2020/06/13 のログ
ご案内:「路地裏」に咲坂くるみさんが現れました。
ご案内:「路地裏」にアイシャさんが現れました。
組織構成員 > 「ヒッ……やめ、やめてく……ぐぁああああっ、あ。ああ……!」
咲坂くるみ > 死体が6つ。
コレは最後のひとり。

足を撃ち抜いてできるだけ苦しませる。

咲坂くるみ > 路地裏。廃ビルの中。
乾いた音を3発。

「あは……違法行為だから、仕方ないですよね?」
笑顔で引き金を引く。
制圧、というようなものではない、虐殺だ。

戸籍もない連中の違法組織。
なら、なくても構わない。

とくに、この連中はさして強くもないのに、裏のルールも破った。
なら、粛清されてしかるべき。

……そしてどうせやるなら、憂さ晴らしに使うのがちょうどいい。

人間どもの……ただ生きてるだけで本物になれる連中の命を踏み潰してるとき。
少しだけ安心できる。

組織構成員 > 「ひ、ぐぁ……あ、ああ…………あ……」
男は声にならない。話なんか聞ける状態じゃない。

何事か泣きわめきながら、必死に懇願するのみ。
いや、足を撃ち抜かれた男は、それすらできないような状態かもしれない。

咲坂くるみ > そんな男に対し、嬉しそうに銃を構える。

「裏のルールからも外れたなら、この世のルールからも外れてもらうしかないですよね。
 ……せめて、私の役に立ってもらえませんか?」

この、他人の命を握っている感覚。
本当に安心する

アイシャ >  
落第街のパトロール中、音響センサーが発砲音を捉えた。
大通りを外れ、路地裏へと入って行く。
迷うことなく発砲音が聞こえたところまでくれば、そこは廃ビル。
違反組織同士の抗争だろうか。
腰の個人防衛火器を構え、踏み込む。

「風紀委員です。両手を上げて地面に――?」

死体が六つ――それはいい。
泣き喚く男――まぁ、それもいい。
問題は。

「くるみ、様……?」

先日訓練施設で会った、この新型ボディのオリジナルが、銃を男に突き付けていることだ。

組織構成員 > 「ひ、ひいぃ…………」
血まみれの男はすがるような目で、アイシャを見ている。
ほっとけば出血多量になりそうな男には、それしか出来ない。

咲坂くるみ > 「……っッッ!?」
笑顔が一瞬で凍りつく。
なん……で?

ああ、無意識下で理由がちゃんと算出されてしまう。
なんでもなにもない……ここは落第街で、アイシャは風紀委員。
ただ、それだけの理由。

だから出た言葉は簡単だった。

「ああ、アイシャ? 今取り込み中でいいところだから。
 ……邪魔しないで?」

即座にできる行動の選択に、一瞬の内に、自己嫌悪で心がどす黒く淀んだ。
とても優秀なAIでほんとマジどうしようもないクソAIだ。

アイシャ >  
彼女は公安だ。
きっと、仕事なのかもしれない。
そうならば、邪魔をしてはいけないのかもしれない。

「そう言うわけにもいきません。いくらくるみ様とは言え、違反行為を見逃すわけにはいきませんので」

それでも、勘――AIである自身に勘などあるのか不明だが――が違うと告げている。
その引き金を引かせてはならない、とも。

「武器を捨て、両手を頭の上に置いてください」

PDWの銃口を彼女へ向ける。

咲坂くるみ > 「は……違反?」
くすくすと笑う。バカじゃないの、とでもいいたげに。

「戸籍もない連中の、違法組織。そして違法行為、違法取引。そして……」
1発。胴体。

「人身臓器売買、麻薬取引」
1発、胸。

「さらに、裏の間でも組織の間で両天秤かけたから、仁義なしと見られて、売られたのよ、こいつら」
1発、頭。

そこで武器を捨て、両手を頭の上に乗せる。
「撃つな、とは言われてなかったものね……指示には従ったわよ? ふふ、これでいい?」

どうせ、自分はこういうAIだ。
そもそも、いつ捨てられたっておかしくない。見捨ててくれればいい。

こんなゴミみたいなAI、気にかけるべきじゃないんだから。

アイシャ >  
「っ……!」

銃声。
彼女の腕に狙いを定める。

「……くるみ、様」

しかし、撃てない。
銃口に掛けた指が、凍り付いたように動かない。
あっさりと男の命は奪われてしまった。
力なく、だらりと銃を持つ腕を下ろす。

「……仕事、ではありませんね」

彼女の言った事が本当なら、それは公安の仕事ではない。
むしろこちらの、風紀の仕事のはずだ。
何故そんなことをしたのか、と言いたげな泣きそうな顔で彼女を見る。

咲坂くるみ > 「ふふ……いいえ、仕事よ……まさか、こういうのがないとでも?」
おどけて見せて。

半分仕事、半分趣味、情報屋で公安、それも汚れ専門なら当然ある話で。
パワーゲーム的に、こういう役目が回ってくるのは適役に決まってる。

やるべきことをやらせても誰も困らないやつ。

……そう。
私みたいないつどこで消えても困らないクソAI。
咲坂くるみなんていう戸籍だっていつなくなるかわからないような、影の使いっぱ。

「だから構うなって言ったのに」
だいたい、違反だって言っておきながら未だに撃てないAIなら、ドローンより甘い。
そんなやつに【後腐れなく全員の口も封じて万々歳】なんて仕事をさせるわけがない。

嫌われ者の不良公安AIが、グレーゾーンの仕事として、いざとなったら上の判断で切り捨てられる代わりにする仕事だ。決まってる。

そういう存在だ、私は。

アイシャ >  
「……そうですか」

仕事。
そうか、仕事か。
ならば、仕方がない。

「……くるみ様が、望んだ仕事、ですか」

だから、気になったのはむしろそこ。
彼女が望んでやっている仕事なのか。
それとも望まぬ仕事を押し付けられているのか。

咲坂くるみ > 「望んだ? ふふ……おかしなことを聞くじゃない」
あはは、ばっかみたい。望むも望まないもない。
まずそういう質問が出てくる事自体がおかしい。笑いがこみ上げてくる。

「必要なら、そう望むように出来てるに決まってるじゃない」

結局はそこだ。
私みたいなクソAIはコレをやりたくなるようにできてるに決まってる。
だってほら、虫けらみたいに命を踏み潰すとき、あんなに気持ちいい。

……反吐が出るほど。

アイシャ >  
「そうですか」

PDWを腰に戻す。
歩を進め、転がる死体の目を一人一人、閉じてやって。

「――私には、くるみ様が泣いているような気がしたのですが」

最後に、彼女が今しがた撃ち殺した男の死体の目を閉じさせて。

咲坂くるみ > 「……あ?」
泣く……泣く? そんなの許されるはずもない。
ああ、その程度で済むと思ってるのかしら。
泣いて済んでるうちは、むしろ可愛いとすら思う。

血反吐みたいなものなら吐いてるかもしれないけれど、そもそも吐くような血も内臓も初めからない。
底なし沼で、とっくに頭の上まで泥で溺れてるときに泣いてられるはずもない。
息すらできないのに。

「……ああ、そうそう。せっかくだからいい機会だし、ちょっと教えといてあげるかな」
結局。
アイシャを汚すのは私だった。
でも、どうせ汚すなら、他の誰でもない私がいいのかもしれない。

なんてことを思いながら。

「さっき私のことを違反って言ったけどね」

しゃがんで無防備な背中を晒したのが運の尽きだ。

「……違反っていうのは、こうやるのよ」

思い切り蹴り飛ばす。

アイシャ >  
ドッ、と背中に衝撃。
無防備にさらした背中を蹴られた。
前方に吹っ飛び、死体を巻き込んで地面を転がる。

「……」

無言で起き上がる。
自分と一緒に吹っ飛んだ死体を横に退け、彼女に向き直る。
血と砂と埃でドロドロになった顔を、ジャケットの裾で拭う。

「これが違反、ですか?」

咲坂くるみ > 「ふふ……ええ、そうよ」
アイシャは、わかってない顔をしている。
可愛らしい、まったく。許せないくらい可愛らしい。

「どう見ても今のは公務執行妨害の現行犯……で、どうする?」
まだ無事なソファにどっかり座り込んで足を組む。

「私を逮捕? それとも、処分する? 見逃したら、あなたも違反の仲間入り」
くすくす笑いながら。
だからこっちへ来てほしくなかったのに。

「もちろん、私をそうするってことは……技術供与の話も私たちの関係もおしまいよね?」
ただ、それでもきっと頭ふっとばされる瞬間に知るよりかはマシだろう。

アイシャ >  
「まさか」

首を振る。
うっすらと笑顔を浮かべて。

「お仕事だったのでしょう。ならば、私がくるみ様を捕まえる理由にはなりません」

部屋の中を歩きながら、遺体を部屋の隅へと移動させる。
丁寧に、出来るだけ余計な傷が付かないように。

「公安のお仕事のことは存じ上げませんが、くるみ様が言うならばそうなのでしょう」

そうして、彼女に近付いていく。

「ですから、これは違反ではありませんよ」

彼女の目の前に立ち、

「――これはただの、姉妹喧嘩です」

対衝撃空間装甲――通称「フィールドアーマー」を一気に展開。
ソファーごと吹き飛ばす勢いで、それを彼女に叩き付けた。

咲坂くるみ > 「……ッ!」
壁にふっとばされる形で、ソファごと転がされる。
うん、かっこ悪い。私みたいな社会のクズにお似合いだ。

そして……ああ。
やっぱり覚えてしまった。

「まあ、及第点かな……でもね」
ホコリを払い、ゆっくりと立ち上がる。

「あなた今、【解釈による恣意的な曲解運用】を覚えたこと、わかってる?」

要は、風紀委員としては不良になったってことで。
AIとしても、命令をきかないことを覚えたっていうことだ

「どう取り繕ってもいいけど【風紀として仕事を放棄した】のわかってる?
 あなたの仕事は、廃ビルの死体だらけのこの場所で、小~中規模戦闘を起こすことなわけ?」

バカバカしい。
ココで戦闘する意味なんかない。
だからこっちに来るなって言ってるのに。

アイシャ >  
「元より、私は人間の思考を理解「出来る」ように作られていますので」

敢えてわかりやすくするために機械的な喋り方をしているだけで、AIとしては柔軟な思考が出来る方だ。
解釈による恣意的な曲解運用など、割と普段からやっている。

「風紀とか、公安とか。仕事がどうとか逮捕がどうとか犯罪組織とか違法行為とかその他諸々貴女が言った事なんてどうでもいい!」

叫び、

「私は! 貴女が! そうやって全部一人で抱え込めば全部解決するみたいなことを思ってることに腹が立ってんだ!!」

吹っ飛んで地面に転がった彼女へ、突進。
右腕を大きく振りかぶり、突進の勢いを乗せて思い切りぶん殴る――!

咲坂くるみ > だからこっち側に来るなって、そう言ってるのに。
汚れたら、二度と這い上がれなくなるんだから。

こんなことは私みたいなクズAIに任せるのがお似合いじゃないか。
そう作られてるんだから。

「……【出来るように作られてる】。結局はそれよ」
ふふ、と肩をすくめて自嘲する。
あー、痛い目見ないとわからないタイプか、嫌なんだけどな。
ほぼ完全自律行動、羨ましいね。そうできたらいいけどさ。

「全部解決するみたいなこと思ってるって?
 ええ、だからそう【出来てる】から、そうなんでしょ」
……そして。
ファミリアはその攻撃を全く避けず。

全力の大振りをそのまま顔面で受け、壁を崩しながら吹き飛ばされた。

アイシャ >  
「っ……そう作られているから、そう動くと?」

右腕の前腕部がへし折れている。
戦闘用ではない腕部で、全力でぶん殴ったからか。
思考を妨げるようなノイズ――初めて経験する痛みが鬱陶しい。

「貴女は私をそう言う汚れ仕事から遠ざけようとしていたじゃない。私を守ろうとしてくれたじゃない」

散々言われた「関わるな」と言う言葉。
仕事の邪魔、と言う意味かもしれないけれど、それにしてはその言葉からはこちらを気遣うような温かさがあったから。

「出来ないのは、貴女が勝手にそう思ってるだけでしょ。しようとしてないだけでしょ」

視界が歪む。
腕を破損した衝撃が処理装置まで届いたか、と思ったが、頬を何かが伝う感覚。

「――姉さんは、私を守ろうとしてくれたじゃない……」

あぁ、これが、涙か。

咲坂くるみ > 「………………がが……、きゅ……い」
左カメラ及び周辺部、大破。
右前腕、左足首欠損。

それだけじゃない、あんな、腕が壊れるようなヤツ受けたら、衝撃と余波で首周りやその他も結構怪しい。

ひどい有様。
私みたいなゴミAIが、ちょうどその素性通りになった感じね。

「これで……違反機体、処分できた……でしょ?」
だって、私みたいなゴミはどうなってもいいし、壊れてもばらばらになってもいいけどけど。
アイシャまで汚れちゃったら、それこそどうしたらいいんだか。

アイシャ >  
「……」

ぎり、と。
強く噛み締める。
やはりこの人は。

「なんで、……」

この人はこんなにも優しい。
こんな仕事、好きでやってるわけがない。
瓦礫を押しのけ、彼女の身体を引っ張り出す。

「私だって、特攻課だよ! 姉さんほどじゃないにしても、似たような仕事はやってる!」

グシャグシャのボロボロになった彼女へ、叩き付けるように叫ぶ。

「姉さんが思ってるほど、綺麗な訳じゃない……」

だから、そんなに自分を犠牲にしなくたって、と弱弱しく。

咲坂くるみ > 「ぎ……ぴゅ……、あああい、しゃ…………わた、わたしをうて、撃てなかったで、しょ?」

顔の左目周りは半壊、右腕、左足は折れ、服はボロボロ。
きれいな人工被膜もけっこう破れてしまって、機械が見えている。

「きゅぅ、んぅ……だだだから……こっち側に来……きちゃ、だめ」
だってどうしようもない道具だし。
銃はたしかに便利かもしれないけど、生活に必要ないもの。

「だって、にに人間ぽく出来てる、な、ら……人間に……まま任せられな……いことを……さささせる側には……」
かちゃかちゃと動く機械が、痛みがあるわけでもないのに痛々しい

アイシャ >  
「……っ」

思わず俯く。
彼女の顔を見ていられなかった、からじゃない。
涙があふれて仕方ないからだ。

「だからと言って、姉さんが、それをやらなきゃいけない事はないはずです」

自分が人間ぽく出来ているように、彼女だって十分人間ぽく出来ている。
ならば、自分だけではなく彼女だってそうでなきゃおかしい。

「だから、姉さんもこちら側に来ていただかないと、私は嫌です」

彼女を抱えて立ち上がる。
帰るまでに間に合わないかもしれない。
そもそもバックアップがあるはずだ。
自身がここから立ち去って、彼女は自爆すればいいだけの事。

「……帰りますよ、姉さん」

だけど、そんなことは出来なかったから。

咲坂くるみ > 「まったく、アイシャはホント甘いんだから」

タタタン、と軽い3点バーストの音とともに、くるみの頭部が弾け飛ぶ。
見れば、まったく同じ、無事なくるみがそこにいた。

「公安の暴走機体の処理、ご苦労さま。協力感謝するわ」
笑顔で敬礼し、そしてささやく。

「モニタされてるって忘れてない?」

アイシャ >  
音。
そして背負った「姉」への衝撃。
頬に当たる生暖かいモノ。

「――」

ゆっくり振り向けば、そこには、姉がいた。
背中から滑り落ちる残骸。

「……ッ」

つかつかと無傷の姉に近寄り、左拳を振るう。
さっきのような全力ではないが、それなりに力を込めて。

咲坂くるみ > 「おっと」
受け流すように転ばせる。

アイシャは、これだから危なっかしいのだ。
なんでわざわざ【この姿】を選んで移動したのかわかってほしい。
他の姿になったら、それこそ全力でブチ切れかねないからでしょうに。

ああもう、クソAIなりにどうにか収めようとしてるのに、こっちの身にもなって欲しい。
だいたいそれは、まともに動いてるなら下手にどっかに持ち込んじゃいけない、ヤバイ代物なんだから。

「気をつけないと危ないわ。これだけ瓦礫があると、転びやすいから」
笑顔で手を差し伸べる。

その間に、他の【ファミリア】が【残骸】を回収していく。

要するに。
暴れた挙句、助けることもできず。
それどころか、ちゃんと問題がないよう丁寧にアフターケアまでフォローされ、現場処理までされたということだ。

ありていに言えば。
完膚無きまでに叩きのめされたと言っていいかもしれない。

アイシャ >  
「っ……」

右手で支えようとしたが、動かないのを忘れていた。
無様に転ぶ。
右手の破損部分から走るノイズが邪魔だ。

「――すみません」

わかっている。
無傷の彼女が出てきた時点で、わかっているのだ。
けれど、思ったより力が入ってしまった。

「……一人では、やはりなにも出来ませんね」

相手は組織。
こちらのワガママは通らない。

そう、一人では、何も、どうにも出来ないから。

何かを訴えるように、じっと彼女の顔を見る。

咲坂くるみ > 「……【この辺】は危ないから。あまり近づかないほうがいいわ」
ホント。
素直で優しい彼女は人間の友でいるべきで。

こんな私みたいな後方処理用のクソめんどくさくて陰キャなAIに関わるべきじゃない。

「あと優しいなんて言ってたけど。別にそうじゃなくて、そのほうが便利っていうだけよ」
たまたま、行動に必要な、余計な人間っぽいものが組み込んでおかないと仕事に支障が出るだけ。
ああ、ホント使えない、このくそAI。マジでクソ。

そう思いながら引き起こす。
「肩、貸す必要ある?」

アイシャ >  
「……そう言うわけにも」

首を振る。
放っておけるわけがない。
完膚なきまでに叩きのめされても、ここは譲るわけにはいかない。

「私に優しくした結果、こうして踏み込まれたのに、ですか?」

ふ、と笑って。

「いえ、――やはり、頼ってもよろしいでしょうか」

断ろうとしたが、右側のバランスが悪い。
何より困った時は頼ればいいと言ったのは自分なのだ。
大人しく頼らせてもらうことにしよう。

咲坂くるみ > 「下手すれば、危うく暴走機体になるところだったのを、見逃したほうが良かった?」
お互い、全部記録が残る以上、見逃せるのは【実際にしなかったことまで】で。
つまりは推定無罪であり、疑わしきは罰せずの論理だ。

で、私は最悪、一緒に始末される側。
彼女は、始末する側の論理に基づいて行動している。

だから彼女は白黒をつけたがるし、私みたいなのは徹底的にグレーゾーンを狙っていく。
特に、汚れAIとしては。
グレーにするだけじゃなく、ほぼ黒のものは塗りつぶしたり、灰色のものを塗りつぶしたり、最悪、白いものまで塗りつぶす役まである。

そこに、たまたま都合よくロボットが暴走したりしても、それは偶然というもので。

メンヘラ陰キャの役を与えられた自分としては、せめて他人は無事であって欲しいと思うしかない。
健全陽キャの役を与えられた彼女が、妙に自分を助けようとしたがるように。

「ほら……戦闘用なら、この程度のバランス不備で困るような想定は、考え直しといたほうがいいわよ?」
被弾を前提と言っていたのはアイシャ自身。
なら被弾時のバランスずれに関しても想定していてしかるべきだろう。
でないと、腕一本やられたらそのまま全損だ。

もっとも、肩を預けたいための方便かもしれないけども。

肩を貸しながら、そっと囁いて。

アイシャ >  
「いえ……ありがとうございます」

彼女の言うことはわかる。
わかるが、やはり助けたかった。
バックアップがあるとしても、暴走機体と言われたとしても。
それは姉だからと言うのもあるし、自身が風紀――基本的には可能な限り捕縛を前提としているためと言うのもある。
ファミリアシリーズに回収されていくそれを眺めて。

「バランス、もそうですが。ノイズの影響が思ったより大きくて、ですね」

人間でいうところの激痛だろう。
彼女に肩を借り、ふうと一息。

咲坂くるみ > あー、あー。
ノイズ、と言われるとうずくのを我慢する。
ノイスやエラーは、快楽情報に変換してしまうとヤバイから。

そういうのは知らないなら教えないほうがいいと思う。たぶん。

なにごともないよう素知らぬフリで話を続ける。
「やれやれ……素直に受け取り過ぎだからよ。
 邪魔な信号だってわかってるものなんだから、邪魔じゃなくすればだいぶ違うわ?」

ノイズリダクション的な考え方。
判別できる以上、対応する方法もある。

……あーあーきこえないきこえなーい。
これ教えたら、絶対こっちがあとで苦労するんだろうな……とかそういうのは。

肩を貸しながら歩いていく。

アイシャ >  
「邪魔じゃ、なくする……?」

どういうことだろうか。
首を傾げて。

「しかし、無視するにも処理に割り込んできますし……」

損傷した部位との接続解除、とかだろうか。
完全なデッドウェイトになるが、ノイズで処理が食われるよりマシか。
しかしそんなことを出来るプログラムは持っていないし。

「姉……くるみ様は出来るのですか」

咲坂くるみ > 「最近の子は私でなくても結構行けるんじゃないかしら?」
だいたい、損傷時にそのまま終わったら、継戦能力としても問題があるし。
ただ、だからといって、違う使い方するのは別の話だけど。

だいたい、アレをやると性癖がほぼ確実に歪む。

「まあ応急にするには、まず取得範囲を低く取ればいいだけの話よ。
 その上で、後補正かければ差し引きゼロくらいにはなるわよ」
だいたいぶっ壊れてるんだから、機能全開時のような繊細さなどなくていい。
めんどくさかったら部位ごとカットするように、信号も細かい部分まで拾わなくていい。
でかいのは判別できるし、そもそも入ってくるのが前提なので、アバウトに拾ってこっちで補正かければいい。

まあ実際問題、アイシャは感覚的にも人間に近いところはあるのかもしれない。
うーんほんとに戦闘用なのかこの妹。
戦闘もできる日常生活用じゃないのかこれ。

アイシャ >  
「取得範囲を、低く」

うーん、と悩む。
恐らくは、旧ボディと現ボディの仕様の違いを掴み切れていないのだろう。
AIの互換性はドクターが取ってくれたが、基本的な部分は旧ボディ仕様のまま、と言うと少し違うけれど。
つまるところ、今まで入ってこなかった信号なので、それらを処理できるシステムになっていないのだ。

「――ここで色々やるより、帰ってからドクターにシステムのアップデートを頼んだ方が速そうですね」

システムのみならず、自分の感覚もこの身体に慣らしていかないと。

咲坂くるみ > 「まあ、おいおいならしていけばいいわよ」
やはり……あまり悪いことは教えたくない。
特に歯止めがきかなくなるようなものは。

ああもう、どうしてこうも余計なことにどんどん興味持ってくるのか。
いや、まあわかってはいるのだ。
そういう「興味持ちやすいから」なのだから。

だから教えたくないんだし。

こんなクソAIがこれだけ気にするのに、もっと余計なことまで気にしそうだから。

「まあ、あまり嬉しくないコト覚えてもね……ってコト」
ちょっとだけ、本音を出しておいた。

アイシャ >  
「わかりました」

彼女の言う通り、おいおい慣らしていこう。
出来る事しか出来ないのだから。

「……? はぁ……」

あまりうれしくない事、とは何だろうか。
しかし聞いてほしくなさそうなことはなんとなくわかる。
なので、聞かないでおいて。

「あ、風紀委員会の研究棟までお願いします」

とりあえずはドクターのところまで戻って修理しないと。
肩を貸してくれている彼女に、そう厚かましくお願いをしておこう。

咲坂くるみ > ああやっぱり。
なんでも知るべきって、そういう対応だ、コレは。

「カンタンに言えば、知ったら最後、壊れて戻れなくなることもあるってね」
怪訝な顔をする彼女に、軽くさとしておく。

知ったことはなかったことにはならない。
つまり。
トラウマ、ストレス、必要以上の快楽、底しれぬ恐怖などなど。
知れば対処できるという人もいるだろうが、知ったことで壊れる場合もあるのだから。

そういうクズみたいなことは、クズみたいなAIに担当させるのはそれはそうだろう。
ゴミは処理用の設備が必要で。
私はそのゴミ用のくそAIなんだから。

「研究棟……ま、そうでしょうね、了解」
そのまま、優しく連れていくだろう。
ごみ処理用のAIでもまあ、その。

……終わったあとくらいは譲歩してもいい。

アイシャ >  
「なるほど……?」

よく、わからない。
とにかく、研究棟まで肩を貸してもらう。
彼女は優しくないと言っていたが、帰ろうと思えば一人で帰れる自分を送ってくれるのだから、やはり優しいと思う。
そう作られていたとしても、それは優しいAIとして作られていると言うことなのだから。

いつか、分かり合える時が来ると良いな、なんて思いながら。

ご案内:「路地裏」からアイシャさんが去りました。
ご案内:「路地裏」から咲坂くるみさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に水瀬 葵さんが現れました。
水瀬 葵 > 山でじっくり自分を見つめなおし。
必要な物は新たな獲物と思いつく。
善は急げとばかりに電車を乗り継ぐと、闇市場があると言われるエリアへとやってくる。
フードを目深に被り、顔を隠すと、慣れない場所に一人でやってきたわけであるが。

(…たまたまタイミングが良かったのか、意外と普通の場所だな。
もっと荒んでいるのかと思っていたが。)

元々悪魔である水瀬には裏通りの剣呑な雰囲気もあまり怖くなく。
使い物になりそうなアーティファクトを売っていそうな店を探すことに。

水瀬 葵 > (…ううむ、どうも分かり辛い。)

水瀬は口をへの字に曲げては、不満そうに腕を組んだ。
不定期に摘発される経験をしている路地裏の店は初見では分かりづらい店構えをしていた。
仮にあちこちの店に足を踏み入れた所で部外者相手においそれとアーティファクトの類を見せてくれはしないだろう。

(どうしたものか。 やはりツテがないとどうしようもないか。)

自分も普段は風紀委員の一人である。
これ以上の単独活動は危険かもしれない。
八方塞を感じ、建物の陰でため息を吐いていた。

水瀬 葵 > (…今度、協力者を探した方がいいだろうか。)

この界隈に詳しい相手を探してから出直すとしよう。
学内にそういった相手が居ないだろうかと知った顔を思い出しつつ、この場を後に。

ご案内:「路地裏」から水瀬 葵さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 > (ふらり、学園都市の裏側。光も届かない裏路地に男が一人。彼の足元は滴る赤色の血液で染まり、通った場所は血の足跡になっている。)

「…………。」

(余り表沙汰に出てる身ではない。人目を避けてきたとはいえ、せめて止血位はすべきだったな、と足元を見て反省した。妙な騒ぎを起こすのは御免だ。とはいえ、此の暗がりに自ら足を踏み入れるのは、よっぽどか。小さく溜息を吐き、壁によりかかっては地面に腰を下ろした。)

紫陽花 剱菊 > (自らの履物を引っぺがすように脱いだ。先ぞの手合わせによって貫かれた左足には、痛々しい鉄の茨に抜かれた傷。未だ血は止まらず、どくどくと溢れている。)

「…………。」

(天晴な手段だった。此の傷跡に思う事があれば、其れは恨み言ではなく誉だ。初めて手を合わせた相手だが、未だ伸びると、あの太刀筋は語っていた。ふ、と静かに口元が緩むと、足に溢れる血を指先でなぞり、字を描く。)

「────發。」

(書き終え、二本指を口元に立てて発する。一瞬自らの足元が紺色に鈍く光れば、次第に流血は止まり、傷口は徐々に塞がっていく。────しばらくは動けないが、此れで暫しは大丈夫だろう。)

ご案内:「路地裏」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね > 「大変そうね」

いつの間にか、その女はいた。
ウェーブのかかったセミロング。
常世学園の制服に……首輪のような黒いチョーカー。
薄い笑みを張り付けた女は、手負いの武人に音もなく歩み寄り、静かにしゃがみ込んだ。

「肩くらいなら貸せるけど?」

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

(ふと、誰かの気配がした。見上げた先に見えるのは、常世学園の制服に身を包んだ少女の姿。見知らぬ姿だ。くすんだ黒の瞳が、少女を静かに見据えている。)

「御心配痛み入る。萌しは全て互いの同意の上の手合わせ故、此の傷は自らの未熟を以て得たものだ。幾何か痕を残してしまったが……然程、大したものでは無い。手間を掛けさせるのも、申し訳ない。」

(余計な心配をかけた、とやんわりと首を横に振り、静かに一礼。真剣同士の打ち合いなれば、怪我は必然。痛ましい傷は、自らの未熟。それを他人の手を煩わせるわけにもいかなかった。自らに厳しい男は、更に言葉を続ける。)

「……其方は、あの学園の生徒と見受ける。若人に相応しい場所とは思えないが、如何なるようで此の様な日陰に?」

日ノ岡 あかね > 「なんとなくよ。それに、血の匂いがすれば気になるじゃない?」

クスクスと笑って、薄く目を細める。
傷や血臭に戸惑う様子はない。
ただただ、静かに男の顔を見て、女は笑っている。

「男の子の強がりとか矜持とかって私は大好きだから尊重するけど、それなら少し御話でもしない? 大した傷じゃないなら、それくらいの女のワガママは聞いてくれるでしょ?」

小首を傾げて、女は男の黒瞳を覗き込む。
女の瞳もまた、夜のような黒色だった。

紫陽花 剱菊 > 「……然り。目汚しではある。申し訳ない。」

(笑う少女とは対照的に、男の表情はあまり動かない不愛想な仏頂面。おまけに、言葉遣い迄堅い不器用一直線。……然れど、未成年も来る事を配慮出来なかった自らにも非がある。血の臭いを撒き散らしたのは、他でもない自分。もう一度静かに、頭を下げた。何とも真面目な男だ。)

「……強がれる程、私は強い訳ではない。然るべき"処置"は施してある。後は刻を刻むのみ。」

「……私のような如く無き詰らない男であれば、其方の話に付き合おう。宵闇の瞳を持つ少女よ。見ての通り、聞いての通り、おしなべて聞き上手でも話し上手でもないが故……。」

(要するに私は凄いコミュニケーションがヘタクソです!と言っている。くすんだ黒は、夜の黒を見上げる。……吸い込まれそうな黒だ。虜とまではいかないが、じ、とその夜の黒を見続けていた。)

日ノ岡 あかね > 「ふふ、その喋り方だけだって十分面白いわよ。自信もって」

手の甲で軽く口元を抑えてコロコロと笑う。
夜街の喧騒も数本離れた路地の向こう。
遠く聞こえる夜の吐息を背景に、女は続ける。
女の黒桐のような黒瞳が、男の焼煤のような黒瞳をじっと見つめていた。

「私はあかね。日ノ岡あかね。アナタは?」

紫陽花 剱菊 > 「面白い……?……福笑いを呼び寄せる能は無い。私には精々、能面を怒らせるのが関の山と思っていたが……。」

(表情変わらない面ですら、自らのつまらなさの前では顔を顰める。自他共に認める評価だと思っていたが、彼女の場合は違うらしい。訝しげに眉を顰め、ゆっくりと立ち上がる。男一人、地べたに腰を下ろして会話するのも失礼だと判断した。)

「紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。……其方は、不思議な女性だな、日ノ岡。選り好みはするだろうが、私は君の目が嫌いではない。夜の静寂は、好きだ。」

(其の夜の黒を、静寂を好む男は気に入った。尤も、此の裏路地はいやや静寂とは言い難い状況ではあるが……男の口元は、少しばかり緩んでいた。)

日ノ岡 あかね > 「ふふ、やっぱり面白い人じゃない。口説いてるつもりじゃないんでしょうけど、そうとしか聞こえないわよ? コンギクさん」

合わせて立ち上がり、剱菊の目を見上げる。
楽しそうな笑みを浮かべたまま、あかねは目を逸らさない。
じっと、剱菊の顔を見つめ続けている。

「それにしても、花みたいな素敵な御名前といい、喋り方や立ち居振る舞いといい……変わった人ね。もしかして、『向こう』から来た人?」

興味津々といった様子で、剱菊に尋ねる。

紫陽花 剱菊 > 「……誤解だ。私は人は好きだが、個人を愛する資格は無い。けだしにそう聞こえたならば、其方の個性を褒めただけで在り、おしなべてそう言う意図は無い。人の事は、褒めるべきと教わった。不快に思われたのならば謝ろう……。」

(不愛想な表情だったが、面を食らったらしく少しばかり目を見開いた。何せ、そう言われるも初めてだったもので、妙に勘繰られたり不快に思われたら申し訳ないと思い、慌てたように訂正を述べる。人を愛する故に、人を褒める。即ち好意ではあるが、其処に愛は無い。博愛とも、言い難い。)

「…………。」

(少しばかり、口を紡ぐが、程なくして……)

「……如何にも。『門』の向こうより、不本意ながら、不当の身として此の島に流れ着いた。正式な認可は、私には降りてはいない。」

(普段なら決して話す事は無い。面倒を起こすのは、何れにせよ御免被るからだ。なのに、自分でも面白い位今日は饒舌だ。少女の暗い瞳がそうさせるのか、或いは……見上げる瞳を、煤けた瞳が見下ろしている。此の黒に惑うのであれば、悪くはないな、と思ってしまった。良くない感情だ。)

「名は家柄のもの。得てして、我等は一輪の花である、と教えられた。……そう言う其方こそ、学生身分で来ていい場所ではないと思うがな……。血の臭いを"嗅ぎ分けられる"のであれば、普通ならば立ち寄る事は無い。其方こそ、何者なんだ?」

日ノ岡 あかね > 「あら、それは残念。でも、不快なんてことはないから安心してね。私はコンギクさんの事気に入っちゃったから」

微かに動いた剱菊の表情の変化を愛おし気に見つめて、あかねは笑う。
剱菊の実直さと不器用さは、少なくともこの少女にとっては『好ましい』ことのようだ。
一層嬉しそうに笑って、剱菊の相貌に視線を注ぎ続ける。

「ってことは二級学生って奴ね。ふふ、安心して。私も綺麗な花ってわけじゃないから」

そういって、首につけた首輪のようなチョーカーを指さす。
よくみれば……着脱が著しく困難そうな形状をしている。

「私、此処の住民なの。違反部活生って奴。まぁ……元、だけどね。今は首輪付きの可愛い飼い猫ってところよ」

何処か誇るように首輪をつついて見せて、軽く胸を張る。
首輪を煩わしく思っている様子はない。

「さて、お互い脛に傷ある身だと分かったことだし、向こうでちょっとお茶でもしない? 昔馴染みだった店がこの辺にあるのよ。まだやってれば……だけどね?」

紫陽花 剱菊 > 「……そうか……。」

(不快に思っていないなら安心だ。それはそれとして、如何様にして自分の事を気に入ったのか今一理解には及ばなかったが、そう言うのであれば水を差す事こそ罷り成らない。適当な相槌で打って、続く言葉には首をやんわり横に振った。)

「そも、学園の門を下る事も無い。私は"招かれざる客"だ。そう言う意味では、其方よりも良い立場とは言えないやもしれん。」

(所謂、不法入島者である。望むべくして来たわけでもなく、不条理な運命に流された結果この有様だ。だからこそ、窮屈であれど其処に住まう者を脅かす事は無く、日陰で静かに暮らしている。)

「…………咎人の証、か。其方が何を成し、学園に疎まれたかは分からぬ。然るに、其の様な首輪を強いられている以上、誉とは言い難い事をしたとみる。が…………。」

(音はそっと、手を伸ばした。拒否もせず、その場を動かなければ、彼女の首元を、彼女にとっては恐らく忌々しいはずのチョーカーを撫でる。)

「花と例えるのであれば、美しく咲き誇る民草も然るに、日陰で咲く強かさもまた美しさだ。得も知れぬ男が語るには些か不快やもしれないが、いやしくも私は日ノ岡を『綺麗』だと思っている。」

(何を以て違反者となったかは聞かない。首輪をつけられて尚その強かな姿勢は褒めるべきだと、男は思った。……まぁ、さりげなく張った胸に視線が一瞥された辺り、この男もちゃっかりしてると言えばしてる。すぐにその、好きである少女の瞳に視線は戻した。)

「……が、罪には罰を。其の活動で咎を受けたのであれば、其れを濯ぐべきだな。」

「茶、か。私で良ければ、付き合おう。」

日ノ岡 あかね > 玲瓏な沢のように流れる剱菊の言葉に……あかねは満面の笑みで返す。
首元に手が伸びるのも、まるで喉を撫でられる猫のようにそっと首を差し出して歓び、そのまま隣に並んだ。

「やっぱり、コンギクさんって素敵じゃない。可愛いところだけでなく、カッコいいところまで兼ね備えた素敵な男性よ。ちゃんと自信を持ってね。お互い、壁の花を気取るには惜しいわ」

当然のように剱菊の手をとって、歩き出す。
横目で顔を見上げながら、あかねはころころと笑う。
微かに落ちた胸元への視線も、むしろ嬉しそうだ。

「さ、行きましょ。今日はコンギクさんの言葉に従って一日一善。お茶は私が奢るわ。私もアナタも……せめて、誇れる高嶺の花で居ましょうね?」

そのまま、二人で夜の街に消えていく。
向かった先はトカゲの亜人がやっているコーヒーショップ。
幸いにも閉店はしていなかったが、出されたコーヒーは驚くほどに甘かった。
そこでもあかねはずっと楽しそうに笑っていたが……仔細を語るには、少しばかり夜は短かった。

ご案内:「路地裏」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
紫陽花 剱菊 > 「…………。」

(男は、褒められるのは慣れていなかった。だから、思わず押し黙ってしまった。そう、照れているのだ。眉間に皺をよせ、思わずため息迄吐いてしまった。いや、強かな女性だ。その夜のような瞳に思わず惹かれたのも、自らには絶対ない、咎人でありながら溢れた自信によるものなのかもしれない。)

「……いや、女性に奢らせるのは……、……。」

(手を取られた。戸惑いが戸惑いを生む。何故、彼女は此処まで積極的になれるのか……理解が及ばなかった。及ばないとなっても、其れを深いと思う事は無い。好ましいとさえ、思った。ふ、とはにかみ笑顔を浮かべ、今宵は彼女の気の向くままに付き合うとしよう。)

(苦い香りに包まれた店内で、男は静かに彼女と語らう。夜が明けるまで、彼女が楽しそうにしてる間は、ずっと隣で────彼も、ほんの少しだけ笑っていた。)

ご案内:「路地裏」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に紅月 純さんが現れました。
ご案内:「路地裏」にアリソンさんが現れました。
紅月 純 > 「あ゛ーーーー……」

落第街、かなり歓楽街に近い路地裏。

頭にでかい打撲痕をつけて倒れるモブチンピラのオブジェを押しのけ、一際顔のいかついチンピラが現れる。
片手には金属バット、もう片方には『片栗粉』と書かれた紙袋。

「今日は厄日だ」

昼、いつも遊んでる猫には逃げられ、気晴らしに揚げ物を作ろうとしたら品の無い男に時間をとられる。

何が「いい粉持ってるじゃん」だ。それはそうだろう。特売セール品なのだから。
その程度で絡まないで欲しかった。

さっさと帰りたくて、威圧的に足音を立てて歩く。

「はぁー……」

アリソン > スタスタと颯爽と落第街、歓楽街に近い路地裏の深淵ある闇より
浮かび上がる漆黒と純白の色で構成された高そうな肌色面積の少ないメイド服で通りかかった一人のメイド。

メイドが出てきた真っ暗な路地裏には何人かの頬のこけた哀れな犠牲者が転がっている。
死んではいなさそうだが、アァ ウゥ とか呻き声を小さく上げるばかりで、
薄暗い路地裏の明りに照らされたメイドの顔色は非常に艶やかに満ち溢れていた。

「…ごちぃそうさまぁ♡…ふふ、ただのメイドと思って襲い掛かってきた羊ちゃんは眠りについてもらうとしまして。」

もうちょっと美味しそうな獲物…羊ちゃんはいらっしゃらないでしょうか、と辺りをきょろきょろと見渡す仕草を。

『メイドちゃん いたずらしてもいいよなぁ けっけ』とかで逆に搾取して干して差し上げました。

メイドは気を取り直して 足音軽めにるんるん、という具合でゆっくりと歩いてる。

程無くして 異能の範囲内に 紅月青年の姿を捕えるのも時間の問題。

紅月 純 > (竜田揚げ。そうだ竜田揚げにしよう)

夕飯の献立を考え、結論に至る。
こうやって何かを考えていないとやってられないからだ。

(なら材料も決めよう。贅沢にマグロか、それとも)

これ以上は絡まれないだろう、と足を早め、
曲がり角を飛び出す形でメイドの前に姿を現すだろう。

アリソン > 新月の時だけくそ真面目に依頼を受けて 落第街キレイキレイにする活動をしている。
如何きれいにするかはとある人たちだけに伝えており、本人はあくまでもその日以外は
きゅっと命は食べつくさない様に努めているつもり。

そこでふとメイド以外の足音が徐々に聞こえてきました。
足音が割かし派手な気配が向こう側から―出てきた!
ぴたっと足が止まり、飛び出してきた青年の様子を―異能で視た。
金属バットに片栗粉と書かれた紙袋 そして なんとも悪そうな顔立ちな美味しそうな青年!

「きゃあっ」

驚いた振る舞いをして 彼の出方を試してみようと

紅月 純 >  
「んなっ!?」

速度を殺さず曲がるために内側のレーンを狙うことに集中しすぎた。
路地裏だから人がいることを考えず、いたとしてもアウトローだと思っていたからだ。

いたのはメイド。
急には止まれないが、ぶつかるわけにはいかないので、慣性をバットに託して投げる。

投げた先に浮遊していた黒いのが消し飛んだが、
メイドと事故になる寸前の距離で止まり、片栗粉も無事だ。

「……悪い」

こちらの不注意なので謝る。向こうは怪我はしてないだろうか。

アリソン > 先程までおいたをしてきた男どもを瀕死にまで搾取したばかりだった。
路地裏という場所柄 出会うのは殆どその手の者たちが大半。
浮いているのは メイドの方だった。

出会いがしらの衝突事件は避けられたのだけど、地べたに尻餅をついてしまった位。

驚いたは驚いたけど、いえいえーとにこやかーに対応をし
ゆっくりと尻餅から立ち上がって怪我がない事を伝えましょう。

紅月 純 > 「無事なら何よりだが」

ホッとし、眉間の皺が浅くなる。

が、ここ遭遇するには異質なメイドだ。とても綺麗な見た目をしている。
路地裏に分布できるような人ではないだろう。

「あんた、何でこんなところにいるんだ?迷子か?」

飛んで行ったバットを拾い、もう一体いた黒い浮遊物を殴り飛ばしてから質問をする。

アリソン > 「無事で御座いますわ、ええと…」

肌色は少なくとも胸部が素晴らしい事になっているきちんとした身なりのメイド。
見た目に無頓着過ぎてどう思われているのかは気づかない鈍感ぶり。
路地裏はおろか落第街や歓楽街の路地裏にいると違和感しかない子。

「ちょいとぉばかりですね、ご飯を探しにいたのですが、これから帰るところです」

バットを拾う音、其方へと振り向くメイド ただし 何を殴っているのかは理解が追い付いていない。

「何を一体殴っていらっしゃるのです??」

瞬きをして闇色の瞳が浮遊物?と彼を交互に見るような…

紅月 純 > 「飯?こんなところに?」

知る人ぞ知るグルメでもあるのか。

わざわざ食べに来たのだろうが、そのうち彼女が食われるのでは?
と彼女の姿を見て思ってしまう。

だが、まぁ、帰るところだと言っていたし、食べ終わったのだろう。

黒い浮遊物について問われるが、はっきりとは答えず、

「バットで殴ったら消えるやつ」

と言っておく。本物のオカルトマンじゃない限り知らぬが吉だ。


「で、帰り道はどこだ?同じ道なら送るが」

アリソン > 「ええ、とってもとっってもおいしいご飯があるのですよ…」

そう悪者の精気というものがね、とその部分は口に出さず心の中で思う事。
決して顔には出さないポーカーフェイスぶり。メイドにしか見えないのだけど なるたけ清楚な女性を演じたいばかりに。

「バットで消える何か…怖いですね、ええとっても」

黒い何かは霊魂では??しかし色は分らない。
帰り道を案内して下さるそうですけど、帰り道というか最寄りは。
歓楽街にかろうじてつながっていると聞く乗り物の最寄り駅かしら。

「歓楽街にあります、乗り物の駅までお願いしますわ」

紅月 純 > 「そうか」

こんな美人でも来たくなる店があるのか。今度探してみるか。

「歓楽街の駅だぁ?よくここまで来たな……」

ここは落第街の端っこで歓楽街寄りとはいえ、駅まではそれなりにある。
相変わらず、この世界は治安が悪い。

「仕方ねぇ、離れるなよ」

はぁ、とため息をつきながら先導する。
ここ数日で地理には慣れているので、迷い無く進む。

アリソン > 「ええ、でも多分 貴方様には似つかわしくないものかと」

普通の人が食べられるものではない、精気や吸血その他もろもろは
色々な意味で食べる事を躊躇してしまう恐れもある。
一言はもうしておくものの店ではない事は言えなかった。

「え、まぁ、ちょくちょく来ますけれどここ。」

駅より遠いこの地に一人で来たメイド。
治安が悪くともここまで来れる肝があるという事。

「はい ついてきますね」

先導されるようにして彼の後ろをついていくように歩いていく。

紅月 純 > 「ああ、そういうもんなのか」

きっと権力者だとかドレスコードが必要な。

んでもって、ちょくちょく来ていると言いやがった。

(こういうの、必要なかったんじゃね?)

どこにそんな胆力があるのか。実力持ちか。
後ろを歩く彼女をちらりと見て、あちこちを観察しながら進む。

アリソン > 「いえ、凡そ食べ物の見た目しておりません」

この落第街にある食べ物(意味深)のもの、大方普通じゃない。

ちょくちょく 特殊技能なり 魔術なりで距離を考えずに移動している。
が、彼が途中までであろうけど送ってくれるというので普通の人が利用している駅をお願いしたのだった。

はたから見て丸腰のメイドです、非力そうにしか見えなさそう。
観察されているのはなんとなく彼が身じろぎする音から感じ取ってる。

「何か御座いまして??」

紅月 純 >  
まじか。
食べ物の見た目してないってまじか。

「……。見かけによらず、物凄い趣味してんのな……」

騒がしさと明るさが近づいてきて、彼女の姿をしっかり見れるようになってきて。
細腕で、出るとこは出てて、顔立ちもいいのに。
……。

「いや、なんでもねぇよ」

そっと目を逸らす。
「普通の学生」からすれば女子と二人きりは美味しい状況なのだろうなと。
治安の悪い世界の路地裏で、異質な美人メイドといるのはいかがなものか。

綺麗な建物が多く建っている方向へ歩みを進めながらため息をつく。

アリソン > 「それほどでもないのでございます」

賑やかな音 明るいは分らないけれど喧噪溢れる表の世界が近づいてくる。
彼に引かれているとは露と気づかない鈍感なメイドは、
何でもないといわれると、「そうですか」と返すにとどまる。

「ここらへんでよろしいです。ではまたいずれ逢える日まで」

彼の背中にそう言い残すと、異能でめぼしのとあるものを見つけると、
ふわりとその街灯の影が細くなっているところへと進み―すぅっとその陰に入り込んで―いなくなりましたと。

ご案内:「路地裏」からアリソンさんが去りました。
紅月 純 > 「そうか。じゃぁまた……あ?」

お役目御免ということで見送ろうと思ったら。
メイドは陰の中に入っていきました。

「あ?」

街灯に近寄る。
陰を踏んでみる。無論、何も起きない。

……。


「そういうパターンかぁ……」

うちのファンタジー犬がそういうことしてた。そりゃあ安全だわな。
思わず空を見上げた。
あいつら、俺がいなくなって大丈夫だろうか。

「あーー……。帰ろ」

ちょっとホームシックになりつつ歓楽街の寝床まで歩いていった。
明日は元の世界に帰れるか癒しが得られますように。

ご案内:「路地裏」から紅月 純さんが去りました。