2021/11/05 のログ
ご案内:「スラム」に『篝火』さんが現れました。
『篝火』 >  
月夜を覆い隠すは鉄の怪鳥の鳴き声。
地面を均すのは百鬼夜行の鉄騎達。
それに対抗するは有象無象の荒くれもの。
此処落第街、スラムの一角。建設途中の何かが、けたたましい砲火で瞬く間に火に包まれた。
火薬と血の匂いが辺りを埋め尽くした。
これだけならある意味、何時も通りの抗争と言えるだろう。
だが、今回ばかりは少し話が違う。
何も、犯罪者ばかりが日陰者でもない。
そこでしか暮らせぬものが、ついでの様に踏み潰される事など、あっていいのだろうか。

『─────極地の極光<The Light from the Pole>』

答えは単純明快。

『冷たき炎<Aphoom=Zhah>─────!』

在っていい、はずもない。
獅子の方向と共に、全てを凍てつかせる腐食の炎が、無差別に撃ち込まれた砲弾を焼き尽くした。
反り立つ青い炎は、スラムの建造物の一部を包み、炎の鬣を持つ獅子が、その前に立つ。
その炎の背には無辜の民。口元は不満そうにへの字を描いていた。

「他人の喧嘩をどーこー言う気はねェが、コイツは"やりすぎ"だぜ」

喧嘩に介入する気は無いが、無辜の民を護れと"お願い"されちゃ断れない。
鉄火の裏側の一幕。獅子は、対岸の火事を眺めながらぼやいた。

「『虚無』のクソガキの方は上手くやッてンのか?ヘンなのに絡まれてねーだろうな?」

『篝火』 >  
避難できる奴は脅してでも無理矢理安全そうな場所へとやったりなんだったり
他の連中に護送を任せたり、自分より下や上を顎で使ったりとやりたい放題。
では、此処に立つ獅子は何を護るのか。人はそうだが、それだけではない。
建物だ。そう、人が住む場所そのものを護っている。
命あっての物種と言うが、こんな掃溜めだからこそ屋根一つとっても貴重なものだ。
事が収まった後の住む場所が無ければ、人は生きていけないのかもしれない。
それに、故合って動けない連中だって今後ろにいるわけだ。
適材適所。魔術により、広範囲をカバーできる獅子だからこそ、自ら矢面に立って見せた。
世の中には、わざわざ落第街に赴いて物を直す物好きもいるらしいが
こんな無差別な規模を、一々あてにしてはいられない。
何よりも、こっち側の出来事だ。こっち側で守るのが道理というもの。

「エル公とソレ公もどッかで走ッてンのか?
 つーか、無茶苦茶過ぎてわかンねェな……」

吐き捨てたぼやきは苛立ちの表れ。
此処最近、何故か酷く苛々する。
時折、頭痛迄もが通り抜けて散々だ。

「……何なンだ……?」

まるで、盤面に"異物"が入り込んだような違和感。
無いはずの心臓が早鐘を打つ錯覚さえ聞こえるようだ。
付近の送電塔を一瞥した途端、此方へと飛んでくる風切り音。
足元の炎がうねり、魔力と成る。

『火種のベール<Fire Up Veil>』

『炎を燃え立たせる者<Vorvadoss>』

手を翳すと同時に、上空を覆う炎のベール。
夜空を照らす紅の篝火。

「…………」

炎に照らされる表情は、相も変わらず曇っていた。

ご案内:「スラム」に『無形の暴君』さんが現れました。
『無形の暴君』 >  
これは任務と言うにはあまりに特殊である。そもそも、自分たちの成り立ち、そして生業は……などと、考えるのはおそらく余分であろう。そもそも、それを語れるほどに自分は深い存在でもない。

ゆえに

淡々と業務をこなす。避難させるべき人間を避難させ、障害となるものは排除し……
そして、此処に至る。

「……ん?」

炎が天空を覆う。
おそらくは砲撃を迎撃したものであろう。が、あくまで迎撃、防衛でしかない。
こんな真似をするのは……


「……『篝火』か?」

周囲を見回す。件の存在を見つける。
一足飛びに、側へと疾走る。

「……どうした? なにをしている?」

見知った獅子面に声をかけた

『篝火』 >  
「…………」

この体は炎そのもの。汗もかきはしない。
そのはずなのに、何なんだろうか。このどうしようもない悪寒は。
同時に湧き上がるどうしようもない苛立ち。
これは、殺意か?煌々と燃え広がる対岸を、金の双眸が眺めている最中────…。

「…ッ! ……ンだよ、お前か」

は、と振り向けばそこには見知った仲間がいた。
ハァー、と深い溜息を吐けば後頭部を掻いて視線を正面に戻した。

「見てわかンねーのか?オレ様はツエーから、この辺纏めて護ッてンだよ。
 避難させてもよ、此処に行くしかねェ連中だッているンだ。
 いざ、事が収まッて全部焼け野原はやるせねーだろ?つか、オレ様避難誘導とか得意じゃねェーし」

地上と空を回り、埋め尽くす青と紅のコントラスト。
この炎の壁がある限り、カバーできる範囲の砲撃は届く前に燃え尽きる。
直接尖兵が来るというなら、直接ぶちのめす。
それだけで十分だ。尤も、だからこそこの場を動けないのだが。

「で、お前の方こそなにしてンだよ?サボりか?ソレ……、……」

本名はいけない。此処はコードネームだ。

「…………お前、"コッチ側の名前"なンだッけ?」

『無形の暴君』 > 「……君は相変わらずだな。任務は……いや、いいか。
 君は、そうであってこそ君なのだしな。」

呆れたように言う。実際やや呆れてはいるが、彼に強要をするほどに狭量でもない。
この奔放さがある意味買われた部分もある。


「うん、確かに誘導などは苦手そうだな。
 誘導と言うより恫喝か何かになりそうだ。
 それ自体はやむを得なくは有るが、得策ではないだろう。」

ふむふむ、と一人勝手に納得する。

「しかし、いつまでやる気だ? このままでは君も動けまい?」

ふと、当然のことを疑問に思う。
強さを謳う彼では有るが、流石にいつか限界もこよう。


「む……そういえば、コードは教えてなかったか?
 《無行の暴君/フェイスレスタイラント》だ。
 覚えておいてくれればありがたいな」

素直にコードを答える。

「なお、先の質問に答えるなら、だ。
 別にサボっているわけではない。担当領域を一通り済ませた上で見回りに入っていただけだ」
 

『篝火』 >  
「ウルセーな。ちゃンとエル公に言われた仕事はしてンだろうが」

こうして裏の事を護るのも立派な仕事だ。
適材適所。やれることをやってるだけに過ぎない。
今回ばかりは苛立ちをあるのか、何処か当たる様に吐き捨てれば軽く自身の首を撫でた。

「実際ドーカツだッてよ。下ッ端にとめられたわ」

曰く、"カツアゲ"らしい。
気に入らない、と言った具合で吐き捨てた。
風切り音がしても、後は炎がオートで迎撃してくれる。
言葉を交わす余裕位、十分だ。

「ア?終わるまでに決まッてンだろ」

頼まれた以上、それが"スジ"だ。
当然、と言わんばかりに答えた。

「……フェ?何?長ェよ。なんか略せ略せ」

滅茶苦茶言っているぞなんかこいつ。

「フゥン……で、どーよ?どンくれェ逃げた?」