと目を開いた。
「夜も更けて来たし、早々に帰るとするか。
……まったく、いつまでこの見回りを続ければ良いのやらだ。」
欠伸を噛み殺しながら物陰から這い出て、小さな体を更に屈めながら人目につかないよう足早に立ち去るのだった。
ご案内:「路地裏」から金剛経太郎さんが去りました。