2020/08/24 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
「──……」
落第街、その路地裏
間もなく日が沈む、そんな時間に
その闇に溶け込むような闇色の外套を背に、風紀委員の少女が一人
指先を、道端に転がる一斗缶に触れる
まだ何かの燃えカスがその中に煤として残るそれは、この路地の風景を記憶している
断片的に再生する記憶は、一斗缶に焚べられた火を囲み話す違反学生達の姿と声をを明確に少女の頭の中へと映し出す
「…あっち、か」
指先をそっと話して、立ち姿を正す
■伊都波 凛霞 >
無言で手元で小さく印を切る
黒いクロークが揺れ、音もなく
少女から3つの影が分裂するように走り、落第街の路地へと消える
まずは彼らの居場所の特定
この辺りの路地は入り組んではいるが、それほど広くはない
三つも影を放てば、そこまで見つけるのに時間はかからないだろう
「…さて、と」
自分はどうするか、といえば情報が集まるまで警邏の続きだ
スラムほど人がいる場所ではないが、だからこそ悪いコトを目論む人間も多い
ゆっくり歩き始めると──端末への連絡を感知する
■伊都波 凛霞 >
胸元から取り出した端末を覗き込む
それは──良い報せだった
「──そっか。レイチェルさん、目を覚ましたんだ」
思わず、ほっと胸を撫で下ろした
病院の職員からの連絡であった
とりあえず目を覚ましてくれたなら、それだけでも…
「かぎりんに合わせる顔、なくなるとこだったもんね…」
頬を小さく掻きながら、安堵の笑みを浮かべる
訓練中の事故とはいえ…自分が彼女に怪我をさせたことには違いない
今度会ったら、改めて頭を下げよう
■伊都波 凛霞 >
『おい、あの闇色の外套…』
『ああ…もしかして黒い…──』
キッ
遠巻きにぼそぼそと話していた連中を一瞥する
ありったけの殺気を視線に込めてやれば、彼らは慌てたようにその場から逃げ出していった
「──はぁ」
浸透してきてる。ヤバい
なんかゆっきーも知っていたし…
「あー、もう!仕事しごと!」
ぱち、と軽く両頬を叩いて、気を入れ直す
■伊都波 凛霞 >
スラムのほうでは随分動いたので今日は人気のないほうに来たのだが、
落第街の情報も今はネットを走る時代、あまり活動地点を変えたところで関係はないようだ
情報捜査にはわざわざ影を飛ばして、
違反部活の拠点を破壊する時以外はもう目立たなくてもいいかなと思った矢先にこれだ
「…クロークの色変えよっかな」
口元へと外套をぐい、と引っ張って、歩きはじめた
──遠巻きに眺める視線や、隠れている違反学生らしき気配くらいは感じるものの、
何か大きなことが起こっている気配はない
ここのところ派手に動いたこともあって、それなりに彼らも潜伏しているのかもしれない、が
■伊都波 凛霞 >
それならばそれでも良い
表に出てこないということはそれなりの抑止力にはなっている、ということ
裏…地下でこそこそとしていても表への影響はたかが知れている
──今はとりあえず、彼らの現場復帰までの時間が稼げればそれでいい
再び彼らが動けるようにさえなれば…黒い灰被り姫(シンデレラ)の出番は終わりだ
…ていうか長く続けると多分メンタルが保たない
■伊都波 凛霞 >
まあ、たかが知れているといっても見過ごせないのは当然で、
風紀委員の眼から逃れて、目立たない程度に勢力を拡大する輩もいれば、
そもそも、元々表舞台に顔を見せない違反部活も多いだろう
その全ての撲滅は現実的ではないにしろ、
鉄火の支配者、神代理央の言う風紀委員が守るべき者
それらに影響の及ばない範囲であれば、今は無理に深追いまでする必要はない、ということだ
しばらく歩いて、路地の入り口近くへと到達する
この先にはスラムがあり、地下に拠点をもつ違反部活群が点在している
足を止めると…まるで滑り込むようにして3つの人影が、凛霞の影へと吸い込まれた
「──…一つは売春の斡旋部活…?多いなあ、ほんと……
2つ目は……地下闘技場絡み、か…なら摘発は時間をかけなきゃかな」
影の集めた情報を分析する
火急の案件は、どうやらなさそうだった、が
■伊都波 凛霞 >
「……ふぅ」
廃ビルの壁に背を預けて、一息をつく
今日は、何か派手な行動は起こさなくても良さそうだ
正直爆薬や弾薬の支出量が半端でなくなってきていたので、こういう日も必要だろう
レイチェルさんが眼を覚ました
理央くんが復帰に向かっている
山本くんも命に別状はないらしい
他の風紀委員達も、色々動いている
「無理してる、と思われてるんだろうなー…」
どうも、そういう性格に見えるのか…随分と周りにそう心配されることがある
心配してくれること自体はすごく嬉しいし、ありがたいことだと思う。けれど
それでもし彼らが万全でない状態で現場に戻ってくるのなら、
…それは要らぬ心配であると却下しなければならない
冷静に危険度やリスクを考え、万全の状態まで静養してもらうこと…
そのために、わざわざあんな恥ずかしい呼び名をつけられてまでこんな活動をしているのだ
……別に恥ずかしい名前ではなくても良かったんだけど
■伊都波 凛霞 >
胸元から取り出した端末を捜査して、メッセージを送ってゆく
『大丈夫』『心配いらない』とそういった言葉は使わない
そんな言葉を使ったってどうせ優しい彼らは、こちらが無理をしているとしか思わない
『眼が覚めたようで良かったです。
演習場での事故の原因究明等については本庁に復帰されてからで問題ありません。
その他の事務処理については皆で協力してこなしています。今はご自愛を』
To.レイチェル・ラムレイ
『大事なかったようで何よりです。あれから異能殺しはスラムに姿を見せていません。
そちらの周辺情報に関しても調べてあるので、詳しいことが分かり次第追って連絡します。
もちろん、キミが完全に万全の状態で此方に戻ってきてから、の話ですからね』
To.神代理央
慣れた手付きで、メッセージを打ち込み、送信してゆく
■伊都波 凛霞 >
『メッセージ届きました。山本くんの命が無事なことがとりあえず何よりです。
沙羅ちゃんのことについては可能な限り根回しをしてみた、けど
公安からの介入もあったりして満足のいく結果になったかはわかりません。
あと何でも聞いてくれるって話なので、完全復活の復帰を待ってますからね』
To.山本英治
『メッセージの代筆ご苦労さま。
レイチェルさんのことについては、また改めてお話しよ。
あと山本くんのメッセージに脚色したでしょう?ナイスかぎりん。
でも今はなるべく、レイチェルさんの側にいてあげてください』
To園刃華霧
打ち込み、送信を終え、端末を胸元へと仕舞い込む
本当は顔を合わせてお話したい。彼らのことが、体が、心が、すごくすごく、心配だから
■伊都波 凛霞 >
「…これで万全な状態でないまま復帰してきたら、私からは文句言われること請け合い」
くす、と小さく笑う
ここまでしても彼らが無理をして前線に出てきたら…
もう、その時は隣で支えよう
彼らが何を思って無理をして仕事に戻ったかを考えたら
実際に文句なんて、言えるわけもないのだから
ご案内:「落第街 路地裏」に池垣 あくるさんが現れました。
■池垣 あくる > 槍を持った少女、池垣あくる。
今日も今日とて、裏の道を『稽古相手』欲しさに練り歩いていたが……
「あら」
先日戦った相手を見かける。
そのまま、とててて、と駆け寄って。
「またお仕事、でしょうか?」
■伊都波 凛霞 >
誰かが駆け寄る気配…よりも前から視線を、やや剣呑な気配は感じていた
なのでその少女の登場には、さして驚いた様子は見せなかった
「こんばんわ。池垣あくるさん。
──相変わらず、みたいだねえ」
長得物をその身に帯びている、以前見たときと変わらぬ様子に苦笑する
けれど、以前ほどの…狂気にも似た雰囲気は不思議と感じない
「私に負けて、童男くんに負けて…何か見えたものでもあった?」
あの二人の邂逅は把握している。彼が同じ風紀委員だ、というのもあるが
落第街のあちこちを練り歩きサイコメトリーを繰り返していれば、見えるもの見つかるものは多いのだ
■池垣 あくる > 「あら……ご存じなのですね。御耳の早いこと」
お恥ずかしい……と少し俯いてから、苦笑交じりの顔を上げて。
「少なくとも、私には、何かが欠けているのであろう、ということは。それが、槍の技術とはまた別、ということも」
目の前の少女には、技で完敗した。
だが、もう一人には……技では、負けていなかったはずだ。
それでも押し通された。技量を、圧倒された。
それは異能による膂力なのか。それとも、別の何かなのか。
――なんとなく、後者な気がした。
単なる膂力ならばいくらでも捌けよう。いなし躱し透かし、その力を転用しても見せよう。それが『術』だ。
でも……そうしてもなお押し通されたことに、意味を見出せないほど蒙昧では、なかった。
「私は、何故、弱いのでしょうね?」
■伊都波 凛霞 >
「なるほど」
見えてきた、といよりは…わからなくなったようだった
なぜ自分は弱いのか、と問いかける少女に、まっすぐに視線を向け
表情が見えるよう、羽織っている黒い外套を少し引っ張って、口元を見せた
「強いから勝った、弱いから負けた…なんて思ってるなら、まだまだ。
霜月流の武人としては半人前ってところかな?」
私も何人か知ってるけど、と言葉を付け足して
「貴女の槍の技量は多分同じ条件で叩けば私なんか目じゃないレベル。
きっと彼…童男クンも何もリスクを払わず貴女と相対していたら、結果はわからなかったかもね」
「力量や技量なんて単純なもので勝敗を語れるなら、生涯賭して武の道に邁進する人間なんてそうそういないんだよ」
■池垣 あくる > 「よく、ご存じなのですね。霜月流を」
そう不思議でもなくはある。
霜月流は、分家流派も含めれば相当数の流派があり、そしてそれぞれがその技を、教え広めている。
霜月一天流もまた分家流派の一つであり、あくるも、霜月に連なるものではないながらもそれを習った身だ。
だから、その名も、流儀も、知っていること自体は不思議ではないが……それにしては『深く』知っているような、気がした。
そして、見せられる表情をじっと見つめ、自分は、無自覚ながらも泣きそうな表情になりながら、紡ぐ。
「想い、覚悟……それならば、私とて譲れぬものがあります。この槍に、全て捧げて惜しくはなく、実際全てを捧げてきたつもりです。
なのに、及ばない。技量を、覆される。力量や技量を超えて勝負を決するもの……持っている、つもりです。なのに、何故。この槍を、私は届かせることが出来ないのでしょうか。
何が、何が足りなくて、この槍を私は、使いこなせずにいるのでしょうか……!」
確信があった。
ともすれば盲信ともいうかもしれないが、霜月一天流は、まさしく無双に手の届く流儀であると信じている。
神槍『天耀』も、無双の兵器として名を連ねるに足るものであると、信じている。
だから勝てないのは、苦汁をなめるのはこの身の不足故。
だけど、想いも、力も、手の内にあるはずなのに。何故、何故、何故。
「貴女や彼と私……何が、何が違うというのですか……!」
■伊都波 凛霞 >
「家の都合上、少しばかり縁があってね」
深くは語らない
そうとだけ口にして、言葉を続ける
「私と彼と君で違うもの」
「何も違わない、って言いたいところだけど、強いて言うなら」
「先に見ているものが違うんじゃないかな」
力と技、その先に見据えるもの
あくるという少女が見ているものはなんだろうか
誰かの背中なのか
それとも前人未到の境地か
■池垣 あくる > 「そう、なのですか」
それもまた、不思議なことではない。
流儀を広めることを是とする霜月関係流派は、各流毎に独自の交友関係を持つ。
霜月流、と言うのならば、おそらくは本家と関係があるのだろう。
それ以上は踏み込んで考えようとはしない。向こうが語らないならば、知る必要のないことだ。
「先に、見ているもの……」
手にした槍に、目を落とす。
――忘れることは出来ない、初めて槍を手にした時の衝撃。
習い事の一環で手にした槍は、不思議なくらい手に馴染んで。それまで周囲を覆いつくしていた退屈の霧を、斬り払ってくれた。
だからこそ、極めたい。槍を。槍の技を。
そう。
「――槍の究極を。この槍の持つ全てを。この槍の可能性の最果てを、見ています」
それではダメなのか、と問うようにじっと見つめる。
■伊都波 凛霞 >
「そう、だから貴女の強さの上限はその槍の中で、終わり」
トン、と背中で壁を押して、向き直る
「それはそれで、求道者としての正しい姿。間違っていない。
だから、彼は…うん、まだ迷っているようだけど、私と貴女は違うことになるんだろうな、って」
こちらを見つめる少女
視線を交わし、射抜くように
「私は全てを修めた先に、自らの手が届く全ての範囲の人」
「それが烏滸がましいならば自分の友人だけでも、絶対に失わないだけの力…それを求めてる」
「貴女の求める最果ては、貴女の中だけにあるもの──」
「だから…私と貴女では、ステージが違う」
ダメだ、なんて言葉は使わない
想いも、覚悟も、自分のためと他人のためでは立つ場所が違う
──数値が違うのだと、そう口にした
■池垣 あくる > 「…………そこ、でしたか」
自嘲気味に俯く。視線から、逃れるように。
そう。確かに……ずっと、独りだった。
全てを捨て、全てを槍に捧げてきた。それ故に、人間関係なぞどうでもよかった。
嫌われるなどと言われればむくれもするが、それよりも槍が大事だった。
その、限界。槍しか見ていない者と、別の誰かを見ている者の、領域の違い。
「なら……私は、ここまでなのかも、しれませんね」
違うと言ってやりたい。槍に全てを捧げた在り様こそが、強さに繋がっていくはずだと。
だが……自分の知る強者たちが皆、誰かに囲まれていたのを思い出し、否定できなくなる。
そして、孤独な自分には、そこに至る条件を、満たせない。
流儀が無双であれど。槍が無双であれど。
池垣あくるは、無双へは至れない。槍の最果てしか見ていないが故に、槍の最果てを見ることは叶わない。
全てが足元から崩れ去るような感覚に、よろめき、倒れそうになるのを槍を杖にして踏みとどまる。
「そうなのだとしたら、私は、なんの、ために」
■伊都波 凛霞 >
「勘違いしてはいけないのは」
大きく、強い口調で言葉を続ける
「一つを求める者と多くを求める者、そこに本質的な力の差はない、ということ」
「けれど負けられない理由は、比較できないほど、多くなる」
負けられない、ということは強く在らねばならぬということ
やや大仰に、両手を広げて、あくるへと相対する
「私は、私達の違いを説いただけ。
私の知っている人の中には、ただ一つの道を極めるために
何もかもを捧げるどころか、大事なもの全てを捨て去った人だっている。
そして行き着いたそれは決して、他に遅れをとるものじゃなかった」
「極限を見る前にその限界数値を判断するのは、余りにも早計───ぬるい覚悟だね」
■池垣 あくる > 「ぬるい、ですか」
そんなことはない、という気持ちと、そうかもしれない、という気持ちがないまぜになる。
全てを捧げる覚悟、ぬるいはずがない。
だが、それが崩れるのが簡単すぎる。これは、ぬるい。
つまるところ……殉教者でありながら、殉じきれていない。そんな半端で最果てなんぞ、見れるはずがない。
「ええ、ええ……そう、ですね。私、揺らいでいます。迷っています。どうすればいいのか、何を胸に生きればいいのか。今、わからなくなっています」
槍を極めたい。その情熱だけは消えてくれない。消すつもりもない。
だが、それ以外に何かを手にすべきか、それとも槍に全てを捧げつくすべきか。
視野狭窄のまま生きてきたが故に、広げられた世界に眩んでしまっている。
急に視界が開け、何処に向かえばいいのかもわからなくなっている状態。
しかし。
「でも、でも。この想いだけは、槍への想いだけは、揺るぎなく。ならば、今一度、最果てへの道を模索します。
――そして、いつか貴女に、神槍『天耀』の最果てを、ご覧に入れたく思います。
その時は、受けて立っていただけますか……?」
じ、と見つめる。
好戦的ではあるが、狂気ではない。真っすぐと逸らさず、赤心にて瞳を見つめる。
■伊都波 凛霞 >
「二度敗北して命を失っていない、腕も、槍も無事。
おまけに迷う余裕まであるなんて、貴女の選んだ生き方の上では随分と運が良い状況だと思うけど」
なにせ、道を改めることだって可能なのだから
もっとも彼女にそんな気があるのかどうか、迷ってはいるようだが
けれど、すぐにその迷いを打ち払うような言葉が届く
「それは、古流武術の継承者としての、武術家として伊都波凛霞に立ち会え、ということかな」
「それとも、『この間立ち会った私』との再戦を、ということ…?」
やや底冷えするような、そんな声色で問い返す
白刃のような視線もまた、斬りつけるような冷たさを感じさせていた
■池垣 あくる > 「ええ、それは、そう思います。私、死ぬ覚悟でしたのに」
決死だった。だというのに生かされて。
それでも槍を放すことが出来ない。これはもはや宿業だ。
「それは少し、悩んでしまいますね……どちらの貴女も、魅力的ですから」
ともすれば怒りを買いかねない評価を、しかし平然と口にする。
何処までも武を基準とした倫理しか持ち合わせていない。それがどうなるかはこれから次第ではあるが。
「強いて言うならば……お見せしたいのは、武術家としての貴女です。そして、見せつけたいのは、先日私を打ち倒した貴女です。強欲、と仰られるでしょうが、これが本心です」
ここまでに至ったと見せたいのは、武術家の凛霞で。
その力で以て打倒したいと願うのは、全力の凛霞。
ある意味それは、ただの人としてのあくると、武狂いのあくるの違いであり、今それが、並び立っている状態。
その揺らいだ精神の立ち位置は、今後次第で変わるだろう。
いざ、槍を次また構えた際。どちらを望むのかは今のあくるには、わからないのだ。
■伊都波 凛霞 >
「正直なのは美徳だね」
はあ、と溜息を吐く
やや困ったような視線を向けて
「貴女がどちらを選ぶか、その時にならないとわからないけど…」
じ…とあくるを見つめる
自分よりも少しばかり年下だろう
その未来はまだ、多くの枝葉を覗かせている年頃に間違いない
「再戦を許すのは私が甘かったから。
あそこで貴女の腕を落とすか、槍を折るか……しても貴女は諦めなさそうだから」
「次は、貴女の大事なものを奪おうと思う」
殺す、なんて言葉は向けない
そもそも死ぬ覚悟を決めて向かってくるのだろうから、脅し文句にもなりはしない
「私が勝ったらの話ね」
そう付け加えると、誤魔化すようにして笑顔を浮かべた
■池垣 あくる > 「まあ、恐ろしい」
等と言いつつ、まるで恐怖を感じている様子はなく。
しかしそれは、目の前の女性の実力を軽んじているわけではなく、ただ全てを覚悟して受け入れているだけだ。
その時の自分が、もし敗北して大切なものを失ったとして。
それもまた、やむを得ないことなのだろうと。自分の全力の果てなら、悔いはないだろうと。
そして、その上で。
「でも私、負けませんよ?」
笑みを向ける。おそらく、今までの人生で最も穏やかで屈託のない笑みを。
■伊都波 凛霞 >
「一度生殺与奪を握られてるにしては豪胆というかなんというか…」
まぁ、そういう図太さは必要なのだろう
でなければ、槍一本に全てを捧げようなんて道を選ぶような精神性は持っていないのかもしれない
「私は、比武を楽しむ…なんてもうしないから、その日を楽しみにとは言わないけど」
そう、できれば来ないほうが望ましい日だ
「せいぜい、私に挑むまで負けないように。
傷だらけの槍将の首を挙げても、自慢にならないからね」
やや辛辣な言葉を向ける
無論心からそんな言葉を言っているわけでもないが、
少なくとも、狂気にかられ勝算のない戦いを続けることはなくなるかもしれない
二度言葉を交わした相手、知っている顔がいなくなるのは…
例え友人でなくとも、この少女はヨシとしないのだった
「と…そろそろ0時を過ぎるね…私はこのへんで」
ぺこりと頭を下げる
長い象徴的なポニーテールと、黒い外套がふわりと揺れて
そんまま踵を返すと、闇に溶け込むように、その場から消え失せるのだった
■池垣 あくる > 「ええ……それでは、また。なんだったら、普通のお話も、致しましょう?」
微笑んで見送る。
その要請は、自覚こそないが、池垣あくるにとっては極めて異質な提案であり。
きっと、少しは変化が出てきているのだろう。
ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 凛霞さんが去りました。
■池垣 あくる > ――その後。
池垣あくるによる襲撃事件は、一気にその数を減らす。
完全になくなりはしないが、その相手も所謂ならず者が主となる。
いつまで続くかはわからないが……狂気のまま人を襲う池垣あくるは、影を潜めたのだろう。
ご案内:「落第街 路地裏」から池垣 あくるさんが去りました。