2021/11/07 のログ
■O RLY >
「全く、資源の無駄が好きだよね。
ニンゲンってのはさ。」
ビルの端に腰掛け、夜の街を眺めながら梟は小さく呟いた。
飛び交うドローンと強い風に煽られる”写真”は人が去り裏寂しくなったこの場所で意味を成すのだろうか。
未だに現状を正しく把握していないというのは嘲笑するにも冗談が過ぎるなぁと
宙を舞う紙くずを手に取る。それにちらと目を通し、
「あっは、写真写り悪すぎ。
”どこから流出”したのかな?
まったくこの島は覗き魔が多くて困るなぁ」
ボッと手の中の紙は炎に包まれ灰となった。
強い風に運ばれ空に消えていく灰色を見送り、星を探す。
存在しない場所を焼き払い、未だ残る熱に煽られ空は歪んで見える。
「ま、精々勤労の精神にのっとりあくせく働いてくれるでしょう多分」
口の端を歪に吊り上げながら夜の月を見上げて。
■雪景勇成 > ――暫く歩いていると、やや路地裏の幅も広がり視界が開けてくる。
とあるビル――とはいってもほぼ廃墟というかかろうじて建っているだけ、の残骸手前みたいではあるが。
そのビル伝いに何気なく視線を上へ上へと向ける――と。
「――…あ?」
ビルの端に腰掛ける誰かが見えた。僅かに訝しげに思いながらも視線は次いで夜空へ。
――嗤う様な月がぽっかりと浮かんでいる。月光が僅かに差す事で陰影が生まれる。
その影と月光の端境で足を止めたまま、視線は何気なく先ほどの人影へと戻すだろうか。
「――…。」
見覚えは無い、あっても別にどうこうしないが。
僅かに降り注ぐ月光に混じり、空に溶け損ねた灰色が微かに降り注ぐ。
少なくとも、今は何時にも増して心寂しいこんな場所に居るなんて奇特な奴なのだろう。
――割と奇特な奴らは何処にでも居るだろうけど。
■O RLY >
風に煽られる髪をかき上げ、月下にくゆる陽炎を見やる。
対岸の火事。そんな言葉で安全圏からご高説を垂れる奴は何処にでもいるけど
「そこから現場の鼠に働けと。
うーん、まさに18世紀英国時代の闇って感じだねぇ」
最も、そうしてくれる方が”やくに立つ”のでじゃんじゃん働いてもらうけれども
せめてもう少し綺麗な写真が良かったなぁ。お洒落にっだって気を使いたいし。
腰掛け脚を揺らしながら呟く。全く、この写真の主は女心って奴を判っていない。
「……こんな所まで月光浴?
お勧めしないよ。こんな月の嗤う夜は。
こわーい狼さん達がうろついている時間だからね。」
こちらを見上げる人影に声を投げる。
服や歩き方、恐らく”よそ者”だろう。
……まぁ凡そ目星はついているけれど。
「そっちのお店のおじさんなら、今は港の報に避難してるからさ、
お買い物に行きたいならそっちに行った方が良いと思うよ。
誰か逢いたい人でもいるなら、止めないけどさぁ。」
それでものんびりと声をかけたのはこちらに気が付いたそぶりを見せたのと、
半分は気まぐれで残り半分は……いや全部気まぐれだこれ。
■雪景勇成 > 「……ただうろついてるだけの餓狼なんざどうでもいいが。
――つーか、月光浴とかガラでもねーな。」
燃え尽きた残り滓を無造作に一度右手で払い除ける。
服装はあちら側、歩き方もあちら側…後者は意図的だが。
その場に突っ立ったまま、煙草を蒸かしつつ頭上の影と月光を淡々と見上げながら。
「――何だ、やっぱあのオッサン生きてたのか。商売人はしぶといな…。」
いち早く避難する旨は聞いていたが、矢張り無事だったらしい。
まぁ、オッサンの安否は正直どうでもいい。欲しいのはむしろあそこで扱う煙草の方だ。
「――で、そっちこそ優雅に月光浴か?眺めて面白いモンは無さそうだけどな。」
声は互いに通る程度の高さなれど、それでも簡単に到達出来る高さのビル。
辺りがなまじ静かだから互いの声が通るようなもの――普通の聴覚ならば、だが。
そもそも、煙草目的とはいえそれでもここをブラついているのは――別に理由なんて無い。
それこそ、”気紛れ”だ。
■O RLY >
「そうだねー。商売人ってのは逞しいし良いよねー。」
店をあっという間にたたんで脱兎のごとく避難していった。
日ごろから店を放棄する場合を想定していたのだろう。
実に素晴らしい。
「ん、こういう夜はそういう気分になるんだよね。
面白いよ。面白いなって思えるものは沢山あるからさ」
月を見上げたまま体を倒す。
屋上に横たわりながら見上げても、星空は”視え”ない。
「タバコ、もその一つじゃない?
ほら、良い空気の時に吸うと美味しいとかいうじゃん。
今はちょっと煙臭いけどさぁ。ま、たばこだと一緒かもだけど。」
隣に座っている人に話しかけるような口調でも相手の耳には伝わっているのだろう。
喉が痛くなるので大声も上げたくないし、この調子でしゃべらせてもらう事にする
ご案内:「落第街 路地裏」に雪景勇成さんが現れました。
■雪景勇成 > 「…ま、あの逞しさっつぅかしぶとさは時々すげぇとは思うが。」
常に最悪の事態や有事を想定しており、逃走ルートの確保や情報収集に余念が無い。
見た目は本当に冴えないオッサンだったが、落第街で長く店を構えているのだ――そのくらいは朝飯前だろう。
「――そうかい。…んじゃ、参考までに聞くがどんな面白いものが見える?」
相手はどうか知らないが、こちらからすれば顔も名前も何も知らぬ相手。
ただの世間話の延長の如く、気紛れのままに問いを投げ掛ければ紫煙を燻らせて。
不意に影が見えなくなった――いや、足は見えている。寝転がったのだろう。
「そりゃ、あっちこっち燃えて崩れて埃と黴と煙だらけだからな。
単純に、イライラした時も吸うけどな――どっちにしろ煙草なんざ百害あって一利なしだが。」
では自分は何で吸ってるか?単なる嗜好品だ。別に何か思い入れも深い理由も無い。
体に悪かろうが何だろうが、正直そこは今更、という感じで気に留めるまでもないこと。
彼我の影との距離は程々にあれど、会話には困らぬならば手近な壁に背中を預けて煙草を蒸かし。
■O RLY >
「そーだなぁ。
泣いてる顔、笑ってる顔、怒ってる顔」
空中にゆっくりと腕を掲げ、指折り数えていく。
直接見たものは少ないけれど、この島だって好きなところは沢山ある。
「燃えてる家、綺麗なカフェ、学校、図書館……」
あ、そういえば図書館にはいかなかったなぁ。
食べ歩きで近くは歩いたけど。また行きたいなぁ。
「銃口、ナイフ、異能……まぁそんなとこかなぁ
もうこの世界では一つ一つは有り触れた光景かもしれないけど
こんな密度で見られる場所は他にそう多くはないんじゃないかな」
階下の彼にとってそれらが面白いモノであるかはわからない。
というより、この島の住人は大抵それを当たり前か、煩わしいものとして受け取っているし。
「禁煙しないの?
ニコチン依存で余計にいらいらしちゃいそう」
ご案内:「落第街 路地裏」に雪景勇成さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」に雪景勇成さんが現れました。
■雪景勇成 > 「燃えてる家だけなんか浮いている気がすんだが…。」
彼女が指折り数えて挙げる例に、一言ぼそりと突っ込みを入れるけれど。
それを言ったら、銃口やナイフ、異能もそうだがそこは特に突っ込まない。
「図書館っつったら、禁書庫なんてやべー所もあるけどな。
あとは――『瀛洲』っつぅ大古書街。」
と、付け加えるように口にしつつ一度大きく紫煙を吐き出して。
「――そりゃ、この島そのものが特異点みてーなもんだろうしな。
少なくとも飽きはしねーが……正直、外とそこまで変わんねーとも思う。
確かに密度は桁違いで、異世界やら怪異やら色々ごった煮だがよ?
――同じだろ。”繰り返し””繰り返し”……あー、今の無し、つまらん事言ったわ。」
肩を竦めるジェスチャーは寝転がっている相手には見えないだろうが、小さく息を吐いて。
当たり前だとか煩わしいとか、それは別にどうでもいい。
銃は兎も角、ナイフは良い物があればそれなりに興味は惹かれるし、異能もそうだ。
けど、”面白い”かどうか?と、言われると何とも言えない。
「別にこれで早死にしようがそん時はそん時だろ。
――どいつもこいつもいずれ死ぬか滅びるなら、それが早いか遅いかだけの違いでしかねーし。」
淡々と口にしながら、足元に無造作に吸殻を落として踏み潰す。
そのまま、2本目の煙草を口に咥えながら。
「そもそも、煙草が吸えない程度でイライラするっつー感覚がいまいちわかんねーよ。」
吸えないと口寂しいとは思うが、だからといっていらつく程でもない。所詮は嗜好品だ。
■O RLY >
「あーそういうのも面白そうだな―!
そいえばそういうのもあるんだっけ。
良いよね本がたくさんある光景ってさ。」
何か微妙に突っ込んでくれた。
過労死するタイプのイイヒトだねこれは。
風が強い。バサバサと紙が飛んでいく音が煩わしい。
「そだね。
繰り返しばっかで嫌になっちゃう。」
くすくすと笑いながら同意する。
面白さは人それぞれだし、それに続いた言葉にも同じ思いを持っていたから。
「んだねぇ。
その分美味しいもの食べたって思えば違いはないのかもねー。
そう考えたら煙草ってすごいじゃん。持ち運べるスイーツ?
あ、飴っていうのがあったわ。」
階下の彼が二本目の煙草をくわえると同時に
懐から飴を取り出し口に含む。
今日のはヨーグルト味。古き良き駄菓子は安心する。
「……まっっったく、嫌んなっちゃう」
小さく呟く言葉が口からこぼれた。
■雪景勇成 > 「流石に禁書庫には入った事ねーが、『瀛洲』は一度行ったな…ごちゃごちゃしてるが悪くはなかった。」
ある意味でこの男は律儀だ。面倒臭がりで仕事は仕事と割り切って淡々と。
面白みは正直無いだろうが、静と動の温度差が殆ど無い。
風に白髪を緩くなびかせる。そろそろ伸びて来たし適当に切るべきかと思いつつ。
「――ここが唯一無二の環境なのは間違いない。
俺なりにまぁ愛着…かは分からんが住み続ける気はある。
けど、偶に錯覚すんだよ――形を変えて、場所を変えて、人も変えて――でも同じじゃねぇかってな。」
ま、ただの馬鹿のくだらねぇ妄想だがよ、と付け加えて2本目の煙草に火を点けていく。
初対面の、まだ顔もはっきり見ていない相手に言う事でもないだろうが。
まぁ、それなりに退屈凌ぎにはなるだろう…ならなかったら知らん。
「飴なんて駄菓子屋のやつ?とかしか食った覚えねーな…。
最近の飴とかってあんまし口に合わねーっつーか。」
そもそも嫌いでも苦手でもないが、甘い物は進んで食べる事が殆ど無い。
飴はまぁ偶にあるが、それも駄菓子屋のラインナップのようなものばかり。
しかしまぁ、何でこんな場所で互いにロクに顔も見えない姿勢と位置でダベっているんだか。
…まぁ、これも息抜きにはなるか。少なくとも毎度ドンパチやっていても面白くない。
…で。
「――具体的に何が嫌かは知らんが、適度にストレス解消しとけよ。」
まさか聞こえていたのか、煙草を蒸かしながらぼんやり嗤う月を見上げて一言。
■O RLY >
「うん、ここは唯一の場所なんだよ。
そうなのかな。だからなのかな」
こんなにも面白い場所なのに、面白くない法則に染まっていく。
その成れ果てが、この有様なわけ。ある意味、絶望的なまでに夢も希望もありません。
その理由が人だから、などという理由だったらそれはなんだか寂しいなと思う。
「そ?あ、でも昔のThe砂糖って感じの飴とかお菓子も良いよね。
違うかもしんないけどさ。なーんか昔と比べていろんなものがおいしくなったから
わざわざ飴なんか食べなくてもみたいなのは確かにあるかも」
男の人って甘いもの苦手な人多いよね。
最近のお菓子は結構バランス良かったりするんだけど、
逆になんかこう、薬品っぽいのも多いし人それぞれですね
「適度かぁ……ちょーッと難しいかもね。
なんか色々頑張んなきゃいけないみたいでさぁ
ストレスもたまるってもんですよ」
好き勝手やってたいだけだったのになぁ。と独り言ちながら上体を起こす。
まぁ一つ確認もできたし、言える事なんてこの程度。
ご案内:「落第街 路地裏」に雪景勇成さんが現れました。
■雪景勇成 > 「むしろ、唯一の場所だからこそ色々集まるんだろうな。――まぁ…。」
その先は口を開いたが言葉にはせず。
世間話は別に良いが、こういう話をする己は何時にも増して面白みが無い。
「味覚の多様化っつーやつじゃねーのか?西洋文化のあれこれ入って味の幅も広がってるしよ。
まぁ、飴とかの甘味だけじゃなくて飲み物食い物その他色々に言える事だが。」
選択肢が増えた、豊かになった、――でも、だから?
それでも満たされないモノは幾らでもあるのだ。
「――そうかい。じゃあ面白みのねぇ馬鹿から一つ。
……ストレス解消するなら、まずは腹に抱えてるモンを吐き出すのがいいらしいぞ。」
根拠?そんなものはない、適当に口から出任せだ。
そもそも、アドバイス出来るほどの明晰さなんざ俺には無い。
上体を起こす相手に気付いたのか、相変わらずの距離のままそちらを視線だけで見上げて。
■O RLY >
「変なのとかが集まるってね」
繋げるように口にして僅かに嗤う。
どいつもこいつも、”抜け殻”にしがみついて目障りだ。
手を変え、品も変え、それこそ世界も種別も違うのに。
「多様性、ねぇ。アタシには”効率性ばかり”にみえるよ」
提案されたアドバイスにふと首を傾げる。
アタシに視力はない。だからそちらを見るというのは自己満足だけれど
それでも見上げる顔にじっと目を向けて
「そう?
……じゃあさ、ここだけの話で聞いてくれる?」
■雪景勇成 > 「むしろ、大なり小なり変な奴が結構多い気もするけどな…。」
無論、真っ当な者も多い。が、同じくらい変な奴も多い気がする。
まぁ、自分も変な奴にどうせぶちこまれるのだろうし、真っ当なんてハナっから思っていないが。
「効率性ね…馬鹿の俺にはよく分からんが、まぁ…そこは感じ方の違いだろうよ。」
さて、別にアドバイスする事でもなく、むしろ無責任に過ぎた一言だったが。
じっと向けられる視線を赤い瞳で見返して「あ?」と、緩く首を傾げ。
「――何だ、オフレコ話ってやつか?…まぁ別に聞くのは構わねーが。」
■O RLY >
「アタシはさぁ!!!」
僅かに声が大きくなる。
この島に来て苛立ちはどうしようもなく膨らみ続けている。
「……好きにやってたいだけ。
その結果さぁ、怒ったり文句言うなら好きにすればいいんだよ。
それで生じた責任はアタシの義務。そーですとも。
性悪だのびっちだの好きに言えばいいと思うんだ。
思想と宗教の自由?だっけ?アタシはそれを尊重するよ。けどさぁ」
ああ、そっか。アタシは怒ってるんだ。
どうしようもなく、自分勝手に振舞う為に
同じように自分勝手にやってる連中に
押し付けられることを怒っている。
「選択もしない、逃げのツケを誰かに押し付けながら
見て見ぬふりして、対岸の火事だとか言って
いざとなりゃツケも払わず逃げ惑うやつらがさぁ、
識者とか被害者面してあーだこーだ宣ってんのまじウケる。」
■雪景勇成 > ――それは決して大音量の声ではない。
先ほどの会話の音量が多少、大きくなった程度のもので。
ただ、今も膨らみ続けるどうしようもない”苛立ち”…渦巻く鬱憤を感じ取れるもの。
「……。」
沈黙しながら女の言葉を静かに聞いている。
ただ、ゆっくりと紫煙を吐き出しながら。
女の目を見て、真っ直ぐに、淡々と、その言葉を聞いている。
(――怒り、か)
”私にお前らのあれこれを押し付けるな”と。つまりはそういう事か。
好きにやっていたいだけ――と、女は口にした。
それでどうなろうが彼女の選択で彼女の責任。
その上で、安全な所から自分勝手なものを押し付けて、尚且つツケも払おうとしない。
(――盤面の中にも外にも居ない。それを安全圏から眺めて好き勝手嗤っている)
そして押し付ける、そういう”奴ら”。
ふっと息を漏らす。口には出さないが――まぁ、正直。
少し――共感できる所もあった気がしたから。
「――…で、多少は気が紛れたか?言い足りないならこの際だ。どうせ暇だし纏めて聞くが?」
本当に、気の利かない台詞だとは思う。その辺りの機微は鈍いから。
ただ、単純に――吐き出すだけ吐き出せば、苛立ちも怒りも収まらずともクールダウンくらいにはなるだろう。
■O RLY >
「斜に構えて、”まぁ俺達最強だから?”みたいなこと嘯きながらさぁ?
根拠のない自信と後ろ向きな自己肯定感拗らせて。永遠の思春期か。
挙句持つべきものの義務も果たさないで貴族気取り?馬っ鹿じゃないの
いつまで遅れてきたヒーローきどってんの?もう手遅れなんだよ
崖っぷちじゃなくてさ、もう落ちてんの。それを気が付いてねーって阿保かよ」
それを増長させるから今のこの島の風紀は嫌い。
彼らはそれを防ぐための役割のはずだというのにその最たるメンバーが彼ら自身ですらある。
全く持って機能せず、手前勝手な”正義(ルール)”の名のもとに他者を踏みつけて差し手を気取る。
だから、”彼らの言う盤上”に引きずり出してやった。
「誰か一人だけが主演でも、誰か一人だけが悪者でもない。
誰か一人だけの”ハッピーエンド”の為にあたし達は踊るわけじゃない。
誰の為でもなくアタシが躍りたいから踊ってんだ。
そもそも誰もが被害者に、加害者にもなりうるこの”世界”に盤外なんかあるかっての。」
等身大の自分として、出来る事を重ね、準備もしてきた。
寝ぼけているというなら真横で大音響でライブしてやる。
正義感?そんなんじゃない。これはただ、等身大で”殴り返して”いるだけ。
そこに正義なんて大層なもの、あるか。
「……なんてね」
そう呟くと再び上体を倒す。
口元には空に浮かぶ月のような笑みを宿して
■雪景勇成 > 「――成程。」
ゆっくりと目を閉じる。2本目の煙草が燃え尽きて足元へと吸殻が自重で落ちた。
その言葉が一番刺さるのは――さて、誰だろうか?
――嫌われる事など慣れている。
――風紀に特段思い入れがある訳でも無い。
―――だが、その糾弾の先に居る一人が己でもあろう。
(ま、正義なんて結局適当に”装飾”すれば都合のいい免罪符や言い訳になるもんだからな。)
正義感なんて特に無い男からすれば、正義なんて言葉は薄っぺらにしか感じられない。
そもそも、本当の正義感とやらを持つ者が―ー”世界”にどれだけいるのだろう?
「――そうだな、自分で踊ろうと決めて踊るなら、外野からどうこう言われる筋合いはねぇな。」
”殴られたから殴り返す”。それだけの事で、当たり前の事を当たり前にやっているだけ。
それでも、結局、行き着く所に行き着くのは止まらないのだろうが。
女が再び上体を倒れ込ませれば、視線を外して同じように嗤う月を見上げる。
――女は嗤いながら、男は無表情で、その月を見上げる。
■O RLY >
「まー、そんなふーにも思ったり思わなかったり?
たはー、思春期だなぁアタシも。もう年なのに。
恥ずかしーからいちおーオフレコってことでよろしくぅ。」
ケラケラと笑いながら懐から飴をもう一つ取り出す。
さっきまでなめていたそれは嚙み砕いてしまった。
「……もしさぁ、もしも、誰かを止められる”誰か”がいるならさ、
ちゃんと”選択”できるなら、逃げずに選択して欲しいんだよね。
今じゃなくていいからさ」
その結果、生まれる争いは今よりきっと多くなる。
でも、今の争いなんかよりずっとまし。
こんな風に、相手を叩き潰さなきゃもう終われない。
他人(自分と違うもの)なんか人じゃない。そんな空気よりずっとまし。
「勿論無理しない程度に、ね」
手元の飴を放り投げる。
安っぽい、どこにでも売っているようなコーラ味のそれを足元の”誰かさん”に。
偶然出会った誰かに貰った”その程度のお代”で出来る範囲で良いからさ。
「だから後はよろしく。”風紀委員”さん」
そう呟いてくるりと身を捻り、ビルの屋上から跳ねる。
■雪景勇成 > 「…へいへい、アンタの”叫び”はここだけの話って事で留めといてやるさ…。」
そして、月から視線を女のほうへと戻せば、何時もの己だ。
先ほどの空気がまるで嘘だったかのように、何事も無かったかのように。
「――誰かを止められる”誰か”。逃げないで”選択”を…か。」
――ああ、全く。
それは自分には出来ない事だから、流石に少し”刺さる”。
ただ淡々と、仕事だからと叩き潰す己にそんな”選択”がそもそも取れると?
――今更?それこそもう手遅れなのではないか?
放り投げられた”誰か”が寄越した飴を静かに受け取る。
何の変哲も無いコーラ味のそれ。
”その程度のお代”と女は言った。飴玉一つ分の――…
「――……あぁ。」
風紀委員さん、と去り際に女は言った。身を翻して闇夜に跳ねるように消える姿を見送り。
――残るのは嗤う月と男とコーラの飴玉一つ。
「――ノーフェイスといい、あの女といい…もっとまともな風紀に言えばいいと思うんだがな。」
手の中の飴玉を暫し眺めていたが、そのままポケットに仕舞い込んで。
――どうにも、煙草を吸う気分ではなくなった。そのまま、男も歩き出して。
「――俺がやる事は変わんねーよ…やれる事も、な。」
■雪景勇成 > ――そして、男の姿も暗闇の向こうに消えて。
ご案内:「落第街 路地裏」からO RLYさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から雪景勇成さんが去りました。