2021/01/29 のログ
神代理央 >  
「下手、というか…気配を消していないというか…。
まあ私も武術に秀でている訳ではないから、気配云々を語れるわけでっはないがね」

最初に気付いたのは異形なのだし、此方も偉そうな事を言える訳では無い。
驚く様子のユラに小さく苦笑いしながら首を振る。

「……そんなものを見てどうするつもりかね。
一般生徒なら、見ても面白くもなんともないものの筈だが」

戦闘狂、という様には見えないが。
処理の様子を見たいというのは、若干風紀委員としては見過ごせない発言だ。
僅かに眉を潜めつつ、その理由を尋ねるだろうか。

ユラ > 「マジ……?
 まあ確かに、昔からかくれんぼは下手だったけど」

幼少期からのものであった。
矯正は難しそうである。

「他人の戦い方が気になるからかな。興味あるっていうか。
 一般生徒ではあるけど、オレは異邦人だし人間じゃない。
 オレは理央の思う『普通』とは違うんじゃね?」

それ以上もそれ以下も、裏も表も無い。
正直で誠実で、少しだけまともではない答えが返った。

神代理央 >  
「まあ、隠れるのが下手だから何か不便があるというわけでもあるまい。
少なくとも、日常生活において不便ではないだろう?」

困ることがないなら良いんじゃないか、と言うニュアンスを含ませつつ。
再び肩を竦めて見せる。

「であれば、武術系の部活動なりなんなりに見学に行く事だ。
或いは、風紀委員会や公安委員会に所属し、直に戦闘を行う部署を希望するか、だな。
確かに、異邦人と此の世界の思考や文化は異なる。だから、我々はそれを尊重はする」

「それに、戦い方が気になるというくらいならこの世界の人間でも良くある思考だ。
ただ、こうして危険な地域に訪れてまで…となると話が変わる。
君の『普通』は確かに我々とは違うが、その普通を基準に行動する事は、我々の世界の『普通』を侵害する可能性もある」

そこで、小さく溜息。

「実際、そうやって罰せられた異邦人もいるのだ。文化が違うから何をしても良い、という訳では無い。
此の世界の常識も、少しは学ぶ事だな」

其処まで言い切ると、半分程灰になった煙草を深々と吸い込んで――吐き出した。

「まあ、そう言う点では私も『普通』の基準が人より怪しいからな。こうやって偉そうに説教出来る程でも無いが」

と笑ってみせた。

ユラ > 「いやでもバレるとこう……負けた気がしない?」

子供っぽい理屈。
そろそろ相手の呆れが限界に来そうだ。

「武術とか武道とかの部活は大体見た。
 風紀とか公安みたいな、高潔なとこはオレには合わない……って話、前したっけ。
 まあちょっと、そういうの性に合わなくて」

かりかりと頭をかきながら答えた。

「あとはそう……訓練と実戦形式では、実戦とは差があるから。
 危険な場所、本気での戦いが見れる場所じゃないと、見れないものがあんまりにも多すぎる。
 理央のやり方だってそうなんじゃない?」

理央の足元を指さして、そう尋ねる。

「別に何をしてもいいとは思ってない。
 けどオレはオレでやりたいことがあるし、どうしても見たい景色がある。
 そのためには、ここでなきゃ見れないものもある……って感じ」

よいしょ、と空中であぐらを組んで浮かんだ。
タバコでリラックスしている理央を見て、こちらも気を抜くことにしたらしい。

神代理央 >  
「ここでしか見れないもの、とやらを否定はしない。
それを見たい、という想いも理解出来る」

ぷかり、と紫煙を吐き出し、その煙の後を視線で追い掛ける。
向かう視線の先は、灯りが少ない落第街だからこそ眩く輝く星空だろうか。

「それを"見る"事が自分だけで完結出来るのなら、それも良いだろう。しかし、仮にここで風紀委員の戦闘を眺めるという事は、その風紀委員に君を守る義務と負担を発生させる事になる」

「『自分で何とか出来る』とか『いざとなったら放っておいて貰って構わない』という問題ではないぞ?
風紀委員は、生徒を保護し、避難させる義務があるのだからな。
君を見つけた、或いは気が付いた時点で君を守ろうと、逃がそうとするだろう。そういう風紀委員と出会った事は無いかね?」

紫煙が掻き消えていくと、改めてユラへと視線を向ける。
その視線は特段怒りや呆れを含ませている訳では無い。
穏やかさと、尊大さの入り混じる様な視線。

「それが『ルール』だからな。どうしても実戦を。命のやり取りをする様な戦闘を見たいというのなら、それなりの責任を負う事を覚悟する事だ」

其処まで言い終えると、煙草を地面に落として磨き上げられた革靴で踏み潰す。
二人の足元から、残滓の様に漂う甘ったるい匂い。

「…先程も言ったが、見たいという想いを否定はしない。だから、見るなとは言わない。
しかし、その行動で君以外の誰かが危険に晒される事を理解すること。そしてそれは度が過ぎれば風紀委員会からの処罰の対象になり得ること。
それだけ理解して貰えれば構わない。例えばそうだな…もう少し、上手く隠れられる様になる、とかな」

最後の言葉は、少し冗談を交えた様な声色。

「……という訳で。私には君を安全な場所まで送る義務が発生した。学生街まで送ろう。勿論、不当な理由で拒否した場合は…補導の対象になり得るがね?」

そうして、風紀委員としての真面目な表情を浮かべると。
有無を言わさぬ様子で、彼と共に落第街を立ち去るのだろう。
半ば説教じみた言葉になってしまったが、道中の会話はきっと穏やかなもの。
……実は、彼の方が一つ年上ではあるのだが。
そんな事は露知らず、若干偉そうな口調の儘、帰路につく間彼と会話を楽しむのだろう。

ユラ > 「あー……うーん。確かにあった。
 オレを見つけた時点で、逃げられるかどうか聞いてきた人」

なるほど、そういえばそれも仕事かと納得した。
ややこしい仕事だと思うと同時に、やはり自分には向かないと感じる。

「……まあ、そうだな。じゃあ見つからないようにしよう。
 オレはその方が合ってそうだ」

どうあってもここに来ることをやめるつもりはないようだ。
なので代替案の方を受け入れた。
多分そういうことじゃないんだろう、と認識してはいる。
だがここをあきらめることも出来ない様子。

「不当な理由、ねぇ……
 『風紀委員がタバコのポイ捨てをしたから、人間的に信用できない』とかは不当?」

にまっと悪い笑顔を浮かべ、理央の足元で潰された煙草を拾い、自分の青い服、その長い袖の中に入れた。
そんな発言は表情とは裏腹に、しっかりおとなしく帰ることにした。
最初から最後まで、緊張感の無い少年であった。

ご案内:「落第街 路地裏」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からユラさんが去りました。