2021/03/10 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に角鹿建悟さんが現れました。
■角鹿建悟 > 落第街の路地裏――その一つ。黒い作業着にマフラーを首元に巻いた少年が工具箱を片手に歩いている。
「………っ…。」
今日は比較的依頼が嵩んだせいか、能力を必要以上に使い過ぎたかもしれない。
ただでさえ異能封印制御装置で本来の出力を出せない状態で、一度に依頼をこなせば反動も然り。
時々、壁に片手を付いて息を整える。呼吸もやや荒いが立ち眩みもするのだ。
無理や無茶は”出来るだけ”控えているつもりだったが、矢張り仕事に没頭するとこうなる悪癖はまだまだ健在らしい。
「……加減を覚えるのも…課題…かもしれない、な。」
ゆっくりと息を整えながら呟く。場所が場所なので周囲への注意は怠ってはいないが。
■角鹿建悟 > もっとも、加減を覚えたとしても直すのを止める、という選択肢は最初から無いのだが。
我武者羅に直して、一度心を圧し折られて、己の原点を思い出しても完全には止まれない。
「…直しても直してもキリが無い――と、いうのは分かり切っていた事だし、な。」
その無謀無意味さも、終わりが”無い”のも全て承知の上だ。少しずつ呼吸は戻ってきた。
…が、まだ眩暈が残っている。全身の倦怠感と気持ち悪さは流石に慣れた。
慣れていいものでもないのだろうが、そうならざるを得なかった、というのもある。
どうやら、歩き出せるまでもう少し休むざるを得ないようだ。工具箱を足元に置きつつ、壁に背中を預けて深く息を吐き出す。
■角鹿建悟 > (――そういえば。…あの時に母親を亡くしたあの子供は元気だろうか?)
とある白い少女に任せたっきりだが、元気にしていると思いたいものだが。
最近は、こうしてふと休んでいるとつい色々と考え込んでしまうようになった。
前はそんな時間も惜しい、とばかりに直したりそれ以外の余計な思考は出来るだけ省いていた気がする。
(…考えるだけの精神的なゆとりは持てているのか、まだ立ち直り切れてないせいか…何とも、だな)
暗い路地裏に物音は無い。いや、時々吹き抜ける冷たい淀んだ風の音くらいか。
一度緩く目を閉じる。あの頃に比べればマシだが、制限された状態でも矢張り使いすぎると肉体負荷は相応らしい。
■角鹿建悟 > 「――どれだけ物を直せても人は治せない――救えない、か。」
あの時、あの子供の母親をもし蘇生出来たら少しは自分に自信も持てただろうか?
――考えても分からない。蘇生なんて大それた力や魔術は自分には使えないのだし。
閉じていた瞳をゆっくりと開く――変わらず路地裏の陰鬱な景色がそこにある。
少し休んだからか、眩暈や倦怠感も薄れてきた。まだ本調子、とはとても言えないが。
「――こんなザマだが、今もちゃんと”約束”は守っているぞ。…だから、あの子の事は頼む。…今更だな、これは。」
口に出して…ほんの少しだけ苦笑じみた表情。…嗚呼、そういえば俺も笑えたのか、とそんな当たり前の事に少し驚いた。
■角鹿建悟 > まぁ、直ぐに何時もの緩い無表情に戻ってしまうのが自分らしいといえばらしい。
「…大分楽になったな。そろそろ行くか…。」
小休止のお陰でこれなら帰れそうだ。場所が場所だけにあまり長居する訳にもいかないだろう。
戦闘能力や自衛手段が無い訳ではないが、己は直す者であって戦う者ではないのだし。
壁に預けていた背を離せば、足元に置いていた工具箱を拾い上げてゆっくりと歩き出す。
そのまま、黒い作業着姿は路地裏の闇の向こうへと緩やかに紛れて消えていく事だろう。
ご案内:「落第街 路地裏」から角鹿建悟さんが去りました。