2020/11/13 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
■刀々斬 鈴音 > ──落第街
そこにあるスラムと大通りを繋ぐ路地裏。
普段なら人が通る事も少ないこの道であるが今日は違っていた。
「大漁だね!ちーちゃん!!」
何かから逃げるように走って来たスラムの住人達を迎えたのは人斬り。
裏路地の人斬り。血を啜る狂犬。不殺の辻斬り。
刀々斬鈴音。
彼女に斬られた者達は死んではいないものの妖刀の持つ性質に侵され満足に動けず冷たい地面に転がっている。
もともと、逃げる事を選択した者達だ。抵抗少なく斬ることが出来た。
■刀々斬 鈴音 > サクリと転がった人を突き刺す。
……スラムの住人達は栄養状態が良くないのであまり血をとる事が出来ない。
質より量。
「今日ばっかりは風紀委員に感謝しないとね!」
入り組んだ落第街には何本も路地裏がある。
その中で鈴音がいるこの道を通った事は不運としか言いようがない。
「……あっ!泣きそうな顔してる!大丈夫だよ!
ここで寝てても流石の風紀委員相手でも命まではとられないよ!多分!」
今刺している男の表情が歪んでいる。
積み重なる理不尽に対してだろうか?無力な自分に対してだろうか?
それに対する無責任な慰め。
■刀々斬 鈴音 > 『ふざけるな…睨みつけただけで殺された奴もいたんだぞ。』
倒れた中から消え入るような声が聞こえる。
「えー!鈴音に言っても知らないよ!異能とか使われると思ったんじゃない?」
今刺している者から刀を抜いて……
言葉を発したものの方へと歩いていく。
ついでにその途中の一人にも一刺し……。
そして、喋ったものを突き刺せば苦悶の声が漏れる。
痛みを感じさせない刀の能力を使わずに敢えて痛みを与えている。
錆びた刀が身を裂く痛み。
「……死にたくないなら強い人にはすぐ尻尾振って生きてればいいんだよ。
あなたたちは鈴音よりもずっと弱いんだから。」
ご案内:「落第街 路地裏」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
■芥子風 菖蒲 >
数多の人々が其処には転がる。
無辜の命が虐げられた悪辣の跡。
此処落第街、幽世の奈落では無碍に等しき扱いなれど、去れるべき謂れも無い。
誰がやったのか。如何にして行われたか。
生憎、是来たる少年は"そんな事はどうでもいい"。
「……ねぇ。」
黒衣が翻る。
人々を嗤う少女の背中に、黒衣を纏った少年は声を掛ける。
澄んだ空色の瞳が、瞬きする事なくその背中を見据えていた。
「こんな所で、何してるの?」
其の肩に担ぎしは、漆の鞘に納められた刀。
然るに、此の腕が見せつけるのは風紀委員と在る証の腕章也。
■刀々斬 鈴音 > 「でも、鈴音も優しいから可哀そうだとは思うよ?そろそろ寒くなるもんね。
………こんな時期に全部壊されちゃったらもう冬越せないよね。」
まだ本格的に寒くなる季節は先だけど様々な準備をしていたりしてただろうに。
冬を越せない事を理解して住居を潰したのだとしたらかなり性質が悪い。
そんな話をしていれば…
「……風紀委員の人?」
声に振り向いて目に入ったのはその腕章。
……『彼ら』とは違う所属だろう。
「えっと…鈴音、道に迷っちゃってこんなところに来ちゃったんだけど…。
急にこの人達がすごい勢いでやって来て身の危険を感じて斬っちゃった。」
真下の男から刀を抜いて鞘に納める。
あがる呻き声。
「鈴音迷子だから送って行ってくれたりする?」
倒れている者達からは怨嗟を込めた視線が向けられる。
自分を斬った刀々斬鈴音ではなくこの場にやって来た風紀委員に対して。
■芥子風 菖蒲 >
身の危険を感じたと、少女は宣う。
澄んだ青空に暖かさは無い。少年は飽く迄冷静であった。
其処に在る"光景"だけを見据える。曰く、太刀筋に気は宿る。
「そっか。まぁ、"どうでもいいよ"。」
恐怖に怯えた。微塵も見えない。
仮に真としても、其処には確実、"恐怖以外"の感情がある。
機械的冷たさとは違う。人としての冷酷さ。
故に、"どうでもいい"と切り捨てる。
「送るよ。"本庁"まで。とりあえず、黙って捕まってくれる?
オレ、他の人と違ってあんまり"加減"出来ないからさ。大人しくしてくれると助かるんだけど。」
悪辣に群がる蠅でさえ、見逃しはしない。
勧告。従わぬので在れば、やる事はただ一つだ。
■刀々斬 鈴音 > 「聞かれたから答えたのに!
嫌われるよそういうの!!」
……もともと何を聞くつもりも無かったのだろう。
せっかく言い訳考えたのに無駄だったかもしれない。
「えー正当防衛なのに。もう、面倒くさいなあ。」
刀を抜く。
一度抑えられてた古くなった血の匂いが狭い路地裏に一気に漂う。
「鈴音もあんまり風紀委員とは斬り合いたくないんだけど……。
……捕まるのはもっと嫌だからね。」
上段に刀を構えて一気に距離を詰めて振り下ろす!!
単純な太刀筋!故に早い!!
■芥子風 菖蒲 >
「……ソレは困るな。」
唯、恩返しの為に、成すべきを成しているのみ。
全ては己如きを受け入れた島と、住民の為。
……よもや、嫌われてるんだろうか。ちょっぴり、困り顔。
相手が刀を抜くと同時に無造作に、刀を振りかぶる。
鈍い音と共に鞘から引き抜け、鋼の刃が闇夜にさらされた。
鈍く光る、鋼の刃。いざ、立ち合い────。
「……!」
風が肌を撫でる。少女の姿は目前。
速い、あっという間に詰められた。
即座に状態を逸らすが、刃が黒衣を裂き、胸を撫でる。
痛みと共に、血が流れた。深くは無い。だが、侮れない。
だが、痛みを受けようと少年は冷静である。
そして、刀と言うものを"知っている"。踏み込んでくれたのなら、"こうする"。
「こっち……!」
更に、踏み込んだ。
一足に、互いの体が密着する程。
振り下ろした刀を横切り、"互いに振れぬ間合い"、目と鼻の先。
戦場においては、"相手の肝を抜いてやれ"。その教えが此処にある。
真っ先に手にした刀を使わず、返しは一つ。
勢い付けて、その顔面目掛けて見舞う頭突きである。
鈍く空を切り、硬い頭部を突き出す。石頭だ、当たれば相応に鼻も拉げる。
■刀々斬 鈴音 > 「斬った!!」
『浅い。』
少女の刀から無機質な声がする。
……その妖刀は意志を持っている。
「なっ!?」
この距離では刀は振れない。
通常恋人同士でもなければ男女が近づかないくらいの距離。
そこに間髪入れずに迫る頭突き!
それに対して頭を下げれば頭と頭がぶつかり合ってゴチンと音がする。
「……痛っ!どんな頭してるのよ!!」
涙目になりながら叫ぶ。
まるで鈍器で叩かれたように痛い。
後ろに下がってせめて刀の間合いに……。
斬り合いならば闘える……!
■芥子風 菖蒲 >
「……?」
刀が喋った。ああいうのもいるらしい。
とすると、実質二対一か。構わない。
なら、それを気に掛けて動くだけ。
石頭が、相手の頭部に命中した。確実に相応のダメージは入った。
此方は石頭。特に自滅ダメージも無く、平然と青空はしかと少女を捉えたまま。
「……それなら……!」
間合いとった。刀の間合い。"予測通り"。
刀に頼っているか、未だ実力の程は測りかねるが、"体術慣れ"してないなら攻める。
コイツを倒す。シンプルな使命感だ。
その気持ちの高ぶりを表すように、少年の全身が淡く、青く光る。
身体強化の異能。全身が軋む音を立て、地を蹴った。
土煙を巻き上げ、一足。自ら刀の間合いへと飛び込み────。
「……!」
全身半回転させて、刃を振り下ろす!
目掛ける先は、"その刀"。
強化された腕力による、剛力の一撃。
受ければ刀から全身に振動が走り、一時的な麻痺、即ち"隙"を作る為の技。
さぁ、相手はどう対処する……?
■刀々斬 鈴音 > 「光った!?」
あの光は恐らく魔術ではなく異能。
今までと動きが違う!身体能力の向上。
全ては少年の予測通り。
刀が狙われていることを分かったとしても回避はもう間に合わない。
鈴音には相手の動きに対応できない。
鈴音が使っていたのが普通の刀であればここで勝負はついていただろう。
刃と刃との戦いであれば妖刀血腐レの性質はその真価を発揮する。
『血腐レ─鈍血』 刀から無機質な声が聞こえる。
その刀が纏う黒い血は他の刃を鈍らせる。
いくら鋭い刀であっても、どれだけ重い剣であってもこの血の前ではひとしくナマクラ。
刀が与えるはずの衝撃もにゅるりとした感触と共に霧散する。
「残念だったね!この血に触っちゃったらもう何も斬れないし傷つけられないよ!!
こっからは得意の頭突きで戦ってみる?」
相手の刀に血を塗りたくるように擦り付けていく。
…黒く、赤黒くこの妖刀と同じような色に染まっていく。
■芥子風 菖蒲 >
「……!」
手応えが違う。重い衝撃も無く、まるで液体にでも触れたような妙な手ごたえ。
名刀らしき愛刀が、腐食するかのように鈍く染まっていく。
何かしらの呪いか。だが、関係無い。
「──────。」
青空になる瞳孔は、獣の様に細い。
獰猛な戦士の精神。"刀が使えないから"何だ。
触れ合う刀、刃を滑らし打ち合い、鍔迫り合いの状態まで持って行った。
距離は狭めた。なら関係ない。
「勝ったつもりいるの?」
だったそれは、慢心だ。
足元。上半身ばかりに目は向けない、その態勢を崩すように
鋭い膝蹴りが相手の下腹部目掛けて放たれた。
■刀々斬 鈴音 > 甘い。どうしようもなく詰めが甘い。
いつだってそれで……
『鈴音!!』
鋭い膝が下腹部を打つ。
「ッ……!!」
身体がくの字に曲がる。
呼吸が上手くできない。
「………くぅ!!」
それでもまだ鈴音の眼は闘う意志を失ってはいない。
その刀も意識も手放してはいない。
「鈴音は……!鈴音は!!!」
ガムシャラに刀を振り下ろす。
その赤黒い刃から垂れて氷柱のように固まった血このまま振り下ろせば確実に突き刺さるだろう。
■芥子風 菖蒲 >
確実に入った。膝。だけど、少女の目はまだ死んでない。
なら、それで良い。加減は出来ない。
自分に出来るのは、初めから体を張る事だけ。
挫けないなら、関係ない。加減は出来ないから……。
……──────徹底的にやる。
「アンタが誰とか、どうでもいい。」
一足、更に間合いを詰めた。振り下ろす刃に一切臆する事は無い。
「アンタの事情とかも、どうでもいい。」
冷たい感触が、肩を突き抜けた。
赤黒い刃が光を、黒衣を、肉を深々と突き刺す。
痛みと血が溢れるが、少年は"止まらない"。
「此処で倒す……!皆の為に……!」
刀が使えないから、何だと言うのか。
強く掴みを握りしめた拳。刀を握りしめたまま、鈍く空を裂き
拳を腹部目掛けて、振り抜いた。
ある種の捨て身。自分がどうなろうと、目の前の障害は"確実倒す意思"を以て拳を振るう。
■刀々斬 鈴音 > 「鈴音は別に表で悪い事してるわけでもないのに!!
何でここまでされないといけないの!?」
突き刺さった刃を何度も振るう。
不揃いに尖った血の氷柱が少年の肩を抉る。
「……アナタが言う皆って誰!?ここに転がってる奴ら!?
どうせこのまま生きてても殺されるだけなのに鈴音がどうしたっていいでしょ!?」
落第街の中でも一番下に位置する人々。
真面に生きるためにに何も出来なかった或いはしてこなかった存在しない人々。
そんな連中の為に今風紀委員と戦ってこんな痛い目に会わないといけないなんて……。
「あうっ………。」
拳が鈴音の腹部に突き刺さる。
耐えきれずに膝を付いて。
「………ごめんなさ。」
最後に誰かに謝って刀々斬鈴音は意識を手放した。
■芥子風 菖蒲 >
「"どうでもいいよ"。」
崩れ行く少女に、余りにも冷淡に告げた。
「表でしてなくても、結局してるんでしょ?
じゃぁ、運が悪かった。ご愁傷様。」
無造作に獲物を狩る猟犬ならともかく
確かに表沙汰になっていない悪事であれば、追い詰められる事も無かっただろう。
だが、たった今自白した。己は"悪い事をしている"。
なら、それだけで十分だ。突き刺さった血の塊を掴んだ。
「それに、アンタの理屈なんてどうでもいいよ。
そうするなら、アンタが風紀委員(オレたち)の敵であることには変わりないんだから。」
悲痛な叫びだったかもしれないけど、少年には"どうでもいい"事。
それは詭弁だ。どんな理由であろうと、命を弄ぶ理由にはならない。
ならば、それこそ風紀委員で対処すべき敵だ。微塵も其の言葉を気に掛ける事は無い。
肩から引き抜けば、痛みに顔をゆがめた。傷口から、ドクドクと血が溢れる。
「はぁ……疲れた。」
溜息交じりに、通信機を取り出す。
「……、……ああ、オレ。菖蒲。うん、そう。
とりあえず、悪い奴の確保と……"負傷者多数"。うん、落第街。
オレも怪我してるから、早く迎えに来てね。頼んだよ。」
淡々と通信機に告げれば、軽く夜空を見上げた。
生憎の曇天だ。月明りも星も、見えやしない。
「とりあえず、星一つ。にしても、コレ……アイツ等がやったのか。」
例の風紀委員の部隊。
名前はなんだっけ。忘れた。何にせよ、酷い有様には違いない。
生きてるか、死んでるのか。死屍累々、それさえわからない。
……ぽつり、ぽつり。やがて、冷たい雨が降ってきた。
応援にやってきた風紀委員と共に、大掛かりな"事後処理"が行われる。
死体の回収。生存者の搬送。そして、確保された少女の護送。
随分と長い、夜を過ごした気がする。
「…………。」
それにしても、命を弄ぶ者が敵であるなら、この狩りを行った連中をどう見えるべきか。
今、考える事では無いのかもしれない。彼女ももしかしたら、"利用される"のか。
そこまでは己の役割じゃない。疑問に思うにも、答えなど出るはずも無く。
ただ、冷たい雨だけが全てを覆い隠すだけ……──────。
ご案内:「落第街 路地裏」から刀々斬 鈴音さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から芥子風 菖蒲さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」にフードの男さんが現れました。
■フードの男 >
冷たい雨が降る中。立っていた。
良くも悪くも静かな落第街。襲撃に恐れを覚え静かにしているグループ。反撃の為に潜んでいるグループ。そして単純に静かになってしまったから静かになってしまったグループ。
「ある意味、成功してるのが憎いよな」
声はポツポツとした霧雨のような雨にかき消される。
結果論だが確かに犯罪は減った。そもそも事前に食い止められているのかは別だが。
だがそれを手放しに喜ぶわけにもいかない。
実際自分がここにいるのはそういう事情。もし何かがあった時に即座に動けるように。まさに一触即発ともいえるのが今のこの街だ。
もっとも、常に仮面をつけていれば変人も良いところなのでそれまではフードで顔を隠すに過ぎないが
■フードの男 >
別に任務として発令されているわけではない。だが自身として動かないわけにもいかないという考えから動いていただけである。
何も起きなければそれに越したことはない。もっともこの街で何も起きないというのはそれはそれでおかしな話なのかもしれないが。
「てか、ついてないな。こんなタイミングで雨か」
苦い顔で少し上に目線を向ける。自分はまだ軒下に隠れているからいいが。それでも多少は当たる。この時期の雨は冷たく、確実に体温を奪う。
だからといってここで温かいスープなどを飲んで立っているわけにもいかない。
■フードの男 >
ゆっくりと時間は過ぎる。水面下でどんなやり取りが交わされているかはわからない。
ただ……
「罪を犯してない奴くらいは……平和ならいいんだがな」
だが悲しいかな。こういう時真っ先に被害がいくのはそういう弱い存在なのだ。
闇の中へと彼は消えていく。行く先は違う場所、警備はしばらく続くだろうか。
ご案内:「落第街 路地裏」からフードの男さんが去りました。