2020/07/24 のログ
ご案内:「スラム」にさんが現れました。
ご案内:「スラム」にアールズアーズアースさんが現れました。
> 「んー、と、じゃあおはなししたら、つよくなる?」

小首を傾げ、距離を保ちながら

アールズアーズアース > 「え、ええと、つよく?」

よくわからない。
つよいにはなにか知らない意味があるのだろうか

> 「アールおねえさんはかわいいによわい、から、かわいいにつよくなる!」

幼女はとんでも理論を繰り出した

アールズアーズアース > 「あ……その、弱いって言うより、単に好きすぎるだけで……」

別に弱いわけではない。
尊みが溢れすぎて耐えられないだけだ。

> 「にゃあ」ようじょはねこのまねをしはじめた

招き猫のようにゆびをまげて、にゃーにゃー言い始めた

アールズアーズアース > 「え、いや……なにを?」

突然のねこ動作にうろたえる。
というか、どうしていいかわからない。
そもそもそういった突拍子もない時の対応はあまり良く知らない。

あと、可愛いがすぎるので色々と目を背けたくなるので困る。

> 「ねこさんのまね!」
にこー

「ねこさんはかわいいからかわいいにつよくなるれんしゅーになるかなって」

「にゃー」
頭に手をやってねこみみ、だろうか?

アールズアーズアース > 「や、その……無理、コレ以上無理、死んじゃう」

あああ、あまりにもかわいいが過ぎるのでは?

思わずどうしていいか全く把握できなくて宇宙的に固まった。

あー無理。
もう無理。

これ以上、その笑顔に耐えられる気がしない。

今日はもうこれでお腹いっぱいな気がする。
つらい。

っていうか死ぬ。
3回ぐらい死んだ。

「次……こんなのされたら。外見維持できなくなると思う……」

> 「んー、きょうはここまでだね?」

猫ポーズ解除して

「アールおねえさん、しんこきゅー、すー、はー」

おーきく手をあげて深呼吸のポーズを

「だいじょうぶ?」

アールズアーズアース > 「だいじょうぶじゃない……」

深呼吸で直ってくれたりはしない。
副交感神経をそこまで再現できてない。

でも、期待されてしないわけにも行かない。

かわいくてつらいのでつらいので笑顔でいるのがせいいっぱい。

> 「んー、もうすこし、がんばりましょう、だね?」

あははとわらい

「んー、むずかしい?」

首を傾けて

アールズアーズアース > 「……」

こくこく。
必死に頷く。

ああ、幸せすぎてどうしたらいいのか、これ。

しかも他の誰かじゃなく、私だけに向けられているとか。
あまつさえ半ば正体まで知られていて、止める材料どころか止まる材料もない。

……ニンゲンはこういうとき、飲み物を飲んだりするのよね、たしか。

> 「んーと、えーと、アールおねえさん、つぎはいっしょにおさんぽとかしよ?」

にこーと無邪気な笑顔で

アールズアーズアース > 「……あ、あ」

やばい、聞いただけでちょっと壊れそう。
おさんぽとか、どう考えても尊さ炸裂で可愛さオーバーフロー案件である。

「ちょ、……と待っ………………無理、嬉しいけど無理。
 聞いただけで壊 れ そう」

ああ、声が乱れてる。
こんなの弾けそうでまじツライ。

> 「えーと、だめ?」

ちょっとまだはやい?みたいな顔をして

「アールおねえさんはともだちだから、いっしょにおさんぽしたいなーって」

ちいさな願望を口にした

アールズアーズアース > 「う、ぁ……あ…………」

そんなの感動でどうにかなりそう。

きっと変な笑顔のまま固まってるだろう……ああ。
ただでさえともだちなんて向こうから言われた上にそんな神みたいなことをしたら……触れただけでどうにかなってしまいそうだ。

ちょっと嬉しすぎて形を保てる自信がない。

> 「えーと、アールおねえさん?」

くきりとだいじょうぶかな、と固まってるおねえさんを見ながら

「どうしよう?」

アールズアーズアース > 「……だいじょうぶ、とりあ、えず」

危ないところだった。
人間なら死んでた。
心臓動かすのもできなくなったくらい危なかった。

「あまり、やりすぎると……本当に壊レ……る」

それにここは店だ。
流石に、いい観察場所を失うどころか、怪異として狙われるのは避けたい。
怪異を狙う人間の目はそそられるものはあるが、他の表情が見れなくなるのは困る。

> 「あー、えと」

あんまりよらないように気をつけて。

「なら、ええと、けーたい、ええと、しゃしん、とる?」

携帯を取り出してとなりに並ぶ

アールズアーズアース > こくこく。
強く頷く。

とりあえずあまりの衝撃に、話すリソースをなんとか行動に回してから落ち着くまで待つ。

神対応すぎてつらい。
食べちゃいたくならないか心配になるくらい。

「わた し……くずれてない、だいじょうぶ?」

たぶん大丈夫だと思いたい

> 「だいじょうぶ、アールおねえさんはかわいいよ」

並んでぱしゃり、と笑顔で携帯で二人並んだ顔で

アールズアーズアース > つらいながらもなんとか整える

自分の醜い姿を晒すのはすこし邪魔な気もする。
が、それはそれで望まれたとあっては欲求に逆らえない。

こんな写真など取る機会は二度と訪れないかもしレない

ああああああ。

なんにせよ、それなりになんとかなった、と思う

> 「ん、えーと、あ、アールおねえさんはまさか、けいたいない?」

あ、しまった、と言う顔に

アールズアーズアース > 「ああ、携帯は大丈夫だけど……」

こういう場所なので、相応の手に入れ方がある……が

「アプリとかはわからない……」

そう……通信する相手がいない。
そもそも、そこまで余裕がない

ネットも怖くて見る一方だ

> 「なら、わたしとこうかんしよ、しゃしんとかでんわおくれるし!」

無邪気にいった、アプリもインストール済みのお子様携帯を見せながら

アールズアーズアース > 「こうかん?」

きょとんとする。
電話番号を教えたこともなければ、メアドやSNSのアドレスを誰かと教えあったことがない、一切ない

だから、交換、と言われても何を交換するのかよくわかってない

アールには、スマホは通信機器でなく、ネットを見るための道具という感覚しかない
それ以外に使ったことがないので他人がどうしているかをよく知らない

それが……夢に憧れたような、文献などで知る「交換」だと、まだよくわかっていない

> 「でんわばんごうとか、めーるあどれすのこうかん?」

首を傾けて

「でんわとか、かけれるよ?」

アールズアーズアース > 「え………………あ!?」

あああああああ。
また溶けそうになる。

なんだ、なんだそれ。
夢にまで憧れたシチュエーションじゃないか。
いいのかそんなコト。

幸せすぎてどうにかなりそうだ。
次に出会うときには場所を考えたほうがいいかもしれない。

「……あぶなかった。溶けるかと思った わ……」

ご案内:「スラム」にさんが現れました。
> 「アールおねえさん、だいじょうぶ?」

くきりと携帯の赤外線機能を使いながら

アールズアーズアース > 「次は、その……崩れてもいい場所のほ うが お互い楽かも」

命がいくつあっても足りない。
今日だけで人間なら14回くらい死んでる。

そもそも、私に血なんかないんだから、心臓を動かすだけでもけっこう大変なのだ。
それがこんな衝撃を一日に何回も受けたら、思わず止まってしまう。


「どうや……るの?」

赤外線とかよくわかっていない

> 「ちょっとろじうらとか?」

危ないがアールおねえさんも危ないので仕方ない、そうしよう

「えーと、アールおねえさんの携帯を、こう」

ぴろん、とアドレスの交換が終わり

「ちょっとかけてみるね?」
アールズの携帯が揺れ

「もしもしアールおねえさんですか?」

アールズアーズアース > 目の前で着信している、電話が鳴っている。
あまりのことに目の前がゆらぎそうだ。

赤いボタンを押す。

「あれ?」

切れてしまった

> 「あ、アールおねえさん、きれちゃった」

しゅんとしながら

「あおいぼたんだよ?アールおねえさん」

ようじょは近づいて密着して、後ろから教えてきた

アールズアーズアース > 「ああ、大事な赤じゃなくて、中止の赤のほうね、なるほ…………ど?」

あああああヤバイヤバイヤバイ、触れてる触ってるくっついてる!?
ひどくない!? 致命傷ひどくない?

「ご   め…………ん。
 こころのじ ゅん び  が、あぶな
                    い」

大急ぎで飛び退いて、感触だけでも外す。
今本当にすこし危なかった。

> 「あああごめんなさいアールおねえさん」

こちらも距離を離す

「だいじょうぶ?」

しゅんとしてしまいます

アールズアーズアース > 「とり
  あえず

 嬉しす ぎておかしくなりそ
            う だ
       から今日はこ の辺で」

声が裏返ってる。
しばらくしないと落ち着かない。

うまく声を出すのは何年経ってもむずかしい。

なんとか外見だけでも整える

> 「うん、またでんわとかめーるするね」

ピロン、とさっき撮った写真が通話アプリで送られてきた

アールズアーズアース > 対応してやりたいが、こちらがそれどころじゃない。
こんな好意を向けられたら本当におかしくなってしまいそうで。

持流のときですら大変だったのに、そんなのが連続で起きてしまうと流石にマズイ。

「……いま見 たら
      ちょっとあ
       ぶ  な

           いか ら」

なんとか耐える。
期待感だけでもう、手いっぱいだ

これ以上は本当にマズイ。

なんとか、お金をおいてその場を後にした

> 「ばいばい、またね!アールおねえさん!」

手を振ってまたね、と

ご案内:「スラム」からさんが去りました。
ご案内:「スラム」からアールズアーズアースさんが去りました。
ご案内:「スラム」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 廃材置き場に隠れるようにして、人知れず事切れた少女があった。
ヨキの目の前で、目を剥いて泡を噴きながら死んだ少年があった。
やっぱり死にたくない、と泣きじゃくってヨキに抱き着く者もあった。

ヨキが目の当たりにした『トゥルーバイツ』の面々はさまざまな結末を迎えていた。
さまざま、といっても、『真理』と接続して命を落とすか、その願望を放棄するかのどちらかであったけれど。

ヨキはそのいずれもを肯定した。
ヨキはそのすべてを否定しなかった。
ヨキはそれら誰もに優しい微笑みを向けた。

死んだ少女の遺体を隠した。
死んだ少年の瞼を閉じさせてやった。
諦めた者たちを優しく抱き留め、その背を撫でてやった。

同じ顔、同じ手、同じ声で。

ヨキ > ヨキは感心していた。
これなら壊滅を免れる。生きたいと願う者にも選択肢がある。

日ノ岡あかねの統率だから、さほど大事にはならないだろう。
風紀委員会の傘下であるから、きっと大事にはならないだろう。

なるほどよく出来た計画だ、と、ヨキは心から感心していた。
惜しむらくはひとつだけ。

「これが授業の課題であったら、さぞ良い点を取れるだろうにのう」

煙草を手に、ぽつりと呟く。
ヨキは今、打ち棄てられたバラックに凭れて一服していた。
単純に、『トゥルーバイツ』の消息を追って歩き回る最中の一休みだ。

ご案内:「スラム」に羽月 柊さんが現れました。
羽月 柊 >  
ヨキの視界の端に、黒が生まれる。
白を2つ連れた、黒が。

異世界とは違う、この世と少しだけズレた場所。
妖精が使う道だとか言われている、"あちら側"の道。

色々な種族と共存するこの常世島にも、そういう道は無数に点在している。

黒であった男は以前ヨキとこちらで逢った時とは違い、
竜の仮面を被り、表情を簡単には読み取れない。


男がここに来た理由もまた、『トゥルーバイツ』であった。

一度その『真理』による死を目撃してから、
自分の中で騒ぐ心のまま、それを無視することも出来ず、
落第街のこんな深い所にまで来てしまったのである。

死にゆくモノを止められる程自分に熱は無い、けれど、何かがしたかった。


「……君は。」

通りすがりにヨキを見つけ、目的の無いまま歩く足を一度止める。

ヨキ > ふっと紫煙を吐き出す。
煙草持つ手を下ろし、黒い人影へと目をやる。

「やあ」

仮面の奥の眼差しを見定めようと、碧眼が真っ直ぐに柊を見る。

「――こんばんは。羽月か。
今宵もまた暗がりで会ったな」

バラックの壁から背を離す。
背中に付いた白っぽい土埃を、トップスの裾を扇いで払い落とす。

「今日はどうした? 声に元気がないな」

羽月 柊 >  
仮面の奥の桃眼は視線が定まっていなかった。
落ち着きが無い。足を止めていても、思考は忙しなく絶えず言葉を産み出し続けていた。
以前の男ならばきちんと視線と視線を交わせていたはずだ。

「こんばんは……今日のここは少し、騒がしいが。」

歩み寄りはするだろう。

ただ、男の立つ姿もどこか、"止まっていられない"と訴える。
肩幅に開いた足が、落ち着きの無いなにかしらの動きが。

答えの見つからぬ、答案用紙を眺めるように。

「………近日に色々あったばかりでね。
 君は今日も生徒回りか。」

ヨキ > 「この街が静かなのは、寝静まった日中くらいだろう。
ああ、今夜も教え子を訪ねて回っておるよ。
この街にあっては、平穏な暮らしも保証出来ぬゆえな」

漠然と柊を見る。
柊の全身を見る。
身体中のパーツを見る。

「……色々、とは何だ。
そのために落ち着いては居られぬか。
どうだ。何があったのか、ヨキに話してみては?
少しは気持ちも楽になるやも知れんぞ」

羽月 柊 >  
柊の言葉は、水をなみなみと注いだコップのようだった。
表面張力で持ちこたえているように、
自分で揺らぎを与えるまいと堪えるように。

叫びたい訳ではない。

ただ、いつもならすぐ見つかるはずの答えが見つからない。


「………ああ、そうだな。
 夜の方が、ここのモノ達には適した時間だったな。」

騒がしい。

けれど、ただ死ぬモノが少し増えただけだ。
本来なら、柊には雑踏だったはずだ。

けれど、騒がしい。

「…そんなに俺は落ち着きが無く見えるか。」

自覚はある。

「……昔起きたことを少々、強制的に思いだす羽目になった。」

ヨキ > 「ああ。付き合いは浅くとも、どこか動揺しているように見える。
君の息子と同じだ。心なしか危うく、覚束ない――そんな風に」

泰然と立つ。
揺れているのは、ただ黒髪だけ。

「……ふうむ?
その口ぶりから察するに、良い思い出ではないようだな。

『この街で』何を見聞きしたかを、掻い摘んで話したまえ。
人の悪しき思い出を、隅々まで掘り起こす趣味はないからな」

話の続きを促す。

羽月 柊 >  
「…そこまで自分は"落ちて"いるのか。」

思考することを辞められない。
常に色んな事を考え、それを自分で却下し続けている。
余裕の無くなったモノの一部が一様に辿り着く様相。

遠くで聞こえた話し声に、それだけで、桃眼は滑稽な程に躍る。


男はポケットの一つから、とあるモノを取り出す。"デバイス"だ。

ヨキが見送った、見届けた、隠した、保護した……。
そのモノ達のいずれもが、手にしていたのと同じデバイス。

『トゥルーバイツ』が、『真理』を聞くための"窓"。

「……これを使う場面を少々、見てしまってな。
 "違反部活"の品だが、どうにも無視できずにこのザマだ。」

ヨキ > 「さあ。ヨキは君のことを深くは知らぬ。
見て感じたことを口にしただけのこと」

肩を竦め、首を横に振る。

それから、柊が取り出したデバイスを一瞥し、相手の顔へ視線を戻す。

「……ほう? 目の前で、人が死ぬところを目の当たりにしたか」

迷わずそう口にする。
何のための道具か、それによって何が起こるかを、すべて承知している顔で。

「この街へ出入りする以上、そういった事態には慣れていると思っていた。
……そうか、それが君の“悪しき記憶”のためか」

目を細める。
眼鏡の奥で半眼になると、夜のか細い光を照り返すこともない。
ただただ昏い紺碧が、柊を見ている。

「それを『無視できない』というのは?
持っている者を見つけ、止めるつもりか?」

羽月 柊 >  
「……さすがは先生、良く知っていらっしゃる。」

息を一度吸って、吐く。
皮肉にも聞こえたかもしれない。

視界の煩わしさに仮面に手をかけ、外す。
薄暗いスラムの中露わになる表情は酷く、苦かった。

「そうだな、自分でも慣れていると思っていた。いいや、思っている。
 正直自分でもどうかしていると思っているぐらいだ。」

デバイスを僅かに軋ませるように握るも、それを壊すことはしない。
壊すことは出来なかった。

柊の瞳で咲く夜桜は、風に吹かれ花びらを散らす。
無数の言葉という花びらを落としても、答えは見つからない。

自分の足元に、花びらは降り積もる。

「……わからん。これを見つけた時、もう一人に言葉はかけた。
 だが俺には、彼らを止められるとは思えなかった。

 思いだした過去の全てが悪しきなら、
 何もかもをかなぐり捨てて止められたのかもしれん。
 だが俺にとっての過去を、彼らを代わりになどと無礼も過ぎる。

 ……それでも、無視しきれない。」

傍らの白い相棒たちは、そんな柊を止めなかった。

ヨキ > 「……………………、」

柊の言葉をじっと聞く。

「……その道具が何をするためのものか、君は知っておるか。
異界の『真理』を訪ね、それに接続するためのものだ。

何故彼らがそれを手にしたか、知っておるのか。
彼らにはこの世界で叶うべくもない『願い』があるからだ。

彼らがそれを手にするまでに、いかなる道程を経たか、知っておるか。
君が『慣れている』と簡単に言い切ったことと、紙一重のあらゆる手段だ」

淡々とした声で話す。

「君はよく判っているようではないか、生半可に立ち入ることが『無礼である』と。

無視しきれないのは何故だ。
失敗すれば命を落とすからか? 異界のものと接触するからか? 命を懸けた悲願を、埋めるほどの手があるからか?

ヨキは夜ごとこの街をくまなく回ってきた。
彼らが命を懸けるほどの手段を試したように、ヨキもあらゆる手を尽くして彼らと触れ合った。

それで、君は?

『無視しきれない』という言葉だけで、彼らの覚悟に立ち入ろうというのか?」

羽月 柊 >  
  
「……………、……。」

口が、開いても、言葉が、紡げなかった。
 
 

羽月 柊 >  
 羽月 柊は、何もかもが半端だった。

 何をしようにもだ。

だからヨキの今の言葉に咄嗟に言い返せなかった。
何を考えても、言い訳じみて口から産み出せなかった。

大人だから理解してしまう。自分がどれほど卑怯なことを言っているのか。

ヨキ > ヨキの瞳が。
柊をじっと見ている。

その目には温度がなかった。
そこには怒りも、落胆も、悲しみもなく。

ただ柊を見ている。

煙草をひと吸いして、まだ半分近く残ったそれを携帯灰皿へ押し込める。

「――羽月」

低い声が、相手を呼ぶ。

「彼らを少しでも止めるつもりがあるなら、『己の内側』ではなく『相手を見ろ』。

それが出来ぬなら。
自分自身の感傷が心の多くを占めているのなら。

後ろ髪を引かれようともはらわたが捩じ切れようとも、一切合切手を引け」

歩み寄る。
間近で向かい合った相手を、見下ろす。

「己の無礼さを自覚する理性があるのなら。
彼らを無視しきれないという慈悲があるのなら。

子どもたちと、傷付け合ってでも立ち向かえ。

それが大人の役割だろうが」

羽月 柊 >  
相手が近くに来たことで、漸く視線が定まる。

自然と相手を見上げる形になる。
ヨキの背負う月明りに僅か眼を細める。

「………ッ……。」

唇が何度か音を出そうと動く。

「……だが、」

必死に繋いだ音は、酷く、酷く、稚拙すぎる。


「"今更"、彼らと向き合うのに何が出来る……!!!」


大人と言われた癖に子供のように。


 コップの水が、零れた。


手を引けるモノなら、持っているモノ全て放り出してしまえば良かったというのに。
手を引けないでここにいる。

最早『トゥルーバイツ』の計画は実行されてしまっている。
遅すぎる、何もかもが遅すぎる。

ヨキ > 「『今更』、か」

ふっと笑う。
大きな口が、三日月のように笑みのかたちを作る。
獣めいた牙が並ぶ口。

「君とはもしかすると、いい『同僚』になることも夢ではないと思っていたが……。
そうか。残念だ」

浮かべた笑みは、すぐに消える。

「……羽月よ。
彼らはな、『成功率一パーセント』のために命を懸けておるのだぞ。

ここで立ち止まっている君は、やりもしないことに百パーセントの失敗を見出しておるのか?」