2021/11/06 のログ
■『無形の暴君』 >
「その点については、その通り。君は立派に仕事をしている。
恫喝、という点については……効率や心象という観点ではあまり良くないが。
それでもやるべきことはこなせている訳だしね。」
その辺りは、本当に彼らしい。
自分の僅かな記憶に残っている通りなので非情に安心する。
「……まあ、君ならそういうとは思ったが。
君なら、こなせるだろう、という信頼は有るが。
それでもそれなりに苦労はする、と私は考える。
だから――手伝えることは手伝おう。何か、必要なことは有るか?」
提案をする。
彼自身の矜持をできるだけ刺激しないようにしたつもりではある。
どこまで成功しているかは、少々謎だが。
「残念ながら、長いのはどうにもならない。
略すのは……まあ、ギリギリ許せるが。
フェイスレス、タイラント。好きな方で言ってくれてもいい。
もっと略せ、となると……考えものだが「
ごくごく真面目に応える。
何処か事務的でもありながら、真摯さもある奇妙な調子だ。
「どのくらい、という問いは答えづらいな。
ほぼ全部、といえたら理想的なんだけどね……
実際は、いいところ3割程度ではないかな。
そもそも、逃げれば済む、というものでもないしね」
正確な人数などわかるわけがない。
それだけ広大で、かつ、住人は無尽蔵と言ってもいいほどに増えていくのだ。
そこまで答え、考えたところで――
――違和感。
いや、違和感というには、説明がしづらい。
ただ何かが、違う、という感覚がある。
しかし、そもそも記憶力が怪しい自分のこの感覚は信じられるものか?
思わず、手帳を繰る。
同僚――この男、『篝火』否。『クロロ』という人物に関する情報を確認する。
■『篝火』 >
「そりゃそーだ。オレ様は、請け負ッた頼みはちゃンとやり通すからな」
カッカ、と満足げに笑って見せた。
誰がどう、という話じゃない。
そう言う風に生きると決めたからそうしている。
安請負してるつもりはないし、ちゃんと出来る事の線引きはしているつもりだ。
「手伝い?アー……」
一拍子置いて、思考を巡らす。
「飯、ッつーかなンか適当にオレ様にぶち込ンでくれりゃいいや。
薪入れるッつーンか?張りッぱなしだと魔力尽きるし、休むのダリーから頼むわ」
この体のいい所だ。
炎は燃えるものがある程広がる。
人間で言う所の食事、何でもいい。
燃えるものさえあれば、この体は何時までも魔力を供給できる。
実に雑なものの他の味方では在るが、ついでにする分にはその方が相手も楽だと思ったからだ。
「……まー、そンなとこだろうなァ」
此処は表と違って無法地帯だ。
法に従って非難するなんて市民の義務なんてありはしない。
此方がやっていることは善意のボランティアに他ならない。
従わない連中、従う連中、歯向かう連中。
手を煩わせる要素なんて、腐るほどある。
3割ほど動けば、其れでも上等だとは思う。
溜息交じりに、金色の瞳を細めればふと、相手の様子に気付いた。
なんだか、考え事をしているような……。
「おう、フェイタン。何してンだ?」
徐に訪ねた。因みに略称はコレらしい。
■『無形の暴君』 >
「ふむ……」
言われたことを考える。
飯……ぶち込む……さて
ぶち込む、というと銃弾の類が浮かぶが、多分そういうことではないだろう。
さて、何がいいだろうか
「こぶし……ああ、いや。
適当に、とはいうがなにかリクエストは有るか?
できる限り答えたいとは思う。」
やや胡乱でがあるが本心でもあった。
「うん?ああ――
うん……やはり、言うべきか」
疑問を口にされれば、少し悩む。
しかし、疑問をそのままには出来ない。
「君、少し様子がおかしくないか?
少なくとも、私は違和感を感じる。
具体的には……まあ、うまくいえないのだが。
余裕がない、とも少し違うな。ともかく、そんな感じだ。」
真剣に問いかける。自分に言える限界は此処だ。
うまく言語化出来ないのが恨めしい
「なにか問題が有るなら、この場をただ任せるのも考えものだ。
そういうこともある。あと、うん。
フェイタンは……いや、うん。まあいいか」
今は些細、だろう
■『篝火』 >
「お前今なンか言ッた???拳つッた???」
今間違いなく拳って言われた。
何だ、もしかして殴られるようなことをしたのか。
無意識のうちに逆鱗でも触れたのか。わからない…。
ちょっと今度飯でも奢ってやるべきか…。
「別に何でもいいッての。拳とか以外な?
燃えやすいモンなら、ゴミでも木屑でもなンでもいいや」
燃えれば実際何でも魔力に置換される。
程々の質量で程々の燃料。今はずっと放出状態である以上、燃費は悪いが。
「…………」
"余裕がない"。
そう言われると、ピクリと目じりが動いた。
ソレイユの言うとおりだ。事実、余裕がない。
「……今、色々風紀がバカやッてッけど、オレ様からみりゃァ蚊に刺されたみてーなモンだ」
確かに惨事では在る。
だが、元より表の秩序とは相容れぬ場所。
この様な事態が起きる事自体、予測されていないはずない。
事実、こうやって此方がスムーズに動けているのも、相応の下準備があったからこそだ。
「このバカ騒ぎの裏側で、なンつーか……"ヤな予感"がすンだよ」
「……どう言ッていいかわかンねェけど、どうしようもなくヘドが出るッつーンか?
ぶッちゃけ、ハッキリと言えねェ。カンッつー感じだし。ただ、そンな気がするンだよ」
氷山の一角。
この騒動に紛れて、裏にどうしようもない劇薬が紛れ込んだ気がする。
虫の知らせか、或いは……落ち着けばいい事では在るが、何故か不安に思わずにはいられない。
言い知れぬ、心の淀みだ。
■『無形の暴君』 >
「ああ、いや……ぶち込む、なんて言われたから、つい。
銃火器の類でもなさそうで安心したよ。
しかし、燃えやすいもの、ゴミ、木屑か……食として楽しむことはないのか?
その伝で言えば、油かガソリンか、という選択になってしまうが」
炎のような存在であることは聞いていたが、それにしても雑だ。
自分で言うのもなんだが、それでいいのか、と思う。
「……ふむ」
確かに、彼の言う通り。
今のこの事象は、何処まで行っても"落第街の日常"の延長でしかない。
気にはかけるが、かといってかの風紀委員に手出ししないのも其れが理由だ。
が――
「"ヤな予感"か。
それは、つまり――他の"何か"が侵食してきている、ということか?
そうであれば、私は調査をする必要が出てくる。」
潜入、調査は自分の職分だ。
新たに秩序を破壊する可能性が現れている、というのであれば調べなければならない。
「ちなみに、聞くが。
君としては、そのカンの信頼度と、危険度はどの程度のものだろう?」
■『篝火』 >
「ねェよ。味覚ねェし」
元より構造が違う。
そもそも味を感じない。口に入れれば全て灰に変わるだけ。
こんな状態で、食を楽しむなんてこと自体難しい。
楽しさが単純に見いだせない。そんな程度の理由だ。
「けどまァ、お前とエル公のおかげで作るのは楽しいがな。
つか、人の食にケチつけるけど、テメェ等も大概だろうが」
アジトで披露したツマミがそうだ。
如何にも料理と魔術は似ている。
知識の組み合わせでありながら、基礎が存在する楽しさだ。
大体、食事の事を言えば彼女も、特にエルも酷い。
放っておいたら栄養食しか食べなさそうだ。
呆れたように目を細め、横目で見やった。
「…………」
顎を指で撫でた後、頷いた。
「まァ、ヤマカン程度かもしンねーし、予言かもしンねー。
ぶッちゃけわかンねェけど……少なくとも、ソイツが"いる事は違いねェ"」
何が起こるか、どんな悪い事か。
その大きさの大小は測りかねる。
所詮は勘だが、此れだけは言える。
……このドス黒い何かは、今も自分たちを見ているかもしれない、と。
■『無形の暴君』 >
「ああ、そういうことか。
であれば、まあ……やむなしだな。
燃えやすいもの。一番重要なのはどの点だろう?
燃焼性か、質量か。それとも別の要素か」
真面目に検討を始める。
手持ちのものでは無理そうであれば、何かを運搬しなければいけないだろう。
「ん。私か?
ああ、君には言ってもいいか。いや、すでに言ったか……?
まあいいか。私も味覚は死んでいるのでね?
必然的に食は偏る」
言ってないと思ったが、何しろ記憶に自信はない。
まあとりあえずそういうときは言っておいたほうがいいだろう。
「……ふむ。
ならば、私も気にかけておこう。
君が気にするほどの存在だ。きっとろくなものではないだろうしな。
それを放置するのは、我々としては手落ちもいいところだ。
……爬虫類にかまけている場合ではないかもしれないな」
小さく息をつく。
此処のところ、小さな悪ばかりが現れては消えていた。
それだけなら、別に何も問題はない。
この街は何も変わることはない。
そのはず、だったのだが……そうではない、可能性がある、となれば。
捨て置くわけには行かない。
■『篝火』 >
「アー……あンま気にした事ねェや。
とりあえず、燃焼性でいーや。あンまデケェの投げられると死ぬ」
燃えれば結局何でもいい。
流石にいきなり巨大なものをぶつけられれば"窒息死"だ。
とりあえず、そう言う事と言う感じで軽く手をひらひら振った。
「なンだそりゃ。もしかして、エル公もか?
……もしかして、刺激物ばッか食ッてンじゃねェだろーな?」
思ったよりも食事情と言うよりは、お互い根本的に問題がありそうだ。
とは言え、味と痛みを勘違いするのは在りがちな事らしい。
痛みの感覚の麻痺、と言うよりは錯覚。
何にせよ、取りすぎは体には悪いのは事実。
そこばかりは注意せねばなるまい。その辺気を使っておかないと、彼女たちの健康に悪い。
「気に掛けるだけでいい。……余計なコトすンなよ?
テメェに死なれちゃ、寝覚めが悪ィーンだ」
大袈裟なと思うかもしれない。
だが、それ位の事と思っている。
今回は、何方かと言えば個人的な悪寒だ。
だからこそ、彼女たちを巻き込みたくないのが本心。
とは言え、止めはしない。今は予め釘を刺しておく。
「アイツ等なァ……何してンだ?喧嘩売ッた買ッたしといてよォ。
ケツ捲ッてしたり顔でもしてンのかね。ぶッちゃけ、イイ迷惑だぜ」
今回の発端となった違反組織。爬虫類の名を関していたのは覚えている。
興味は無いから詳しく憶えていないが、触りくらいは知っている。
此方としては、"巻き込まれた"以上いい迷惑だ。
どんな目的が在るかは知らないが、無法にも不文律は確かにある。
どんな世界でも、目立つ異端者は迫害されるのだ。
「このままだンまりなら、それこそ泥船だぜ」
何れ落第街にも居場所は無くなるだろう。
そこに居座り続けるのは、唯の馬鹿だ。
退屈そうに首を振れば、軽く伸びた。まだ、風切り音は鳴りやまない。
「おい、フェイタン。そろそろ燃料をくれ。
コイツは長丁場になるかな。暇なら付き合えよ」
なんて、顎で適当に指した。
風切り音が止むまで、闇夜を照らす紅と青は燃え盛り続けるだろう。
■『無形の暴君』 >
「うん? ああ……アイツは……まあ、同じようなもの、だな。
食の好み、という点ではアイツのほうがいいのではないか?
なにしろ、栄養補完食を主に食している。
偏った食よりはだいぶいいだろう。」
残念な女であった。
なにもかもが男の危惧通り……下手をすれば其れ以上だったかもしれない。
「そうはいうが、私の使命でもある。
使命を遂行しないのであれば、それは私にとって死んだも同然だ。」
そうであれば、行動しないことも、行動することも死に繋がるのでは……と、そこまでは口にしない。
「……が。君の心配はありがたい。
精々気をつけることにしよう。」
それが相手に対しての礼儀。
至極真面目に答えを出す。
「彼、もしくは彼ら、彼女らについては――」
相手の言いようを聞いて、考える
「捉えようによっては、街のバランスを崩す、とも取れる。
ただ……そうだな。君の言うように、泥舟に徹するのであれば、
ある意味無害、とも言える。
なかなかに判断に困る相手だな?」
難しい顔で自分の考えを語る。
「ふむ。手持ちはあまりないが、質量が多くても困るのだったな……
とりあえず、当面これで我慢してもらおう」
そういって、上着を無造作に""燃料として放り込む。
「まあ、しばらくは保つのではないか?
それと、暇なのは確かだからな。付き合いはさせてもらおうか。
定期的に燃料を注ぐ必要もあるだろう」
そう告げると、側に並び立った。
その顔に、闇夜を照らす輝きが落ち……曖昧な影を作り出していた。
ご案内:「スラム」から『篝火』さんが去りました。
ご案内:「スラム」から『無形の暴君』さんが去りました。