2021/12/03 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に比良坂 冥さんが現れました。
比良坂 冥 >  
「………」

薄暗い路地に佇む白髮の少女
打ちっぱなしの壁に背を凭れ、手にしたスマホをじっと見つめている
その、どこか不気味な雰囲気に落第街の住人も視線こそ向けれど声をかけたりはしなかった

一方で少女と言えば、目の前を誰かが通るたび、スマホから視線を外しその姿を眼で追っていた

見るからに此処の住人である、という人物からはすぐに視線を外す
逆に浮いた…落第街の人間らしくない者にはじっとりとした絡みつくような視線を向ける

特に、特定の服装の人間に向けては、一歩前に歩み出て──

「──ねえ」

「……特務広報課の人?」

そう、声をかけては
違うとわかれば、背を向ける

「(……なかなか当たらないな)」

奇異の視線の中で、それを気にする様子もなく少女は佇んでいた

ご案内:「落第街 路地裏」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
芥子風 菖蒲 >  
漸く傷が治った少年の最初の任務は落第街の哨戒任務だった。
本当は私用で様々な違反者や事件の資料が見たかったが
退院後の状況確認で、自分の知り合いが落第街まで訪れていたことを知った。
風紀委員である以上、不思議な事では無い。だが、強制ではないはずだ。
そうなると、戦う気もない彼女がこんな"物騒な場所"に来たのが、不思議でたまらなかった。

「舞子、どうしたんだろ」

そう言えば、お見舞いに来た時ちょっと様子がおかしかったような。
心底見えずとも、人の機敏には敏い少年だった。
運が良ければかち合いそうだが、と思って裏路地を歩いていると
正面に見えるのは一人の少女。舞子ではない。
ただ、普通の少女が此処にいるとは考えづらい。
少年はてこてこ歩いて近づいてくる。

「ねぇ、何してんの?」

問いかける少年の腕には、風紀の腕章があった。

比良坂 冥 >  
「……?」

こちらに向かってくる人の気配に、スマホから視線をそちらへと向ける

「……何、ナンパ…?」

…見知った顔じゃないし。年下?に見えるくらいの少年
不躾に一言向けてから、その腕につけている目立つモノに気づく

「……あ、風紀委員だ」

のろりとした、ゆっくりの喋り出し

「……特務広報課の人?」

無表情だった少女は、ほんのりと期待を込めたような顔に変わって、少年にそう問いかけた

芥子風 菖蒲 >  
青空の様に青い両目を瞬かせて、不思議そうに小首を傾げた。

「ナンパ?ナンパ待ちだったんだ、アンタ。
 ごめん。どんな人間かも知らないし、興味無い」

バッサリと素気なく言い放った。
少年は恋愛事には疎いし、ましてや女性用の気遣いも乏しい。
歯に衣着せぬ物言いだが、それが返って悪意の無いものだと示している。

「そう、風紀委員。だからって、何かしようってわけじゃないよ。
 アンタが悪い奴なら話は変わるけど、住んでるだけの相手をどうこうしようなんて気はないし」

此処は一般的には空白か、ないし"歓楽街"だ。
そこの住民に理由なく危害を加える事があればそれは最早風紀では無い。
ただの違反者(はんざいしゃ)だ。少年は担いでいる刀、漆塗りの鞘でトントンと肩を叩いた。

「特務広告……?アンタ、アイツ等の知り合い?」

同じ風紀である以上、何度か聞いた覚えがある。
要するに、"ろくでもない連中"だって事は聞いている。
風紀の、よりにもよってそんな連中をご使命だ。内情は知らないが、少年は訝しげだった。

比良坂 冥 >  
「……違うけど。こういうトコで声かけてくるの、大体そうだったから。……デリカシーないね、君」

不躾な物言いはお互い様なのだけど、少しだけ口を尖らせてみせた

「……別に住んでないし」

制服だし、学生証みる?
と言われる前に取り出して提示
一応正規のもの
比良坂冥(ひらさか めい)という名前と顔写真、学年も記されている
風紀委員側の視点では少し特殊な監視対象ではあるが、その情報までは読み取れるかどうか

「……違うの。そう。
 ……知り合いと言えば知り合いだし、そうじゃないといえばそうじゃない。
 ……特務広報課の人は此の辺りで活動することが多いって聞いたんだけど」

なかなか会えないね、と少女は零す
期待の色が混じっていた表情は、すぐに無表情に戻ってしまった

「……むしろ君こそ知り合いいないの」

そうだ同じ風紀委員といえば風紀委員なのだから
訝しむような様子の少年を気にせず近寄って、その顔を覗き込むようにして問いかける
昏いくらい瞳が覗き込んでくる様子は、正直怖いかもしれない

芥子風 菖蒲 >  
「そうなんだ、大変だね」

一々あしらうのも面倒だろう。
その辺りは少し同情する。

「そう?だって、幾ら可愛くても初めて見る人間だし。
 ナンパとか興味ないし、第一アンタに興味を持てないよ」

同じ職場に人間やクラスならまだしも、初顔だ。
こういう機会や場所でなければ興味など抱くはずもない。
ある意味サッパリした物言いの少年だが、デリカシーの理解は実装待ちである。
提示された学生証は問題なさそうに見える。
聞き込みの基本は身分証明書だ。

「比良坂……冥?……なんだっけ?」

何処かで聞き覚えがある名前な気がする。
なんだっけ、薫と同じで何かの資料に。
まぁいいか、その辺りは後で確認するか、本人に聞くことにした。

「まぁいいや。オレは一人で仕事中。
 オレが相手をしたダス……なんだっけ?仮面をつけた違反者探し」

「無差別に暴れる奴みたいだから、早急に取り押さえたいからさ。
 あ、学生証ありがと。……知り合い?風紀には色々いるけど?」

それこそ色々良くしてもらっている。
個人だけで言えば、その恩義は大きい。
覗き込んでくる仄暗い視線に何の恐れも抱く事は無い。
映し返す青空は、ありのままに全てを受け入れるのみだ。

「そういうアンタこそ、なんで特務広告の連中さがしてるの?
 もしかして、誰か知り合い?アイツ等、風紀でもあんまりいい噂は聞かないけど、何かされた?」

純粋な心配だ。
感情の起伏は乏しいが、悪感情は少ない方だ。

比良坂 冥 >  
「……そう。はっきり言ってくれるんだね」

──全く知らず、なのだろうが
一切少女に対して興味を抱かないことは同時に抱かせない防壁にもなる
ある意味で"最も正しい"選択を少年はしていた
なぜなら、少女は裏切られることを何よりも嫌うから──

「……ダスク…? そうなんだ、お仕事、ご苦労さま。
 ……私は此の辺りに来たの久しぶりだから、全然知らないや。ごめんね」

学生証を返してもらいつつ、手がかりになるような情報は持っていないことを一応謝る
わざわざ足を止めて、時間を使わせているのだし
特殊な感情が働かなければ案外普通の気遣いのできる冥であった

「……特務広報課の知り合いはいないんだね。
 …………ん…。少し、その人達のことを知りたいなって思って…。探してるの。
 
 ……?
 よくない噂…?そうなの…?」

彼…理央は、大事な仲間だと言っていた
どういうことだろう
彼が大事だという仲間達は、なにかよくない存在なのだろうか──

芥子風 菖蒲 >  
「そう?そんなものじゃないかな。
 けど、これから仲良くなることもあるかもね」

初対面なんてそんなものだ。
お互い何も知らないのに、一目惚れなんてものは少年の仲では無い。
少なくとも彼女の事を知らないから、と言う事では無い。
性分だ。知っていても知らなくても少年の対応は何も変わらなかっただろう。

「ん、ありがとう。オレも犯人の名前は覚えきれてないんだけど
 危険な奴だよ。今も多分、落第街の何処かに居ると思う」

危険な太刀筋に危険な思考。
何より無差別に人々を襲うアイツだけは許せない。
あの男の事を考えると、無意識に柄を握る手に力が籠る。

「冥……だっけ?アンタはコッチに何回か来たことあるみたいだけど
 暫く控えた方がいいよ。今は……というより、今もだけど。危ない場所に変わりはないんだから」

彼女がどんな立場かわからないし、もしかしたら悪人かもしれない。
けど、それとこれとは別の話。危険な場所には立ち入るべきじゃない。
だから、しっかりと注意をする。仕事としてではなく、一人の人間として。

「ああ、オレばっかり名前知ってるのフェアじゃないよね。
 オレは芥子風 菖蒲(けしかぜ あやめ)。宜しく、冥」

「悪いけど、特務の方にはいないかな。……んー」

悩みの唸り声。
一拍子置いて、口を開く。

「オレはソイツ等の事を本当に全部知ってるわけじゃないし、噂話程度。
 特務広告部って組織、やり方が"危ない"連中でさ、特に神代理央って奴がヤバいって話」

「オレ達風紀は確かに、違反者(はんざいしゃ)や違反組織(はんざいしゅうだん)とは戦うけど
 『人殺し集団』のつもりはない。けど、アイツ等……理央って奴は特に、やり方がさ」

「"過激"なんだ。落第街に拠点を構える奴等ごと、住民を焼き払ってるって話。
 違反者からどう思われても、オレはどうでもいいけど。『住民』にとって"風紀の悪印象"を植え付けられてる気がしてさ」

「迷惑なんだ、ハッキリ言って。この前も滅茶苦茶言われた」

風紀委員は飽く迄秩序機関であり、違反者や違反組織を取り締まるだけであり
"殺害"や"抹消"を目的とした組織ではない。ましてや、"住民"を巻き込むなんてあってはならない。
その"住民"が本来認知されない二級学生であっても、そのやり方は好まれるものではなかった。
異能者同士の戦いは命の削り合い。"結果的"に犯人を殺害してしまう事もある。
だが、それは飽く迄『手を尽くしたうえでの結果』だ。誰も責める事は出来ない。
何より風紀としてでは、少年個人としてもそのやり口は好ましいものではなかった。
何処となく憂いを帯びた青空の視線。溜息をついて、漆塗りの鞘が軽く自身の肩を叩く。

「だから、オレは嫌いだな。アイツ等。
 もしかしたらいい奴かもしれないけど、オレにとっては迷惑な奴等」

「冥がどういう理由で知りたいかはわかんないけど
 あんまり関わっていい連中じゃないと思うよ。わかんないけど」

「というか、なんでそんな奴等の事知りたいの?」

比良坂 冥 >  
ドライな返答。この島で在った人達の中では少しだけ、特殊
言われてみればその通りだけど、なんだか意外だなと思った

「……おじいさんみたいに淡々としてるね、君」

そういう性分なのだろうけど、そう感じた

そして先述、口にした人物とこの場所の危険性を説かれれば、こくこくと素直に頷く
そういうことになってるとは知らなかったし、確かにそのほうがいいと納得する
じゃああんまり近寄らないようにしよう
でもそうするとどう探そうか、本庁に直接行っても、警戒されてしまうし

「──ん。よろしく…」

名乗られれば、小さな声でそう応える
女の子みたいで少しかわいい名前、と思ったけど口にはしなかった
気に障られるかなというのもあったけれど、それよりも

──その後に続いた一連の言葉が

"迷惑だ"
"嫌いだ"

そんな言葉が、まるで自分に向けられた言葉のように、突き刺さった

「………」

「……理央が…?」

ぽかんとした顔で、思わずその名前を口から零す
単なる噂への、にしては言葉が…リアル

少女にとっては理央は落第街でしか日銭を稼ぐ手立てを持っていなかった自分を救ってくれた人物で
その後も監視対象として同じ家に住まい…心体ともにその距離を縮めてくれた存在だった
彼が風紀委員で危険な任務についていることは、知っていたけれど
それを辞めてほしいと哀願した時、彼は大事な仲間のためにもやめるわけにはいかないと答えた

…結果、歪な少女の心は捻れた答えへと行き着き──

「……そうなんだ」

「……そいつらに騙されてるんだ。きっと…間違いない」

俯き、ぶつぶつと胡乱な言葉を呟き始めていた

芥子風 菖蒲 >  
「そうかなぁ……」

そう言われるのは初めてだった。
もしかして、皺でも出来てるのか。
ぺたぺたと自分の顔を触って確認してみると、15歳の肌は張りが良かった。
よし、一安心。ほっと胸を撫で下ろした。

「そうだけど?……、……」

彼女が神代理央にどんな感情を持っているかは知らないし
特務広告部の連中をどう思っているかは知らない。
ただ、何となく仄暗く重たい空気と声音。
なんだか少しばかり、嫌な感じだなとは思った。

ただ、それはそれだ。
徐に少年が伸ばした手は、彼女の顔。
抵抗も無ければ暖かな片手が添えられる事になる。

「……大丈夫?」

それはそれとして、何だか"思いつめる姿"に見えた。
そう言うのを放っておけるほど冷たい人間では無い。
相変わらず口元は一文字で、表情変化は乏しいけど、青空の双眸はじーっと相手を見ていた。

比良坂 冥 >  
伸ばされた手が少女の頬に触れる
暖かな手には、少しひんやりとした少女の肌
しかしそこに、熱い雫が零れ落ちる

「……そんなの、そいつらに理央が騙されてるに決まってる」

呟きは嗚咽混じりに、ぽろぽろと大粒の涙が零れていた

「……絶対そう。間違いない。
 ……だって理央は、此処で私を助けてくれた──」

無差別に焼き払う
そんな侵略者のような真似をする人間があんなに優しいわけがない
少女の中で、全て繋がった
それはぐしゃぐしゃの、糸くずのような繋がりに過ぎなかったが
"彼"が"大事"だという"仲間"は

"彼を騙し、利用する敵なんだと"

顔に触れる暖かな手へ、自身の手を重ねる
その手もやはり、ひんやりとして冷たかった

「……だからその噂、多分間違ってるよ」

底無し沼のように昏い双眼が青い瞳を吸い込むように見つめ返す
少女は、泣きながら笑っていた
──どこか異常さを感じさせる、ちぐはぐな感情の混ざった貌で

芥子風 菖蒲 >  
雫が少年の手を濡らす。
ぐちゃぐちゃになった感情が、少女の顔を歪めていた。
理央、と歎願するように彼女が呼ぶ。
あの特務広告部の神代理央に、強い思い入れがあるのだろう。
とても深い、底なし沼のような眼差し。見つめ返す、青空の両目。

「オレは実際にアイツ等が働いてる所を見たことないし、顔を合わせたわけじゃない」

「けど、"嘘じゃない"と思うよ」

如何にどうだろうと、"真実"だけは誤魔化してはいけない。
彼等の行いや正義を少年は知る由もないし、興味もない。
その行いを取り仕切るのが"神代 理央"と言うのは間違いないのだ。
何処まで言っても、少年はペースを崩す事は無い。
何処までも広い青空は例え、虚の底でも受け入れる。

「……けど、そっか。アンタ理央に助けられたんだ」

それでも、彼女の一言が心証を傾かせる。
鉄火の支配者とは無慈悲なものと聞いていたが、案外情はあるようだ。
重なる冷たい手を温めるように、もう片手も重ねた。

「どういう関係かは知らないし、興味も無いけど
 "騙されてる"だけで、此処迄の事はしないと思うよ」

「オレも詳しい訳じゃないし、そう言うのは本人に直接聞きなよ。
 それからどうするか、考えたら?今間違いだって決めつけて喚くよりも、良いと思うよ」

後をどうするかは当人たちの問題だ。
そこに関与する気はないし、興味もない。

「ていうか、冷たいね冥。寒いの?」

きょとんとした態度で尋ねた。

比良坂 冥 >  
「──じゃあ操られてるんだ」

鈍い喋り出しが饒舌に変わる
俯き、少年の手に重ねられた手に、きゅ、と小さな力が籠もる

「そんな非道い奴らの為に仕事をさせられて、利用されて。
 理央、可哀想。そんな連中を大事だなんて思い込まされてるんだ。
 だから私が辞めてって言っても、そうなんだ。そう。
 どうしよう、どうしてあげればいいのかな。非道い。優しい理央にそんなことさせるなんて非道いこと。
 そんなことするやつ人間じゃない。悪魔。悪魔はどうしよう。
 追い払う?追い払ってもまたやってくるかな。じゃあ─── ……?」

ぶつぶつと少女は俯いたまま言葉を零していたが、かけられた言葉に前を向く

「……私、冷たい?」

自覚はなかったようで、言われてみれば少年の手がとても暖かく感じていた

「……ずっと、此処に立ってたからかな」

薄暗くなってくれば冬風も冷たい、制服だけの恰好では当然冷える
鈍感というか、言われてはじめて気づいたことで、薄暗い思考が瞬断されていた

芥子風 菖蒲 >  
「……何言ってるの?」

何を言っているんだ、彼女は。
それは一種の"盲信"めいた感情だ。
余り覚えていない、思い出したくない昔の記憶に覚えがある。
ああ、そうだ。"信者ってこういう顔をしていた"。
過去の不快感と合わさった少年も、流石にこれには顔を顰めた。

「少なくとも、優しい奴でも人は殺せるよ」

人間は多面性。それだけが全てじゃない。
彼女にとっては優しい神代理央も、此方ではそうじゃない。
詳しい事情を知っている訳では無いけど、そういうものだって、知ってる。
知りたくはなかったけど、彼女の態度に"嫌な記憶"が刺激された。

「…………」

と、思ったら打って変わって随分と態度が変わった。
なんだか不安定な子だなぁ、と少年心なりに思う。
それはそれとして、その冷たい感じは同じくして似たような少女の姿を連想させた。

「ん」

ふに。とりあえず頬を突いたり、手は添えたまま。
寒いというなら、幾らでも自分の熱を分けてあげよう。

「じゃぁそろそろ帰る?送ってくけどさ。
 とりあえず、神代理央とは、アンタが話しなよ。特務の方は…………」

多分、放っておくと何かやらかす。
風紀が動く事態になりかねない気もするので、仕方ない。
此処は人肌脱いでおこう。

「オレが何とかするから、任せて」