2020/08/31 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に燈上 蛍さんが現れました。
燈上 蛍 >  
「……夏季休暇も終わるんですから、
 もう少し大人しくしていてくだされば良いのに。」

青年のぼやきが路地裏に彷徨う。

夏季休暇最終日。
一般的な生徒は、明日から新学期の始まりだ。
休暇中に入学した生徒や就任した教師などは休暇が延長されることもあると聞くが。

ぼやいた青年は、風紀委員の制服に腕章をつけていた。

この路地裏の闇に溶けるような黒に蒼を混じらせた髪を編み込み、
何かしらの白い装飾が、その黒の中目立つように冠されている。

紅から下に向かい徐々に橙色になる炎のような瞳。


普段青年がこんな深くまで警邏が割り当てされることは無いが、
明日から新学期ということもあってか、どうにも不規則な割り当てを喰ったらしい。

手に赤い装丁の本を持って、歩きながらそれの頁を捲っている。

燈上 蛍 >  
整備されていない瓦礫片や砂利だらけの道。
ゴミも掃除されることなんてない。

そんな地面に、紅が点々と落ちる。
それは血痕のように、青年の後を追うかのように。

血の匂いはしない。


青年はそれを気にすることなく、手の本の頁を捲る。

この薄暗い裏路地で、本当にその本の中身が読めているのかすらも分からない。
けれど青年は、ただ静かに、
この騒がしい闇に、この静かな闇に、紙を擦る音を響かせている。

燈上 蛍 >  
そんな喧騒の静寂を破るかのように、
ポケットにねじ込まれていた通信機から音が響いた。

「はい? ……えぇ、…分かりました。」

誰に見られている訳でもない。
通信機を取る顔は、少々不機嫌に。

ただ声は極めて穏やかに、返事を返す。
通信機から聞こえた内容に二言三言言葉を返し、手の本を閉じる。

それは青年の手の中で白い花に姿を変える。


……今日は、少し違った一日になりそうだ。

その場を後にして、指示に従い青年は走り始めた。

ご案内:「落第街 路地裏」から燈上 蛍さんが去りました。