2022/01/07 のログ
ご案内:「スラム」にダスクスレイさんが現れました。
ご案内:「スラム」に芥子風 菖蒲さんが現れました。
■ダスクスレイ >
以前、盗みに入った時は失敗したが。
確かに異界の宝石、『碧の落涙』はいただいた。
隠し場所を変えたところで無駄だ。
虚空が私と共にあるのだからな。
後方に風紀の緊急車両のサイレンを聞きながら、スラムを歩く。
以前、ここでフラッシュグレネードを上手く使う女と遭遇したのだったな。
あいつは強かった………
だが、次は負けん。そう考えながら、空に浮かぶ三日月を見上げる。
こんな夜は思い出す。そう………
■芥子風 菖蒲 >
そんな怪盗の前に翻る黒衣の姿。
夜の暗がり煌めく青空の青。風に揺れるピアスの宝石。
漆塗りの鞘を担ぎ、少年は再び怪盗の前に立ちふさがっていた。
「……先回りしといて正解だったかな」
車から飛び出し、異能を全開にして"跳んだ"。
おかげで文字通りひとっとびだったけど、足がまだ痛む。
コイツは油断できない相手だ。だから、余り時間はかけられない。
あの時と同じ三日月の下だが、あの時の獣の瞳孔とは違う。
静かな、"日常"と変わらない青空が冷静に仮面を見据えていた。
「ねぇ」
何時もと変わらない調子で、声を掛ける。
「とりあえず、盗んだもの返してくれない?
一応聞くだけ聞くけど、そんな事して面白いの?」
あの時とは違う。
刀の先制攻撃ではなく、言葉を投げかけたのだ。
■ダスクスレイ >
目の前に現れたのは。
たった今、思い出していた男。
“黒”の風紀委員。芥子風菖蒲。
「……正解?」
右手を顎に、左手で虚空の柄頭に手を当ててオーバーな動作で思索する。
「はて、死地に飛び込むのが正解か? まして……」
殺気が満ちて。
「このダスクスレイを前にしてな」
次の瞬間、かけられたのは言葉。
以前は、まず一刀を受けた。
こいつは今までとは違う。何かが……
「返せと言われて返す怪盗がいるとでも?」
「ああ、面白いね……私の一挙手一投足に右往左往する風紀がね」
いつでも仕掛けられるように殺気のフィールドを張る。
乱れた瞬間が戦闘の合図。
周囲に隠れたスラムの住民が固唾を飲んでみているのがわかる。
■芥子風 菖蒲 >
「正解でしょ。犯人逃げられたら困るもん」
少なくとも此処で上手くいかなくても
後方からは他の風紀委員が後から着てくれるはずだ。
相手は単独犯。何かしらの"トラブル"がなければ
確実に挟み撃ちに出来る。充分な勝算だ。
この肌を切り裂く様な鋭い殺気。
……以前にも増して強くなっている気がする。
修行でもしたのかな?よくわからない。
ただ一つ言えるのは、前よりも"良くない感じ"が増したのは確かだ。
眉間に皺をよせ、それでもまだ刀は抜かない。
「さぁ、怪盗の事は良く知らない」
興味もない。
スラムの住民も巻き込むのは本意ではない。
軽く手を上げて、逃げる様には促しておく。
目は離さない。目を離した時に首を飛ばされてもおかしくない相手だ。
「怪盗の事は良く知らないけどさ、人を困らせて楽しいって言うのがよくわかんない」
「別に風紀を困らせたいだけなら、普通に喧嘩売れば?
わざわざ"怪盗"なんて気取らなくても十分でしょ」
■ダスクスレイ >
「フン、私を捕まえられるなどと思い上がるな」
全く、気に入らない。
風紀委員は、数ばかり群れているわけではない。
獅子も多数、在籍している。
そいつらに数で来られればさすがの私も勝ち目はない。
だが。
「なに、これから知っていってはどうかね?」
「ついでに私の虚空の切れ味も思い出すといい……」
鞘ごと手に持ち、ゆっくりと鞘から刀身を抜いていく。
これは儀式だ。
今から行われる、惨劇に対する。
「………気に入らない奴だ」
「私を戦闘不能にしたあの一撃からずっと考えていた…」
「お前の顔をどうやったら屈辱で歪めることができるか、とな」
「芥子風………菖蒲ぇ!!」
遠い間合いから斬る。
空間を裂いて風の刃が飛ぶ。その数、連ねて二閃。
■芥子風 菖蒲 >
空気がぶれる。
同時に風を切るように振り抜いた銀の刃が二重の風刃を弾いた。
銀色の切っ先が月天向けられ、即座に怪盗へと向けられる。
黒衣の端々を青空の様な光が包み、宵闇を淡く照らした。
「……まぁ、そうなるか」
此処で大人しくするような相手なら
初めから斬奪怪盗なんて大層な二つ名がつくはずもない。
こうなったら以上は腹を括ろう。
相手の切れ味は、嫌という程知っている。
「悪いけど、その辺りは知る気はないよ。
アンタがそう言う事する事情があるなら、考えてあげても────……」
即座に手首、黒衣の裾からワイヤーが飛び出る。
身体強化の異能に合わせた強化ワイヤーだ。
空を切った細糸がスラムの車を引っかけた。
「────……いいけど、ねッ!!」
みしりと腕の筋肉が軋む。
身体強化によって生まれる怪力が、軽々と車をぶん投げる。
轟音を立てて宙を舞う青の車体。車好きと持ち主にはごめんなさい。
その車の陰へとなる様に、少年も跳んだ。
そのままなら車の下敷きだが
アイツの持ってる切れ味なら真っ二つにすることも目に見える。
さっきの飛ぶ斬撃、多分当てつけっぽいけどそれの"盾"にもなる。
車の陰で縦一文字に刀を構え、"貫通"した時の防護の構えも怠らない。
車の下敷きになるならそれでもいいし、避けるならコイツを"足場"にして追い詰める。
何れにせよ、一気に踏み込んで一撃、唐竹をお見舞いする算段だが……上手くいくか?
■ダスクスレイ >
弾いた。
以前の芥子風菖蒲なら多少はダメージが入っていた。
そういう、捨て身の中で殺意をぶつけてくる男だった。
だが違う。
今のこいつは……!!
そして廃車同然のボロ車を怪力で投げつけてくるッ!!
ここまでは以前の電柱を投げ返したのと同じ…
問題は、どうこいつが変わったかだ!!
「私の腕も虚空の切れ味もッ!!」
宙を舞う車に向けて跳びかかる。
「上がっているのだよ!!」
斬撃無数。
車を細切れに寸断して芥子風菖蒲のいる方向へ。
ここまで分解すればなんの威力もない!!
「チェストォォォォォォォォ!!!」
気迫一線、蜻蛉からの袈裟懸け。
ただの気合剣法だが、私と虚空が使えば必殺の一撃足り得る!!
■芥子風 菖蒲 >
「……!」
思った通りだったとはいえ
以前よりも太刀筋も速さも上がってる。
もうちょっと瓦礫位残ると思っていたけど
これは少し、侮っていた。
侮りの代償と言わんばかりに鋭い袈裟斬り。
小さく舌打ちしつつ、縦に構えた刀で即座に受け止め
それを軸にぐるりと空中一回転で"受け流す"。
その剣の切れ味は嫌という程知っている。
真正面から"受け"を選んだら、自分事真っ二つだ。
「相変わらず、化け物だな……!」
青空と黒衣、夜と朝が一回転。
それでもまだこっちが"上"。
当初の予定と変わったが、上空から頭上目掛けて唐竹一閃。
空ごと切り裂き、刃を振り下ろした。
■ダスクスレイ >
「チッ」
その刀剣の技術、間違いない。
冷静で、それでいて……自分の身を守る術に長けた。
青空から振り下ろされる雷鳴一閃を、同様の技術……
刀剣を力の方向性に逆らわず受け流すことで捌いた。
「これの何が面白い?」
距離を取って語りかける。
今度は私が言葉をぶつける番。
「保身の受け太刀ッ!」
「以前のお前なら肉を斬らせて魂ごと轟断してきたぞ!!」
「なんてつまらない戦い方だ、日常に絆でも見出したか?」
「帰る場所なんて考えるな、お前の居場所はここだ……」
「剣戟飛び交う戦場なんだよ」
「お前は私と同じだ……芥子風菖蒲」
切っ先をヒュンヒュンと風切り音を鳴らしながら小刻みに振る。
「人殺しを楽しむべきなんだ……そうだろう?」
「───風紀委員」
■芥子風 菖蒲 >
刃が空振り、ほどなくして地に足ついた。
軽く土埃を巻き上げ、引き下がった怪盗の姿を見据える。
構え直す刃、受けた部分が既に"割れて"いる。
「……楽しむ?オレが……?」
怒り、怒声。
それはある種の歪んだ期待だった。
困惑と驚愕に、ぱちくりと青空が瞬きだ。
思えば、というよりも当然だけど
コイツがどういう人間かは理解出来てないし最初はする気もなかった。
けど、今は違う。だから最初は"言葉"だった。
──────ああ、そうか。コイツ……。
「……もしかして、勉強嫌い?」
……まぁ、言葉選びはあれがちょっとあれな少年だが
要するにコイツは、何処となく日常に"忌避"を抱いている。
その理由までは感じれないけど、少年は機敏には敏感だ。
その怒声の裏には一種の忌避感を感じずにはいられなかった。
そして、少年は首を振った。
「生憎だけど……」
切っ先を怪盗へと向ける。
「オレの居場所はオレが決めるし、初めから楽しいと思った事は無いよ」
そこに待ってくれる人がいるから。
待ってくれる人たちを護る為に必要な手段を取っているだけだ。
戦いに身を投じる楽しさは、無意識に感じていたのかもしれない。
それを"わかってしまった"からこそ、少年は真っ向から否定した。
ハッキリとした物言いを最後に、少年の刃はズルリとずれる。
カラン、と地面に落ちる刀身の先。それでもまだ、戦意喪失とは程遠い。
未だに青空は、宵闇を照らしている。
「だから、アンタはオレが"止める"」
その言葉と共に、今度は此方から大きく踏み込んだ。
切っ先が無い分リーチが縮まるが、刃はまだ斬れる。
折れた刀身で横一線、その脇腹目掛けて斬りかかった。
■ダスクスレイ >
「…………!!」
勉強嫌い? こいつはバカか?
そういう話をしているわけでは………
いや、違わない。私はもう、生ぬるくて授業なんて受けていられない。
勉強嫌いと何が違う?
それとも違う………私は…僕は。
日常を捨てようとしているのか…それとも。
日常に捨てられようとしているのか………
仮面の下の表情が歪んでいるのが自分でもはっきりわかった。
「お………」
その否定は。
私そのものの否定。
このダスクスレイの全否定だッ!!
私の期待を裏切ったな、凡人がァァァァァ!!
「お前はッ!! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
激昂、脇腹を狙った一線を身を引いて回避し。
瞬間、万力のような力で構えていた刃を解き放つ。
解放のカタルシス。
瞬速八連斬り。
私の奥義、八連流星で寸刻みになって死ねぇ!!!
■芥子風 菖蒲 >
怪人が激怒した。
その理由は感覚的にわからなくはないけど
この"嫌な感覚"がより一層増した。
切っ先が無い分回避されやすいのは分かってる。
間合いも全然遠い。だけど、それでもやる。
援護はきっともう少し。だから、もう少し───────……。
「……!」
相手の刃がぶれる。
いや、ぶれたように見える程の無数の斬撃。
そう、"避けきれない斬撃"だ。
「─────ッ!」
それでもやるしかない。
迫りくる刃の波を折れた一本の刀で凌ぐしかない。
刃を盾に構え、出来る限りは斬撃に合わせ……─────。
「く…ぅ…!」
……れたら、どれほど楽か。
一撃目いなし、二撃三撃。肩を、胸部を引き裂いた。
鮮血と黒衣の破片が血飛沫と舞い、衝撃に少年の体躯がのけぞる。
「ま……ッ」
"避けきれない"。
前線で戦うからわかる。これは、"死"だ。
一瞬だけ、まさしく走馬灯のように景色がスローになっていく。
間違いなく他の犠牲者みたいにバラバラに……。
■芥子風 菖蒲 >
───────……観念出来るものか……!
■芥子風 菖蒲 >
『生きる』って約束したんだ。
その衝動に呼応するかのように青い炎が右目に灯る。
瞬間、"6回分の金切り音"が響いた。
刀から巻き上がる煙は、素早く擦れあった熱によるもの。
それを振り払った少年の腕は"あらぬ方向に曲がった"。
本来ならば出来るはずの無い、人体の限界を超えた高速連撃。
あの瞬間で『それに呼応する為の速度でいなして見せた』のだ。
その結果、筋肉も骨も一瞬でズタボロになっているだろう。
強化異能と言えど、人間の体。限界を越えればしっぺ返しが待っている。
その正体は、今ハッキリと浮かんでいる。
少年の背後に、青空の元を見下ろす青い人影。
顔の見えない女性像だが、その口元は菩薩のように微笑んでいる。
その指先に伝わる青い糸は、少年の全身に伝わっていた。
『───────……』
見開き、炎を宿す右目が怪盗を見やった。
光なき青空。少年の意識はもう"なかった"。
身体強化異能が本懐ではない、少年の本来の異能。
急所の一撃を放った異能の正体は、これだ。
少年の体躯は文字通りの操り人形だ。
菩薩の指先が体躯を動かし、折れた切っ先を切り上げ"握り締めた"。
疑似的な二刀流。握り締めた指先から血が零れ
黒衣の体躯が、土煙を巻き上げて踏み込んだ。
先程の仕返しと言わんばかりに、青空が
流星の如く、剣筋が煌めく。
二刀合わせて、『十六連撃』の太刀筋が怪盗に襲い掛かる────
■ダスクスレイ >
「は………ッ」
八連流星が弾かれるだと!?
掻い潜るでもない、初見のッ最速のッ最強のッ……奥義を!!
次の瞬間、剣戟が無数に襲いかかる。
バカな、二刀ッ!? どこから!
折った刃を拾っ…………
熱。痛み……どうして…
「がああァアァァァァッ!!?」
自分が予期せぬ反撃を受けたケモノのような声を上げている。
何故だ、どうして……わからない。
こいつは理解を超えているッ!!
防いだのは僅か四回。全身をズタズタに斬り裂かれ。
片膝をついて蹲る。
この出血量は……嘘だ………僕が死ぬなんて…
■ダスクスレイ >
「必ず死なす………この手で殺す!!」
■ダスクスレイ >
保身よりも、目の前の敵を殺せないことへの拒絶。
その自我が魔剣との一体化を促す。
魔剣同調。
全身の傷を肉体の意に反して増殖した細胞が埋め。
以前、追影切人と戦った時と同じ。
今度は右腕から胸元までを金属が覆っていた。
金属化した部分全体の肥大化もしている。
「この力で………」
「この私が………」
「負けるはずがないッ!!!」
吠え、刃を振り上げた瞬間。
「!!」
駆けつけた風紀委員の援護射撃を受けて二歩、三歩と下がる。
「ま、まだだ……私はまだこいつを…」
銃弾を弾きながら下がったその先は。
以前、自分が逃げるために刳り貫いた地面の穴。
そのまま地下水路に落ち。流される。
私は……私は………!!
こいつに勝つためなら、人間であろうと捨ててやる!!
■芥子風 菖蒲 >
菩薩像は笑みを絶やさず、糸先の事も気に掛けない。
その微笑みとは裏腹に少年の命が燃え尽きるまで
少年に害を加えたものを殲滅すべく少年を動かす。
代償は守るべきものの命だというのに
余りにも二律背反である為の操作系異能。
身体強化は、その操作に耐える為のものなのだろう。
だが、軋む肉と骨は、その力が制御出来ていないものだと物語っていた。
『───────……』
物言わぬ少年と、吼える剣魔。
その身は文字通り剣の魔物。
菩薩と刃が対峙した矢先、援軍が到着した。
退場した剣魔を追いかけるまでもなく、ふつりと糸が切れた。
「───────……!?ゲホッ!?ガホッ!!」
不意に意識が戻ったその時、最初に少年を襲ったのは激痛だった。
あの時と同じだ。初めて怪盗と対峙したあの時と同じ。
せき込み血を吐き、全身と両手の痛みに悶えて地に伏せた。
文字通り糸の切れた人形のようにのたうち回り
援護に来た風紀委員に駆けつけられた。
彼等の声も遠ざかる中、少年が思ったのは……。
「……かあ、さ……」
何となく。
そう、意識の無い中。なんとなくだけど
母親の声が、聞こえた気がした。
少年はその後病院に搬送され、一命を取り留める事になる。
地下水路からダスクスレイを追いかけた風紀委員達は
消息を掴めず、今回も怪盗は逃げおおせる事と成った。
膨れ上がる緊迫感。
これが予兆する終わりが何時訪れるかは……。
それはまだ、誰にもわからない。
ご案内:「スラム」からダスクスレイさんが去りました。
ご案内:「スラム」から芥子風 菖蒲さんが去りました。