2021/12/01 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に萌良 さだめさんが現れました。
萌良 さだめ > 年末年始はみんな忙しい。 …ということは、公安はもっと忙しい。
喧騒の中に紛れて動くものは、なにも普通の人々だけではないのだ。

調査の手は校舎や学生街だけではなく、こうして落第街にも及ぶ。

「ここは……。 うん。」
”位置を示す魔法”…これがなければ、自分もきっと遭難していただろう。
手に持った地図の上で光る小さな光点が自分である。
調査している区画は、かつて常世島で騒ぎを起こそうとした連中が潜んでいた場所だ。
残党はいないとされているが、研究結果やかつての威光にあやかろうという連中がいないとも限らない。
毎年、年末年始に確認を行うのが常であった。

薄暗く細い裏路地を、ひたひたと歩く。
音もなく、そしてスイスイと歩けるのは、地図のおかげもあるが
身につけたマジックアイテムのおかげでもあった。

「”ねこ足のブーツ”…なかなか使い心地がいいじゃないか。」
一人呟く。 足音を立てず、さらに身体まで軽くしてしてくれる魔法の品である。
足跡が猫のそれになってしまうという問題(?)はあるが、人に気取られないよう、
隠密行動が求められるときにはちょうどよい。

萌良 さだめ > 「お、ちょうど住人がいるじゃん。」

調査をしながら歩いていると、猫が目の前に現れる。
黒い毛色と金色の瞳を持つそれは、こちらを見てにゃあと小さく鳴いた。

ポケットから細長いビニールの包みを取り出す。
猫が大好きなおやつ、”ちゅるちゅる”だ。
とはいえ、ただおやつをあげるのが目的ではない。
猫耳のついたフードを被り、ちゅるちゅるを開けて猫に声をかける。
「一本おごるよ、聞きたいことがあるんだ。」

ちゅるちゅるをちょっとだけ出して、猫に見せつける。
鼻をひくつかせてから、猫はゆっくりとこちらにやってきて…口を開いた。
『なんだいあんた、俺に一本おごってくれるって?』

他の人間が聞けば猫の鳴き声であろう。
だが、このフードの猫耳は人間の理解できる言葉に猫の言葉を翻訳してくれるのだ。
傍目から見ると猫と会話するアレな人になってしまうのが問題点ではある。
「ああ、おごるよ。 ついでにちょっと質問に答えてくれりゃあいい。」

ほれ、と包みを差し出す。
一も二もなく、猫は吸い付いた。
『ああ、こりゃあうめえ…規制前のちゅるちゅるだな。
 最近のやつは味が薄くていけねえのよ。 そんで、なにが聞きたいって?』

ご満悦でちゅるちゅるを貪る猫の言葉に小さくうなずいた。
「最近この辺をウロウロしているやつはいないか?
 毎年のことだけど、調べないといけなくってね。」

萌良 さだめ > 『この辺はもう全然人は見ないよ。俺と仲間がうろつくぐらいのもんだ。』
ちゅるちゅるを食べ終えて満足げな表情で猫がいう。
その言葉を聞いて胸をなでおろした。
とりあえずこの場所が使われてないならいいだろう。

「ありがとう。 ところで最近このへんで人が集まっている場所を知らない?」
ポケットからちゅるちゅるを取り出しながら問いかける。
眼を爛々と光らせた猫は、すぐに情報を吐いてくれた。

喧騒の中荷まぐれて動くものは、まさしく普通の人々だけではない。
猫から情報を得ながら、一人思うのであった。

ご案内:「落第街 路地裏」から萌良 さだめさんが去りました。