2021/08/01 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」にレナードさんが現れました。
レナード > 落第街の路地裏。
かつてここであった出来事を、彼は"もう"忘れることはない。
ただ、あの時と違うことといえば、
自分は追われる立場になっていたということだ。

「…………ふう……」

夏特有の蒸し暑い熱気が、もとより悪辣な環境に立ちこめる。
ぼろきれのようなローブで身体を隠し、フードを目深にかぶった少年は、
人の視線を搔い潜れるような、違法建築もかくやな家屋同士の隙間に滑り込むようにして、
切らしていた息を整えていた。

レナード > 「……さすがに、少し疲れたし……」

誰もいないだろうことを期待して、その場で周囲をぐるりと回って見渡す。
フード越しであっても、彼の眼はよく物を透した。
建物越しに人がいたとしても、造影が視認できるくらいに。
どうやら自分を追ってきていただろう何者かは撒けたようだ。
それがわかると、建物の隙間からずりずりと、まだ人の通れる場所へと出てきた。

「…やっぱり学園には顔出さない方がいいか……
 まともに人がいるところほど、危ない感じもするし…」

また休学沙汰かと、彼は苦笑する。
尤も自分の脛に傷がなければ堂々としていればいいのだが、
こうなっている事情を表向きに明らかにするわけにはいかなかった。
その背景にあることを公にしてしまうのは、非常にリスクが高いことと、
倫理的なことはさておき、結果として学園の風紀を守るための礎にはなるのだろうから。
ただ、自分を犠牲にすることとなるのは目に見えているし、
何より、あの頃の自分を思い起こすのは、気に病んでしまう。

「やれることといったら……
 こうして逃げ回ることと、
 稼いだ時間でどうすればいいか考えることくらいなわけ……」

レナード > 幸か不幸か、復学してからこれまでの人脈とはほとんど接触していない。
戻ってきたころに多少気まずいながらの再会はあったが、それ以降はほぼゼロだ。
…従って、自分のことを知るうえで知己に魔の手が伸びる可能性もないだろう。
何せ、本当にここ最近めっきり会っていないのだから。
最近の自分の行動を監視していたとしても、そんな結論が出るだろう。

「……ほんと、人に会ってこなかったのがここで功を奏すなんて……
 世の中どう転がるかわからんもんだし……」

フードを目深にかぶる。
視界はそれでも遮られることはない。彼のその目は特別だ。
ここは夜の路地裏。
何が起きるのかわからないリスクこそあるが、
少なくとも明るく人通りの多いところにいるよりは、余程マシだった。

「…………。
 ほんと、今日はどこに寝泊まりしようかな………」

だが路地裏で堂々と寝転ぶのとは別だった。
流石にそれは、無事に朝を迎えられるかの問題になる。
少なくとも今の少年には、精神の安寧足りうる場所が必要だった。

レナード > 「………探しにいくしか、ないわけ………」

少年は、路地裏を歩きながら辺りを探すことにする。
できれば朝まで人の来ないような、それでいて衛生的に長居しても問題ない場所を。
まるでその様子は、ぼろ切れを被った何かが辺りをうろうろしているように見えるだろうか。
わかりやすく言えば、古めかしい幽霊か何かに見え、
ここらの事情を知っていれば、まともな服も着れない浮浪者に見え。
少年は、自身と特定されないために今の自分の格好を顧みる余裕こそないが、
その姿は別の意味で目立っていることだろう。

ご案内:「落第街 路地裏」にレナードさんが現れました。