2020/11/17 のログ
ご案内:「スラム」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 >
今宵も、特務広報部は精力的な"狩り"を続けていた。
漆黒の装甲服とガスマスクを装備した隊員達が住宅に押し入り、ある筈の無い身分証を提示する様に求め、身分証を持たぬ者を連行していく。
抵抗した者は良くて取り押さえられて連行。抵抗を止めない者は、隊員達が持つ機関銃の銃弾の餌食となっていった。
極稀に、身分証を持つ生徒が――好んでこの地域に住む者が、身分証を提示した上で活動に抗議する一幕もあったが、慇懃無礼な態度で半ば連行される様に一度安全な場所へと連れていかれるのだろう。
それでもその扱いは、身分証を持たない者達とは雲泥の差ではあるのだが。
「……バリケードや障害物で任務の遂行に不自由する時は、私に連絡する様に。指定座標に砲弾を叩きこむ。巻き込まれる愚か者がいない事を願いたいものだな」
そんな集団の最奥。
親衛隊の如き大楯の異形に守られた少年が、通信機に淡々と言葉を発しながら、懐から取り出した煙草に火を付ける。
日本本土から輸入している高級煙草。吐き出した甘ったるい紫煙は、此の場所に似合わない。
ご案内:「スラム」に池垣 あくるさんが現れました。
■池垣 あくる > 「……」
ぽやーっとしつつ、スラムを散歩もとい警邏していたあくる。
今日は静かだなあ…くらいに感じていたのは、どうやら嵐の前の静けさだったようで。
――機関銃の音、怒りや嘆きの叫び、異能の炸裂する音。
戦場の音が、聞こえてくる。
それを受け慌ててそちらに向かう。抗争ならば場合によっては介入しなくてはならないし、風紀が戦っているなら支援しなくてはならない。
槍を手に持ったまま、現場に到着すると……
「あら……先輩?」
恩人でもある先輩が、その指揮を執っていた。
風紀とみて襲い掛かってくる者を軽く石突で小突いて倒しながら、そちらの方に駆け寄っていく。
「今日も、お仕事、ですか?」
■神代理央 >
此方に駆け寄る足音と、投げかけられる言葉。
その声には良く聞き覚えがあるし、襲い掛かるゴロツキを容易く倒す槍術の使い手ともなれば、心当たりのある人物はそう多くはない。
「……池垣か。見ての通りだ。スラムの連中は、刈り取っても刈り取ってもキリがないからな」
チラリ、と少女を一瞥した後、隊員達が暴虐を振るう前線へと視線を戻して、煙草を咥える。
「お前は警邏任務か。ご苦労様、と言いたいところだが、此の区域は我々特務広報部の任務区域だ。
面倒事に巻き込まれる前に、撤退した方が良い。我々は、此処の住民から恐ろしく受けが悪いからな」
小さく肩を竦めつつ、少女に視線を向ける事無く呟いた。
正直に言えば、多少バツが悪い、というか。後ろめたいところではあるのだ。
落第街から風紀委員へ引き抜いた少女に、こうして弱者を踏み躙る光景を見られる――というのは、居心地が悪い。
それに、純粋な槍の強さを求める少女を、こういった任務に巻き込みたくはない、と思わなくもない。
それ故に、些か素っ気ない態度にて、少女に応えるのだろうか。
■池垣 あくる > 「特務広報部……はて?」
そんなものあっただろうか…と記憶を呼び起こし、そして、ああ、と頷く。
最近そういったものが立ち上がった、と他の風紀委員が言っていたのを聞いた記憶があった。
事実上の主戦派、派手な活動により風紀の持つ威を喧伝し、結果として風紀という存在を『広報』する、みたいなことを言っていた気がする。
通常の風紀に比べ血生臭く、そして極めて攻撃的な部署だ。
だが、そんなことよりも。
「その、先輩……お手伝いさせて、いただけませんか?ええ、ご迷惑でなければですが……そういうお仕事には、この槍は、使い物になるかと思います、ので……」
恩人がその指揮を執るのならば、その下で槍を振るいたい。手助けをしたい。
そう思い、やや縋るように提案する。
ご案内:「スラム」に虚無さんが現れました。
■神代理央 >
何となく、少女がそう言うであろうと思っていたが故に、その表情を向けぬ儘、小さな溜息と紫煙を吐き出した。
少女はどうにも、己に対して恩義とか尊敬とか、そういう念を抱いているのは流石に分かる。
だからこそ、己が率いる部隊の姿を見れば、そう言うだろうとは思っていた。
――だから、出会いたくは無かったのだ。
「…迷惑だ、とは言わぬ。しかし、特務広報部の活動は決してお前の求める様な"武"や"強さ"を得る為のものではない。
大抵の場合、敵は弱者だ。大凡の場合、向けられるのは凄まじい憎悪だ。
それは果たして、お前の求める事なのかな、池垣」
甘ったるい紫煙を煙らせながら、相変わらず少女に視線を向けずに――静かに尋ねた。
■虚無 >
ある種異常な光景かもしれない。この破壊の中、殺戮の中悠然と歩いてくる姿。
だがその風貌は風紀というわけではない。むしろその逆明らかに黒側の人間の風貌。
「本当に何度も何度も飽きもせず醜い狩りをするものだ……」
ルール違反かもしれない。だがだとしてもこれ以上見過ごす事は出来なかった。取り押さえようと迫った一人の隊員が取り押さえようと触れた瞬間。
「触れるな」
キィンという甲高い音と共にはるか上空へと打ち上げられ墜落。のたうつそれをそれを踏みしめ。
相手をしっかりと見据える。
「新しい隊員も増えたらしいな鉄火の支配者。まぁ結果は変わらないが」
近くに立つ少女諸共見据えるとゆっくりと手を出す。
「警告じゃない、これは命令だ……今すぐ部隊を引き上げろ。敗北で撤退などなりたくはないだろう。言っておくがこんなこけおどし集団で俺は狩れないぞ」
■池垣 あくる > 「私が求めるのは、確かに、強くなることです。ええ、この槍を磨き上げ、至高の域に届かせることです。
ですが、それと同じか、それ以上に……」
ぎゅ、と胸の前で槍を抱く。
とくんとくんと心臓の鼓動がするのを感じる。
――朧車と戦った際、槍がとても軽くなった。軽く、速く、そして鋭くなった。
あの感覚の原因は、はっきりとはわからない。けれど……その時と同じような暖かさを感じれるのは。
「――先輩の槍として、戦いたいのです。貴方に励まされ、叱咤され、戦ってみたいのです。前そうさせていただいたとき、今までになく、槍が走りました、心が、踊りました。
信じて、ください。頼って、ください。それに応えます。それをこの槍に、乗せて見せます。その方が……私は多分、強くなれると、思うので」
そう言って、闖入者に向け、槍を向ける。
凄絶な槍圧を放ちながら。
「ですので……襲い来るというならば、お相手、仕ります。神槍『天耀』の冴え、ご覧に入れましょう」
■神代理央 >
彼女の言葉に答える前に、前線で起こる異常。
装甲服を纏う隊員が、いとも容易く吹き飛ばされた。
訓練の足りない隊員では、装備を多少豪華にしたところで無意味だったか、と嘆息。
「……お前を隊員に迎え入れるかどうかは、取り敢えず後回しだ。先ずは、眼前の"敵"を迎え撃つ事に注力しなければなるまい」
ぱちり、と指を鳴らす。
展開していた多脚の異形達が、スラムに向けて掲げていた無数の砲身を、金属を軋ませながら闖入者へと向ける。
大楯の異形は、少年を守る様に巨大な盾と化した両腕を振り翳した。
「……私の槍として戦う事が、強くなれると思うのなら。
その力、私に見せてみろ。お前の力を私に示せ、池垣」
少女に視線を向けて、尊大な声色で言葉を投げかけた後。
その視線は、歩み寄る闖入者へと。
「……という訳だ。元より、学園の執行機関である我々が、溝鼠の命令を受ける謂れなど無い。
退いて欲しければ――力尽くで押し通ってみる事だな」
傲岸不遜を絵に描いたように、ゆるりと笑みを浮かべてみせた。
■虚無 >
「力の振るい方を間違えている……その者を思うのなら。なぜ止めないなぜこれを当然と受け入れる。たしかに摘み取るしかない悪もあるかもしれない。だが無差別に行われるこれが正しいなどと本気で思っているのか」
槍圧に耐えながら、眼前に立つ少女に声をかける。
こんな事間違っているとわからないのかと。もし本当に力を振るうのなら、彼と共に戦おうというのなら今は止めるべきだろうと。
だが頭をゆるゆると振るった。
「まぁ言ったところでわかるのなら端から協力など申し出ないだろう……苦い話だが。その男の言う通りにさせてもらう」
逃げる者達を確認する。できれば眼前にいる風紀委員の討伐だろうが……2対1でそれは無謀。高望みはしない。今行うべきは彼らが逃げ切るまでの時間稼ぎ。
「では力づくでいかせてもらう。だがここは邪魔な人形が多すぎる……まずそいつらにご退場願おう」
右足を紫電が覆う。そしてその状態で震脚。足を起点に空間がぐにゃりと歪む。
空気、光、音すべてを拒絶し発生するそれは円形に広がる衝撃波。周りの特殊部隊員、神代、池垣、すべてを狙った文字通り無差別な破壊の波。
■池垣 あくる > 「――私は、無知な、ようですから。信じるに足ると感じた人を、信じます。私は、先輩を、信じています。全てを預けていいと信じるに足る人だと、確信しています。
だから……今は、ただの槍として」
槍圧を高める。
後ろにある信頼の眼に応えるために、無垢で純粋で……それ故に危うい決意を、槍に乗せる。
「先輩。私の、後ろに。ご覧に、入れます。あくるは、貴方の信頼に足る槍であると、お見せして、みせます」
言いつつ、理央をかばうように前に移動する。
その後飛んでくる衝撃波。円形に、中心部から放たれるそれに対し、あくるは槍を地面に突き刺し、半身に取る。
適宜槍を揺らし、その衝撃を散らしながら、半身に構えることで衝撃が当たる箇所を減らし、可能な限りそれを受け流しながら、その場に居座らんとする。
■神代理央 >
彼女の言葉通りに従って、素直に後方へ。
砲兵代わりの多脚の異形。槍使いの少女。そして大楯の異形に守られた己は、差し詰め本陣。文字通りの大将首といったところか。
女の影に隠れる等、と嘲る者もいるだろうが――此れが、最も勝率が高いのだから。
「ああ。"期待"している。私の期待に応え、その槍で敵を貫いてみせろ、池垣」
なんて。後方から少女を煽る様な言葉も慣れたもの。
此の場において重要なのは、少女の戦意。
であるならば、それを高める事くらい、幾らでもする。
「……さて。私の部下に。従僕に。御退場願いたいらしい。
であるならば、それを為す為には――先ず此の私を、どうにかする事だ」
迫る衝撃波。それを散らし、受け流す少女。
――己にとって重要なのは、それを俯瞰する場所に居る事。
それに対応する『一瞬』の間が、与えられている事。
優秀な前衛に護られ、後方から指揮に専念出来る環境。
それは『鉄火の支配者』にとって、本来の力を存分に発揮出来るものでもあるのだから。
「…Gutsherrschaft、起動。収奪対象、広域衝撃波」
周囲のエネルギーを収奪し、施す己の魔術。
起動したその魔術は、迫りくる衝撃波のエネルギーを取り込み、吸収し――己の魔力へと、変換する。
「……各員、戦線から離脱!
増援の手配と、逃走するスラムの溝鼠の狩りに戻れ。
貴様達では…コイツの相手は少々荷が重い」
そして、呆然としたままの部下達に、戦場から離れる様に指示を飛ばす。
駒であっても、失うのは惜しい。
それに、襲撃者の目的がスラムの住民であるのなら――この一手は、その心理を少しは乱してくれないかとの、思惑。
■虚無 > 「無知か、違うな考えることを放棄しているだけだろう。いいや……それだけそいつに入れ込んでいるだけだ。周りを見てみろそいつに向けられるその目は本当に好意的な物だったか」
池垣にそう問いかける。自身もそうだったから、だからそう問いかけた。武器でいいそれは視野を持とうとしていないだけではないかと。
衝撃波を散らされるが。焦りはしない。むしろこのくらい当然やってのけると思っていた。
「クク。それで、俺が焦ると思っていたのか鉄火の支配者? ……くだらんな。所詮周りの隊員はこの程度の能力。お前という後ろ盾が無い状態でむざむざやられるほど……この街の住人は弱くはない」
足元に転がっていた隊員を見やり逆に挑発をけしかける。
特別な能力があるのなら話は別だ。だがそうではないのならこの街にいる能力者の敵ではない。鉄火の支配者という動きを封じられる強大な存在が無いのなら所詮は烏合の衆ではないかと。
刹那。甲高い金属音と同時にすさまじい速度で池垣の前に踊り出る。
「大将を取らせてもらう。邪魔をするな」
そのまま紫電を纏った拳を打ち出す。
腕力や速度は関係ない。触れた対象を吹き飛ばす拳。先ほど空間をゆがめた破壊を手の甲にこめ池垣の腹部へと。
■池垣 あくる > 「周囲に好意的にみられなくてはならないのであれば、私も、失格です。そんな私を拾い上げてくれた人を、信じて何が、おかしいのですか」
言いつつ、目の前に躍り出る虚無に対し、此方は技を見せる。
穂先での刺突でなく、石突での払い上げ。
下から拳を上に弾くように、拳の勢いをそらしに行く。
――それが反射されれば、下がりながら『反射された勢いを乗せて』上段から斬りつけるだろう。
異能を看破してのことではない。純粋な、技能としての槍の操作の連続性。
防がれれば、その反発を活かし次に繋ぐ。相手の防御を取り込んで攻撃をつなぐ。
多様にして自在な動きを得意とするあくる、そして霜月一天流、霜月神薙流の操法で以て迎え撃つ…!
■神代理央 >
襲撃者の発言は、存外的を得ている。
というのも、特務広報部の隊員達は所詮訓練も未熟な元違反部活生。
己という指揮官がいなければ、普通の風紀委員程連携して行動出来る訳でも無い。
言わば、装備が良いだけのゴロツキでしかなくなってしまう。
それを見抜かれたのなら――
「……Brennen!」
短く告げた言葉。それは、異形達への攻撃の合図。
掲げられていた砲身が僅かに軋み――轟音と共に、無数の砲弾が放たれた。
しかして、その砲弾の行く先は激しく鍔迫り合う二人の下では無い。放たれた破壊の行先は――
「……確かに、此の街の住民は弱くはないのだろうな。
但しそれは、投射する火薬の量に比例するものでもあるまい?」
文字通り、スラムへの一斉爆撃。
方々に散った砲弾は、その膨大な火力で吹けば飛ぶ様なスラムを、燃やし尽くそうと降り注ぐ。
襲撃者が、少女との戦闘で咄嗟の身動きなど取れないだろう、と踏んでの砲撃。
対処は出来るのだろう。砲撃から、スラムを庇う事は、襲撃者にも可能なのだろう。
しかし、武術の達人である少女をいなしながら、此の砲撃に異能なり魔術なりで対応しようとすれば――その隙を逃す程、己の槍である少女は甘くはない。
■虚無 > 「救い上げてくれたのなら、なぜ同じ場所に落とそうとする。光に戻れたのなら、なぜ光の中にいようとしない……なぜその男が闇に落ちそうなタイミングで共に歩もうとする!」
彼女のような存在がいる。それはそのまま眼前の男の力に起因すること。もちろんそれを否定するつもりはない。
だがそれならば、その男が道を誤ろうとしたときに誰かが止めなければならないはずだった。それを……同じような思いを持った彼女に為してほしかった。いわばわがままだ。
だが会話の時間は長くは続かない。号令の声周りに展開する異形。その砲身の向きそれらの指す事は。
「やらせるか。ッグ!!」
池垣の上段からの振り下ろし、それを身に受けながらも距離を取り無理やりに急上昇。甲高い音と共に上へと上昇すると空中で先ほどの衝撃波を放つ。すべては迎撃はできない。だが一部だけでも、せめて避難をしている自身の後方くらいは守りたかった。
その防いだ砲弾は逆に敵対者である風紀委員の彼らに降り注ぐ。
■池垣 あくる > 「――私は、何も、知らない。闇の中で蠢いていた怪物、です。それに出来る事なんて、それくらいしか、ないではありませんか。その行先にある障害を、払うことで守ることしか、出来ないのです」
池垣あくるは、人間としては未成熟だ。
人生のほとんどを槍に捧げてきた。生きることは、槍を振るうことだった。だから、それ以外のことは上手くは出来ない。
それでも恩人に報いようとするならば……せめて、守る。
その行き先がどうであれ、きっと彼ならば最終的に良い方向に行くはずだ。それまでの時間を、この槍で守り切る。
それが、拙いながらにあくるが定めた覚悟だ。
故に。
「そんな時間を、与えはしません」
異能『縮地天女』発動。
その場から高速で一定の距離を移動する異能、縮地天女。
この異能は、直線であれば空中であろうとも移動できる。
散らす、程度のものならば理央が防ぐ。
ならば、余裕を与えないため、ひたすらに攻め倒すのが最善と、瞬時に判断して高速で追いすがり、今度は突きを放つ。