2020/06/16 のログ
ご案内:「路地裏」にフィーナさんが現れました。
フィーナ > 「………はぁ」
或る建物から出てくる。
新しい依頼を受け取った。というより…前回の延長線だ。

怪異と判明したので、改めての捕縛依頼だそうだ。但し、『dead or alive』らしい。

期限こそ設けられなかったが、面倒だ…魔力の解析は済ませてあるから、それらしい反応があれば、わかるのだけれど。

ご案内:「路地裏」に紅月 純さんが現れました。
フィーナ > 適当な木箱の上に腰掛け、懐からドライソーセージを取り出し、貪る。

昨日出会った獣人の為に一応持つようにしておいた。自分でも食べるけど。

紅月 純 > 「……はぁ」

路地裏の一画から出てくる。
彼の背後には赤、青、黄色の髪に染めた三人のチンピラ。

(最近絡まれることが多くなってきたな……こっちは面倒事は嫌なんだが)

背中を丸め気だるげに歩く姿はチンピラである。

「……ぁ」

しばらく歩いていると、少し前に見かけた姿。

フィーナ > 「……………」
もそもそとドライソーセージを食みながら、こちらに来る足音を聞き分ける。

まず一つ。その後ろに複数。会話役と、後詰めかな?
反応はせず、杖に術式だけ籠めておこう。

紅月 純 > (あいつ、この距離でも気づいてるんだろうか)

この間、ネコと遊ぼうとして遭遇したときの記憶を思い出す。
……気づいていそうだよな。

「巻き込んだら悪いし、とっとと終わらせるか……『ATK-UP-1』」

呪文を唱え、地面を蹴って反転。

青いのが何かを言う前に飛び蹴り。
着地して、うろたえる黄色にバットを一発。
赤は……

「間に合わんか」

とびかかる赤に対して防御姿勢をとる。

フィーナ > 「………」
間違えた。どうも追われていたようだ。この位置関係なら…

一人の人がこっちを見ていないことを信じ、術式を解放する。

轟音と閃光が、裏路地に迸る。

紅月 純 > 「んぅっ!?」

腕に痛みがくるのを覚悟していたが、やってきたのは閃光。
思わず目を閉じる。
……が、追撃は来ず、目を開ければ赤が転がっている。

誰がやったのかは明確。

「……手間かけさせたな。すまん」

木箱に腰かけたエルフに頭を下げる。

フィーナ > 「…あぁ、あの時の。いいよ、ここじゃ茶飯事だから。」
ぐおん、と杖を振って、小さな炎の槍を飛ばす。赤いのの服を狙って。

命中し、服に火が点く。目をやられて状況が把握できないチンピラは逃げ惑うことしか出来ない。

「災難だったね」

紅月 純 > 「この世界にきて治安の悪さは思い知った。
島中を歩いてチンピラ図鑑でも完成させなきゃならんのか」

足元の赤は蹴って端に寄せ、ため息をつきながらそちらに近づこうとする。

「ここは緑より灰色が多いが、なんか用でもあったのか」

エルフは人工物まみれの場所で大丈夫なのか?という意図も含めて聞いてみる。

フィーナ > 「そうだよ。今は休んでるだけだけど」
食べかけのドライソーセージを口に含む。

もくもくと、口を動かして、嚥下する。

紅月 純 > 「こんなとこまで用事たぁずいぶんと災難だな。
どんな用事かは知らんが」

先ほどの攻撃を見るに、自衛は十分なのだろう。

(もし、俺が戦うと……無理だな。間に合わねぇだろ)

敵じゃないことに少しホッとしている。

……。

「……水いるか?」

なんかそれ以上にドライソーセージだけを食べていることが気になった。

フィーナ > 「お構いなく。」
ごぽん、と杖から水が生まれる。
実際は周囲の水分をまとめただけだが。

紅月 純 > 「うわっ……そういう魔法を使う奴はすげぇな……」

めっちゃ便利。

「あー……、紅月 純だ。ここら辺ではないが、歓楽街に住んでる。
あんたは?」

ずっと自己紹介をしていなかったことに思い至り、名前を聞いてみる。

フィーナ > 「フィーナ。島の反対側の方に住んでる。」
ここから島の反対側となると、未開拓地区のことだろうか?
出入りの禁止はされていないが、危険な場所なはずである。

紅月 純 > 「滅茶苦茶遠いな」

んでもって行ったことはある。ゴブリンをしばきに。
面倒くさい危険地帯だ。
そこに住んでいるからこそ、あの威力の攻撃も撃てるのだろうか。

「まぁ、あれだ。もしなんか手伝えることがあったら付き合う。さっきの礼だ」

いつぞやみたくお節介かもしれないと思いつつ、そう言ってみる。

フィーナ > 「んー…………」
考えてみる。…………思いつかない。

思考を巡らすように、杖を振る。
実を言えば、先の戦闘、全部手加減した威力である。光に関しては殺傷力は皆無だし、炎の槍も威力を抑える術式を加えてまで弱化させたものだ。
そうまでしなくては殺してしまいかねない。

紅月 純 > 「……無ければべつに、次会ったときに適当言えばいい。
飯奢れとか猫を眺めたいとか、しょーもないもんでよ」

いきなり聞けばそんなもんか、と苦笑。
こっちが勝手に借り一つ、と思い込んでおこう。

「……そろそろ飯作りに帰るか。邪魔したな」

特に何も無ければ、歓楽街の方へ去るだろう。

フィーナ > 「ん」
手を降って見送る。

紅月 純 >  
バットを担ぎ、片手で手を振りながら歩いていった。

ご案内:「路地裏」から紅月 純さんが去りました。
フィーナ > 「んー………」
手持ち無沙汰になってしまった。今どこかに用事がある、というわけでもないし…どうしたものか。

フィーナ > 「……」
一応依頼のこともあるし、近くにいれば探査に引っかかるだろう。

暫く滞在することにした。

フィーナ > 「………」
いなさそうだ。
身体を浮かせ、その場を後にする。

ご案内:「路地裏」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に真白さんが現れました。
>  
夜の路地裏を一人の男が歩く。
如何にも悪いことは大体やった、と言う様な風貌で、ポケットに手を突っ込み前傾姿勢で歩いている。
咥え煙草を路上に吐き捨て、地面の空き缶を蹴っ飛ばし、
 
「――あ?」

目前にいつの間にか白い少女らしき何かが居た。
着ている服や長い髪から恐らく少女だとは思うのだが、白い面を被っているので本当に少女なのかどうか、

真白 >  
「さよなら」

>  
なんだこいつは。
いつの間にか目の前にいると思ったら、さよなら?
一体何を

「――あ……?」

視界がぐらりと傾ぐ。

真白 >  
ドン、と言う比較的軽い音の後に、ドサロと重い音。

赤く染まる路地裏を背に、刀を鞘へしまう。
刀はともかく、白い服には染み一つ付いておらず。
振り向き、男の首のそばに屈みこみ、顔をこちらへ向けて写真をパシャリ。
そのままスマホを操作し、男の首の写真をどこかへ送信。

ご案内:「路地裏」にハルシャッハさんが現れました。
ハルシャッハ >  
――男の仕事道具の買い出しは8割が現代的なスーパーがあれば事足りる。
しかし、残りの二割は一般に使わぬ特殊な代物だ。
その二割を満たすための買い物の道すがらだった。
安全のための装備一式だけはきちんと整えていたのは幸いか、それとも。

――重量物の落ちる音。機械の操作音。
明らかに、異質な音だ。

「……。」
(――嫌な予感がしやがる。 何だ? この空気のひりつき……。)

背筋をゾクリと撫でる『なにか』がある。
対象の存在を知覚しているわけではないが、しかし。
明らかに『居る』ことだけは、明白にわかった。
何を、どうするべきなのかが不明な状況で、男はまず鼻を利かせる。
風に乗る匂いは状況によっては200m以上先でも届く。
町中ならば他の匂いに紛れるが、それでも状況次第ではある程度の距離内で知れる。

まずは、情報が必要だった。

真白 >  
「――ん」

ちょうど男の写真を送信し終えた時。
においを感じた。
物理的なものではない。
視られている、しかし直接ではない。
気付かれた、ともなんだか違う。
誰かがこちらを探ろうとしている、が一番近いか。
立ち上がり、見回す。

「……こっち」

ハッキリした気配ではないが、確実にいる。
何となくの方向を逆探知のように割り出し、地面を蹴る。
初速からトップスピード、人外の神速でそちらへ走る。

ハルシャッハ >  
――明らかに『早すぎる』足音が近づいてくる。
それは、男の背中を栗立たせるには十分に過ぎた。
自分のレベルなど嫌が往にも知れている。

男は、まだそういう意味では未分化であり、下っ端だった。

「――ヤベェッ!」

知覚した瞬間にはもう逃走のための足が向いていた。
これだけでも、相手に情報が流れる。 『格下である』という情報が。
相手の方が段違いに早い。 しかし、こちらも別な意味では人外だ。
神速とまでは行かないが、『時間を稼ぐ』くらいには仕事ができる足はある。
駆け出しながら、男の脳裏では取るべき道筋を組んでいた。

まずは、一本通った通りを真っ直ぐに走り、相手を誘導すること。

射線を限定し、相手の位置をできる限り絞るための生存の策。
上空から来る可能性は否定しない。
しかし、それは路地裏の建物がある程度位置を保証してくれる。
まずは、位置を絞り、安全の確保が最優先だった。

真白 >  
「――む」

逃げた。
しかもなんの迷いもなく。
姿を見られて困ることがあるのか、それとも敵わないと思ったか。
どちらにしても、放置しておくと言う選択肢はない。
気配を頼りに距離を詰め、通りに出る。

「いた」

明らかにこちらから逃げる者がいた。
ならばあとは距離を詰めるだけだ。
地を蹴り壁を蹴り街灯を蹴り、蹴って足場になるものを全て足場にし、跳ねまわるピンボールのような挙動で追う。

ハルシャッハ >  
 ――足音、いや地面の跳躍音から諸元が割れた。
 高速で相手が追ってくるのもこれで確定する。

 まずは、これで良かった。

 全速力で、息も切らしてそのまま走る。
 今は、準備のための時間が欲しい。いずれ追いつかれるが、むしろそれは計算の内。
 必要なのは、位置と戦域、情報の確保。

 そして、生存のための撃退のチャンスを生み出すことだ。
 殺しは男のメインとなる得手ではない、しかし今の装備ならば、あるいは。
 殺気でひりつく空気の中で、男はどこか愉悦さえ感じていた。
 何故かはわからない。 しかし、このひりつきは男にとっては心地よかったのだ。

 ――『素質』はあったのかもしれない。

 通りをある程度走った後に、90度角度を変えて右へ。

 翻った白のローブに、竜の足が、見えた気がした。

真白 >  
「どこ行くの」

通りを曲がった男の前に、白い少女。
瞬間移動の様に見えるだろうが何のことは無い。
男が角を曲がり終えるより先に自分が先回りしただけだ。

「なんで逃げたの?」

仮面のままこてんと首を傾げる。
リザードマンの討伐依頼は受けていない。
殺される、と思ったのだろうか。
そんなつもりはなく、ただこちらに気付いた男の顔を見ておきたかっただけなのだが。

ハルシャッハ >  
――バケモノめ。
男からすれば、悪態が口の端から漏れそうになる光景だった。
可能性として予想はしていた。 十分考えられたことだ。

しかし、あまりに早すぎた。目の前の『人形』は、あまりにも。
問には、ただシンプルに返せばそれでいい。
足を止めた状態で構えは解かず、警戒態勢のままで、息を整える。

「――『買い物』の途中だ。 バケモノから逃げる羽目になったがな。」

そう、一言だけ。逃げた理由など、答えるまでもなかった。
言葉の中に含まれている。
相手の挙動に反射で回答を出す準備をしながら、
男は今日という厄日に対してうんざりする心境を誤魔化さなかった。

真白 >  
「そう」

返ってきた返事に納得。
確かにこちらでしか買えないものもある。
それは悪いことをした。

「――それで。なんで逃げたの」

だがもう一つの問いの答えは返ってきていない。
もう一度、問う。

ハルシャッハ >  
自分の実力さえも理解していないのか、この人形は。
男からすればある種の愚かささえ感じる純粋な問いだった。
そんな気持ちが口の端から滲み出る。ただ殺されるつもりはない。
最悪やれるだけのことはやってやるつもりだ。 しかし、それでも。

「――殺される可能性から逃げるのは、当たり前だろ。」

正直に。男は純粋に正直に答えた。
恐怖からではない。 戦略的に、生き残る為の択として。
今日を、明日を生きること。 それは盗賊としての矜持であり、信条だった。

――息はある程度整った。

こちらから事を構えるつもりは毛頭ないが、
それでも相手がどう動くかなど皆目見当がつかない。
敵において信用できるのは死体のみだ。 それは現実でもあった。

真白 >  
「あぁ、そういうこと」

なるほど、理解した。
つまり、彼は自身に殺されると思ったのか。

「別に殺すつもりはない。その辺の殺人鬼と一緒にされたら困る」

誰彼構わず殺しているわけではない。
殺しは仕事、目標以外を殺すのは二流のやることだ。

「それに、」

ふう、と息を吐く。
一度彼から視線を外し、

「――殺すつもりならもうやってる」

その言葉は彼の後ろから。

ハルシャッハ >  
――やはり格上だ。
後ろに立たれるのはバックスタブの構えであることに間違いがない。
しかし、人形が後ろに立つ時、男の剣もまた人形に向いていたのだ。

「――だろうな。 格が違いすぎらぁ。」

ニヤリ。肝の座った笑いが漏れる。
刺さらぬ剣先が、脇腹にまっすぐ向いて殺気そのままに逆手に握られている。
来るならば来い、と言わんばかりの互いに動かぬ相克の構えに近い状態で。

――自分はたしかに格下だ。
しかし、格下とは言え、だからといって舐められる筋合いはない。
そして、彼女ならばどこかの年代でこの装備、この構えを見たことが有るかも知れない。

古き良き(オールドスクールな)ストリートスタイル。
この装備自体が正面からの近接戦闘にある程度特化している。
レザーアーマーもよく観察すれば補強が施されたブリガンダインスタイルだ。
一矢報いるには十分にすぎた。

「なるほどな。 流石はプロってところか。」

純粋な感想が出てくるのはその後だった。

真白 >  
「へぇ」

こちらを向いている剣先。
高速移動にもしっかりついてくる。
感嘆の声。

「――ちょっと遊ぼうか」

一言で言えば、興味が沸いた。
くるりと刀を手の内で返し、刃と峰を逆にする。
――斬らずに相手をする、と言う意思表示。
そのまま異様に足音の小さい歩法ですたすたと間合いを詰める。
無防備に。

ハルシャッハ >  
相手側からすれば遊びだろう。
しかし、こちらからすれば半ば本気で当たらねば意味がない。

「遊び、ね……。」

――遊びといえどこちら側は半ば本気である。
こちらは両刃の剣故、逆にすることはできないが、
代わりに鞘に収めてゆらりと輪郭を揺らした。

ガントレットを嵌めた状態の空手の左腕を前に、
手の甲側を相手に向け、右手をブロードソードにして静かに自然体で構える。
ゆらり。 相手が詰めるならば摺足で、中心に半円を描くようにゆらりと揺らいだ。

――『反撃回避』(ドッジ・アタック)の構え。

回避と同時に攻撃を入れる反撃の一撃は、
ストリートスタイルを学べばいの一番に学ぶものだ。
昔ながらの、今は忘れられているかも知れない旧古の技が、
人形の目の前では展開されていた。

真白 >  
西洋の剣術はあまり知らない。
知らないが、構えを見れば大体見当が付く。
和も洋も、突き詰めれば似たところに行きつくのだから。

「ほら、間合いに入った」

だからこそ、手は出さない。
こちらの方が間合いが広かろうが、狙いがカウンターならばそうやすやすと手を出すわけにもいかない。
自身の刃だけが届く範囲から更に踏み込み、お互いの刃が当たる距離まで。
更に、こちらは鞘へ刀を納める。

そのまま動かなければ、武器どころか拳の間合いにまで距離を詰めてくるだろう。

ハルシャッハ >  
無論、動かないわけではない。
今、この静かな空間の中、互いの技で会話し、やり取りしているのは技の博覧会。
相互の力量を図る意味合いが一番強いと認識していた。

一瞬ぐらり、と空気が揺らいだ気がすれば、
次の瞬間には密着する目の前まで移動する。
ある意味用意の整った、限定的な状況下でしか撃てないものだが、
瞬発力の発出は、明らかに回避不可能と思わせるに十分だ。

――『突進』(ランジ)。

回避主体の相手の間合いを詰め、
気絶とアドバンテージの確保を狙うストリートスタイルのある意味必殺技だ。
ここから様々派生する技は、洋の東西を問うことがない。
しかも、『左手は空いている。』つかみ、投げ抜けるには十分な余白だった。

真白 >  
ほぼ密着の間合いから、相手が一気に突進。
刀も抜かず、体格で負けているこちらがそれを喰らえば、どうしようもない。

「――遅い」

しかしそれは喰らえば、の話。
刀を鞘から抜く――のではなく、鞘を刀から抜く。
自慢の速度ではなく、純粋な技量によって一瞬で白刃が姿を現し、彼の首へと走る。
軽い刀での峰打ちではあるが、当たれば体勢を崩すに十分な威力のそれを、神速――とは言え、彼がギリギリで対応出来るであろう速度に抑えて――で走らせる。

ハルシャッハ >  
――体術とは力学の勉強だ。
攻撃の方向が決まれば力はそちらの方向に作用し、
その勢いとモーメントを以てこちらに衝突する。

盗賊の体術とはこれを活かすことを学ぶことから始まる。

密着距離ならばよりそれが容易に行える。
当て身に近い要領で体を潜り込ませ、
速い速度で向かう刃の勢いを殺すこと無く、
左手で掴んでそのまま勢いの方向に投げ抜けてやればいい。
相手の体は質量の弾となり、もしもう一体居るならば、
その方向へ投げ込めば体勢は崩れる。

――『掴投術』(キャッチ・アンド・グラブ)。

互いの札の交換会だ。
こちらも学ぶところが多い静かなやり取りが、闇の中で行われていた。

真白 >  
身体を掴まれる。
そのままでいれば投げられる。
故に、躊躇なく刀と鞘を手放した。

「腕を取る」

そのまま掴んだ彼の手首を逆に掴み返し、蛇のようにその腕へ巻き付いて。
投げられぬよう絡みつき、同時にその腕を極める狙い。

ハルシャッハ >  
――腕に絡みつけば棒の先端におもりが付いた状態に近くなる。
モーメントが一番作用しやすいのは棒の先端、
しかも、投げようとした際の勢いはそのまま残っている。

「選択肢は良いが――。 親方ならこうするぜ。」

巻き付いた腕をそのままに、
重力によって垂れ下がる腕の重みに、
相手の体重と自分の体重を掛けてそのまま拳で殴るように叩きつける。
頭の方向がこの場合は重要だ。頭が地面を向くならば直撃で振盪、
そうでないならば衝撃が体に伝わる。

そして、絡みついた時点で動けなくなるのだ。
右手のブロードソードはまだ生きている。最悪、そのまま首を狙う択も出てくるだろう。

締め上げる腕の動きで腕が重い。
関節が悲鳴を上げるのが先か、それとも叩きつけによるダメージが先か。
ガントレットの関節部はこの場合はマイナスに作用する。
顔が痛みで、歪んだ。

真白 >  
極められた腕を自分ごと振り回すとは。
中々腕力があるらしい。
叩き付けられる前に自分から手を離し、遠心力で投げられるように距離を取る。
距離は取ったが獲物は手放した。

「ふふ、なかなかどうして」

仮面の下で、に、と笑う。
スカートの中からナイフを二本取り出し、両手で曲芸の様に回して、逆手で構える。

ハルシャッハ >  
「――そこらへんのと一緒にすんなよ。 伊達に竜の血引いてねぇ。」

固められた、悲鳴を上げる腕を力なく下げて、一度軽く振り直す。
悲鳴を上げている腕が痛くて仕方がないが、戦闘が行えないわけではない。
ガントレットを嵌めているという事実が重要だ。
厚手の鉄板を嵌めた腕自体は十分な盾となる。投げ技はこの時点でお預けだ。

「――ったく。 この時点で引き上げられるなら引き上げるんだがな――。」

腰につけた小道具から大粒の錠剤を取り出せば、
軽く手のひらで遊ばせる。 コショウ、粉からし、その他香辛料。
唯一珍しい材料といえば妖精の粉がほんのすこしだけ――。

『目潰しの粉』(パウダーオブトリック)のタブレットだった。
知っていれば、容易には寄れない。

真白 >  
次はどう攻めようか。
四足動物のような低い姿勢で策を練っていたのだが、

「――もうやめておこうか」

彼が取り出したものを見て構えを解いた。
それが何か分かったわけではない、見ただけで何かわかるようなものでもない。
ただ、そう言う道具を使わせるほどの「遊び」でもない。
何のメリットもない遊びに付き合わせるほどではないと言うだけの話。

「その刀、取ってもらってもいい?」

ナイフをスカートの中に戻し、彼の足元近くに転がっている刀を示す。

ハルシャッハ >  
相手が構えを解けば、こちらも構えを解くことにしよう。
――痛い思いは十分だ。 それに、学びもそれなりに得られた。
格上相手ならばそれこそ十二分にすぎるほどの収穫だったのだ。

「――違いねぇ。」

こちらも消耗は少ないに越したことがない。十二分なほど消耗している。
相手は消耗なしだが、まぁこちらからすれば肉薄はできる相手であると理解ができた。

「ああ、良いぜ。」

そして、刀を取ってくれという要求に、男は相手の刀を取って手渡すことにする。
刃先は地面に向けたままだ。安全への配慮と言えた。

「――GG(グッドゲーム)ってか? ……少しは食いつけたか。」

不敵に笑ってみせる男は、じんじんと痛む腕に、苦みを含ませつつも笑っていた。

真白 >  
「痛かった?」

刀を受け取り、彼の左腕に目をやる。
手甲の上からガッチリ極めた上に、それを無理矢理動かしたのだ。
痛くないわけがない。
スカートの中に手を突っ込み、湿布を取り出す。

「使って」

冷却スプレーでもあればよかったのだが、残念ながら今はこれしか持っていない。

ハルシャッハ >  
「――ガッツリキメといてその口ぶりはねぇよ。」

実際、痛くないわけがない。
じんじんと痛む腕をごまかさぬ男は、相手から渡された湿布を受け取る。
しかし、この痛みさえも勲章だった。
あからさまな格上にここまで持ってきたのだ。上々だ。

「ありがたく受け取っておく。 ――親方がいれば喜んだろうさ。
 久方ぶりに本気で組める相手が居た、ってな。」

今は離れた己の親代わりを思って、そんなことを。
『終焉を呼ぶ者』と呼ばれた棟梁の事を、思う。

真白 >  
「それは無理するから」

極めはしても筋まで壊すつもりはなかった。
人のせいにされても、みたいな顔。

「私はごめん被りたいけど」

これでも直接戦闘はそこまで得意ではないのだ。
技術と速度で翻弄出来ない相手にはどうしても一歩劣る。
こちらの本質は徹底したステルスキルなのだから。

ハルシャッハ >  
「――ぐうの音も出ねぇ。
 しかし、速さに食らいつくのが必死だったぜ。」

実際事実だった。なんとかしないといけないと、こちらも必死だったのだ。
速度は何より強さに繋がるものだ。それを否定するヒトは居ない。
そんなキョトンとした顔をされても事実厳しいのは変わりないのだから。

「――だろうな。
 正直、同業としてもやばいお方だった。」

直接戦闘が苦手といいつつその速度は無い。
そんな口ぶりをしながらも、男は相手に背を向ける。

「じゃ、こっちはそろそろおさらばとするぜ。
 ――追ってきたり、殺しに来んのは勘弁な。 殺し合いは望んじゃいねぇ。」

そんな事をしれっと押し付けつつ、闇に消える。
事実、しばらくは治療に専念しないといけないだろう。
医師にも相談だ。 とんだ出費になった。

ご案内:「路地裏」からハルシャッハさんが去りました。
真白 >  
「面白い技を使う。今度教えて」

見たことのない技だった。
世界は広い。

「うん。君が標的にならなければ、だけど」

標的にさえならなければ命を狙うことは無い。
その背中を見送り、こちらもその場を後にする。
スマホにはさっきの仕事の完了通知が入っていた。

ご案内:「路地裏」から真白さんが去りました。