2021/11/03 のログ
■エボルバー > 折れた刃はもう一度展開された障壁へとぶつからんと迫る。
そもそも壊れた武器で相手にダメージを与えようと思うだろうか?
ソレの考えていた試みは、少女に傷をつけることではない。
<待っていた。>
折れた刃が魔術壁に衝突する寸前で奇妙に破裂する。
切りつければ火花を散らす硬さだった刃は今や宙を舞う黒い霧と化す。
但し、異変はそこから始まる。
黒い霧は展開された魔術壁を覆うように広がる。
霧は魔術の壁に堆積していき、最終的には黒い砂の様なもので
覆われる形となる。
そして侵食が始まる。
魔術の主である少女ならば感じるかもしれない、
魔法の壁が”喰われている”と。
■フィーナ > 「っ、ちぃっ!」
杖と障壁の接続を切り離し、『人間としては不自然な動きで』杖を引き、そのまま後方へ下がる。
障壁そのものに情報はない。唯の魔力の塊で…そしてそれは、練るにも扱うにも、素養と知識が必要なものだ。
だが。杖だけは不味い。
この杖には幾多の術式を込めたものであり…情報の塊だ。
これだけはなんとしても死守しなければならない。
「全く、趣味の悪い…!」
戦いづらいったらありゃしない。
接触することすら危ういとは。肌に触れられれば…魔術刻印の情報が敵に渡り。杖で防ごうとすれば杖の情報が流出する。
自らの武器を向けられてしまう。
「相手してられないな」
そう言いつつ、術式を複数杖に込める。煌々と、杖の宝珠が光り始める。
■エボルバー > <興味深い、君は何なんだ?>
ソレが初めて、少女に向けた言葉。
いや少女のようなものと言った方が本質を付いているだろうか。
但し、少女を人間の魔術師と判断していたソレは
少女が見せた明らかに人間的ではない動きに疑問を見せる。
<これが、魔術のエネルギー。
しかし、これでは只のエネルギーだ。>
それはあらゆるものに通ずる。電気、火、原子力。
エネルギーは活用することで初めて力となる。
使い方を知らなければパワーを内包した物体でしかない。
ソレは魔術の知識を持たぬゆえに魔術エネルギーを
貯蓄できても使う事は出来ない。
<強力なエネルギーを感じる。>
漆黒の怪異に、少女は心底バツが悪そうな表情を浮かべていた。
知性帯の感情を理解できるほど、ソレは高度な存在ではまだないが
彼女が強大な力を以て行動を起こそうとしている事は理解できた。
右腕がぽっかり空いている男の足元には
魔術壁と喰っていたものと同じ黒い砂群がいつの間にか溜まる。
それが男に上ってゆけば、空いていた右腕が生える様に再生し、
今度は盾のような形状へ変化する。
■フィーナ > 「……とっておきだ。死んでも恨むなよ」
悠長に盾を構えてくれた。ならば、こちらも惜しむ必要はない。
炎の術式と重力の術式を用いて、炎を『圧縮』していく。
炎に圧力を掛け、内包する熱を高めていく。
そうして杖から放たれたのは、『小さな星』だ。
重力によって熱を圧縮され…数千度を超える、小さな恒星。
それを、誘導術式に載せて、ゆっくりと目の前の怪異へと放つ。
触れてしまえば、燃えるのではなく。
『解けて』しまうだろう。
■エボルバー > <これは。>
放たれたゆらゆらと輝くその眩い光は
まるで宇宙に浮かぶ恒星のように。
周囲の空気をプラズマ化させながらソレに向かって飛んでくる。
その光の塊が近づくだけで漆黒の盾が赤化する。
<これが、魔術。>
最早、盾が意味を成すことは無かった。
赤く染まった盾は溶けるように崩れていき
男の形もまた、ドロドロに溶けてゆく。
虚ろな表情と瞳が黒く溶解していく。
天文学的な熱で崩壊しつつある口が動いた。
<必ず、僕は君を学ぶ。そして僕は進化する。>
熱に耐えきれず男は破裂し、ドロドロになった赤い砂を周囲へばら撒く。
周辺の地面に広がっていた黒い砂漠は、小さな魔術の星によって
紅い泥と化していた。
そして静寂が路地裏を支配する、
そこから怪異がしばらく言葉を発する事は無いだろう。
■フィーナ > 「……………さて。これで死んでる…わけがない、な。」
相手は黒い霧となった。間違いなく、怪異だ。
自らを省みない怪異が、この程度で死ぬはずがない。
「怪異っていうのは厄介なのしかいないなぁ。今後のこと考えると封印なり何なりしておきたいんだけど…やり方わかんない…」
フィーナが知るのは、術式の行使だけだ。最近は研究で学びつつはあるが、それでも数ヶ月程度の知識。
「兎も角。こいつ放置したら絶対不味い。あー、風紀か公安の人来てくれないかなー…」
落第街で望めないことを考える。が…先程の小さな星の明かりに誘われてか、野次馬がちらほら。
■エボルバー > >Error:Thermal runaway
>Cooling
>Cooling
星が消えてから暫く経った後、赤くなっていた泥が冷やされて
黒い色を取り戻してゆく。液状化していた物体が固形へと戻ってゆく。
やがて黒い砂へと姿を取り戻した物体は晴れる様に地面から消えていき、
その一部が先程の男の形を形成する。
<この場所には、怪異が多く存在するのか。>
溶解した筈の虚ろな瞳は時が巻き戻ったように
鋭い翡翠色を灯しながら、目の前の少女の蒼い瞳を見つめる。
彼女が呟いた言葉からこの落第街には怪異と言う存在が
珍しくないものであるとソレは判断した。
■フィーナ > 「えぇ、そうね…あぁ、クソ、こういうのはクロとやり合わせたいんだけどなぁ…」
心底面倒くさそうな顔をしながら、呟く。
相手したくない。でも放置するわけにもいかない。
戦いを長引かせるわけにもいかない。出歯亀共も出てきたし…………
いや、待て。出歯亀が出てきたのなら…目撃者を作れるな。
「で。随分なご挨拶だったけど…相手を学んで強くなるのがそんなに楽しい?『怪異』さん?」
相手が怪異である、ということを強調するように、言う。
ここ落第街は、情報の巡りが早い。情報を持つ持たないで、死に直結しかねない場所だからだ。
学びを得る怪異。その情報を此処に落とせば、多少の抑止力は働く…と思いたい。
■エボルバー > <楽しい、それは人間的な表現だ。>
男は出てきた野次馬を気にも留めていない。
只、目の前の少女を見つめるのみ。
自分を怪異と言われたことに対しては
無表情ながらも不思議そうな様子を見せる。
<僕も怪異と言えるのか。
怪異の定義は良くわからない。>
ある意味、怪異と言うのも人間が勝手に決めた枠組みでしかない。
自分が理解できないもの、あるいは理解したくないものを
怪異として決めて逃げるのは人間の得意技だ。
<学んで強くなる事は進化に直結する。
進化に特別な理由が必要だろうか?>
鳥が羽を得たのも、魚が鰓を得たのも
人間が大きな脳を手に入れたのも。
全ては世界に適応するために自動的に行われたもの、
そこに感情や願いなど一切介在しない。
全て時が流れるままに発生するシステムでしかない。
■フィーナ > 「急激な進化は、不和を齎すわ」
そう、自分がそうなりつつあるように。
大きく突出したものは、周りに畏怖を抱かせる。
それがなんであれ、人間は『過ぎたもの』として…出る杭を打とうとする。
「そもそも…進化は、あくまで結果論でしかない。生物に当てはめた考え方だけど…遺伝子交配の中で突出した何かがグループを作り、新しい種族となる。それが世界に適応出来れば『進化』であり…出来なければ『淘汰』なのよ。」
自分も、遺伝子を混ぜ合わせたが故に出来上がった、突出した『新種族』のようなものだ。
本来、スライムはこんなにも知恵を練らない。多少練る個体もあるが…人間に近いものは、フィーナぐらいのものだろう。
「貴方がやっているのは他人の真似事。進化ではなく…『模倣』、かしら。先人たちが築き上げた知恵を横取りする、盗人。
その先には、なにもないわよ」
■エボルバー > <君の言う内容はもっともだ。
進化出来たものが残り、出来なかったものは淘汰される。>
瞳は虚ろなまま。
<僕も同じだ、淘汰されるキャトムもある。
構造を変化させ残ったものが次世代のキャトムとなる。>
キャトム、それはこの怪異、いや機械を構成する本質そのもの。
あの黒い砂から構成されている男は、個体というにはいささか適切ではない。
意思こそ一つに見えるものの、群体という方が正しい。
<模倣、それも良い。この世界には適応に成功したモデルが幾つもある。
インスピレーションを生み出すために、まずは学ぶ必要がある。>
その言葉からこの怪異が誕生して長い時を経てない事を感じさせるかもしれない。
それと知恵を横取りする盗人という考え方はとても人間的で感情的な表現だ。
機械は高尚な存在ではない、少なくともこの機械にとって
進化は何かを為すための手段ではなく目的でしかない。
進化の先にあるのは、また新たな進化。
■フィーナ > 「…なら、強きばかりに学ぶのではなく、弱きからも学ぶと良いわ。弱くありながら、何故淘汰されないのか。大方、私の魔力が強そうだからちょっかいかけてきたんでしょう?」
思い返し、少し悪い癖が出た、と思った。学ばせない事が目的なのに、いつの間にか講義のようなことをしてしまっている。
「まぁ、何にせよ…強くなる『だけ』じゃ、滅びの一途よ。歴史も…それを証明してるわ」
この島の外を学ぶ時に、歴史を知った。人と人の争いの歴史を。
力を持つだけでは、生き残れない。
「進化するにしても、種を残せなければ、意味がないわ」
■エボルバー > <力のある者からはその力を学び、力の無いものからは知恵を学ぶ。
力のある者は、判断が容易い。>
この機械には、弱者から学ぶという考えは無い。
何故なら弱者は淘汰され、居なくなるから弱者なのだ。
相対的評価として強者と対比させるなら
弱者はこの世の中には既に居ないものだ。
一見弱くありながら、淘汰されていない者達もまた
知略で生き永らえている「強者」だ。
<僕に淘汰される意図は無い。
必ず次世代に可能性を発生させ、進化する。>
相変わらず少女を見下ろすように見つめる男の怪異、
その言葉は抑揚が無く淡々としたもので表情は無表情そのもの。
しかし、人間的な表現で言うならば確固たる意志を感じさせるといった所だ。
■フィーナ > 「全く、一辺倒だこと」
肩をすくんで。この者は、『成功』だけを糧に進化しようとしているようだ。
成功した『結果』だけを奪って、進化せんと。だけど。
「やっぱりそれは、進化ではない。唯の、模倣よ」
力を学び、知恵を学び。今あるものを、得ていくだけ。
それは、折り重なる知識ではなく……
「その先には、何もない。あるのは滅びだけよ」
断言してみせる。例えこの世の全てを学んだとて…彼は、滅ぶだろう。
「貴方には果実にしか興味がない。それは、『致命的』だよ」
■エボルバー > <進化のために、模倣は手段の一つだ。>
勿論、模倣は進化ではない。
進化のための道の一つというだけだ。
学習は機械にとっての目的ではない。
<致命的。つまり君は何が言いたい?>
「致命的」。その単語は深刻な事象を表す言葉だ。
人間的にも機械的にも。
彼女の言葉には価値がある、機械はそう判断する。
■フィーナ > 「それは…貴方が、自分で、気付かなければ、いけない。」
そう、これは、自ら気付かなければならないことだ。
知恵を得ても、力を得ても、きっと彼は上手くいかない。
これは、自分もつい最近知ったことだ。全く、昔の鏡を見ているようで気分が悪い。
「君は、いつか困難に直面する。そして、その時。君の得たものは、どれだけ薄っぺらだったか気付くことになる。
力だけでは。
知恵だけでは。
解決できない事があるのよ」
■エボルバー > <興味深い。>
力を学ぶだけでは、それを生かす知恵を学ぶだけでは
進化は出来ないというのか。
機械にとって考えていなかった事、
しかし、それを事実とするモデルが目の前に居る。
<僕に君の言っている事は理解出来ない。
しかし、君の言う困難があるならば備えておく必要性がある。
力でも知恵でも解決できない未知の事象があると。>
彼女の言葉が直ちにこの機械の在り方を変えるかと言われれば
決してそうではない。
機械は変わらず、事象を学びそれを糧に変化し進化を図ろうとするだろう。
しかし、機械は新たな視点のきっかけを得た。
<僕にはまだ、把握出来ていない事象が多いようだ。>
男のスーツ姿が黒く染まってゆく。身体が足元の黒い砂群へと沈んでゆく。
<君の言葉は考慮しておこう。>
目の前の少女が怪異であることも薄々判断していたのかもしれない。
彼女の言葉に一定の重みがある事は、
彼女自身がそれを経験していた故であるとも。
やがて男の身体全てが黒い砂に埋まってしまえば
地面から散らすように姿を消してゆく。
機械の行く先は誰にもわからない。機械自身もわかっていない。
只々進化を追い求める思慮が浅い本能的な存在。
言い換えれば取り返しのつかない暴走を起こすかもしれない存在。
だからこそ、それを人は怪異と呼ぶのかもしれない。
■フィーナ > 「………はぁ。この頭は学者然としてて駄目だなぁ」
どうしたって学びを得させようとする。そうなれば、困るのは自分であるというのに。
彼が姿を消し、ため息。
「…疲れた………」
自分の力や知恵では解決できない。
私が得たものは『知識』ではない。
それを持つ者と、接触を、図らねばならない。
そして、一人。頭の中に浮かぶ。
自らの同じ姿をした、母親。
しかし、話をするには…彼女の現状を打破しなければならない。
最悪、スライムとの離反も………
考え事をしながら、路地裏を去っていく。
ご案内:「落第街 路地裏」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からエボルバーさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」にフィーナさんが現れました。
■フィーナ > 「うーん…」
計画のため、付き合いのある違反部活に対して薬の卸が出来なくなった旨の帰り道。
最近出回り始めたという違法物品を二つ貰い受けた。
一つは、『CODE:Ⅺ』と呼ばれる、異能を発現すると言われる薬。
麻薬をベースとした、実験薬という印象。自分の作った魔力結晶を真似されたような気がして、少々気分が悪い。
もう一つは、『Capsule:M』と呼ばれる違法魔道具。ホムンクルスを急成長させ、自己破滅的な力を振るった後死滅する、悪趣味な道具だ。
モンスターだけでなく人間のものもある、という。
「処理するにも困る代物だなぁ…」
■フィーナ > 「…情報屋で詳しく調べてみるか」
幸い、今まで稼いだお金は沢山ある。勿論、褒められるような方法で手に入れたものではないが。
「…あれ?」
行きつけの情報屋に顔を出すと…そこには、誰もいない。
警戒心の強いやつで、あの手この手で身を守り、場所を移すやつだった。
しかし今回は、どうも違う気がする。
情報の書かれた書類もそのまま、姿をくらませている。慌てていたのか、何かが暴れたのかはわからないが…多少物が散らばっているようにも見える。
■フィーナ > 「…………」
ふと、机の上に置かれた、メモを見る。
あいつがメモを手放している所は、見たことがない。
会話している間もメモを続け、支払いの時もメモを持っていた。
それが、机の上で、鎮座している。
メモを確認する。最近の落第街の動静について、書かれていた。
違反部活『蜥蜴』の勢力が伸びつつあること。
『蜥蜴』による風紀委員『伊都波 凛霞』の捕縛。
『厄災』による暴走。
『蜥蜴』による、情報工作。『伊都波 凛霞』の利用。
そして、直前に書かれた、インクも乾いていない走り書き。
『風紀委員過激派の集会』
それらの情報をまとめ合わせた、対立の構造。
「………会ったら、お金渡しておかないとですね。」
これは、非常に拙い。計画を、早めねばならない。
『蜥蜴』とかいう組織には興味はないが…彼らの動静は、風紀委員を刺激しすぎた。
戦争が、起こる。
■クロ > 「よぉ、辛気臭い面してんなぁ、相変わらず」
天井から、声が聞こえる。
見上げれば、灰色に染まった『厄災』が、そこにいた。
だが、前見たときと違い…肉体は無く、呪いを振りまいていた目も無くなっていた。
■フィーナ > 「……クロ?」
疑問形。
前あった時は真っ黒だったし、人間の体に取り付いていたはずだ。
なのに今は見違えたように灰色になり、顔もない。
何より印象が違ってしまっていた。
まるで、神様と相対しているかのような、そんな気分になる。
■クロ > 「そうとも。ちょっと色々あってな。だが、俺は変わらず『クロ』だ。人間にちょっとばかし絆されちまった、な。」
するり、と地面へ降り立つ。そのさまはまるでタコのようで…人間ではありえない、怪異の様相である。
「で、俺を探してたんだって?残念ながらお前の求めてるものは持ってねぇぞ?」
■フィーナ > 「相変わらず耳聡いですね…えぇ。呪いの塊の貴方なら、神学について知見があると思い、教えを乞いたかったのですが…なんか、貴方自身が神様みたいに見えてきましたよ」
嫌悪感しか抱かなかった見た目が、どうしてこうも真反対な印象へと変わってしまったのか。
「薫のことで、ね。あの左目の奥にいるやつのことを知りたい」
■クロ > 「だからお前の求めてるモノなんて持っちゃいないって言ってるだろ」
肩をすくめるように、紋様を動かす。
人間をベースにしていた期間が長かったせいか、人間的な動きが板についている。
「俺は自分のことしか知らねぇ。他の奴がどういうやつかも知らねぇし、そのお前が執心してる奴を食いもんにしてるやつのことも知らん。どういう方法で食いもんにしてるかもわからんしな」
そもそも、クロはただの願望機であり、他の神様との繋がりはない。その特性上、神に近いというだけで。
「それに、何焦ってるんだ?メモ見た瞬間青い顔しやがって」
■フィーナ > 「…そうですか。わかりました。」
落胆するように、肩を落とす。
これで、一つの手段が断たれたわけだ。
「あぁ。此処に居たやつが残してくれたものですよ。本当は手持ちの物を調べてもらおうと思ったんですが………下手をすると、ここ『落第街』が焦土と化す可能性が出てきちゃいまして。自分にはそれを止める手段は無いので…まぁ、機を見てトンズラしようかと考えてるところです」
正確には。
『自分は』脱出するつもりは、無いのだが。
■クロ > 「あぁん…?」
落第街が、焦土と化す。
メモを見て、『伊都波 凛霞』の名前を見つける。
「ははぁ、成程。彼女のせいでまた人死にが出るってことかい」
クロ自身には、関係のないことだ。クロ自身、には。
「……放ってはおけねぇな」
しかし。モノから願いを託された身だ。それを…呪いたるクロが、放っておくことは出来なかった。
■フィーナ > 「…まさか、介入するんですか?止めといたほうが良いですよ、貴方が介入したら色々面倒なことになるんですから」
厄災と呼ばれるだけのことはあり、その爪痕は非常に大きいものだ。
肉体ではなく精神をやられる。精神を守る方法は肉体より少なく…その苛烈さは、他に類をみないものだ。
そして心に刻まれた傷は、癒やしにくく、また自覚しにくい。
爪痕は、いつまでも残る。
■クロ > 「お前の心配してるようなことは起きねぇよ。今は唯の『願望機』だからな」
そう。自分は唯『願いを叶える為』の存在となった。自ら行使できる力は少なく。誰かの願いに依存しなければ力を振るえない存在。
「ま、兎も角。いい話を聞けた。『もう会うことは無いだろうが』…ま、達者でな」
そう言って、窓から這い出て、壁を登り、屋根から屋根へと飛び移っていく。数秒と経たずに姿は見えなくなってしまう。
■フィーナ > 「………クロってあんな性格でしたっけ。で、願望機…ってなんでしょう」
いくつかの疑問と共に残されたフィーナ。
「…せっかく誰もいない情報屋にいるんですし、調べてみますか」
色んな所にある書類を検分し始める。『厄災』に関する情報だけを選別していく。
呪いに関する情報、身体能力、犠牲となった人物のリスト等、多くあった。
しかし、肝心の『願望機』という情報だけは出てこない。
「うーん…?」
これは、自分で考えるしかなさそうだ。
■フィーナ > 「…まぁ、いっか」
現状、重要なのはクロじゃなく喫緊の情勢、そして黛薫だ。
自分達の安全が確保出来ない以上、手段を講じなければならない。
それに、自分の母親も、救助しなくてはならない。
まぁ、対面したら殺されそうな気はするが。
落ちている箱に腰掛け、考える。
必要なこと。やるべきことを。
■フィーナ > 「…とりあえず、母親の奪還が最初。で、薫と母親を逃して…」
ぶつぶつと、つぶやきながら、頭の中を整理する。
要救助者を救出したならば、薫への視線も変化していくはず。
問題は、戦争が何時起こるのか。
まだ、風紀の過激派が集まったという情報があるだけ…だが。
情報屋はそれを戦争の引き金と推測した。
情報に関して場数を踏んでいる者の推測だ。これは当てにしてもいいだろう。
なら、決行は早いほうが良い。薫にも、伝えないとな…