2021/12/26 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に八ツ墓千獄さんが現れました。
八ツ墓千獄 >  
───人影は、物一つ言わず倒れた

物音すらなく陰る月明かりに舞い散る雪の下、赤い紅い鮮血が路地に溜まり、くすんだ赤い月を映す

「これくらいでは物足りませんか?」

何かに問いかけるように女は呟く
その手に握る、朱の滴るしろがねの刃にそっと頬を添えるようにして

そうすれば何かが聞こえるのだろうか
奇異な行動をさも自然と、女は惨劇の場に佇んでいた

八ツ墓千獄 >  
刀剣を狩るが如く現れ、そして奪い去る黒衣の女の噂は
此処落第街においてもまだ眉唾なものだった

頻度も薄く、狙いもそう多いわけでもなく
そして生き残った被害者がいないこともそれに拍車をかけ──

女の存在、その噂の拡がりを遅らせていた

刀剣の持ち主しか狙わない───それは嘘ではない、しかし

八ツ墓千獄 >  
「……もう少し、斬り遊ばれますか?」

刃に女は問いかける
そこに人格が、返答があるかのように
そしてその声を聞いているかのように

女は、我欲のために刀剣の所持者しか狙わない
そこに嘘はない

しかし

刀とは人を斬るためのもの、殺人の為に磨かれし史上の美
故に、その美しき姿を、愛でるべき存在を悦ばせるため、女は人を斬っていた

愛しきものが人の血を求めるならば、自身の欲など───二の次となる

八ツ墓千獄 >  
「───そうですか。では、参りましょう」

そっとしろがねの刃に唇を落とし、音もなく、納刀する

「…そういえば聖夜で御座いましたね。
 遅れ馳せながら、ささやかなプレゼントをバラ撒くのも良いかもしれませんねえ」

いつしか月は黒雲へと隠れ、落第街を闇に落とす
切れかけた街灯がちらちらと粉雪を照らす中、口元を笑みに歪めた女は闇の中へと姿を消した

ご案内:「落第街 路地裏」から八ツ墓千獄さんが去りました。