2020/09/14 のログ
■クロロ >
「ならいい。つか、礼には及ばン。アイツが気に入らなかッただけだ」
怪我がないなら十分だ。
フン、と両腕を組んで満足げに頷いた。
理由も単純明快、気に入らないから"シメる"。
やり方としては自分勝手、無法者のそれだ。
「ア?エロ?ンだソレ、お前の"名前"?よーわからンが……
とりあえず、長生きッつー事はババアだな」
物を文字通り知らない。知識が無い。
故に、"エルフ"が何であるか、クロロは知らない、覚えていない。
そして、お口の方は無礼極まりなかった。
但しそれら全部に悪意はない。得てしてそうなる、短絡さとも言うべきもの。
しかし、見れば見る程少女は美しい。
まさにそれは人形、一切のゆがみが無く
ただ、"美しく"と、誰かが作り上げたような幻想美。
目と鼻の先に迫る美しさにも特に動揺することなく、じっと目を背ける事無く覗き込む。
「……ア?何故ッて、殺す必要もねェからだ。勝負はついたし
お前も無事。テメェがそれほど"憎い"なら知らんが、そうならテメェで殺りゃァいいし
オレ様が関与する事でもねェ。オレ様はクズとは言え、デタラメに殺しはしねェ」
「そりゃ、"スジ"が通らねェからな」
あの一撃で勝負がついた以上
それ以上に相手を痛めつける趣味ない。
どの様な形であれ、決着に泥を塗る事は"スジ"が通らない。
掟破りの無法者とは言え、自身の中にある"矜持"を破るほど、クズではない。
クロロは何時だって、そのように生きている。
呆れたように眉を顰め、眉間に皺が寄った。
「お前こそ、急に随分な事言いやがッて……テメェ、"ビビッてなかッた"ろ?
テメェ一人でどうこう出来たかはしらねーけど、テメェこそ一人でどうにかなッたンじゃねェか?」
ともすれば、これは獣の勘とも言うべきもの。
クロロは、『シエル』の事を全く以て知らない。
だが、"不愛想"と呼ぶには余りにも冷静すぎる。
それこそ、氷の理性とも言うべきものだろう。
それに、"落第街にいる"時点で、タダモンでは無いだろう。
その意図を吐かせるように、問い詰めた。
■『シエル』 >
「気に入らなかった、ですか」
『シエル』は興味深げに、彼の顔を見上げる。
顎に手をやったまま、一挙一動を見定めるように、
その在り方を、確かめるように。
「私の名前は、エロでもエロティシズムでもありません。
エルフは、私の種族の名です。
繰り返しますが、私の名前は、『シエル』です」
そうして続けて放たれたババア、という言葉には。
ただ虚ろな目を向けて、返す。
「まぁ、人間の基準から見ればババアでしょう。
貴方が人間かどうかは、わかりませんが」
蔑称であるが、眼前の男から悪意らしきものは感じない。
恐らく、これが悪気のない彼の素なのだろうと、
『シエル』は理解した。
そして。
――おそらくは、一般的な『人間』ではないでしょうね。
彼の扱う術、そして纏う雰囲気。
思考を走らせながら、『シエル』は一人そう内心で呟いた。
そうして、彼が語る矜持《スジ》の内容に、
じっと、ただじっと、静かに耳を傾ける。
そうしてその内容に対して、エルはこくりこくりと小さく
頷きを返していく。
「貴方は――」
そうして口にするその言葉は無色ではあったがそれでも、
どこかしっかりとした遺志を感じるそれであった。
「――こちら側の人間。でも、確かな矜持を持っているのですね。
誇りを――これは譲れないというルールを――
持っているのですね」
『シエル』が、クロロを見る目が確かに変わった。
感情は未だ見えない。それでも、『シエル』の目が興味深そうに
見開かれたことに、気がついたことだろうか。
「さて、どうでしょうね。
ただ、ビビる……恐怖心を覚えていなかったことは、確かです。
そういった感情は私の中にはありませんから」
『シエル』は、どこまでも透き通った声を放つ。
本当に生物であるかどうかを疑ってしまうほどの、
透明度だ。
落第街の黒い闇の中。
対照的な白の髪が、穏やかな風に揺れている。
「……貴方、名前は何というのでしょう。
教えていただけませんか?」
『シエル』は、小首をくいっと傾げて青年を見上げる。
そうして、その名を問うた。
■クロロ >
「えろ?えろてぃしずむ?よーわからンが
名前くらいさッき言ッたから知ッてるよ。
つか、ババアッてマジか……年上のケーイとかオレ様知らンぞ」
何を言ってるんだコイツ?と怪訝そうな表情を浮かべた。
それは間違いなく、向こうの台詞である。
続く言葉には、眉間の皺がさらに増えた。
「……オレ様は"人間"のつもりだ。『この体』は気に入らねェが、"人間"だ」
僅かに震えた声音。白紙の記憶、知らぬ己。
未知とは恐怖だ。だからこそ、己自信が最も怖い。
その恐怖を覆い隠すために、"人間"の定義を身に着け
消えぬ憤りの炎を内心に燻ぶらせて生きてきた。
だからこそ、"そうだ"と言い切る、言い聞かせる。
この炎を宿すのは、ただの一人の人間だ、と。
『シエル』の目の色が変わった。"興味"だ。
少女は確かに、己に対して何か関心を抱いたようだ。
矜持か、或いはもっと別の何かか。
何れにせよ、クロロは人に好かれるのが好きだ。
だからこそ、その目は嫌いではない。自然と口元が緩んだ。
「おう、オレ様はクロロだ。エル公。つか……」
上機嫌に名乗った。ついでに新しい渾名もつけておいた。
透き通り透明の声音。それはつまり、"何もない"と言う事だ。
少女は恐怖心を感じない、そんなものはないと言った。
感情の欠落、人形のような見た目、闇夜に似合わぬ白がそれを語らせるが……。
クロロ自身は、口元をへの字に曲げて眉間に皺を寄せた。
「恐怖心がないッてなァ、ただ慣れてるだけじゃね?
感情が欠落するセーブツなンて、そうそういねーだろ。
お前、もしかしてこのチョーシで他の感情も無いとか言うのか?」
徐に両手を伸ばせば、その頬に触れようとした。
触れられればそう、無遠慮にあっちこっち伸ばしたり撫でられたり、玩具にされるぞ!
■『シエル』 >
「そういった敬意は、全く必要ありません。
私は、気にしませんから」
怪訝そうな表情を浮かべるクロロに、ぱちぱちと瞬きを
返す『シエル』。
そうして、眉間の皺を増やす彼には、はっきりとした口調で
言葉を返す。
「そうですか。
ならば、貴方は"人間"なのでしょう。
真に大切なのは、自身が何者で在ろうとするかだと、
そう考えています。
貴方が"人間"で在りたいと心から願い、
そこに"人間"らしい行動も伴うのであれば……
貴方は、紛れもない"人間"でしょうね」
言い聞かせるように語っていることを、察したらしい。
その闇へずい、と踏み込みながら、
『シエル』は彼の闇を肯定する姿勢を見せる。
そう、どんな者でも心があれば、そこに闇の部分がある。
そんな闇の部分を愛撫するかのように、
静かにゆっくりと声をかける。
相変わらず、透明な声色ではあるが。
「エル公。呼び名がころころと変わりますね。
まぁ、好きに呼んで貰って構いませんが……」
別にこの姿での呼び名など、気にしていない。
だから、そう返したのだった。
「ええ……」
頬に触れられても、微動だにしない。
静かにそれを受け入れるだけだ。
それは眼前の相手を『見定め』終えたが故だろうか。
「そういったものは私には……はひは――ふぇん」
ぐいーっと頬を引っ張られても特に怒る様子もなく、
撫でられても恥ずかしがる様子もない。喜ぶ様子もないのだが。
■クロロ >
「そーか、そりゃ助かる」
礼節も"スジ"も通すがゆえに、そういう苦手に苦しめられる時がある。
それが要らないとなれば、此方も気が楽だ。
「…………」
白紙の記憶を、心の淀みを愛撫するように透明な声音が撫でまわす。
闇を肯定する白の少女。"そこ"が居場所の様に、当然のように
少女は、自分の心に踏み込もうとする。
そのある種の受け入れる慈愛、優しさとも言えるべきそれは
"闇"のカリスマとも言うべきものに惹かれていたのかもしれない。
だが、その燻ぶる憤りが、"それ"を赦さない。
「──────気にいらねェな」
無造作に人様の心に踏み込むのが
利いたような口を利くのが
金色の瞳が、強く少女を睨みつけた。
「言われなくてもわかッてンだよエル公。オレ様に能書き垂れてンじゃねェ……!」
だからこそ、それは"今更"だ。
燻ぶる憤りの炎は、誰にでも燃え移る。
心の闇に宿るそれは、あらゆるものに対する怒りだ。
自分にも、他人にも、この世界にも、理性の裏で常に燃えている。
下手に踏み込むのであれば、それは火傷では済まされない。
フン、と鼻を鳴らし、己の気持ちを落ち着けた。
「無い?マジ?」
それはそれとして、クロロも『シエル』に関心を抱き始めた。
その手は、炎を内包する人の皮だ。
他人よりも熱く、熱を感じるなら触られ続けると苦痛を伴う。
それを知っていてクロロはぐいぐいと美少女の顔を弄ぶ。
訝しげな顔をしながら、ぱ、と手を離した。
「嘘吐け、この世に感情のねェ奴はいねェよ。
そこに心がありゃ、知性がありゃ、"感情"の一つはあるに決まッてンだろ?」
少なくとも見る限り、彼女はどちらも欠如しているようには見えない。
ならそこに、感情の欠落があるのはクロロにとって"あり得ない"。
深いため息の後、自身の後頭部を掻いた。
「……で、『見定め』は終わッたか?オレ様に何を見出したンだ。お前?」
当然、それに気づかない訳でない。
徐に少女へと尋ねた。
■『シエル』 >
「分かっていれば、いいのですクロロ。
お節介でしたね、失礼しました」
淡々と、『シエル』はそう返す。何の色も見せぬまま。
そして、その言葉とは裏腹に。
闇を弄られた彼の反応を見て、『シエル』は一つの確信を得たことに
満足をしていた。
この男の内に燻っているものの存在を改めて感じ取る。
憎悪の炎が、この男の闇には巣食っている。
「貴方がこの世をどれだけ知っているのかは分かりませんが、
例外は常に存在します。ただそれだけの話です。
まぁ……その辺りの話は、いずれ機会があればしましょう」
嘘はつかない。しかし、細かい話までする義理は『まだ』ない。
だからこそ、シエルは青年の問いかけに応える。
「見出したのは――矜持。
悪《やみ》の道を歩みながら、それでも矜持を背負っている貴方の
在り方こそ、私が見出したもの」
そうして懐から、一枚のカードを取り出す。
彼女の手から、蔦のように淡い緑色の光が
這い回ってカードを埋め尽くす。
しかし、それも一瞬のこと。
瞬く間に、まるで幻であったかのように、それらは消えていた。
あるのはただ、何も記されていないカードが一枚のみ。
■クロロ >
「しゃーねェな、"ミズニナガス"事にしてやるよ」
曖昧な覚えたての言葉を使っていく。
確かに、クロロの中には消えない憤りが燃え盛っている。
生ける炎に燃え広がるそれは何も─────。
「なァンも知らン。"キオクソーシツ"ッて奴で、ほとンど覚えてねェ。けどな……」
■クロロ >
「此の世に『例外』なンてねェ」
≪此の世に『例外』なぞ、無い≫
■クロロ >
「お前がどーか知らねェが、そう出なきゃ一々"お節介"なンて焼くかよ」
≪貴様が如何かは知らんが、感情無き者が一々他人に興味など抱くものか≫
「オレ様が言うンだ、間違い──────……ア……?」
≪大魔道師の俺が言うのだ、間違い──────……≫
「まァ、いいか」
言い切る直前に、間の抜けたような声が漏れた。
今のは、なんだ。"己の言葉"ではない。いや、確かに"己の言葉"だが
これは"受け売り"か。誰の、何の言葉だったのか。
思い出せはしないが、悪い意味では無かったはずだ。
自分の脳裏に過ったこの"誰かの声"は、嫌いじゃなかった。
自然と口元は緩み、何処となく不敵な笑顔を浮かべた。
生ける炎に燃え広がるそれは何も、憎悪だけではないらしい。
懐から取り出されたカード。蔦の様に絡みつく緑の光。
何も記されない白紙のカード。
まるで自分の記憶のようだ。
ふぅン、と関心の声を漏らし、『シエル』を見やった。
「ンで、そのオレ様に何させようッてンだ?」
■『シエル』 >
「私の感情は、一度殺されたものゆえ。
朧げな、泡沫の色を抱くからこそ――」
男の言葉を全て受け入れて、『シエル』は口にする。
胸の内に秘めたもの。
ほんの少しだけ、踏み込んだ話をしてみせた。
「――色を求めて、いつか胸に抱いていた夢を、
私はただ、歌《なぞ》っているだけです」
かつて、抱いていた感情があった。
『シエル』は虚ろとなった心で、それをなぞっているだけだ。
実のところは無色だとしても。
だから、時折不器用に笑う。時折、色らしきものを見せる。
それが、歪な偽りだったとしても。
「この落第街には、数多の悪が存在しています。
それは、当然のこと。それが、落第街の日常。
しかし、落第街の悪の中でも、
貴方のいう『スジ』を通さぬ者達が居る。
私達は、その『矜持《スジ》』を通さない者達に、
立ちはだかる。
落第街の均衡を崩そうとする者達に、立ちはだかる。
『矜持《スジ》』を通し、
悪を以て、悪を狩る――
私達のその活動に、貴方の力を添えて欲しいと考えています。
もし、興味がおありでしたら――」
――どうぞ?
それは、特別な招待状。
意志ある者には、組織へと繋がる『道』を示す。
意志なき者からは、この場で出会った『記憶』をすっかり奪う。
彼女の魔術が編み込まれた、特別製の『魔道具』だ。
■クロロ >
「"殺された"……?ハァン……」
口にした言葉の意味を、クロロはまだ理解しえなかった。
自分の中に"闇"が燃え広がるのであれば、彼女の心は"無"か。
但し、その穴は何かによって作られたもの。
目の前に広がる深淵を、或いは覗いている。
その無表情の裏側、光の見えない、闇の底。
金色の瞳が、細くなった。
差し出された招待状を見据え、クロロは────…。
「ぶッちゃけ、そこまで興味はねェ。
どーせ、その悪を狩るだのなンだのも
"オナジムジナ"ッて奴だろ?大して興味はねェが……」
カードへと、手を伸ばす。
「"お前等"……ッつーか、"お前"には興味あるぜ。エル公。
歌(なぞ)ッてるッつーが、夢を見れンならまだ簡単にゃ死なねーだろ?
お前がちゃンと、感情(オマエ)を認識出来るようになるのに、興味がある」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「だからこそ、力が欲しいッてなら貸してやる。
オレ様の"炎"も、残ッたの"記憶"も、全部貸してやる」
「────但し、火遊びじゃすまねェぜ?精々、火傷しないように気を付けな」
燃え盛る生ける炎。深淵の淀みを宿す危険な陽炎。
それが見出そうとするのは、心の、生命の意味か。
そこには確かな"意志"がある。彼女自身への興味。
そして、その為に彼女の望みに応える心意気。
だからこそ、見せつける。矜持なき悪を狩る、闇の炎へ成る覚悟。
それを示すように、クロロは招待状<カード>を手に取った。
■『シエル』 >
「遠い遠い、昔の話です」
『感慨深げ』に何かを思うように、空を見上げる行動をなぞる。
その表情は変わらず仮面のよう。
空にはただ深い闇が広がっているだけで、
鮮やかな色はそこにはない。
「ええ、同じ穴の狢で間違いありません。
過ぎた悪事を行うのが違反部活であれば、
それを狩る自分達もまた違反部活。
我々はそのことを、忘れてはいけない。
だからこそ、『悪』を背負うのです」
興味がないという言葉を聞いたとしても、
そのままカードを引っ込めることはしない。
ただ誘うように、そのカードを差し出し続けるのみ。
「私に興味がある……とは。
変わっていますね、クロロ。
とても、変わっています」
凍った水面のような平たさで、『シエル』は彼の言葉に返すの
だった。
――感情を認識出来るようになるのに興味がある、ですか。
そんなことを口にする者は今までただの一人も居なかった。
そんな言葉を受ければ、『シエル』もまた返す。
「私達も……いえ、私も、貴方が記憶喪失の中でも、
生き辛さを感じぬよう、サポートをしていきます。
そして必要であれば、記憶を取り戻す手助けも」
空いた手を彼へ向けて差し出す。
もしそこに彼が握手を返したとして、
そこに熱が痛みがあったとしても、
『シエル』には関係ない話だ。
痛みすらも、感じない身体なのだから。
招待状《カード》は確かに、向かうべき道を彼に示す。
落第街を示す地図が、カードの上に詳細に描かれていく。
最後に赤い丸で示された地点。どうやらそこが、
彼らの拠点らしかった。
「……準備ができたらいつでも来てください。
ようこそ、裏切りの黒《ネロ・ディ・トラディメント》へ。
クロロ。いいえ……落第街の払う闇の炎――」
白い手を、すっと彼へと伸ばす。
そうして、口にする。
「――篝火《トーチマン》」
新たなヴィランが、ここに誕生する。
そして、ほんの一瞬。
祝福するようにぎこちない笑顔を、『シエル』はなぞるのだった。
たとえそれが泡沫の色であったとしても、
此度のそれは、きっと、偽りではなかったことだろう。
■クロロ >
「『悪』を背負うねェ……随分な言い方すンなァ。
まァ、"スジ"通すン忘れねェッてなら、わかるがな」
だからこその"悪"か。
己も大概そちら側の自覚がある。
成る程、思うよりかは面白い組織なのかもしれない。
彼女のいる、『悪』を狩る『悪』の違反部活。
差し出された手を見れば、一度一瞥し、パシッと音がするように手を合わせ握った。
「そうかァ?他人に興味持つぐれェふつーだろ。お前の周りも
大概お前に興味があるから、とかじゃねェの?知らねーけど」
そもそも、彼女が収める組織かどうかも知り得はしない。
だが、此の無数の生命が交差するこの世界で
例え、世界の肥溜めのような場所ですら、きっと彼女の身を案じる連中はいるだろう。
少なくとも今、此処に一人は出来た。
握り返した手に伝わるかは分からない熱もまた、生命の炎の証。
「裏切りの黒《ネロ・ディ・トラディメント》……ね」
篝火《トーチマン》
それが、そこにおいての自分の名前らしい。
闇を払い、闇を照らす闇の炎。
ヘッ、と楽しげに笑みを浮かべた。
「悪かねェ。ただ、オレ様が照らす場所はオレ様が決める。
ま、オレ様をサポートするのもケッコーだが、今はいいや。それよりも……」
「オレ様の炎で、ちッたァお前等の事を照らせればジューブンだ、エル公」
「"昔話"で終わらすにゃァ、まだまだ早いぜ?」
それはまだ、彼女の物語の一つに過ぎない。
感慨深く語るにはきっと、まだまだ早い。
深淵がどこまでも続くのであれば、『悪』の闇を照らす『篝火』であろう。
そこが何処までも深い虚無であろうと、此の炎は何処までも届く。
『篝火《トーチマン》』の炎。黒を照らす、指標の炎。
記された招待状《カード》を指先で回し、祝福の笑顔を受けて共に闇の中へと歩み始めた──────……。
ご案内:「落第街 路地裏」から『シエル』さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からクロロさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に燈上 蛍さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」にクロロさんが現れました。
■燈上 蛍 >
落第街の裏路地。
"普通の生徒"ならば近づくことの無い場所。
そこはこの島の掃き溜め。"在る"けれど"無い"とされる場所。
…では、そこを警邏する自分は…"在る"のだろうか。
この常世島という本の中に。
手ぶらで武器も持たず、歩く。
見える武器をぶら下げて歩くよりも、己の存在自体を武器として歩く。
"手を出すなら面倒な相手"だと思ってくれれば、それに越したことは無い。
風紀委員の制服は、そういうモノだと思っている。
紅い服に炎の瞳を暗闇に瞬かせ、頭に白い花が咲く。
青年はそうやって、歩く。
『ディープブルー』と言われる違反部活の旺盛に合わせ、
こういった裏の道に巡回をと言われる回数も増えた。
……特に、先日、神代理央が倒れてからは。
■クロロ >
暗がりとは、人が立ち寄らない場所だ。
そこで何が起きようと、誰も助ける事はない。
そこで起きる事は全て"自己責任"。何が起きようと、誰も関与することはない。
それが、この島の暗部ともなれば、そこは更に深い深い場所だ。
手軽に表と裏が繋がる場所でもあった。
薄暗く湿気の強い裏路地に、生暖かい風が吹いた。
蛍の花を揺らす風の吹く先に、それはいた。
裏路地の暗闇に煌々と光る金の瞳。
闇夜でも目立つ、迷彩柄の青年だった。
「ア……?」
人相の悪い顔が、蛍へと向いた。
「なンだお前……?コッチ側の連中……ッて、雰囲気じゃねェな。何モンだ?
ガキがちょろちょろ歩いてイイ場所じゃねェンだぜ。とッとと帰りな」
しっしっと軽く手を振って追い払う動作だ。
■燈上 蛍 >
「…帰りませんよ。生憎と仕事なので。」
炎の瞬きは、その色に似合わず氷のように話す。
この島は子供が大人の…大人以上の責務を任される場所だ。
《大変容》以前の日本ではまだ未成年とされるこの青年もまた、そういう責務を背負っている。
珍しいな、風紀委員の自分に帰れと言うだなんて。
この服も腕章も、大概ここ落第街では抑止力として働くはずだというのに。
自分が見ている所だけでも面倒ごとを起こさないでくれれば、
青年はそれで良かったのだ。
生物が存在すれば、そこには必ずはみ出るモノが生まれる。
少数派が生まれる以上、落第街のような受け皿は存在出来てしまう。
その全てを消してしまったとしたら?
…その時は、また新たな少数派が生まれるだけなのだ。
声をかけてきた相手を見る。
黄金。それはこの世で価値ある色として、愛されてきた色。
「僕は風紀委員。この島の警察機構を担うモノです。」
相手はこの島の制度を知らないのだろうか。
ならば異邦人か、己の意志でここに来た訳ではないタイプの不法入島者か。
そんな考えが青年の頭をよぎる。
■クロロ >
「フーキイーン?……ア、腕章つけてンじゃン。なンだよ、仕事中か」
訝しげな顔をしながら、じろじろと蛍を見やる金の瞳。
暗がりの中で、それが見出したのは腕につけられた腕章。
この島の秩序、抑止力となる双頭の一つ、風紀委員会の証だったか。
それを見た途端、心配して損したと言わんばかりに何ともぞんざいな声を出した。
「この前みてーに、クソガキが余計な絡まれ方すンじゃねェかと思ッたが
寧ろ、睨まれる方だッたか。マジで心配して損したぜ」
ため息交じりに吐き捨てる言葉は何ともと言わんばかりの言葉だ。
悪意こそない。そう言うガサツなタイプらしい。
それでいて、クロロは普通に蛍の事を心配していたらしい。
直情的と言うか、わかりやすいというか。両腕を組んで、じっと蛍を見据えた。
「よォ、よくもまァこンな場所までご苦労なこッた。
今日はガサ入れか?それともしょッぴくンか?
……ア、言ッとくけどオレ様世話ンなることしてねーからな」
「つーか、オレ様の目でも気になるのか?」
ぱちくり。瞬きしながら首を傾げた。
■燈上 蛍 >
なんとまぁ、本当に裏で逢うには珍しいタイプの相手だった。
「別に荒事が好きという訳では無いです。
風紀委員の皆が皆、好戦的ではないですよ。
なので貴方が目の前で犯罪でもしない限りは、どうこうする気はありません。」
前線の部に配属されたばかりの青年はそう言う。
自分だって能力値的に最適な所に回されたというだけだ。
仕事としている以上、上の決定に逆らう気はない。
かといって、不服だからと風紀委員を辞めるという選択肢も思い浮かばなかった。
ただ流されるままに、台本に書かれているかのように、
自分に割り当てられた役割(ロール)を演じている。
別に、自分がこの薄暗い路地で死ぬ…"彼岸"へ渡るとしても、
それは運命として決まっていたことなのだろう。
そんなことさえ考えている。
「"こちら"の街にいるのに、随分と親切な方ですね。
眼もそうですが、珍しいと思ったんですよ。」
まぁ、風紀委員に好印象を与えて裏で何かする狡いタイプかもしれないが。
何かが起きない限りは、自分たちは動くことが出来ない。
ならば好意的に受け取っておいて、報告書に記しておくだけだ。
丸腰のようにしか見えない青年は、一定の距離を保ちながら話す。
■クロロ >
「ほォン。そう言う割にゃァ、"喧嘩上等"キメてンじゃン。
だッてお前、その腕章付けるッて事は、仕事ッてもそーゆー事だろ?」
確かにどちらかと言えば物静かな男だとクロロは思った。
だが、此の街にとって"風紀委員"と言うのは"抑止力"と同時に"的"だ。
好き好んで秩序機構に喧嘩を売る相手はいないが、この場所なら"別"だ。
此処は島の掃きだめ、落第街のスラム。確かに、島の秩序を担う風紀委員は"抑止力"であるが
それを良く思わない連中はゴマンといる。
此処で喧嘩を売られた以上、殺されたとしても文句は言えない。
そう言う場所だ。何処となく、クロロの声音は同情的だった。
「ウルセーな。オレ様は色々やるが
テメェ等の前で暴れる程飢えてねェよ」
露骨に顔をしかめた。
クロロは確かに荒くれ者だが、節度はある。
風紀相手に、理由が無ければ喧嘩を売る事はない。
「親切?気のせいだろ。オレ様は
お前がヘンな目に合うのが気に入らねーから声を掛けただけだ。
珍しいか?案外声掛ける連中は多い気もすッけど……」
徐に、自身の目元に触れる。
「そンなに珍しいか?金」
■燈上 蛍 >
「仕掛けられれば対応はしますし、命令されれば動きます。
そういう"お話"です。進んで何かをする気が無いだけなので。
なので、そう言っていただけるのなら、僕はありがたく警邏の役割をするだけです。
実際、こうしてお話で済むなら、ここでは親切な方でしょう。」
殺されたならそれはそれ。
今は生きられるから生きているだけ。
表の世界で生きているのも、己に定められたこと。
"運命"に抗える訳が無い。
自分は、"物語の主人公"では無い。
この落第街という場所で、"風紀委員"に恨みを持つ輩に殺されたとしても、
別に文句を言うつもりなんて無いし、言える立場でも無い。
そんなもの、この島の"日常"に過ぎない。
『風紀委員の一人が殉職した』という記録が残るだけだ。
青年の声は同情にも別段『それがどうした』と言うようだった。
不満を言い出せばキリが無いのだから、
全部そういう"お話"だったと割り切ってしまった方が早い。
「そう万人には無いと思いますけれどね。金色。
黄土色や黄色ならともかくですけど。」
金や銀、光を反射して煌めく色。
そういう色は得てして"特別"のように思える。
■クロロ >
「…………」
訝しげに眉を顰め、眉間に皺が寄った。
ため息交じりに、後頭部を掻いた。
「要するに、『面倒クセェけどやッてる』ッつー事か?
お前も大概ヘンな奴だな。テメェでやる気がねーなら止めりゃいいのに」
有体に言えば"覇気"を感じない。
目の前の男からは、今一そう言った"やる気"を感じなかった。
"ありがたく"とどの口が言うのか。そんな感情もないくせに
ただ、"そうしろ"と言われたからやる冷めた感情。
怪訝そうな唸り声を上げながら、じろじろとクロロは蛍を見ている。
「そういうのと会ッた事ねェだけだろ?多分いるぜ」
偶々そう言う色と言うだけだ。
裏路地の闇に輝く金は、僅かに裏路地を照らしていた。
「つーか、それよりもお前だお前。随分とやる気がねェし、マジでンな調子だと死んじまうぞ?」
■燈上 蛍 >
「死ぬならそれまでですよ。」
■燈上 蛍 >
返す刀でそう言い切った。
特に淀むことも無く、静かな声が揺れることも無く。
瞳に炎を灯した青年は、どうでもいいことのように。
「まぁ、出来得るなら戦いますけれど。
自分以上に強い方なんて、ここにはごまんと居ますしね。」
例えば『異能殺し』。
データを見るだけで、まるで神話の存在のようではないか。
『鉄火の支配者』たる神代理央と対等以上に渡り合うような相手に出逢ったなら、
自分のような一般風紀委員上がりの人間など、敵うはずが無い。
「ええ、いらっしゃるのかも知れません。
僕は全てを知っている"事典"という訳では無いので。
面倒というかなんというか……そういう"役回り"ですから。
辞めたところで単位が取れるとも限りませんし。」
そう言いながら悠長に眼を閉じて瞳の炎を消す。
自分の物語が終わるなら終われば良い。
生も死にも執着していない。
自分が頭に冠するは彼岸花。
それは、死を象徴する花なのだから。
目の前の青年よりも幼い子供は、子供というには余りにも、冷えていた。
■クロロ >
「何言ッてンだコイツ?」
素直な感想が口に漏れた。
如何やら覇気の無さは、そもそも自身の在り方に起因するらしい。
無気力と言うより、"自分すらどうでもいい"とも言える姿勢のせいらしい。
だからこそ、クロロは不信感、と言うより疑問しか抱かない。
自分の事を此処迄どうでもよさそうに言える様に、疑問しか抱けない。
「"それまで"ッてなァ。死ンだらそれこそ、しょーもねェだろ?
つか、お前風紀委員に入ッたのだッて、自分の意思とかじゃねェのか?」
普通の人間ならば死を恐怖する。
理由は単純、死にたくないから。
だが、彼にそんな意志は見えない。
瞳に炎は陽炎の如く、何処となく胡乱ささえ感じさせる。
「なンつーか、面倒クセェ奴だなァ。
お前、そンななンもかンも冷めた感じで楽しいのか?」
素朴な疑問だった。
別に感情の起伏の差なんて人それぞれだ。
だが、彼の場合はそれ以前の問題にも見て取れた。
何物にも執着しなたんぱくさに、クロロは心配さえ覚えている。
「"ジテン"……?や、知らンが。アカシックレコードでもねーンだから
何でもかンでも知ッてる奴のが珍しいだろうが。つーか、"役回り"ッてなァ……」
「そーゆーの、組織にいる以上は当たり前にやるンじゃねェのか?」
■燈上 蛍 >
長いモノには巻かれろ精神をもっと面倒にした形。
「ええ、ですから"当たり前"にこうして警邏しているんですよ。」
自分の能力に合った場所だと上が判断したのだから、ここにいる。
『神代理央と一度共闘出来た』という実績があるのだから、
上の判断は正当だろうと思っているし、逆らう気もサラサラ無い。
瞼を開く。炎は相変わらずそこにある。
今日ここで時間が潰れるのなら、無事に帰れれば、
それはそれで今日の"報告書"の内容は問題なく書ける。
人間が生きている上で、全ての本を読破は出来ない。
誰とて、己の興味のある本を読んでいる。
だから自分の生死がどうでもいいと言えるのは、
『燈上蛍』という一冊の本に、自分は興味が無いだけだ。
「まぁ僕にも楽しい瞬間はそれなりにありますよ。
それはそれとして、人間、死んだらそこまででは無いですか?」
どうしてこの男は自分をそこまで心配するのだろう。
こんな日の当たらない場所では、花など簡単に散ってしまうのに。
道端の花が枯れたところで、気にする必要などないだろうに。
■クロロ >
それこそ頭上にはたくさんのクエスチョンが浮いた。
「ホントかよ」
悪いが、生きてて楽しいとは微塵も思えない。
クロロから見ればそれこそ"惰性"で生きているようにしか見えないのだ。
「ケーラ……まァ、仕事が"当たり前"ッつーのはわかるがな。
それでも"拒否権"だのそーゆーのあンだろ。なンーつか
マジで生きてて楽しいのかよ、お前。そンなンじゃァ、なーンも燃えなくね?」
ただ在るがままに、流されるままに生きていく。
社会の歯車として、時にはそれが必要な事が在る。
だが、それが"全て"ではない。
人間得てして、個の自由が無ければ個が死ぬ。
目の前の男は、まさにそれだ。
瞳に宿す炎とは裏腹に、冷めきった熱量に思わずため息だ。
「死ンだらそれまでだが、死ンだら気に掛ける奴もいンだろーが。
少なくとも、今オレ様はお前が急に死ンだらまァまァ気に掛ける」
フン、と腕を組み力強く頷いた。
■燈上 蛍 >
「ええ、本を読んでいる時とかは楽しいですよ。」
そう言ってにこりと微笑む。
心からの笑顔とは正直言い難い余所行きの笑顔。でも別段構わない。
相手は名も知らぬ初対面なのだから。
言っていることは偽りの無い本心だ。
けれど、この街でそう本心を知られることの利点も無いだろう。
だから疑われたって問題無い。そのはずだ。
本は好きだ。
他人が綴る物語が好きだ。
自分には無い世界がそこには詰まっている。
自分には無い誰かがそこには居る。
自分には到底出来はしないことが、そこでは当たり前に起きている。
「…不思議なヒトですね。
この街にいる割に、風紀委員の僕を気に掛けるだなんて。」
少しだけ、この金眼の男という"本"に興味が出る。
「燃えるだの燃えないだのはよくわかりませんけども。」
目の前の彼は、どのような『物語』を生きて来たのだろう。
■クロロ >
「ほう」
本を読むのが好き。思わず関心の言葉が漏れた。
「オレ様本を読むのは好きッつーか、知識が好きだな。
好きッつーか、魔術師の習慣みてーなモンだが……」
魔術師と知識は切っても切れない縁。
知識は力、魔術とは発想力。
それらを鍛える事、力を蓄える事をクロロは好きだ。
必然的に、そう言った行為も好きになる。
尤も、彼の"好き"とは違うかもしれないが。
「不思議かァ?そりゃ、名前も知らン相手だが、死ンだら寝覚めくらい悪ィーだろ?」
それ位は初対面だろうと気に掛ける。
当たり前だ、人間であればそれ位。
そこに裏も表もない。どちらもどちらの秩序はあれど
そこに住む人間自体が変わるわけじゃない。
だったら、クロロが気に掛けるのも必然だ。
後頭部を掻きながら首を傾げた。
「目、オレ様は嫌いじゃないぜ?なンか燃えてるッつーか……お前のな?
そう言うののほうが、よッぽど特徴的じゃね?」
それこそ陽炎の様に揺れる、一種の美しささえ感じる。
ヘッ、と口角を吊り上げた。
「オレ様はクロロだ。お前は?」
■燈上 蛍 >
「………「ありがとうございます」。僕は蛍(ほたる)と申します。」
無駄に本を読んでいるせいか、
青年…蛍は、相手が魔術師だと知れると、フルネームを口にすることを避けた。
瞳を褒められれば、静かな言葉とは違って抑揚の無い感謝が返った。
まるで台本を棒読みにするような声が。
これはきっと、素直に受け取れないナニカが邪魔している。
それ以外の言葉は今までと変わらない静かなモノ。
故に、違和感は目立つかもしれない。
「さぁ、どうでしょう。この街だと死は身近でしょう?
僕たちとこの街の方が戦うのも一日の光景の一つですし、
それでどちらが死んでも、明日に何の差支えも無い。
寝覚めが悪いと言っていたら、精神が持たない気がしますけれど…。」
どうしても、己の生死に興味を見いだせない。
クロロという本に興味はある。
けれど、それは書架の内の一冊に過ぎない。
本は無数にあるのだから、その中の一冊が中身も知れず消えたとしても、
それに対してそうかかずらうモノだろうか。
■クロロ >
「ホタル?なンかあの光る奴?ハァーン」
蛍。確か夏か何だかに光る虫の名前だった。
それは幻想的な光を持つ、と知識にある。
ともすれば、それは儚い幻想の光か。
そう言う雰囲気は確かにある。
少なくとも、今一つ抑揚の無さは何か、自分が魔術師であるせいか。
その警戒はある意味正しい。尤も、"記憶喪失"の魔術師に、何かできるわけもないが。
「よし、蛍な。よし、よし!」
その白紙の脳内に、しかと刻み込んだ。
数少ない名前を、姿を二度と忘れないように刻み、強く頷いた。
「そらァ、身近ッちゃ身近だが、そうじゃねェだろ?
だからッて、生命一つ一つに"ケーイ"を忘れちゃァならねェ
それじゃぁ、死ンだ奴も救われねぇし、明日に何もかわりゃしねェが
オレ様たちを多少なりとも悲しむ奴がいるッつーのを忘れちゃならねェ」
自分たちもその命の一つだ。
尊むべきものだとすれば、それこそ一つ一つに敬意を抱かなければならない。
それこそ、死が身近な此処では途方も無い事かも知れない。
それでも、それをないがしろにするのは……。
「それじゃァ、"スジ"が通らねェ」
それが、クロロの"矜持"だ。
無法者が日常の裏側で生きるルール。
無数にある一冊一冊の本を手に取り、めくり、自らの本棚<キオク>に収める。
それは決して、無駄な事では無い。
蛍とは違い、クロロは全ての一冊に意義がある物語を見出すと信じてる。
「だから、お前もそう簡単に『仕方ねェ』なンて口にすンな。
なンなら、ちょッと位ケーラ、手伝ッてやろうか?暇してるからよ」
だからこそ、目の前の蛍と言う本も手に取るつもりだ。
ニィ、と楽しげに口角を吊り上げ、その瞳を金色が見やった。