2021/11/07 のログ
ご案内:「スラム」にリスティさんが現れました。
■リスティ >
「んー、よく寝た……いや、寝すぎたな……」
何処かのボロ小屋の上で目を覚ます。
学生証は結局作れていないし、棺桶は宗教施設群に置いてきたので、寝床は持ってない。
当分あそこに行く気はない。遠いし。
いわゆる違法な宿泊施設を利用するのもよかったが、いまいち信用できなかった。
多少寒いが、吸血鬼の体はこれぐらいなら別になんともないし、
それなら、と適当に屋根を勝手に間借りして休んでいた。
ふわりと地面まで降下し、ふらふらと、ふわふわ浮遊しながらうろつき始めた。
周囲の状況確認だ。何か変わったことはないだろうか。
■リスティ >
と、紙切れが目に入る。まだ綺麗な状態だ。
スラムに落ちていれば、目につくというもの。
拾い上げて見れば二人の姿が書かれていて、報奨金も記されている。
「これは……指名手配書……?随分アナログな……」
落第街ならこれぐらいでちょうどいいのかも、と納得したり。
それにしてもデザインはどこかいまいちだ。
書かれている二人が、昨日聞いた蜥蜴とかいう組織の名前と結びつくのに時間はかからなかった。
「なるほどね…この更地は二人のせいだと言いたいわけだ」
均された土地が視界に入り、ぼんやりと眺めた。
手配書から手を離す。風に吹かれてひらひらと舞い、何処かに行った。
ご案内:「スラム」にノーフェイスさんが現れました。
■ノーフェイス >
「なんだか喧嘩みたいだよ?
この手配書の男の人と、女の子。
あと、金髪の女の子みたいな男の子が率いてる、
なんかよくわからない…カッコイイ制服のヒトたちの?」
舞ってきた手配書を手に取ったのは、今歩いてきたという風情の女。
空舞うドローンから降ってくるものでなし、その持ち主のほうにあえて近づいてきたのは、
誰かがぼやく声を耳ざとく聞きとがめたのかもしれない。
「そのフタリとヒトリがやってる喧嘩に、
この街全土が巻き込まれてるっていうカンジだと思う。
本人たちは、まるで聖戦(ジハド)でもしてるつもりかもしれないけど。
外側から見ちゃえば、なんてことのないよくある話に思えるかな~。
この三人が全員キュッ…ってなれば、すぐ終わる話なんだけどサ。
お馬さんに首くくって、引き回したりなんだったりして?」
時代錯誤な手配書を、ぺらぺらと振ってみせた。
「こんな寒い中、よくヘイキだねー。お嬢さん。
ボクなら凍え死んじゃうトコロだ」
■リスティ >
「金髪の女の子みたいな男の子が」
おもわず反芻する。もっと胡散臭い存在がリーダーなんだと思っていた。
いや、それは表向きの顔で、糸引く存在がいそうな気はするが。
「どうも。確かに普通の人には寒いかもね。
しっかり着込んどかないとだよ」
ちらりとそちらを見る。なにやら少しの違和感があるが、気に留めず。
「それにしても…なんというか、衝突するのはよくあることだね。
暴走してる感はあるけど、人間は何時の時代も変わんないんだな……」
薄着がちな格好の少女は、ふぅ、と一息吐いた。
腰に手を添え、堂々としている。
■ノーフェイス >
「そうそう、金髪の女の子みたいな男の子。
金髪の女の子・みたいな男の子、じゃなくて~
金髪の・女の子みたいな男の子、ね~?」
コートの襟元をぎゅっと合わせた。
もう息が白い、寒すぎて寒すぎて凍ってしまいそうだ。
「やりたいならやればいいんだよ。
ぶつからなければならないことだってある、
戦争はすることそのものが誤りなんじゃないんだから。
そこから何かを学んだり、新たに花が芽吹いたり、
はじまりは無益な戦争でも、それを無駄にしないことが大切だとボクは思う。
ニンゲンは間違うし、間違わないなんて面白くないじゃないか」
年若い風貌で物分かりのよいことを言おうとしても、
なにも風格や含蓄などでないのだが、自分の細顎を撫でながらしたり顔をしてみせた。
「ところでキミ…は?
こういうのって聞いていいのかわかんないんだよね、ボクはこのへん久々で。
人間は、と俯瞰するキミは、ニンゲンではないのかい?
寒そうなのにその姿、南極の雪女という風情ではないみたいだけど?」
■リスティ >
「金髪の・女の子みたいな男の子。
あんまり変わらない気もする」
とりあえず、自分の記憶にはそのような人物は居ない。
その特徴は覚えておくとしよう。現状の認識は、風紀の"危険人物"だ。
「言いたいことは分かるんだけどね……。
繰り返してたら無駄なんじゃないかなって思うよ。
世代が変わっちゃうとどうしようもないのかな」
こんどははぁ、とため息。
「私?吸血鬼ってやつだよ。ヴァンパイアっていうほうが正しいかな?
私もこの辺の事はあんまり詳しくないよ。最近起きたばっかりだしね。
そっちは……人間?違和感は異能のせいとか?」
こちらは隠すつもりは無いらしい。
■ノーフェイス >
「世代が変わる?」
顎を撫でていてご高説を語っていた女はその言葉に不意に視線をそらした。
「なるほど確かに、学んだことが伝わらないのは無駄になってしまう。
ほんの少し前だれかが築いた平和を誰かが壊している。
無思慮に壊しているのが無駄なんだとしたらそれを無駄にしないためにはどうしたらいいんだろう。
次の世代にちゃんと伝えること…フム、ナルホドねぇ~」
勝手に得心げにうなずく女は、彼女の返答には目を丸くした。
「血を吸うモノ…?。
キミは『普段から姿が見えているタイプ』なんだな。
おお、いと貴き夜の眷属よ。お初にお目にかかります。
ボクの名はノーフェイス。
なにかと聞かれると答えに窮する存在なんだけれど、
キミがまっすぐ答えてくれたから、ニンゲンではない、
ということはここに述べておきましょう」
うやうやしく跪いて頭を垂れる。
うすら笑いを浮かべているが、その興味は本物なのだ。
「いやしかし古城でも構えていそうなキミがどうしてその、
言い方が悪いのだけど、まるで野良猫のような暮らしを?
起きたばかりでありますと、財産もすべて荒らされてしまっていた、とか…?」
跪きながら見上げる、大柄なので、幼い少女の姿の彼女はこうしないと見降ろしてしまうから。
■リスティ >
「とは言え、伝えられるだけでは実感がね……」
しかし追体験するなら繰り返してしまうし、命も足りないだろう。
こればかりは簡単な話ではない。
「違うタイプが居るの?
ぜひとも会ってみたいけど、多分珍しいんだろうね。
昔から排斥されてたから、そもそも表に出てこようとしないし」
やれやれと肩をすくめる。
「私はリスティと名乗ってるよ。本名は秘密。
そっか、人間じゃないか……ちょっと残念」
そういう本人は、別に残念そうには見えない。
むしろ、興味深げな視線をそちらに向けている。
「ああ、長いお休みをしてたら、いつの間にか運び出されてたみたいで。
大暴れする気はないし、お金もそれなりに有るけど、学生証がないと施設もろくに使えないし。
別にそんなに不便もしてないし、騒ぎが落ち着くまで…ってとこかな」
この辺りなら学生証はなくても使える施設がある。
もちろん違法なものも多いが。
「あ、楽にしていいよ。寒いでしょ」
■ノーフェイス >
「キミの…同胞、というわけではないんだ。
たくさんいるのですが、言葉が通じる手合いではありませんので。
何もないところから笑い声が聞こえたら、どうぞお気をつけて」
期待をさせてしまうと、申し訳ないので、女はそう言った。
彼女のように美しくない吸血鬼はいる、ぶよぶよ血の袋のような存在、
女が語る見えないモノたちは、どちらかといえばそちらのほうに近いものだった。
「名は宝にして命、呼び名をいただけるだけでもありがたいくらい光栄サ。
ではリスティ、ボクのも通称のようなものだから、お互い様ということで…
空腹かい? ボクの血がどのようなモノかはわからないから、オススメはしない。
もしかしたらおなかを壊してしまうかも…」
ハイネックの襟首を下げて、白い首筋をさらして指でなぞってみる。
見た目は変わらない、薄く血管が透けるようなそれも人間とは寸分も。
けれど、彼女が抱く違和感が、それは本当に酷似した違うものだという判別も同時に察知できるだろう。
「リスティも?
そうなんだよ、ボクもそれで困ってた。
ボクはお金もないんだけど、学生証?どうやってもらえるんだろうね。
できればその、学校に入らないまま学生証を手に入れることはできないだろうか?
こちらに住み着いてるひとたちは、なぜかそうでもなさそうなのに、
明るい側の区画からものを買い込んでる姿を、たまに見るんだ…」
ありがとうと礼を言うと立ち上がり、適当なところに腰かけた。
なんだかんだとフランクかつ無礼、隣はいかがとポンポン手をたたく。
「もしかして何か…『裏ワザ』がある!
とボクは踏んでいるんだが…どうだろう?」
■リスティ >
「ああ、そっちか……そういうのが跋扈してるんだ。
ほんとに変わっちゃったな…世界……」
思い当たるものが無いわけではない。実際にそれを見たことはないが。
吸血するものも、コウモリから本当の意味での鬼まで色々居るものだ。
「じゃあ、そういうことで。よろしくノーフェイス。
うーん、その血に興味がないわけではないけど、今は困ってないかな。
目覚めてから二人ぐらいに分けてもらったし、そんなに燃費悪くないしね」
人間相手になら湧く、美味しそうだという感覚が湧いてこない。
自分にも理由はわからないが、そういうもの、なのだろう。
隣を誘われればふわりと浮かんで移動し、横に腰掛ける。
こちらは無警戒…余裕か、慢心か。
「『裏ワザ』といえば、そうだね。
聞いた話だと、この『落第街』で偽造の学生証が作れるらしくて。
でもこの騒ぎだと探すのも難しいでしょ。それでのんびり待ってるわけ」
風紀が圧力をかけている現状で、安々と表には出てこないだろう。
■ノーフェイス >
「フフフ…食に冒険するのは、なかなか手痛い経験もつきもの、だからね」
ひとまず彼女の食事事情に問題がないことをすると若干の安堵感を女は見せた。
襟を引っ張り上げて冷えた肌をあらためて保温する。
「指を切ったりすると、思わず自分の血をなめたりする。
その時の味とキミが味わう血の味は、どれくらい違うのだろう。
ボクが知ることのできない美味しさをキミは知ってる…なにかに喩えられたり、するかい?」
血以外の食事が採れるかもわからない隣の相手、きっと自分のコートの暖かさも必要はないだろう。
ぴったり寄り添うことのないパーソナルスペースを維持しながら。
「偽造の…学生証…?」
聞くと、女は炎のような明るい虹彩を燃え上がらせるように輝かせた。
「…すごいな、いいねぇ、ソレ。
すごくいいよぉ、痺れる響きじゃないか。
いかにもアウトロー!って感じで…偽物の学生証忍ばせて…表にいけるんだろ?
ボク好みだな、ソレ。いいこと聞いた、ありがとう、リスティ!
コネとかツテが見つかったら、はやめにキミの耳に入れることとするよ。
おかえしに、ボクからなにかキミに教えてあげられたらいいんだが」
とても楽しそうに声を弾ませた後、女はふたたび顎に手をあてた。
唇をねじって考え込むように。
■リスティ >
「死にはしないだろうけど、そうだね」
つまみ食いするのも悪くはないが、せめて何があってもいいよう寝床を決めてからだ。
「うーん。例えるのは難しいな……。
飲んだ後に少し火照るから、スープとか、お酒みたいな感じかも」
吸血鬼に人の感覚はわからない。
普通の食事でもある程度代用は出来るが、血に敵うものは存在しない。
よくある例えでは…やはりワインか。
「随分ご機嫌だね……。
学籍も有ることになるし、学園側からの手入れがなければ普通に暮らせるんじゃないかな。
私は学生証作ったらとりあえず携帯とやらを手に入れたい」
程度は作った技術者の技量によるのかも知れないが。
リスティはそこまで詳しくはない。
「別にいいよ。暇だし、話相手がいるだけでも良いこと。
ツテを教えてくれるってことなら尚良」
■ノーフェイス >
「チョコレート、メイプルシロップ、キャラメルシュガー…
ではなくて、なるほどね、ではキミがいまも凍えずに済んでいるのは、
キミがさずかった血のぬくもりのおかげ…
とか言ってみてもいいかな?詩のインスピレーションを探していてね~」
ずいぶん俗っぽい風体で女は笑った。
格好つけすぎていることを自覚して少し照れ臭そうにしながら。
「反体制、ロックだろ?
ボクがこの島でやりたいことに、ずばり合致してるんだよ、ソ・レ。
さっすがにここまで砲撃されてるの見ちゃうとちょっと尻込みしちゃうけど、
これは、この状況を作った手配書のふたりと、その金髪の女の子みたいな男の子がさ?
ちゃんと『セキニン』とれば、終わる話だから、大丈夫だよ。
『セキニン』取らずに逃げるなんて、こんな街でも許されることじゃないだろうからさ」
こういう街も、案外仁義とかで繋がってるしれないと女は思う。
何もない無秩序の街は街の形を維持できないことを知っている。
「欲のない御方だ。
ちょっと甘やかしたくなっちゃうタイプだね、キミは。
魅入られてるような気分だよ。
ううんでも、キミにお城や血もあげられないなら、あ、そうだ…!」
女は箱から降りて懐を探ると、女は一枚の大き目の栞を取り出した。
赤赤としたヒガンバナが押し花にされた、一点モノだ。
「これ見てよ。自然に自生はしないっていう花をこの街で見つけたんだ。
わくわくしないかい?
細かいところだけど…キミが目覚めたこの世界、この島を、
もっとわくわくして楽しみにできる助けになれれば…いいんだけど」
嘘はないけど、頑張ってつくったものを、見せたかっただけだったりして。
そんなはにかむような笑い。
■リスティ >
「甘味なら……ワインの入ったチョコとか近いのかな。
んー?……好きにしたらいいよ」
単に不死故に生命維持の必要がないだけだが、
そういう詩的なものが嫌いなわけでもない。
「反体制……」
人間的だなぁとは思うが、口にはしない。
「人がやってる以上、ずっとは続かないだろうし。
それまで私はのんびりしてるつもりだよ」
その終わり方はどうなるかはわからない。
どっちかが死んで終わり、にはならないと読んでいるが。
「欲深いのも考えものだしね……っと、何?」
座ったまま目で追っていれば、取り出されるのは栞。
「リコリス?これは……日本では彼岸花だっけ。綺麗に出来てるね。
……この時期に見れるものでもなかったはず」
素直にその出来を褒めた。
確かに、珍しいものだ。季節外れでもある。
少女は、変わってしまった世界に悲観はしておらず、興味はあるようだ。
■ノーフェイス >
「この荒れた街に、ヒガンバナ、リコリス…
赤くて美しい花を持ち込んだひとがいるんだよ。
フフフ、渾身の出来なんだよ!ビクビクしながら作ったんだ!
勝手に押し花にしちゃって怒られないといいけれど…
素敵な栞を作れたことをその子にお礼したくってね」
栞を、ひとしきり自慢したあと…
栞の出来か、それとも花の美しさか、失礼、とことわって女は再び懐にしまった。
「きっと面白い子のはずさ。
不思議な子のはず、その子がどんな物語に生きてるのか。
そのためにも…この街に留まるのもいいけど、
やっぱりアッチに行くための偽造学生証は必要かな。
なにかわかったら伝えるし、できたら融通してもらってくるよっと」
善は急げと女は言って、そのまま踵を返した。
真っ黒なコートの裾が翻り、白い手をひらひらと振って歩いていく。
「いと貴き夜の眷属、美しきリスティ。
また会おうね。
その時はキミにささげられた血のことも、もっといろんなことを聞きたい。
ボクはキミのことを勝手に、とても面白そうだ、と思った、だから。
キミにボクが、面白い、をあげられるように…準備もしておくね?」
そういうと、女はどこかマイペースに夜闇に溶け込んでいくのだ。
なんの約束もないけれど、なに、縁があればまた会える、学生証のこともあるし…。
■リスティ >
「置いていったのならいいんじゃないかな?目立つものだし」
お金にもならないだろうし。
「向こうに行く分には大丈夫だろうけど、風紀に捕まると面倒なのはそうだね。
のんびり探しながら待ってるよ」
立ち去ろうとする姿も、座ったまま眺めて。
「ん、じゃあねノーフェイス。夜は危ないから、気をつけてね。
貴方が生きてたら会えるだろうし、ほどほどに期待しておくよ」
今更なことを言いながら、その場で見送るのだろう。
ご案内:「スラム」からノーフェイスさんが去りました。
■リスティ >
「さて…何か他に情報ないかな、と」
夜目が効く自分でもその姿が追えなくなってから、
すっと立ち上がると、ふわふわと浮遊しながら路地に入っていった。
ご案内:「スラム」からリスティさんが去りました。