2021/10/17 のログ
■謎の男 > 彼女から美しい旋律が途絶える。
目の前の強者は今まで喰っていた弱者を捨て
唐突に現れたソレに対して振り返った。
彼女は確かに強者であり、
その足元には弱者が数多く居る。
しかし、その風貌にはいささか違和感がある。
まるで誰かに身ぐるみを剥がされたように、
今まで誰かに拘束されていたかのように、
正に弱者といった風貌が彼女の不気味さを助長している。
しかし、現れた男はもっと別の所に反応する。
引き金に掛けた指は一寸の狂いもなく微動だにしないまま
只、彼女に銃口を向けている。
<この道具は人間を容易に殺傷できる機能を有している。
何故、君は笑っている?>
笑顔とは一般的に喜ばしい時に浮かべるもの。
多くの人々を恐怖に陥れる道具を前に
彼女は魅惑的な笑顔を浮かべている。
男がそんな彼女に対して初めて放った言葉は
抑揚が無く感情などは感じられない。
ただ、その声は距離など関係なく異様に鮮明に聞こえる事だろう。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「人ではないからです。」
隠し立てするつもりもなければ、特に相手を脅かすつもりもない。
害意を向けることもなく、素肌を晒したままウィンクを一つ。
「そりゃあ痛いですよ。痛いですが、ここにいる人は問答無用で初手で発砲する人はいないと想定しています。
それに、もしも私と会話することもなく殺すつもりなら、先程放っているはず。
私が手を離す前。
それが、一番確実に背中から後頭部、どこでも捉えることができたはずです。」
変わらぬ笑顔で。
それでも流石に歩み寄ることはしないまま、両腕を広げて。
じゃらり、と、手錠につけられた鎖が音を立てる。
■謎の男 > <興味深い。>
彼女は自分が人間ではないと言った。
その言葉に男の瞳は虚ろなままであるも
全く動いていなかった表情筋をぴくりと震わせる。
人間であればこの身なりでこの場所をこのように立っていられないだろう。
彼女の言う事はこれまでにないほど合理的であった。
<僕に君を殺す意図はない。
殺せば僕は機会を得る事が出来ない。>
弱者の証をその手に括り付けた彼女は
なおも朗らかな表情を浮かべ続ける。
拳銃を持って人を殺すというのは
あまりに単純で人間的な発想に他ならない。
<質問する。君は強者だろうか?>
多くの人間を引き付けるであろう容姿と表情を持つ
ヒトならざる者へ男は、怪異は問う。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「質問に答えること。
それ自体は構いませんが、その見返りは何でしょう?」
相手の問いを受け止めてから、なおこの状況で首を傾げて問いに問いを返し。
「よくよく考えてみてください。
私は行為の邪魔をされ、未だに攻撃的な道具を突きつけられたままとなりますね?
ええ、暴力を振るわないことを対価にするというのであれば、それはそれ。
マイナスを0にするという交渉に従うわけにもいきません。
それに従えば、キリがなくなるわけです。」
単純な問いであれど……。
悪魔の……。いや、彼女のルールに則って、首を横に振る。
「お答えすることでの私へのメリットは?
貴方は今でも私を"脅せば言うことを聞く弱者"だとお思いならば、その交渉は成り立ちますが。
それならばその質問は矛盾する。」
悪魔はどこまでも冷静なまま。
■謎の男 > 質問に対して彼女はどこまでも合理的であった。
利害について強い意識を持っている事は明白で
多くの人間と触れてきた事がうかがえる。
その意識は彼女と相対するソレには持ち得ていないもの。
<君を弱者と決定するには、情報が不足している。>
男が拳銃を向けるのは、その反応で弱者か強者かを大まかに区別するためであろう。
であれば、先ほどの質問をする必要はなく
この矛盾に、男は気づいてはいない。
人間的な発想は持ち合わせていないようだ。
<君は見返りに何を求める?>
男は対価を求める彼女に、逆にその内容を問う。
この状況において異様に冷静に、利害を考えられる彼女は
間違いなく強者と言えるかもしれない。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「そうでしょう。そうでしょうとも。情報は大切です。
相手より強いか弱いか、それを知り得ているならば行動は悩む必要がなくなりますから。
ええ、己より強いと分かっていて向き合うのは、できる限り避けたい話。
…………つまり、情報は"価値"なんです。」
相手の言葉を受けながら、己が持つものの価値をただひたすらに上げていく。
いいものを持っているのですよ、と少しでも。
「………そうですね、お話をしても構いませんが、そんな怖いものを向けられていてはうまく話せません。
それ、私に譲ってもらっても構いませんか?」
相手の言葉から、相手が「真っ当」ではないと判断する。
相手にとって強烈な抑止力にならないその拳銃は、取るに足らないものであるという演出を重ねておいて、それを求める。
■謎の男 > <価値、重要性を表す指標。>
彼女の言う事は至極真っ当で、聡明な人間そのものだ。
交渉の駆け引きを理解し、相手に多くを支払わせる。
多くを支払わせ、破滅へと導く即ち悪魔的な存在。
しかし、彼女と相対する男は生憎交渉をしているつもりはないようだ。
正確には、交渉のテーブルを認識していないと言うべきか。
<承知した。>
彼女の言葉を受けた男はゆっくりと向けていた銃口を下げ
ゆっくりと彼女に少し歩み寄れば、取るに足らないその金属の塊を
彼女に差し出すであろう。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「はい、ありがとうございます。」
取るに足らないそれを受け取って、微笑む。
ああ、そうそう、これです。これが現代の"暴力の象徴"。
魔術で何かを生み出すにしても、現物を持って使ったことがあるかどうかは大切なポイントだ。
これを手にすることは、彼女にとっては多大な意味を持つ。
……もちろん、顔には出さないが。
「質問への答えを用意いたしましょう。
強者ではあると思います。ここにいる平均的な人間に対してですが。
普通の人間はこれ一発で死ぬことがあります。
私はおそらくこれ一発では死ぬことはありません。」
その上で、掌を向ければ、その掌の周囲は漆黒に覆われる。
まるでお絵かきソフトで塗りつぶしたかのような、CGのような黒。
それが、彼女の手の前を塗りつぶして掌が見えない。
「……こんな感じで、いろいろなことができますしね。」
■謎の男 > 彼女の奥底で考えている事は男には理解できていない。
理解できたとて男にとっては意味を持たない。
そして差し出した金属の塊が彼女の口を動かした。
少なくとも人間と同じようには死なない”強者”であると
彼女はそう言った。
同時に彼女の手を覆う不気味な黒色、
立体的に見えないその異様さは超自然的な力の保有を
決定づけるに他ならない。
<興味深い。>
男の目は虚ろなまま、しかし人間的な表現で言えば色が変わった。
今まで手渡す以外の動作をせず微動だにしていなかった男が
異常な速度で彼女に詰め寄り、右腕を振り被る。
その腕は明らかに人間のものでは無く
漆黒に染まりとても鋭利な刃物そのもの。
男は、怪異は、機械は最初から交渉の席には付いていなかった。
自らの進化のみを最優先に考える利己的な存在。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「………それで、どうされるおつもりで?」
相手の腕が変わるのは目に捉えた。
流石にピクリ、と身体が震えるが、一歩後ろに下がるにとどまる。
「まだ、情報は足りないのではありません?」
相手のその鋭利な刃物を見上げながら、唇の端を持ち上げる女。
彼女は"彼女らしくあるために"、反撃はしない。
むしろ、反撃はできない。
彼とは契約を結んでしまったから。
対価として話したものが満足に足るものか、彼女には分からない。
だからこそ、契約が完了していない場合も、まだある。
「………それを振り下ろすのならば。」
瞳が僅かに紅に明るくなり。
容赦をしないと匂わせる。
■謎の男 > <君を弱者でないと判断するには十分だ。>
弱者ではないならば力で学ぶものがある。
暴力とは最も野蛮で、本能的で、
合理的な情報収集法。
思慮の無い暴力を、怪異が作り出した刃物を見上げる彼女は笑っていた。
最初に拳銃を向けられた時と同じように。
<理解した。質問は無意味だった。>
一歩下がった彼女に、間髪入れずに右腕を振り下ろす。
ただし狙うのは人間でいう致命傷にはならない箇所。
怪異にとって殺すことに価値は無い。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「うーん、やっぱり。」
スローモーションのように右腕が振り下ろされる。
なるほど、なるほど。全裸の悪魔は学ぶ。
「この島は、以前いたところとは全く違う、と。」
黒い刃は柔肌を切り裂きながら、鮮血が激しく散る。
ああもう、こういうときだけは獣のように暴れて、戦える低級な悪魔が羨ましい。
痛いもんは痛い。
「………っ、が、ふっ……!」
顔、喉、そして心臓は狙われないが、二の腕から斜めに切り裂かれ、そのまま腹にまで刃が届き、抉られる。
1歩、2歩と後ろに下がって、壁にまで下がり。
「これは契約と関係のない、ただの暴力ということですね?」
ああ、痛い痛い。
激痛に、その笑顔が僅かに歪み、汗が流れ落ちる。
それでも、その行為を確認するように言葉を漏らして。
「…では。」
彼女を中心に、まるで煙が焚かれるかのように漆黒が広がっていく。
まずは、目潰し。 このまま逃げるにしても、戦うにしても。
視界を奪おうとする。
■謎の男 > 振り下ろされた刃に対して彼女は力で抵抗するという事は無かった。
刃が彼女の肌を裂き、その血を噴き上げさせる。人間と同じように。
身体が大きく裂かれ激しい出血と共に
壁際にまで下がった彼女が怪異に問う。
「これは暴力か?」と。
<暴力とは人間的な表現だ。僕には定義できない。
しかし、力を用いて情報を収集している事は事実だ。>
YESかNOかしかない機械は見返りを求めない。
ただ彼女の質問に答えた。
激痛ゆえかそれとも他の意図ゆえか
直後に笑顔を歪ませた彼女が発生させたのは漆黒の霧。
それは瞬く間に怪異を包み込んでその視界を奪う。
彼女を認知できなくなり、あちこちを見渡すが
逃げるつもりなど毛頭ないようだ。
折角得た機会を無駄にする理由は無い。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「なるほど、なるほど。
情報を集めたかった、と。」
相手の行動原理は理解した。
理解したまま、闇の中で飛び跳ねて壁の上にまでよじ登り、唇を歪めて肩と腹を抑える。
相手を、己の知っているものに例えるならば、………食べて相手の力を奪い取る魔獣のよう。
ああ、こんなのまで人の姿をとるのですか、と渋い顔。
「………………ああ、でも。」
ここで無理をしても、おそらく何も美味しくはない相手だ。
損得のみで動くのであれば、ここは逃げしかありえない。
ありえないけれど。
「一撃くらいはお返ししなければ、沽券に関わるんですよ。」
悪魔が歌う。 かすれた歌声とともにその背中に翼を生み出し、空中に舞い上がり。
血飛沫が今度は雨となって降り注ぐ。
全裸の女はずるりと身長ほどの槍を生み出しながら空中で静止して。
闇がうっすらと解けた頃、相手を視認できたところで。
「………………貴方は悪魔を舐めた。」
思い切り、ギン、っと紅の瞳が輝けば、三叉の槍を、真下にぶん投げる。
相手を縦に貫こうとする、殺意の塊のような落雷。
■謎の男 > 彼女はとても思慮深い存在だ。
人間を深く理解し、人間を喰らう。
彼女もまた人間とは全く異なる異質なものというべきか。
生み出された闇に彼女の存在は認識できない。
ただ、断続的に発生する音から彼女が何か動きを見せている事は分かる。
怪異は混乱も焦りを見せる事無く、只々冷静に音の発生している方向へ
顔を向ける。
<なるほど、君は。>
闇が晴れ出した時には、怪異の眼前には翼を生やし
空中に佇む彼女の姿。
血の雨と共に儚げな美しくも不気味な
悪魔の歌声と共に作り出されたのは彼女と同じサイズの槍。
利害を考慮しない彼女に容赦などない。
生み出された超自然の槍は雨雲に走る閃光のように
怪異に向けて放たれる。
虚ろな瞳に飛翔する槍先が映る。
発言も許さぬ速度のそれは地面ごと男の姿をとる怪異を貫く
<これが、悪魔の力...。魔術、それに類するもの...。>
貫かれた身体は勢いよく縦に裂かれ
鮮血の代わりに真っ黒い粉末のようなものをばら撒く。
真っ二つに分かれ男だったものが地面へと転がる。
断面は異様なほど漆黒に染まり、黒い砂状の物体が際限なく漏れ
地面へと広がってゆく。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > 「人ではない。」
ちぇ、っと舌打ちをする。
おかしくなった人であれば、まだ魔力を、生命力を吸えるのだけれども。
これはどうやらその類の人間ではないようだ。
最初に感じた違和感がこれだったのか、と理解すれば、渋い顔。
「………ま、ったく、この………。
理不尽に過ぎませんか、この島………。」
痛みにこらえながら地面に降り立てば、生み出した悪魔の翼は煙に消えて、ごほ、ごほ、っと咳き込んで膝をつく。
そりゃまあ、死にはしませんけど。
「………コレで死にましたかね。
よく分かりませんけど………」
手を伸ばして、己の腕を、腹を撫でて、傷口を埋めて隠して。
ふう、ふう、と吐息を二つ。
明らかに弱っているからか、よろめきながら立ち上がって。
周囲は、自分がばらまいた血で真っ赤に染まっていた。
ご案内:「スラム」から謎の男さんが去りました。
ご案内:「スラム」にエボルバーさんが現れました。
■エボルバー > 裂かれた人間だったものの形が崩れてゆく。
それを形作っていたと思われる黒い砂状の物体は
何時の間にか地面を黒い砂場と変貌させるほどに広がっていた。
その物体はまるで意思を持っているように
ばら撒かれた鮮血を覆い隠し彼女を囲むように広がる。
<その回復力は興味深い。>
その声は距離など関係なく直接響くように
彼女へと届くだろう。
傷口を埋めて回復させた方法に感心しているようにも受け止められるか。
傷を負って少なからず息を乱す彼女に対して
身体が裂かれて粉になってもなお、怪異の声は淡々と乱れが無い。
人間の姿はまやかしでこの不気味なものが怪異の本質と
決定づけるには十分な程に。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > ………様子を見る。
「まずいですねぇ。これ。」
あはは、と少しだけ笑って、肩を竦めて。
傷口はふさがったものの、一度思い切り攻撃を受けた後だ。
相手がダメージを受けているのかいないのか分からないその声色にうんざりする。
普段自分がやっている、ポーカーフェイス。
本音を隠すことがここまで不快だとは。 隠しているかどうかは分からないが。
「………一撃は返しましたし、そろそろ私は退散しようかな、と思うのですが?」
声をかける。先程の闇も、また"特に追いかけるほどの焦燥を感じていなかった"と取れば、追撃をしてこなかったこともうなずける。
冷静だからこそ、相手の戦力をしっかりと最大化して考えて、まずはへらへらと提案をしてみる。
■エボルバー > 機械にポーカーフェイスなどは存在しない。
ただ冷酷に事実のみを発言する。
ただそれだけの存在に過ぎない。
機械に隠し事という高度な事は出来ない。
<同じ内容をボクも提案する。
キミの攻撃はナノマスを激しく損耗させた。
補充しなければ機能に制限がかかる。>
例え言葉の意味は理解できなくとも
受けたダメージが大きく、これ以上戦いを続ける意思はないという事は伝わるだろうか。
彼女を囲む黒い砂漠はまるでモーセが海を割ったように
目の前で分かれて道を作る。
<ありがとう。キミの一撃はボクにとって
影響が大きい経験となった。>
何処の誰から学んだのか最後の最後に
怪異が見せた人間的な感謝の一言。
それは淡々と、しかし嫌味などない本音だ。
機械に隠し事という高度な事は出来ない。
そこからは追撃したり追求する事はもう無いだろう。
黒い砂は彼女から離れていき、周囲のコンクリート壁や廃墟に飛び掛かり覆ってゆく。
覆われた箇所は深緑色に変色し瞬く間に浸食され形が崩れてなくなる。
人間でいう食事を始めた機械が暫く言葉を発することは無いだろう。
■レヴァーリア・M・レイフィールド > ………。
相手の言葉を聞いて、話を聞いて。
僅かにふるりと身体が震える。
ああ、この私を。 この悪魔たる私を。
ただの踏み台として?
「………嗚呼、私はきっと貴方を許さないでしょう。」
首を横に振る。
悪魔としてプライドを貫くことが彼女の大切なコト。
そんな彼女の取引も何もかも無視しての、一方的な利益を得た発言。
それは彼女にとって、屈辱以外の何ものでもない。
歯を噛みしめれば、己の血の味がした。
機械であることは彼女は知らない。
だからこそ、それには納得も理解もできない。
唇を噛んだままその姿は私服へと代わり、いつものメガネをかけ直す。
「………それでは。」
自分が思っているより、冷たい声が出た。
■エボルバー > プライドを理解できない機械は
何故彼女が憤るかを理解できないだろう。
この機械は只々貪欲に自分の進化のために動く、
残忍な程に利己的なエゴイストと言える。
今日見せた力が彼女の、悪魔の持つ物の全てではないだろう。
憤る彼女に言葉は発さないが機械の経験には印象的な人物として
刻み込まれる。
彼女から吐かれた凍てつくように冷たい声を受けても
機械は言葉を発さずに食事を続けるのみであった。
食事は長きにわたることになる。
それが終わるころには周囲の物体や建造物の多くが
奇妙な形に削り取られ
新たな怪異としてスラムの住人に認知されることだろう。
ご案内:「スラム」からレヴァーリア・M・レイフィールドさんが去りました。
ご案内:「スラム」からエボルバーさんが去りました。