2020/11/23 のログ
神代理央 >  
へたり込み、涙を浮かべ、可憐で哀れで弱々しい。
そんな風体で、涙を浮かべる翡翠色の瞳の"少女"
"彼女"まであと数歩、というところで立ち止まると、深々と吸い込んだ紫煙をぽは、と吐き出して。
僅かに瞳を細めて、彼女を見下ろす。

「ほう?脅され、脅迫され、仕方なくしていた事だと。
成程、それは災難だったな。君の様な少女を毒牙にかけようとするなど、此の街の住民は相変わらず下賤で粗暴で反吐が出る。
君も、そう思うだろう?」

そうかそうか、と納得した様に頷く。
本土から取り寄せた高級の部類に入る甘い煙草の煙が、二人の間を漂う。

「……ところで、私は奥の路地裏で嬲られていた同僚の緊急通信を受けて此処に居る。
つい先程、到着したばかりでとんと事情も分からぬ。
私が知っているのは――彼女が持っていた通信端末が拾った、音声による状況だけだ」

腰から引き抜いた拳銃を、くるくると指で回しながら弄ぶ。
言葉を投げかけている間に、少年の背後から軋む様な金属音が、地鳴りの様な足音と共にゆっくりと近づいてくる。

「だから、同僚を嬲っていた男達に混じっていた"女の声"の正体が未だ掴めなくてな。
いや、君を疑っている訳じゃ無い。何か、事情を知ってはいないかと思っただけだ。それに――」

半分程灰になった煙草を、ぽい、と投げ捨てた。

「私は、別に君が声の主だろうがそうじゃなかろうが、どちらでも良いんだ。
君は其の場にいたのだろう。事情はどうあれ、私の同僚を嬲っていたのだろう?
なら、それで話は御終いではないかね」

落第街や違反部活に対する最強硬派。
犯罪者どころか、スラムの無辜の住民まで手にかけ始めた風紀委員。
サクラが、此方の正体を知っているかは定かではない。
しかし、相変わらず拳銃を指先で弄ぶその表情からは――"少女"にかける慈悲が、とうに無くなっている事が、ありありと示されているだろうか。

サクラ >  
そう思うだろう、という言葉に怯えた様子でこくこくと頷く
──ああ、なんだ。あっさり信じるのか。ちょろいヤツだ
なんて、サクラの甘い考えはあっさりと踏み砕かれた

少年は拳銃を取り出し、その背後から重甲の音が近づく

「え…?ま、待ってよ。事情がどうあれ、って…脅されてたって言ったでしょ…?」

目を見開き、慌てる様子を見せる
ばたばたとスクールバッグを漁り、おぼつかない手付きで学生証を取り出し、提示する

「ま、巻き込まれただけの一般生徒だよ?!ほら!!
 この街には無理やり連れてこられただけで──」

必死に取り繕う少女…を偽装する内心
なるほど、コイツが…ここ最近の一連の騒動の中心か──と、舌打ちする

神代理央 >  
「ああ、聞いたよ。脅されて見張らされていただけだと。
従わなければ、同じ目に合わせると言われたのだと。
………だから?だから何だと言うのだ?私が犯罪者に引き金を引く事に、何故態々貴様の理由を慮らねばならないのかね」

指先で弄んでいた拳銃をきちんと持ち直し――少女へと、向ける。
引き金に指をかけたその声色と表情には、深刻そうな様子は全く無い。
部屋の掃除をしているだけ、とでも言いたげな、気楽な声色。

しかし、その動きと表情は、少女が学生証を提示した瞬間変化を見せる。

「……学生証持ち。一般生徒、か……」

向けられていた銃口が僅かに逸らされ、一瞬考え込む様な素振りを見せてしまう。その変化は、サクラ程人の感情の機微に聡ければ、容易に気付く事が出来るだろう。

サクラ >  
有無を言わさぬ圧を感じる、少年の言葉
間違いない
片っ端から掃除してまわってる風紀委員ってのは、コイツだ

別に風紀委員が憎かったり、嫌いだったりといったわけではない
ただただ、邪魔だっただけ、そのストレスのはけ口…娯楽のための玩具になってもらっただけ

そう、サクラからすれば…
そんな遊びのために命をとられるなど馬鹿げた話なのだ

当然、そんな緊張感の中で一瞬少年が見せた隙を見逃すわけはなかった、が──

「──……」

その一瞬でサクラがとった行動は…少年に近づき、縋り付くようにして抱きつく。それだけだった
ふわりと香水の薫りが包むように漂い、小さく肩を震わせ、華奢な体躯でしがみつくようにして──

「怖かった…良かったぁ……あの女の人の後で、私も酷い目に遭うんじゃないかって…」

我ながら白々しい台詞
理由はわからないがこの風紀委員の少年は此処の住人をゴミか何かのように思っている
それは投げかけられた言葉の端々、その雰囲気からも伝わってきていた
予想通り、正規の学生証を提示することは少年に一瞬の時間を許した

接触は成功
この距離なら銃は使えないし、後ろのよくわからない兵隊のような鉄塊達も手は出せない筈

「(…あーとは、コイツがどう対応してくるかだな)」

泣き顔の少女を演じながら、打算的に脳はまわる

神代理央 >  
先程迄咥えていた煙草とは違う、甘い香水の薫り。
己の身体にしがみ付く様な、"少女"の躰。
その動きを止める事も無ければ、咎める事も無い。
涙を浮かべ、怖かったのだと告げる少女を、静かに見つめていた。

「……そうか。いや、すまなかったな。怖い思いをさせた。
此方も同僚が襲われたとあって、些か気が立っていた。
乱暴な言葉遣いになってしまって、すまないね」

引き抜いた拳銃を、腰のホルスターに戻す。
さめざめと涙を流す少女に穏やかな言葉を投げかけながら、しがみつく少女の頭を撫でようと、手を伸ばすだろうか。

「大丈夫。私の同僚も既に救助を要請している。
君を襲った連中も、全て片付けた。
もう、君を脅かすものは何も無い。だから、落ち着いて。
先ずは深呼吸からしてみたらどうかな?」

少女を安堵させようとするかの様な穏やかな笑みと言葉。
そんなやりとりの最中、暗がりから足音と共に現れた金属の巨大な異形は、二人から数メートルの距離を維持して停止した。
路地裏ギリギリに収まる様な巨躯。背中から生やした無数の砲身。
そして、赤黒く汚れ、黒くなりつつある液体に濡れた、八本の脚。

少女を慰めようとする言葉と、少年の背後から現れた異形は、何ともちぐはぐな組み合わせになっているだろうか。

サクラ >  
「…ううん。状況を見れば…仕方ないと、思うから……」

ぐすぐすと涙ぐみながら、抵抗なく少年に撫でられる

「信じてもらえて、良かった…。
 あの、風紀委員さん、だよね…?
 お名前、良かったら……命の恩人だもん」

涙を拭き、言われるままに呼吸少しずつ落ち着かせて…
我ながらこういった演技も得意なものだ
役者か詐欺師が転職かもしれないな、などと思いつつ…

「それと、あの…あれ……」

ちらりと視線を送る先…巨大な異形
なんだ、アレは。異能にしても随分と物々しいというか…物騒なモノに見える
サクラの抱いた恐怖感…不安は、そのままそれを見て怯える少女のような反応になっていて

──ついでだ、面倒くれやがった連中の素性なんかも暴いてやれ

神代理央 >  
少女の紅く、長い髪を梳く様に撫で続ける。
それは、涙ぐむ少女を慰める様な。落ち着かせようとする様な手つき。
投げかける言葉も、遭遇した時と同じ様に、穏やかな声色へと変化しているだろう。

「名前……?」

しかし、名を尋ねられた際の反応は些か奇妙なものだっただろうか。
何でそんな事を聞くのかと言う様な。或いは――それを聞いたところで、とでも言う様な。
尤も、直ぐにその感情と表情は掻き消えて、穏やかな笑みと声色に戻るのだろうが。

「…私は、神代理央。風紀委員会の二年生だ。
君は…遼河桜さん、で良いのかな。学生証をそうマジマジと見た訳じゃないから、間違えていたら申し訳無いけど」

先程提示された学生証の名を思い返しながら、首を傾げてみせる。
合っているかな、と小さく笑いながら、投げかけられた言葉と少女の視線の先にあるモノに気が付けば――

「……ああ。あれは気にする事はない。私の異能で召喚されたモノだ。決して"私"には手を出さない」

少女の髪を撫でていた手が、其の侭肩へ。背中へと伸びていく。
恐怖に怯える可憐な少女を慰める為に抱き寄せようとする様な、そんな動き――ではあるのだが。

「……容疑者の護送にも便利なのでな。貴様が学生で無ければ、縄で括りつけて引き摺りまわすところだったのだが」

そっと、少女の耳元で、低く囁いた。

サクラ >  
穏やかな声色
慰める、落ち着けるような撫で方
先程までの冷徹さとは打って変わった、温かみ

人間ってのはやっぱクソだ
立場が、住んでるところが違うだけでここまでわかりやすく接し方まで変わるのかよ
冷えてゆく頭の中で、眼の前の人間──神代理央への殺意が沸き立つ
…が、それを表に出すことはしない
胸中は胸中だ
この外見と同じように、表に出ないものは人は見えない
どうせコイツも、今は見えてないモノがあるんだろう──

「うん、私はサクラ…。疑わしかったらもっと見てもいいよ…?」

低く囁かれた声に、わざとその圧に気づかない鈍感な一般人のように、そう応え…
なるほど、そういった異能の持ち主か、と…納得する
この場でどうこうするのは間違いなく、割りに合わない。…と、あれば、である

「──神代理央くん…助けてくれて、ありがとう」

おかげで落ち着いたみたい、と涙を拭い、ぱぁっと笑顔を見せる。そして…

「お礼、ね…♪」

そう耳元で囁き返し、そっとその唇を頬へと触れさせようと近づけた

神代理央 >  
甘える様な声色と仕草。浮かべるのは花が咲いた様な笑み。
控え目に言っても、美少女で通用する類だ。
こんな場所に似付かわしくない――或いは逆に、人を惑わす毒花としては相応しいものなのだろうか、と思わなくも無い。

どちらにせよ。些か脅しめいた言葉にも、それに気付かぬのかはたまた演技か。動揺の素振りを見せない少女に、僅かに瞳を細める。
学生証持ちで無抵抗。それどころか、此方に保護を求める様な素振りの少女に――流石に、手を出す訳にもいかない。
学生証さえ持っていなければ、此の場で撃ち殺して終わりだったのだが――という思考は、図らずもサクラが忌避する通りの思考だったのだろう。

「……いや何、此れも仕事の内だ。礼を言われる様な事じゃ無いよ。風紀委員なら、生徒を保護するのは当然の事だ」

何にせよ、少女を疑う材料はこれで今のところ無くなってしまった。
再び穏やかな声色と口調に戻しながら、宮仕えの不自由さに内心歯噛みするばかり。

「……そういう事は、そんなに簡単にするものじゃない。
助けられた、とはいえ、異性相手にそういう事をするのは、勘違いする輩も現れるやも知れぬぞ」

耳元で囁かれる甘い少女の言葉と、頬に触れようとする唇。
しかし、その唇が頬に触れる前に、そっと少女の肩を押して。
困った様な笑みと共に、首を振るのだろう。
如何にも、少女の身を案じています、とでも言わんばかりに。

サクラ >  
「…あ」

唇が頬に触れる直前、肩を押され、離される

「…命の恩人で、こんなにキレーな男の子とだったら勘違いされても別にイイんだけどな…」

ふふ、と笑って。冗談冗談と身体を離し

「そうだよね。風紀委員は私達の頼れる人達…。でも…」
「もし私が学生証を携帯してなかったら…?」

生徒を保護するのは当然だ、とさも当たり前に口にする少年
しかし学生証を提示する前に感じた冷たさは、そんな言葉とは似つかわしくもないものだった

「……正規の学生かもしれなくても、撃ったの?」

神代理央 > 「良くはない。此れでも、風紀委員の中では悪評の方が先に目立つ故な。
もっと真っ当な相手を探す事だ。先ずは、こんな場所に来ない様な男をな」

と、笑う少女に此方もクスリと笑みを零す。
それは意外と、本心も含まれていたりするのだが――それに少女が気付くかどうか。
そもそも、気付いたところでそもそも"少女"だと思っている時点で――

 
「――学生証を持っていなかったら?」

投げかけられた言葉に、困った様な笑みは鳴りを潜めて思案顔。
懐から取り出した二本目の煙草に火を付け、天空に甘ったるい紫煙を吐き出した。

「可笑しな事を聞くものだ。私は、学園の風紀と生徒を守る風紀委員だよ。そんな事、決まっているじゃないか」

にこり、と笑みを浮かべて少女を見つめる。
背後の異形が、僅かに砲身を軋ませる。

「――生徒じゃない。生徒かどうか分からない者は、守る義務は無いからな。まあ、殺しはしないだろうが」

少女の問い掛けに対する答え。
それは――何の躊躇いも無く引き金を引くと嗤う姿だった。

サクラ >  
「(はぁん…悪評ねぇ……)」

噂通りの苛烈な行動の主犯格だとすれば、それは悪評も積もることだろう
おまけにご丁寧にもっとまっとうな相手を探せ、などと来たものだ
そこまで言うからには、何か過去にあったのかもしれないが…何かのネタに使える以上の価値はなさそうな言葉だ

再び煙草に火をつける少年
向けられる笑みは…どこか薄ら寒さすら感じさせる
続く、少年の口から語られる言葉もまた……

「…そ、そっか……」

思わず演技の笑みも引き攣るというものだ
薄々感じてはいたが確信した
コイツはある種の同類だ
倫理観がブッ壊れているか、何か別のクセーもので完全に上書きされてる
疑わしきは罰する…なんて生易しいものでもない

「良かったーちゃんと学生証携帯してて」
「(とんだイカレ野郎だったわけだ。くわばらくわばら、こりゃしばらく近寄らねーほうがいいな…)」

笑顔のままに、平然とそんな言葉を返す少年、理央に、背筋に冷たいものすら感じる

「……それじゃ、私はもう帰るね。あんまり遅くまでこんなところにいたくないし…
 理央くんがこれから見回り?なんかしてくれるなら、出るまでは安全…だよね?」

もっともらしいことを言いつつ、距離をとろうとする
…風紀委員がここまでイカレた野郎を飼ってるなんてのは、流石に想定外だった

神代理央 >  
僅かに引き攣った笑みを浮かべる少女。
そんな少女を、観察するかの様に眺める少年。
年頃の少年少女が向かい合い、語らうには余りに不似合いな表情を互いに浮かべた儘――少年は、言葉を紡ぐ。

「そういう事だ。学生証の有用性と重要性を理解し、認識して貰えた様で何よりだよ」

小さく肩を竦め、少女の言葉に頷いた。
そして、距離を取ろうとする少女を止める事は無い。
ふわり、と笑みを浮かべて少女をじっと見つめた儘。

「ああ、勿論安全だとも。
と、言うよりも。私が責任を以て、此処から安全な場所まで護送するよ。
……学生証を持っているからといって、事情聴取を受けなくても良いという訳では無い。私の同僚に何があったのか、本庁で詳しく話を聞こうじゃないか?」

腰のホルスターに刺した儘の拳銃を、ぽんぽんと掌で叩きながら。
にっこりと、悪意無く浮かべた笑みが少女に向けられる。

サクラ >  
「(──そうきたか)」

事情聴取…おそらくは任意だろうが、断る理由がない
この場は雑な言い訳で紛らわすことができたとしても、しっかりした場となれば…
学生証の精査により性別がまずバレる
嘘が一つ増える、というのは怪しまれる要因としては十分だろう

「えー…っと……」

「お仕事の邪魔しちゃうのも悪いし、ちゃんと本庁に出頭するから大丈夫だよ?
 学生だからちゃんと住んでるところもわかってるはずだし…」

えへ♪と笑って、そう応えてみよう
…やや苦しいか?と思いつつも

神代理央 >  
「遠慮する事は無い。それに、私の仕事は同僚を暴漢の魔の手から救出した時点で終わっているからな。
どのみち、本庁に戻るだけだ。そのついで、だよ」

だから遠慮せずに付いて来ると良い、と相も変わらずの優し気な笑み。
純粋な善意からの言葉だと。"まさか断りはしないだろうな"と言外に言い含める様な、偽りの善意を散りばめた言葉。

「それに、君の様な可憐な少女を一人で返す訳にもいくまい。
先程の暴漢たちと同じ様な連中……ああ、そう言えば」

ふと思い出した様に。可笑しそうに笑みを零しながら。

「私の同僚なんだがな。散々に嬲られてはいたが、"綺麗な儘"何とか保護出来たんだ。
可哀相にな。死ぬ前くらい、最後迄したかったろうに」

それはつまり、男達は結局最後迄事を致せず、雄としての役割を何も果たせぬ儘、異形の脚元にへばりつく肉片と化したということ。
愉快そうに笑いながら、可哀相だろう?と首を傾げてみせる。

サクラ >  
「遠慮なんてそんな、………──あー…」

突きつけられる善意と、現実
都合の悪い事柄が随分と揃っているものだ

「…めんどくせェ、いいや。お前、俺のことどれくらい信用してたんだよ?」

紅い髪をかきあげるように、して、鋭い目線を向ける
声も、女性の高さではなく、声変わり前の少年のような声色に変わる

「言っとくけど学生証は本物だぜ。性別のトコは指で隠して見えねーようにしてたけどな」

ククッと小さく笑い声を漏らす

神代理央 >  
突然言葉遣いが崩れ、それまでの甘ったるい声色から、少年のモノへと変化した"少女"
いや、元より少女では無かったのだろう。
変化した"少年"の有様に、少し驚いた様に目を見開いて――やがてそれは、小さな苦笑いへと変化するだろう。

「よもや男、だったとは。流石に気付かなかったよ。
信用?ああ、信用は大いにしているとも。
少なくとも『脅されて無理矢理』なんて言葉が大嘘だろうと確信するくらいには、信用しているとも?」

「流石に性別欄までは見ぬよ。とはいえ、本物の学生証持ちともなれば、余り手荒な事をしたくはないものだ。
どちらにせよ、大人しく着いて来てくれれば此方も助かるんだがな」

本性と本来の性別を露わにした少年に、此方も一々理解ある風紀委員を演じる事は無い。
疑っている、と素直に言葉で露わにしながら、本庁への任意同行を求め乍ら、愉快そうに笑う。

サクラ >  
「はっ!いちいち癪に障る野郎だな!!」

信用、という言葉に挑発めいたものを感じれば更に少年、サクラは声のトーンを上げてゆく

「お前みたいなイカレ野郎の言うことを信用するかよ。
 だいたい同行も聴取も任意だろ?現行犯ですらねーんだからよ。
 そもそも俺が直接何かしたってわけでもねーし。知らねーよ」

肩を竦めるように投げかけられる言葉はとことん相手を斜に見たもの
まともに会話をする気などそもそもないのだと感じさせるには十分だろう

「けどまぁ俺もこんなトコでイカレ野郎に首根っこひっ捕まえられるのはゴメンだぜ。
 お前がとりあえず話の通じるイカレ野郎なら取引って手もあるだろう?」

ふてぶてしく腕を組み、路地の壁に背を預けながら、いけしゃあしゃあとそんなことを口にする
ある種の開き直りか、銃を持つ風紀委員とその異能の軍勢を前にしてもその姿勢を崩さない

神代理央 >  
「風紀委員は不真面目な者にとって癪に障る存在だよ。
それが気に食わないなら、真面目に学生生活を送る事だな」

「そうだとも。同行も事情聴取もあくまで任意。
しかし、"風紀委員が暴行されていた現場に居た"生徒に事情聴取を求めて、それを拒否するとなれば。
まあ、貴様の内申書には愉快な記述が並ぶのだろうな」

彼が何処迄学園の評価を気にするかはさておき。
トーンを上げる少年に応えるのは、尊大で傲慢な笑み。
しかしてその笑みは、次いで少年から投げかけられた言葉に、ほう?と言わんばかりの表情へと変化する事に成る。

「イカレ野郎、というのは褒め言葉と受け取るとして。
取引…というのは興味深い提案ではある。
私は犯罪者を撲滅する事を厭わぬが、同時に利用する事も是とするでな。
互いに利益のある取引であれば、聞いてやらぬ事も無いぞ?」

それは、今宵初めて少年に見せた真面目な態度と言葉だっただろうか。
互いに利があり、此方が損をしない内容であれば話は聞く。
それは、後ろ暗い者を利用し、元違反部活生を率いる己だからこそ、耳を傾けるべき言葉だったのだから。

サクラ >  
「じゃあまぁ聞けよ」

尊大な物言いはとりあえず流す
反論をしたところで何も話が進まないのは目に見えているからだ
狡い悪党であるサクラはすぐに、話が進む方へと切り替える

「お前らが派手にやってるおかげで主にここらの流通を担ってる違反組織が姿を消した。
 まァ、消えたっつっても地下に潜ってるだけなんだがな」

「違法に流れてきた資材、武器、クスリ、まぁ内容は様々だが、
 地下に逃げられるとお前らもそうそうは連中を炙り出せねぇだろう?」

やや得意げに手振りを含めて話す
その内容は、神代理央という驚異から逃げた者達の逃げた先を教える…というものだ

「俺にいくらでも寄ってくるバカの中にそういう連中もいてよ。まーそれなりに居場所が割れるワケだ」

「俺はそもそも今回の件で直接手は下してねえが、
 ここらに突っ込まれると痛くもない腹探られることになって面倒臭え。
 そもそも逃げ回ってる連中に俺もそろそろ愛想がつきた。
 どうだ?そこそこの規模の違反組織まるごと3つ分ぐらいの情報はパッと出せるぜ」

自分に寄ってくる…要するに自分を懇意にしてくれている違反生徒達を売る…といった旨の発言
それ一つをとっても、このサクラという少年が如何な精神性の持ち主かはわかるだろうか
自身の腹が傷まない、などという言葉も本当かどうかが疑わしい

神代理央 >  
少年の言葉に、瞳を閉じて静かに考え込む。
確かに、暴力を以て落第街や違反部活へ圧力をかける今のやり方では、捕らえられない組織がある事も事実。
元々此の地区で受けが悪い己は、所謂『情報通』となる者の協力を得たい、という思惑もあった。

それ故に――

「……良いだろう。情報と引き換えに、貴様の行動は或る程度黙認しよう。今回襲われた風紀委員については…まあ、そうだな。
助け出されただけ、良しという事にしておこうか」

「情報の精度と量によっては、当然別途に報酬も支払おう。
貴様も、一度見逃された程度で情報を延々集られるのは嫌だろう?
"互いに利がある関係"である事を、私は望む。
とはいえ、風紀委員に手を出すのは控えて欲しいものだが。見逃すにも限度がある」

瞳を開けて、静かに彼を見据え告げる言葉は、意外な程あっさりと提案を受け入れるものだった。
それどころか、情報に応じて報酬も支払う、と。
また、彼の言葉の真偽を一切問う事も無く。
唯々、彼の提案を全面的に受け入れるものだった。

「情報の出所や信頼度についても、特に言及はしない。
有用でなければ、報酬を出さぬまで。
……褥の中では、皆口が軽くなるというしな。精々、その躰で稼いでくると良い」

と、最後に告げた言葉は。
軽口を含ませた、冗談交じりの言葉だったのだろうが。

サクラ >  
「クク、頭がいいな、お前。
 イカレてるヤツやクズは大体アタマがいいって決まってんだ」

胸ポケットから名刺を取り出し、ひらりと投げる
可愛らしい猫のスタンプのおされた名刺には連絡先が記されていた

「目障りな連中がうろちょろしてたから
 俺は風紀委員に恨みもった連中に居場所を教えただけだぜ。今回はな。
 まあそれが本当かどうかはお前が勝手に信じるかどうか決めればいい、
 死んだ奴らも友人でもなんでもねーよ」

まあ向こうは顔見知りくらいに思ってたかもな、とスカした態度を取りつつ、壁から離れて

「金がもらえるならそれに越したことねえや。
 ネジの抜けた落第街の連中からせしめるよかよっぽど都合がいいかもな」

簡潔にとはいえ、話はまとまったな、と
ふわりと髪をなで上げれば、その雰囲気はまたくるりと変わる

「……じゃ、そういうことで…また会おーね♪理央くん♡」

神代理央 >  
投げられた名刺を、右手を伸ばして受け取る。
今迄の会話の流れに随分と似付かわしくない猫のスタンプと、彼が"少女"であった時の演技を思い返せば――それは、何とも言い難い複雑な苦笑いとなって感情を伝えるだろうか。

「…まあ、今はその言葉を信じよう。
というよりも、その真偽は此れからの貴様の働きで示して欲しいものだ。
本当に私の役に立つというのなら、その言葉を疑う事もすまい」

少年の態度とは真逆。尊大で傲慢で『体制側』に位置すると言わんばかりの雰囲気を纏う己は、壁から離れる少年を眺めながら肩を竦める事になる。

「此れでも、私は所謂『金持ち』の部類に入るでな。
報酬は、私のポケットマネーからだから後ろ暗い事は無い。
今の内に、金の使い道でも考えておくと良い」

要するに『風紀委員会を通さず、表でも堂々と使える金』を提供するとの事。
受け取った名刺を懐に仕舞いこむと、代わりに取り出した1枚のキャッシュカードを彼に投げ渡すだろうか。

「……前金兼、経費として受け取っておけ。
名義は、島に駐留するフロント企業の口座になっている。
報酬も其処に振り込むから、自由に使え」

『清潔な口座』…は、学生証を持つ彼には必要無いかも知れないが。
或る程度、纏まった金が入った口座のカードを投げ渡し、好きに使えと投げやりな言葉。

そして、一瞬で雰囲気を変えた"少女"に呆れた様な笑みを浮かべると。
くるり、と背を向けて視線だけを少女に向けて。

「次は、もう少し穏便な場所で再会したいものだな。
カフェテラス辺りで、私にも女子と茶を嗜む振りをさせてくれても良いのだぞ?」

なんて、可笑しそうに笑って。
少女の返答を聞く事も無く、巨大な異形と共に裏路地の奥へ、暗がりへと。
その姿は消えていくのだろう――

サクラ >  
役に立つなら信用する
そうでなければ信用しない
わかりやすい。シンプルで結構だ

「ふふ♪やっぱりお話はしてみるものだねー♡」

ピッ、とキャッシュカードを受け取り、続く言葉にはにっこりと笑みを返す

「ま、わざわざこんなトコで会う必要もないしね♪
 お仕事がんばってくださーい♡」

裏路地の奥へと去りゆく少年の背中へと声を投げかけながら、手元でカードを透かして眺める

こんなクズのようなことをしていて、金が転がり込んでくるということは
世の中所詮はそんなもの。甘ったるい、なまっちょろい善人の言葉なんて全て偽善なのだ
その歪な精神性に相応しく、口元を笑みに歪めて、赤髪の少女…少年、サクラは足取り軽く、落第街を後にするのだった

ご案内:「スラム」からサクラさんが去りました。
ご案内:「スラム」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「スラム」にシャンティさんが現れました。
シャンティ > 『現れ出づるは異形の群れ。彼らを迎えるは異界の剣士。どちらも属さぬ堕落の街にて戦の火蓋が切って落とされる。』

女は謳う
朗々と、台本を読み上げるように

「あ、は……なぁ、にぃ……オサムライ、さん……ふふ。止める、つも、り……な、の……? それ、と、もぉ……殺、す……おつ、もり……な、の……か、しらぁ……? あは、あはは……どち、ら……で、も……ふふ……私、はぁ……面白、い……の、だけれ、どぉ……」

くすくす、と笑う
ある程度は予想外、ある程度は想定内
どちらがどうなろうと面白いことになるだろう

けれど

「で、もぉ……あれ、よ……ね、ぇ……リーダー……を、おい、て……逃げ、ちゃ、う……人、たち、はぁ……ど、う……なの、かし、らぁ……駄目、よ……ね、ぇ? お、し、お、き……必要……か、しらぁ……ふふ」


笑う
女は笑う
人知を超えた争いから逃げ惑うのは、街の住人も、そして"彼"の部下たちも区別なく……
しかし、舞台に上がった以上は踊る覚悟は必要ではないか

シャンティ > 「さ、てぇ……あは、あはは……ま、さかぁ……理央、くんの……子ども――もぉ……でて、く、る……なん、て……ねぇ? あぁ、あぁ……いい、わぁ……それ、で……いき、ま、しょう、か……ふふ」

手にもう一冊の奇妙な本が現れる


「堕落と退廃の街。闊歩するは粛清の正義を名乗る狂気の手。かの者の産み出せし異界と異形の落とし仔――彼は何のため、産まれ出たか――彼は……彼女は……意味を、親を、求め……街を、また徘徊するであろう……そう、いま、ここに……!」


力ある声とともに……闇の中より、様々な異形が産まれ出る
獣とヒトと機械。様々なモノが入り混じった様なソレ
機械とナニカがモザイクのように混じり合ったソレ
無数のソレは……しかし、見るものが見れば……誰かが生み出す、それに近似するナニかを見出すだろう


「さ、ぁ……お行き、な、さぁ、い……ふふ。貴方、たち……の、オトモダチ、と……遊ぶ、ため、に……ね、ぇ? 私、は……ここ、で……みて、る……か、ら……」

くすくす、と女は笑う
異形たちは群れをなして行進を始めた


その行き先は……逃げ惑うものたちの群れ

逃げ惑うもの > 「な、なんだ!? どうして、どうしてこいつらが、此処に……!?」
シャンティ > 突如現れた異形たちに、逃げ惑う者たちはパニックを起こす
もと来た方へと戻ろうとするもの、あらぬ方へ逃げようとするもの
恐慌を起こし、座り込むもの……


「ふふ、ふふふ……あは、あはははは……有象、無象……で、は……やぁっぱ、り……だ、め……よ、ぉ……理央、くん……? あは。」


『剣士は己の傷に耐え、双槍に大楯の異形を突き刺し、少年へと肉薄する。その様は雷神のごとく、雷の槌を振り下ろすかのように異形ごと叩きつけんとする。少年は痩身の右腕に己がすべてを込めて、それを迎え撃つ』

朗々と女は謳い上げる


「あは、あははははは、さあ、さあさあさあ……デウス・エクス・マキナ、は……現れ、る……か、しらぁ……?ふふ、ふふ……盤面を、ひっく、り……かえ、す……悪夢の、一手……あは、あははは……」

ご案内:「スラム」に赤羽 華楠さんが現れました。
赤羽 華楠 >  
「うーん――――」

悩むように、街を見ながらやってくる女性が一人。
パニックを起こす者共などつゆ知らずというように、逃げ惑う者達と逆方向へと進み、銀髪の女へと近づいてくる。

「おかしいわね……校舎に向かう道の筈なのにぜんっぜん校舎見つからないじゃない。
 どんどん街並みも寂れてるし、変なのはうろついてるし。

 …あら、ようやく立ち止まって話出来そうな人がいるじゃない。
 御機嫌よう? ここ…何処かしら?」

にこり、と笑い銀髪の女に声をかける。
それはあまりにも場違いにも感じる、危険を感じていないような姿だろう。

シャンティ > 「……あ、らぁ……?」

『その女は――赤かった。其の足取りは悠然と。其の態度は優美で。まるで其処で起きていることなど些事である、とばかりに泰然として。女へと歩み寄ってくる。「――」其の笑顔は赤く咲いた花のように美しかった』


女は朗々と謳い上げ、小首をかしげる。


「ご機嫌、よう……貴女。此処、は……そう、ねぇ……悪夢、の……舞台。地獄の、一丁目……と、言いたい……とこ、ろ……だ、けれ、どぉ……ふふ。現実、は……そう、ねぇ……物騒、な……スラム、街……か、しらぁ……」


演目に飛び入りの客が来るのは想定内で想定外。もとより、今は観劇と野次の時に過ぎなかった。ならば即興劇に興じるのもまた一興。


「あな、た……それ、も……知ら、ない、で……きた、のぉ……? 随分、かわって、る……わ、ねぇ……?」


くすくす、と笑って女はいった。

赤羽 華楠 >  
「へぇ、悪夢」

ふぅん、と周りを見れば、異形の者共とそれに逃げ惑う者共。
周りで平常心を保っているのは、自分と目の前の、銀髪の女性のみ。

確かにこの惨状を形容するならば、悪夢と言うのが正しいだろう。

「常世島にスラムがあるっていう事自体初めて聞いたわ?
 ふーん……こんな所もあるのね。

 見るからに吹き溜め、弱者の街じゃない。
 どうりで臭いと思ったわ」

ゴミの散乱する道、至る所が壊れた建物。
あと随分と煙たい空気。
知ってたらまず近寄らなかっただろう。
だって、臭いし汚いし。

「にしても随分と賑やかね、今日はお祭りでもやってるのかしら?
 それにしては華がないけれども」

そんな訳はないというのは分かり切っているかのように、周りを眺めながら女性に問う。
別に知った事じゃない掃き溜めの騒ぎ。
迷い込んだ彼女にとっては、何一つとして関係のない出来事と言ってしまえばそれまでだった。

シャンティ > 『赤い女は優雅に辺りを見回す。「――」「――」さらなる問いかけも典雅に。しかし、興味津々とは思えぬ口ぶりで。ただ、問いかける。』


「そ、う……ねぇ……正式、に、はぁ……歓楽街、の……奥……存在、して、いる……けれ、どぉ……ない、も……同じ、に、扱わ、れて、いる……ところ、だも、の……で、も……大体、は……暗黙、の、うち、に……知ってる、こと、が……多い――の、だけれ、どぉ……貴女……常世島、きた、ばかり……か、しらぁ……?」

落第街、という通称で語られるこの場所は正式に認知された場ではない。
しかし闇を知らない一般生徒でも、歓楽街の奥はなんとなく危険である、程度の認識を持っていることが多い。
仮にスラムを知らなくとも、歓楽街の奥の危険な場所と結びつけるのは割と簡単な連想ゲームだろう。
それでも、知らない、という。ゆえに、当たりをつけてみる。


「あぁ……あ、れ? 貴女、興味、は……なさ、そう……だ、けれ、どぉ……? でもぉ……そう……そう、ねぇ……珍し、い……花火、大会、よぉ……人の、命、を……咲か、せる……類、の……だ、けれ、ど……」

人差し指を唇に当て、くすり、と笑う


「風紀委員、の……お祭り、みたい……な、もの……だった、の……だ、けれ、どぉ……今日、は……公安、の……ゲスト、も……加え、て……派手、に……して、る……みた、い……よぉ?」

弱者の街、と言い切ったこの女は弱者同士の闘いであれば興味のかけらもなくおそらく何も心動かさないのだろう。
しかしそれが、違うものだとしたら……?さて、どう応えるのか。
これも興味なしと切って捨てるか果たして……

赤羽 華楠 >  
「ま、長くはないかもしれないわね。

 ふぅん……風紀と公安」

来たばかりか、という問いに肯定しながら、遠くで聞こえる派手な爆発音に意識を向ける。
とはいっても、こちらもこちらで喧騒が大きく、よく聞こえるものではないが。

風紀と公安がぶつかる。
何があったかに興味はない訳でもないが、何をしているのかとため息の方が先に出た。

「そう、随分派手なのね。
 派手なのは嫌いじゃないけれど…ちょっと品が無いんじゃないかしら。






 貴方もね」

ちらり、と銀髪の女性の方を見ると同時に、足元に赤い光の線が巡る。
円を描き、文字を描き、模様を描き……
無数の光の”陣”が現れ、赤毛の女性とその周囲を照らす。

「それに乗じての遊び……って所かしら?
 別に人の趣味に文句つける気はないけど……やるならもうちょっと綺麗なおもちゃでやりなさいな。

 私、汚いもの嫌いなの」


陣は地面に転がる石ころ、瓦礫を潜り。
それと共に石ころが、瓦礫が、”色”を纏う。

――――『赫』

それはまるで、地面を星のように煌めかせ。
女性はその光に目を向ける事もなく、指をぱちんと弾く。
それと共に、宝石たちは自分の意思を持つかのように飛んで行くだろう。

まばゆい宝石の弾丸が、怪物たちを貫かんと。

シャンティ > 『「――」赤い女は手短に口にする。興味はあれど、今は後回し、と言いたげに……「――」女の足元から赤い光が走る。赤 朱 赫……赫が地を支配し、覆う。女の指の弾きとともに、赫の弾丸が弾け飛ぶ』

女は謳う
礫の飛びゆく先は闇より産み出された異形たち。特に気にすることもなく、女は笑う。
礫は異形たちを引き裂き、地に伏させることだろう。


「あは、あはは……ふふ……それ、は……困、る、わぁ……だって、あの仔、たち、はぁ……私、の……じゃ、なく、てぇ……風紀、委員……の、子だ、ものぉ……センス、の、文句、は……そち、らに……言って、ほしい、わ、ねぇ……神代、理央、くん……って、いう、の……よぉ……? ふふ。今日、も……この子、たち……を、つれ、てぇ……街、を……焼き、放題……だった、の、だけ、れど……」


少しだけ、首を騒音の方に向ける
やや大雑把ではあるが、いずれにしても此処からは正確な場所などわかりもしないので問題もないだろう。


「今、は……あの、通り……だ、しぃ……? ふふ……あ、らぁ……? あっち、はぁ……デウス・エクス・マキナ、が……現れ、た……か、しらぁ……見もの、なの……だ、けれ、どぉ……今、は……貴女、が……いる、もの、ねぇ……ざぁん、ねん……」


くすくす、と女は笑う


「それ、でぇ……? 綺麗、な……子たち、だった、らぁ……いい、の……かし、らぁ……? ふふ。貴女、は……どんな、子――が、お好み、なのぉ?」

赤羽 華楠 >  
「そ。
 随分センスの悪い風紀委員がいるのね。
 でも貴方こそ、自分で買った服のセンス位自分で責任を持つべきじゃないかしら?

 今使ってるのは、貴方じゃない」

くすり、と笑いながらそう返す。
彼女が異形共に意識を向ける事はない。
襲ってくるのなら別だが、そうでなければ醜い鉄の塊など視界に入れる事もしたくない。

だから、”ゴミ掃除”はオートで任せておく。
予め異形から感じた魔力に、そのまま飛び込むように命令は組み込んでおいた。
その場にあるゴミが消え去るまで、全自動で放たれ続ける宝石の雨。
大きくて鈍重な的相手なら、これで十分。

「いいえ?見た目だけ取り繕った程度で許容する訳ないじゃないの。

 『私の、目に、ついた』
 醜悪なやり口を選んで、今日ここでやった事。

 そこに偶々、偶然。
 道に迷った私が通りかかった不運だけ……呪いなさい?」

指先を、銀髪の女性へと向ける。
指で銃の形を作り、対象の左胸あたりに狙いを定める。

「ちなみに私なら、薔薇の花でも使うかしら。
 真っ赤な薔薇。
 血を吸って咲いたような綺麗な薔薇でも咲かせて死ぬのなら……多少は綺麗に死ねるんじゃない?



 ばんっ」

銃の真似事のように、その手を上へと跳ねさせる。
瞬間、跳ぶ、宝石の弾丸。
真っ直ぐ目の前の目標へと放たれる、赤い……一筋の、光。

シャンティ > 異形たちが狩られていく
しかしそれに手を出すことはない
すでに彼らはその僅かな役目を果たしたのだ

異形たちは、あくまで戯れ
逃げて散った"彼"の部下たちに刺激を与えるためだけの
彼らが何かを得るのか、それとも何も得ないのか
今日のことはただ一時の夢としてなかったことになるのか

正直そのどちらでも別にいい
自分はただ舞台を整え劇の行末を見つめるだけのなのだから――


『赤い女は言う。「――」』

ああ……この女は私を醜悪と。私を悪と。許されざるものと。裁くべきものと。断罪すべきものと。

――舞台の上のものと。

そう、認めると。

ああ……それなら――
美を以て悪を討たんとする断罪の弾丸を
我が身に受けることこそ――

ああ、ああ……

思考の先、胸に真紅の薔薇が咲いた

赤羽 華楠 >  
宝石の弾丸が、銀髪の女性の胸を穿つ。
鋼の塊を貫くそれが人の身など易々と貫通する事は明白で……
そのまま彼女の肉を、抉り込む。


が――――


「一重式《ソロ》――――――オールドローズ」


それが、銀髪の女性の背肉を貫く事は、無い。
激痛は走るだろう。
血は吹き出すだろう。
だが、それは”未だ”命を穿つまでは、しない。
胸を貫きながら、宝石は彼女の胸の中で”その存在を変えて”いった。
それと同時に宝石も動きを止め……胸の中に、留まるだろう。

変化するそれは、胸の中で蠢き、根を張り…自らが作り出した傷口から顕れる。
それは、一輪の”薔薇”
赤髪の女性が直前に語ったように、血を吸い咲いたかのような、紅の薔薇。

しかしそれは未だ満開には至らず、蕾をつけながら傷口に根を張るのみだろう。

「下手に動かない方がいいわよ。
 無理矢理引き抜くのもオススメしないわ?
 貴方の命は、今私が握ってる。

 私の命令一つで、その薔薇が貴方の命を吸いつくして綺麗に咲くわ?
 つまり貴方が死ぬか生きるかも、私次第…ってこと」

くすりと笑い相手を見据えるその姿は、少し愉しそうで。

「これは慈悲よ。
 今回は…ま、いいでしょう。
 ここのゴミを片付けるだけで見逃してあげるわ?
 でも次に私の前で醜悪なものを見せるなら……今度こそ命を奪ってあげる。

 仏様と違って私、そんなに優しくないの」

一度目は偶然。
二度目は奇跡。
三度目があるならそれは必然。
生憎必然まで待つつもりは、ないらしい。

シャンティ > 読み上げることはない
謳い上げることもない

胸の疼きと頭に流れる文字列が自らの状況を周りの状況をすべて伝えてくる
ああ……また……


「な、ぁん……だ……? あぁ……理央くん、も……そこ、まで……なの、ねぇ……あーあ……」


口から漏れるのは気怠くも残念そうな声音


「そ、ぅ……こ、の……生殺、し……が、貴女、の……美学……なの、ねぇ……? あぁ、美し、く……ない、わぁ……まったく……つま、らない……えぇ、えぇ……で、もぉ……幕、として、は……あま、りに……あっけ、ない……もの、だし……これ、も……あり、かし、らぁ……」


命を握ってる、という其の言葉をまるで意に解することもなく女は人差し指を唇に当てて考える。


「で、もぉ……私、は……別、にぃ……いたずら、は……した、かも、しれな、い……けれ、どぉ……した、の、は……ふふ。この街、を……荒ら、した……だけ、じゃ、なく、てぇ……リーダー、の戦い、から……逃げる、わるぅい、風紀、委員、を……すこぉ、し……おど、した……だけ、よぉ……? そん、なに……わるぅ、い……こと、は……した、覚え、ない、わ、よぉ……? なんな、ら……この、街の子、たち……なん、て……よろこ、んで、る……かも、しれな、い、わぁ?」


悪戯っぽく笑ってみせる
悪びれていないのか、それとも……

赤羽 華楠 >  
「生憎、ここでこれまで何が起きてたかも私には知った事じゃないのよ。
 言ったでしょう?醜悪って。
 弱者追い回して暴れるゲテモノが気に入らないだけよ」

弱者は庇護するものであって、虐げるものではない。
サディストの自覚はあるが、弱者を嬲る趣味はない。
あくまで自らは力のある者。
弱き者を守る力はあれど弱き者に振るう力は持ってはいない。
その結果で貶められようと命を落とそうと、それを貫く限り己は己であり続ける。
それが信条。自らの信念であり、美学。

だからこそ、力を持ちながら弱者を虐げる者は、彼女の美学に反する。
ただそれだけの事。

――――力を持つ者に関しては、その限りでもないが。

「それに……死んで良しとする相手を殺した所で何にもならないじゃない。
 私はね、気に入らない相手はとことんまで苦しめたいの。

 やりたい事をやらせないで、望むものは与えない。
 願いは踏みにじって、想いは空回らせる。
 それが一番相手が苦しむし……楽しいじゃない?
 
 私ね――――人をいたぶるのが大好きなのよ」

満面の笑みで、銀髪の女性を見ながら。
知った事じゃないと言い切るだろう。

シャンティ > 「あ、は……あははは、あはははははははは……とぉん、だ……サディスト……だ、わぁ……あは、あははは……こぉん、な……か弱、い……私、を……つか、まえ、てぇ……ほん、と……"弱い者いじめ"、の……お得意、な……人、なの、ねぇ……あは、あはははははは……」


笑う
女は笑う


「私、は……装置……私は、道具……私、は……傍観者……私、は……ふふ。貴女、の……想う、ほど、に……大した、もの……で、は……ない、のよぉ……あは、あははははは……で、も……いい、わぁ……あは、あはははは……」


笑う
狂ったように笑う


「ふふ……ああ、ああ……光の人……眩、き……赤い、貴女……あは、あはは……私、は……ふふ、貴女を……楽し、ませ……ら、れる……かし、らぁ……? ただ、の……か弱、い……なに、も……でき、ない……私、にぃ」


くすくすと笑い続けながら遠くを見るように目の前を見るように赤い女の方を見る

赤羽 華楠 >  
「か弱い?
 力を直接振るわないからか弱いって言うならとんだお門違いよ。

 現に……あのゲテモノたちは貴方がやったんでしょう?
 抵抗しようとすればいくらでもできた。それをしなかっただけ。
 それを弱いとは言わないのよ」

弱者に選択肢はない。
選択をもっていて、しない事を選ぶのはその時点で力を持つ証拠。
だから、目の前の相手を弱者と認識する事はない。

「だから、今日の所は去りなさい。
 次は…どうなるか保証はしないけれど。
 ま、醜悪なもの見せないのならお茶くらいは付き合ってあげるわ?」

つい先ほど命を奪おうとした者の言葉とは思えぬ台詞。
元々許せないから対峙した訳でもない。
”こんな事”を引き摺る気もさらさらないのだ。

「薔薇はプレゼントしてあげるわ。
 そのままにしてても命に別状はないし、枯れる事も咲くこともないわ。
 邪魔なら帰った後にでも抜き取ると良いんじゃない?
 心配しなくても、私が命じない限りは命まで取らない無害な子よ。
 抜くときちょっと痛いかもしれないけどもね?」

目の前の相手には”そういう存在として”薔薇を植え付けた。
自分の命令を受ければ成長し、命を吸い咲き誇る薔薇。
その命令も何処からでも届く訳でもない。
今、この場のように相対する距離でなければ、命を吸いつくさせる事は出来ない。

無論、”次”があったならば、話は変わるだろうが。

「――――おっと、名前、名乗ってなかったわね?

 私の名前は赤羽華楠。
 その薔薇を与えた者の名前、覚えておくといいわ?」

シャンティ > 「あは、ぁ……ざぁ、ん……ねん……あはははははは……」

女は笑った。楽しそうに狂気の笑いを浮かべる。


「えぇ、えぇ……いわ、れ……なく、て、もぉ……ふふ。せっか、く……の、舞台、も……ぜぇ、んぶ……閉幕……もぅ、今日、は……ここ、に……いる、意味、もぉ……な、い……の、だも、のぉ……」


笑みを止め、気怠い調子に戻る
先ほどとは打って変わって面白くなさそうな声音
いや、むしろ……何かを惜しむような声、とも言えるかも知れない


「赤羽、華楠……ねぇ……ふふ……いい、わぁ……赤く、華の、ある……名前、ねぇ……私、はぁ……いいえ、いいぇ……貴女、は……そう、そうねぇ……興味、ない……かし、らぁ……ふふ。『大道具』、とだけ……ふふ、聞いて、おいて……いただ、ければ……十分、ね……」


くす、と笑った

赤羽 華楠 >  
「同情するわ」

くす、と笑って返す姿は、露程もそうは思っていないようで。
面白くなさそうにする彼女を、面白がるような表情だった。

「あら、名乗った相手に名乗らない訳? ま、構わないけど。
 ふぅん…舞台装置ねぇ。
 いいわ?せいぜい暗幕の裏にいれるようにがんばりなさいな。
 そういれる時間も、そう長くはなさそうだけど。

 いえ……貴方が思ってるだけで舞台にもう上がってるのかもね?」

存在するだけで皆、この世界に立つ役者だ。
自分だけは違うだなんてそんな事は許されはしない。
少なくとも自分はそう思っている。だからこそ端役になるつもりなんてない。
苛烈で、輝く、主役で或る。
己を持つのであれば、踊る演目は自分で選ぶ。

「じゃあね、舞台装置さん。
 装置なら装置らしく、役者を輝かせることね」

そう言いながら、銀髪の女性の横を通り過ぎてゆく。
役目を終えた魔法陣も、それと共に光を喪い消えてゆくだろう……

シャンティ > 『「――」赤い女は笑って応える。言葉とは裏腹に相手を誂うような笑いを浮かべている。「――」』

ああ、ああ、本当に――
舞台に上がる名優というのはそれだけで輝かしく美しくあるものだ

"彼"とても敗れ倒れたとはいっても一つの矜持を示した

……自分には
自分にはそのようなことはできはしない

――表舞台へ

そのようなことを声がける者は此処しばらくで幾人かいた
そのようなことが自分にできるのか
そのようになったとして自分はなにができるのか

消えるべきときに消えられなかった半端者が
そして今また……消えるべきときに消えることすら許されなかったモノが


「えぇ、えぇ……本当に、本当に、残念……よぉ……せっか、く……輝か、せる……つも、り……だった、役者、も……舞台を、降りて……しまった、の、だも、のぉ……あ、は……次、の……講演、を……考、え……ない、と……だ、わぁ……いいえ、いいえ……"彼"、は……きっと、戻って、は……くる、で、しょう……けれ、ど……同じ、舞台、には……あがら、ない……で、しょう、か、らぁ……」


立ち去る赤い女……否。赤羽華楠を視線を送ることもなく、送り出す。
見えもしないのだから、当然ではある


「……さ、て……それ、なら……私、は……どう、しよう……か、しらぁ……? この、薔薇、も……ねぇ……?」

考えることは無限にある
彼女が刻みつけた証をどうするか
抜くのは簡単だ
解析して分解することも可能であるかも知れない
しかし――それをするか否か

それに今後は?
せっかく表に出てはみたものの……何もかも、うまくいきはしなかった
やはり自分は脚本家にも演出家にもなり得ない

……ああ、本当に――


「いや、に……なる、わぁ…… あぁ……せっか、く……かの、古参兵、まで……この場、に……きて、いると……いう、の、にぃ……今日は……もう、おしまい、だ、わぁ……」

女は本を閉じた

ご案内:「スラム」から赤羽 華楠さんが去りました。
ご案内:「スラム」からシャンティさんが去りました。