2022/11/12 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に言吹 未生さんが現れました。
■言吹 未生 > 罪人は大別するに当たり、およそ2種類に別たれる。
やむなく罪に手を染める者と、敢えて罪を犯す者だ。
その観点からして、今現在少女の目の前でナイフを握り締め息を荒げている制服姿の少年は、まず間違いなく前者だろう。
人気のない裏道――敢えてそこを選んで徘徊していた矢先。
目の前に立ちはだかられた折は、すわ薬物中毒者かとも思ったが、眼光にそれ特有の凶輝がない。
紋切り型の脅し文句もなければ、気狂いが人に刃物を向けるに当たっての何呉とした口上もない。
何かにひどく切迫した――まさしく、何某かのやむなき事情を秘めた、どこか悲愴な表情。
「――ふむ」
首を傾げてやや仰望。少年の方が背は高く、しかして痩せっぽちの体格は同類であった。
何より、目の周りや口の端に青ずむそれは――間違っても化粧の類ではない。
■言吹 未生 > 事の推移を斟酌しようにも、生憎少女はセラピストではないし、その心得もない。よって――
「疲れてるようだね――《眠りたまえ》」
直截的な手を取る事にした。
柔らかな言霊に意識を圧し包まれ、少年は抵抗する暇もなく地面へと崩折れる。
まどろみに落ちる寸前、少年の表層意識から拾い上げた記憶の断片。
――不良生徒らからの幾度にもわたる暴力と恐喝。
提示された抜け道。『仲間』になる儀式。
殺しのイニシエーション――。
それらを思考の石臼に挽き転がしつつ、ナイフを拾い上げる。
「…友人は厳選するべきだよ。君を映す鏡ともなる」
聞こえはせぬ忠言を少年の耳元にぽそりと落として、歩み始める。
事が成った暁のランデヴー・ポイント。
記憶から読み取っておいた、その場所へと。
■言吹 未生 > 昼なお暗い裏道のどん詰まり。
くたびれ色褪せた壁には、それと相反するビビッドな色彩のグラフィティが蟠踞する。
掃き溜めの見本とも言うべきスポット。
そこへ更に生きた彩りを添えているのは、少年の記憶と合致する不良生徒3名。
足元に転がる空き缶や吸い殻が、退廃的な生活感を加味している。
『あ゛ぁ――?』
三対の濁った目と誰何の声が、踏み込んだ少女へ無遠慮に向けられる。
足元から顔へ。それから――左手に持つナイフ。
青ちょびた“エサ”に戯れに渡した、儀式の道具。
それへとフォーカスし、“それ”を闖入者たる少女が持つ意味を、彼らなりに思考して、
『――ッギャッハハハハ!!』
爆笑が三人分。
半包囲の形を取る壁面に反響して、けたたましくどよめき散らした。
『し、信じらんねー! こんなチビッコにやられてやんの!』
『なー!? だぁら言ったじゃん、ムリくさくね?って』
『つかマジでヤりに行ったのかよアイツ? ねーわー、二重の意味でねーわー』
げたげたと嗤う三人を、白皙は不動のまま眺める。