2020/07/30 のログ
妃淵 >  
やれ兄貴の七光りがどうだとか
やれ兄貴の影で好き放題してるだとか

未だに後ろ指を指すヤツもいるがそんな指は尽くボッキリと折ってきてやった
おかげでスラムの住居近くには兄貴の話をするヤツもいなくなり、しばらくそういう話を聞かずに済んでいたのだが…

「……ちっ」

無性に湧き上がる苛立ちに、転がっていたバケツを蹴り飛ばす
バケツは裏路地に大きな音を反響させ、遠くに転がった

どうでもいいクセに、腹が立つのはなぜなのか

ご案内:「落第街 路地裏」にアールズアーズアースさんが現れました。
アールズアーズアース > 「あらあら」

誰もいなかったように思える路地裏の影から、滲み出るように現れる銀髪の少女。
ただ、普通に歩いてきただけのはずなのに。

「バケツに当たるだなんて……わるいひと」

転がったバケツを路地の脇へと置き直す。
言葉とは裏腹に、その苛立った様子をむしろ好意的に見るような女は、嬉しそうに微笑んだ。

「ここで、いったいなににそんなに腹を立てていらっしゃるの?」

まるで、もっと原を立てろ、とでも言わんばかりの笑みだ。

妃淵 >  
「………あぁ?」

柄の悪い応対、睨むような目付きといい、いかにもな二級学生といった風体だ

──なんだこいつは、まるでその場ににじみ出たかのような
…と、思いはするものの、そんなものでスラム暮らしの住人が怯んだりはしない

「関係ねーだろ。目障りだ、消えろ」

にべもなく、そう吐き捨てた
少女の視線は鋭く、現れた少女を射抜くように見据えている

アールズアーズアース > その鋭い視線を受け流すように……というか、どことなく視線があっていない。
それもそうだ。

そもそも、少女の目はまともに視覚として機能していない。
だが見ている。
ゆえに、焦点は合っているのに合っていないまま応対する。

「……関係なら、同じバケツに触れ合った仲じゃないですか。
 普通じゃなさそうなのは、私、好きですよ?」

わざと。
色んな意味に取れる言葉を選んで話しかけた。

会話ができるなら出来るほどいい。

妃淵 >  
「……──はァ?」

なんだコイツは、イカレてるのか
目の焦点もどこかあっていない…そんな少女を相手に率直に浮かんだ言葉はこんなところだ

「んなくだらねー理由で仲ができるかよ。
 だったら同じトコにいて同じ地面踏んで同じ空気吸ってりゃ誰でも"仲"じゃねーか」

くだらねー、と
そのまま歩いて通り過ぎようとする

アールズアーズアース > 「そんなに腹を立てているのは」

すれ違いざま、微笑んだまま耳元で囁いた。

「……自分の不甲斐なさですか?」

済んだ声は張り付くような音をしていた。

妃淵 >  
「……──何だって?」

足を止める
ゆっくりと、睨めつけるような紅い視線をそちらに向ける

「何をどうしたらそーなるンだよ。…喧嘩売ってンのかお前」

挑発されている、と少女はそれを受け取ったのか、その背からゆらりと陽炎のようなものが立ち昇るような、そんな雰囲気を感じさせて

アールズアーズアース > 「別に喧嘩を売っているつもりはありませんが、その。
 ……そう言うと、大抵の人は話し相手になってくれるので」

至極当然そうに、そう言って笑顔を見せる。
そう思うならどうぞ、と言わんばかりでもあるし……あるいは、全くそんなコトどうでもいい、とも取れる。

「特に、理由もなく物にあたるときは、皆さん共通して、何か自分に苛立っていることが多いものですから」

少女は知っている。
少女が行動できる範囲の連中がどういったことに興味あるのかを。

そしてそれはだいたい、自分自身のことで。
それも、実力不足や境遇に関する物がほとんど。
だから、そういえばみんな反応を示す。

そんな様子が愛おしくて可愛らしい。

妃淵 >  
「ラリってんのか? お話してくれるオトモダチ探すんなら歓楽街でやれよ」

どこかズレた反応をする少女に苛立ちは増すばかり
もういちいち相手にせず放置でいいか……と思ったが

「──…苛立ってる、ってわかってンなら話しかけんなよ。
 その顔二度と男が寄らねーようなツラに変えてやったっていいんだぜ?」

笑顔を向ける少女の胸ぐらを掴み上げ、恫喝する

アールズアーズアース > 「……ああ、そうですね。そうかもしれませんね。
 でも、掛かるような男には間にあってますし……それに」

妙に状況にあっていない笑み。
それもそのはず、別に嬉しいことがあって笑っているのではない。
そもそも、この表情なら応対が楽で便利だからしているだけだ。

だけども。
あなたが今掴んでいる、私の胸ぐらは、私の皮膚だとわかっていない。
布だと思っている。服だと思っている、そう感じてくれている。

それだけで思わず、笑みの表情を作ってしまうぐらいには嬉しいのだ。

「いい悪いはともかく、体が動かしたいのはそのとおりなんでしょう?」

男が寄らないような面に……ふふ。
そんなもの、そもそもニンゲンが寄らないような姿なのに。

「でも、ここでは少し都合が悪いかもなので……こちらでなら少しぐらいお相手しますよ?」

掴まれたまま、廃ビルの中に引き込もうとする。

妃淵 >  
「(───、何なんだ、こいつは)」

気味が悪い
本当に薬で頭がイカレているのか
それにしては饒舌に口がまわる

ぐい、と引かれるようにして、背後にあった廃ビルへと引っ張られる

「──何…だ。お前ッ!!」

キリ、と歯を噛み、掴んでいた手を離し、突き飛ばす

「…気持ち悪ィ、お前、何者だ」

アールズアーズアース > 「……みたまま、ですよ?
 アールズアーズアース。アールとでも呼んでください」

突き飛ばされ、服を整えながら、優雅に自己紹介をする。
明らかにそういう身分そうな、そんなお嬢様な生き物ではなさそうなのに、だ。

確かにフェイの言うように、実際、この姿であればチンピラ崩れの相手には事欠かない。
一人ずつ、特定のグループをバラしていけばいい。アトリエの冷凍庫にはいくつも詰まっている。
そういう意味での話し相手は間にあっている。

ほしいのはそれ以外の話し相手だ。

「話し相手になってくれるなら、大抵のことはしますよ、私」

優しく微笑んだ笑顔のはずが、逆光で嗤い顔に見えた。

妃淵 >  
「名前なんか聞いたってどうしようもねぇよ」

見たままでわからないから問うているのだ、何者かを

そもそも姿形は人のそれ
この場にはそぐわない、妙な女
どこかズレきった印象が拭い去れない

「悪いけど頭おかしい女の相手してる程ヒマじゃねーから、もういくぞ」

関わり合ってらんねー、と再び踵を返す
大抵のこと、というのが何を指すのかはわからないが…

深く関わり合いにならないほうがいい
そもそも落第街では、そういうものだ

アールズアーズアース > 「ああ……」

優しい、その優しさに胸をキュンと動かしておく。
だって……スラムの住人でありながら彼女は「悪いけど」と言ったのだ。
見ず知らずのこの私に。
正体なんか語る資格もないこの私に。

それは、良心というものが明確に残っているニンゲンが使う言葉。

ああ……こんなレアなニンゲン、最高で最高で最高で最高すぎてあまりにも最高だ。

「じゃあ……どうしたら相手する暇が出来ますか?
 その言葉に敬意を表して、さっきみたいな無理強いはしないでおきます。

 ……ですが、返答次第では貴女みたいな人はとても貴重なので、もっとお話していただきます」

きっと、この少女はピュアで汚れなき聖女のような良心と、それでいてニンゲンでニンゲンらしい淀んだ感情と欲求と世知辛さが醸成している。
こんなの、どうしようもなく可愛がって保護するしかない。
絶滅指定危惧種として政府はぜひ保護すべきだ。

妃淵 >  
──もちろん、悪いなどとフェイエンが思っているわけもない
そんなの、ただ口をついて出ただけの言葉だ

「ちっ…しつけーな!
 そんなに相手してほしかったら金でももってこいバーカ!」

いい加減問答にも飽き、元々の苛立ちがあったことも加え、そう吐き捨てた

アールズアーズアース > 「……お金? そんなので、いいの?」

まあたしかに時間を買う、という理屈も成り立たなくもない。
それが望みだ、というなら相応に金はある。
長い年月をかけて、チンピラ共の金をコツコツと貯めているのだ、使い所もないまま。

「これで、どうかしら?」

財布から、札束を取り出して見せる。
いつだって、いざというときのために保険は抱えている。
もし帰れなくなったときのために、誰かに頼むか、アトリエに案内させるための金だ。

妃淵 >  
もちろんそれは売り言葉に買い言葉
そんな話をする、だけのことに金を出すやつなんているわけがない
いるとしたら、根っこからイカレてるやつだ

「───……」

そう、根っこからイカレてるやつ
少なくとも自分の持つ常識と照らし合わせて、異常なヤツ、異質なヤツだ

「……気が変わった。金なんかいらねーわ。
 とっとと消えろ。今すぐ失せろ。──でなきゃこの場で地面の染みにしてやる」

気味の悪さも極まれり
──こんな場所だ。何かが一つスクラップになったところで誰も気にしない

パーカーのポケットに両手を突っ込んだまま、ただ視線だけを紅く冷たく、睨みつける
まったく隠そうともしない、殺気を向けて

アールズアーズアース > 「……そういう方向での会話がお好みなら、それでも」

どうして言っておきながら翻したのか。
昔はそういうのもわからなかったが、今ならわかる。

よくわからないが、なにか、これを拒絶するような信条か何かあったのだ。

「つまり、今すぐ失せなければ、相手してもらえると思っていいんですよね?」

思わず笑みが溢れるという表情を作る。
だって、だって。

そんな、炎のような彼女が相手してくれるというのだ。
わざわざ、私のような醜い哀れなゴミクズのために時間を割いて。

それだけで、背筋をぞくぞくさせる価値がある。

「だってほら……やっと、私を見てくれた」

妃淵 >  
「気持ち悪いんだよ、お前」

どこまでも、奇妙なまでに食い下がる少女
落第街、スラムでいくらかイカレた連中を見てきたが、こんなのはそうそういない

言葉はそれまで

トン、と小さく地を蹴り、少女…アールの腹を目掛けて
まるで加減も、遠慮も感じさせない──鋭い蹴りを放った

アールズアーズアース > 「ニンゲンの技は、だいたい、ひどくキレイで……」

鋭い体重の乗った蹴りであれば。
最初から受けるつもりなら、相応に対応の仕様もある。
むしろ自ら晒しに行き、蹴られ吹き飛ばされながら足を捻りに行く。

ニンゲンの筋肉など、関節をどこをどれくらいひねれば、どういう経緯でどこがどうなるか、ほぼ把握している。
それくらい出来なければ、そもそも今のこの姿は作れない。

そして普通の蹴り程度の痛みもダメージも、この姿でいることに比べれば。
肉を切り刻んで張り合わせ、内側に折りたたんで縫い合わせ、あたりまえのように傷口をくっつけたり剥がしたりすること。
それに比べれば、大したことではない。

「こうして間近に見られるのも……素敵だわ」

瓦礫の山に埋もれた体を起こしながら。嬉しそうに。

妃淵 >  
「!」

足首に強いストレスを感じ、まるで獣が如く反射神経で身をそれに合わせ回転させる
円を描く長い黒髪が舞い落ちるようにして、降り立てば…とりあえずダメージはなし。しかし…

「スラムにこんな化け物が彷徨いてるとは知らなかったぜ」

ポケットから両手をようやく出すと、腕に抱えていた手提げ袋を放り投げる
パーカーのフードも脱ぎ去って、その真紅の視線がよりハッキリと、貫くように少女…アールを見据える

「殺しとくか」

めら…、と
少女の背からドス黒い、炎のようなものが揺らめいた

アールズアーズアース > 「私、貴女みたいな子は好き、すごく好き、とても好き。
 だって、可愛くてラフで獰猛で力強くて繊細で強がっていてしなやかで俊敏で綺麗で美しくてたおやかで可憐で汚れているように見えるのに真っ直ぐで真剣で純粋で熱い情熱と真剣な眼差しにとろけるような弱さを兼ね備えていてそれでいて折れず曲がらず真剣に物事と向き合って生きてて……

 だから、そんなすばらしい貴女を折りきれなかったわ」

放っておけばいくらでも褒め言葉がでてきそうだ。
それを、陶酔する、というより、どうも本当に褒め言葉のつもりらしい。

「次は折ると思うけど……だってそのほうが、貴女も好きでしょう?」

触れさえすれば、ドコだろうと折れる。
そういう角度と力の入れ具合がある。
ただ、あの体は普通じゃない。それを感じるだけでもたまらない。

「でも、手提げ袋、中身大丈夫?
 普通にこのまま話し合ってもいいのよ……貴女はとても素敵だから」 

まるで世間話でもするかのように、フェイに一切気圧されることなく、笑顔でいった。

妃淵 >  
「あーうっせ。何言ってるかわかんね」

少女の身体から湧き出るそれはドス黒さを増してゆく
それはまるで生命に対する警鐘を慣らすように、ゆらゆらと、不気味に揺れていた

「どうせ大したモン入ってねーよ。
 ──ぺらぺらとよくしゃべる口だな」

薄暗い裏路地、真紅の瞳が爛と輝いた…ようにも見えたかもしえない
次の瞬間には先の一撃よりも遥かに疾い、弾道弾が如く速度で地を蹴って、跳ぶ

何かごちゃごちゃと言っていたようだがそんなものは耳に入らない
しょうじょ、アールの胴を分断するような勢いのままに廻し蹴りを打ち放った
追随するように黒い炎のようなものがその蹴り脚には纏わりつき──生物的本能があれば『絶対に当たってはいけないもの』だと察することもできるだろうが

そうでなければ少女の異能によりその硬度、剛性、防御力、耐性、存在強度
あらゆる概念を含む存在そのものが、溶断・破砕されることになる

アールズアーズアース > な にかお
    かしい。

それは理解できる。
だが、アールにはそもそも、生物的本能がない。
あったかもしれないが、そんなモノ、なくしている。

でなければ。
自らの肉を切り刻んで人間の形に工作するなど、正気の沙汰ではない。
だいたいが「人間らしさ」を維持するのに、思考形態までいじっている。
そんなものに生物的本能など、その機能を作るまで存在しない。

ゆえに。

「……え?」

蹴りを取りに行った右腕ごと、体が分断される。

赤黒い血と折りたたんだ肉塊。
それと、必死に擬態した、内蔵をぶちまけながら。

妃淵 >  
「──………」

振り切った右脚から、付着した血が飛び地面に染を作る
当然、思い切り蹴り込んだ
『殺す』つもりであったからだ

「避けもしねえ」

「逃げもしねーのか」

今まで自分の一撃をまともに受けたことがあるのは、生物的な危機感を克服した誰か、だけだった
けれどこいつは違う、違っている

その様子から、危機感すら感じることなく、受けてしまったのだということがよくわかった

異能:防禦不可<ガードレス>…この名前は便宜上、誰かがつけたもの
それは、あらゆる防御係数を0という概念に落とし込む
故にフェイエンは今、豆腐よりも脆い、空気のようななにかを蹴りで分断した、それだけに過ぎなかった

「そんなナリじゃぺらぺら喋ることもできねえか?」

死んでいるのか、生きているのかわからないそれに向かって、見下ろしながらそう言葉を投げかける

アールズアーズアース > 真っ二つになったというのに。
何が起きたのか、最初、理解できなかった。
そういう様子で。

「……あ、ああああああああ」

状況を把握すると、突然うろたえる。
惨めったらしく無様なくらいに。

必死に、肉をかき寄せ、バラけた体を集める。
どうやら、血液までも自分のものであるらしいし、見れば服までも体の一部であるらしい。


「ダ……メ、見ないで!! おねがい、お願いだから、こんな姿、見ないで……ぇ」

だが、痛がるでもなく苦しむでもなく、ましてや許しを請うでもなく。
でてきたセリフは、こんな姿を見られることへの哀願だった。

妃淵 >  
「………ナンだ、コイツ」

命乞いをするでもなく、ただただ
そんな姿になった自分を見るなと哀願している
意味がわからない、理解も及ばない

「──はン。…なるほど、ただの『化物』だな」

「結局お前は何者なンだよ。ああ?
 アールズアーズアース?だったかなんとか名乗ってたな。
 人間じゃねえ化け物が人の皮被って遊んでただけか?」

歩み寄り、少女が必死にかき集めるそれを足蹴にする

アールズアーズアース > 「や…………ぁ、見ないで、見ないでくださいぃ…………やあああああやだやだやだやだ。
 こんなの、こんなのやだ。やだあああああこんな私なんかみないでみないでみないで。
 やだ、やだよぉ……やだぁ………………だってだって、そうでしょう!?

 私はこんなにどうしようもなくてゴミクズみたいに醜いただの腐ったような気持ち悪くてなんの価値もない肉の塊で。
 なのに、人間はみんなこんなに綺麗ですごくて素晴らしくて最高で誰も彼も素敵なら、そうなるしかないじゃない!
 切っても張り合わせても縫い合わせても内側に折りたたんでも、人間になるしかないじゃない!

 ちょっとだけでも人間ならこうやって……話をしてくれるんだから……ぁ!」

半分になっていると言うのに、肺が問題ないのか、まるで全く問題ないかのように話して。
……涙を流したいのかもしれないが、うまく流せていないようだった。

見られると言うだけでまるで半狂乱になっている。
真っ二つになったことより、異常なくらいそっちを気にしている。

妃淵 >  
「………」

喚き散らすように、必死に言葉を並び立てる化物
けれどフェイエンがそれを見て思うのは『コイツはどうやれば死ぬんだ?』ということだった

やや苛立ちが収まったのか、その身体から揺らぎ出ていた黒い炎のようなものはなりを潜めてしまって
それに自分自身も気づいてから、面倒くさそうに溜息を吐く

「…くっだらねえ。なんだよコイツ…。
 そんなに誰かにお話してもらいたきゃ、お子様でんわ相談室にでもTELしてな」

半狂乱のように捲し立てる化物に背を向け、手提げ鞄を拾い直す

「見ねえよ。気持ち悪い」

そんな、化物の心情など気にも留めない辛辣な一言を一瞥と共に、少女…アールへと向けて言い捨て、歩き去った
───どんなにカタチを近づけたって、化物が人間なんかになれるか、と内心で悪態をつきながら

アールズアーズアース > 「…………ぐす」

ようやく、泣く、という作業を思い出した。
ニンゲンはこういうとき、寂しいとき、つらいときにこうやって泣く。そのはず。

「声帯だって切って貼って作らないと、こうやって、話もできない……」

そうだ。
だって、何より気持ち悪い。私だってそう思う。
よくわからないけど、そういうものらしい。どうしようもない。

……だから、自分で自分を切り貼りするしかない。

体をかき集め、必死に物陰のすみっこに移動すると、体をつなぎ合わせる作業を開始した。

ご案内:「落第街 路地裏」から妃淵さんが去りました。
アールズアーズアース > 「……ぁ、うあ」

ばづん、ばづん、と肉を切る音がする。
肉を貼り合わせ、縫い合わせる。

ごっそり一部が消し飛んだため、体の容量が足りない。
一回り小ささくするにも、一度骨から全部やり直さないといけない。

アールズアーズアース > 「……っ、……ぅ………………あ、ぁ」

ある意味では、台所で肉料理の下ごしらえをしているような。
そんな作業。

激痛には、慣れた。

痛いことはなにも変わるわけでもないが、ニンゲンになれるなら耐えられる。
もっと、上手くなれないといけない、そう思う。

わたしは、ただの気持ち悪い、醜悪で不格好で申し訳ない肉の塊だから。

アールズアーズアース > だから、せめて、激痛程度には耐えないといけない。
私は、存在自体が申し訳ないので。

それくらいのことはしないと、もっともっと苦しんでニンゲンにならないと、いけない。

アールズアーズアース > まだまだ、出来が悪くて申し訳ないけど。
いまは、肺と消化器、心臓ぐらいしか上手く作れないけど。

もっともっとうまく、ニンゲンにならないと、いけない。

わたしはもっとニンゲンにならないといけないから。

アールズアーズアース > ……肉を切る音は、しばらく続いた。
ご案内:「落第街 路地裏」からアールズアーズアースさんが去りました。