2021/10/16 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に謎の男さんが現れました。
■謎の男 > 雲が月を隠す夜。
落第街奥の薄汚れた路地裏での出来事は
表沙汰になる事は無い。
しかしながら、変わらない事実として怪異の呪いにより
正気を失い、会話すら出来なくなった人間達がうろついていた。
そんな生ける屍の中にこの場にふさわしくない小綺麗なスーツに身を包んだ男。
男もまた、虚ろな瞳に蒼白な顔色で生気は感じられない。
只、その場で微動だにせず立ち狂気の舞踏会をただ眺めていた。
■謎の男 > 男が歩き出す。
空を見上げてひたすら乾いた笑いを続けている一人の人間に近づく。
<君は何故、笑っているのか。>
男は抑揚のない淡々とした声でその人間に問いかける。
しかし、その人間は笑い続ける。ただ笑い続ける。
<君は何故、笑っているのか。>
全く同じ調子でもう一度問いかける。
しかし、相手の人間が眼球を痙攣させながら笑い続ける事に変わりは無かった。
<人間の感情というものは、実に理解し得ない。>
狂ってしまった一人の人間を前にそう一言、
何処に向けたわけでもなく呟いた。
■謎の男 > 軽い金属音が響く。
スーツの男が拳銃を取り出して笑う人間に向けていた。
狂気で震えている眼球に移り込むようにその銃口をまっすぐと。
<君は何故、笑っている?>
殺傷能力のある武器を向けられてなお、
笑うという行為以外を取らない人間。
生と死の境目すらもはや認識していないのであろう。
<何が、君を笑わせている?>
路地裏に乾いた火薬の音が響いた。
■謎の男 > 弾丸が人間の足を撃ち抜き、激しい鮮血と共に
地面へと転がり伏せる。
それでもなお、男が痛みで呻き声や悲鳴をあげる事は無かった。
銃弾を受けても、ただひたすらに空を仰いで笑っていた。
しかし転がったことで見えていなかった身体の箇所が見えるようになる。
そこには不気味な跡が根を張っていた。
<これは、見たことのないものだ。>
人間の気が狂っている事となにか因果関係があるのか定かではないが、
普通の人間の身体にはない異様なものであることは確か。
なおも笑い続ける人間にはもう目もくれず
スーツの男はしゃがみこんでその呪痕を観察する。
■謎の男 > <興味深い。>
スーツの男が立ち上がる。
この島には人智を超えた存在が居る。
それらの対立で超常的な力が振るわれる。
しかし、スーツの男がそれらを把握してはいない。
ただ徘徊し、強力な存在に触れ、未知を既知にするために動く。
こうして進化の糧となるものが見つかったならば、行動するだろう。
彼は落第街に潜む進化する怪異、エボルバー。
路地裏で広がる狂気の舞踏会からいつのまにか
スーツ姿の怪異は忽然と消えてしまっていた。
まるで最初から何も居なかったかのように。
ご案内:「落第街 路地裏」から謎の男さんが去りました。