2022/12/21 のログ
ご案内:「スラム」にエボルバーさんが現れました。
■エボルバー > ...ソレは音もなく現れる。
活気を失い項垂れて過ごす人々とは異なる、
まるで辺りを観察するように歩む一人の青年の元に。
「こんばんは、青年。」
ソレは気配すら感じさせず。
無機質な抑揚のない男性の声が
青年の背後から言葉を投げかける。
そこに佇むはスラムに似つかわしい
小綺麗なスーツを身に纏った一人の男。
そして同時に軽い金属音。
男は両手で構えた散弾銃を青年へ向けていた。
威嚇や脅迫をするような様子も無く
無表情と生気の感じられない翡翠色の瞳を向ける。
まるで銃を向けられた青年の様子を観察するかの如く。
■ジョン・ドゥ >
「……うおっ」
そりゃあ、いきなり声を掛けられたら驚くだろう。それも、ろくに気配も感じなかったっていうのにだ。
「あー……どうも。このへんの人、か?」
いや、それにしちゃどうにも恰好がミスマッチだ。まあそれだけなら、気にする事でもないんだが。ついでとばかりに銃を向けられたら困ったもんだ。
「……なんか、気に障るような事したか?」
速やかに両手を上げ、頭の後ろに。近距離で散弾銃。表情と視線の動きが不自然に少ない。こりゃあ、人間じゃねえな。
参ったな。戦っても勝てる気がしないし。さっさと降参するしかないな。
■エボルバー > 青年の問いには...
「いいや、君は何もしていない。」
淡々と向けられる無機質な瞳は依然として変わらず。
向けた銃口もそのまま。
「これは高い殺傷力を発揮する武器だ。
この距離で発砲すれば、死に至る可能性は高い。
しかし、君は落ち着いているようだ。」
一般的な人間に銃を向けた場合、
相手を冷静に分析などしない。紡ぐ言葉に動揺が混じり
あらゆる行動が絡まって上手くいかなくなる。
しかし、目の前の青年はそうではない。
降伏の構えを見せたとはいえ
男をまっすぐ視線にとらえたまま、思考を巡らせている。
「何故、君はこの状況で落ち着いている?」
今度はソレが青年に問う。
■ジョン・ドゥ >
「ならそういうモノ向けないでほしいね……」
何もしてないのに銃口を向けられるって、俺の普段の行いってどれだけ悪かったのか、儚んじゃったよ。
「……あー、そういう」
ますます、人間っぽくないな。機械(マシーン)か?動物らしさも足りない……というか、生き物っぽくないな。
「別に。大したことじゃない」
右と左と見てみるが、どいつもこいつも見て見ぬふり。まあ、そうだろうな。巻き込まれたらたまったもんじゃない。逃げるのが正解だ。
散弾銃、いわゆるショットガン。イメージとは裏腹に、使ってる弾種で性能が変わる。込められてる弾はなんだ?わざとこの距離に詰めてるのはブラフか、真か?
「死にたくないからな」
……どのみち、どうなるかはコイツ次第か。突然撃たれないようにだけは気を付けておきたいが。
引き鉄(トリガー)に掛かった指だけは意識から外せないな。
■エボルバー > ここに住まうは確かな明日すら保証されぬ弱き人々。
故に不穏を嗅ぎ取る嗅覚も一線級。
ソレと青年を取り巻く人々は次第に離れてゆく。
しかしソレは構うことなく。
どこかで拾ったこの散弾銃を構え続ける。
それは散弾銃にしてはしっかりと
照準を付けているように見えるだろう。
つまり甘めの照準では外す可能性があるということ。
そう、装填されているのはスラッグ弾だ。
ソレは投げかけられた青年の言葉を受ける。
「では何故、逃走を図らない?」
死から逃れるために、脅威に迫ると生物は逃走を選択する。
これは合理的な理屈だ。
目の前の青年は逃げることなく、こちらに顔を向けたまま。
トリガーを引けば命中するタイミングにその身を晒し続けているのだ。
そこにソレは疑問を抱く。
■ジョン・ドゥ >
「あー……なんだ。お前、殺しがしたいわけじゃないだろ?」
両手を上げながら、なにを話してるんだろうな、俺。命握られてるんだぞ。
「ついでに言えば、慌てふためく人間を見て楽しみたい、っていう享楽主義でもなさそうだ。それなら、見せつけるんじゃなく、威嚇射撃の一つもすればいい……はあ」
そうしてくれたら、俺ももう少しやりやすかったんだけどな。黙って構えてるだけな分、隙も無いし、もう後手に回った時点でどうにもならないよな。
「というわけで、逃げる必要を感じない。むしろ、逃げようと背中を見せたりすれば、なすすべなく殺される可能性が高いだろ?」
……なんで俺、こんな事解説してるんだ?なんだか馬鹿らしくなってきたな……。
「……なあ、手、下ろしてもいいか?」
■エボルバー > この青年、良く見ている。
こちらの動作一つ一つから行動の目的を推察し
最も安全であろう選択肢を導き出している。
銃を向けられて普通の人間にこれは難しい。
もっとこういった状況が当たり前の環境で育たなければ。
「君が逃走したとしても、僕は君を撃たない。
弱者に攻撃を加えても、学びはほとんど無い。」
変化に適応出来ぬものが弱者となる。
変化し続け、残るためには強者から学ぶものだ。
故に、強力な武器を前にして動揺しないものに興味を抱く。
「銃を前にした上で、落ち着いていられるのは
撃たれても問題の無い者が多い。
君は、どうだろうか?」
すなわち銃が脅威とならないような”力”を持つという可能性。
ソレはその可能性を求めている。
「上げろと、言った記憶は無い。」
手を上げたままの青年にはそう一言を添えて。
■ジョン・ドゥ >
「ああ、そういうな。お勉強がしたいのか、あんた」
じゃあ遠慮なく、と手を下ろして。やっと一息つける。
「勘違いされる前にいっておくけどな、俺は普通の人間で、装備も見た目通りだ。だから、そいつで撃たれれば死ぬ。それ、多分スラッグだろ?散弾なら当たり所で致命傷にならないかもしれないが、そいつじゃ、腹をぶち抜かれても助からないな」
命中精度の低さは距離で補える。この距離ならまあ、外れない。で、散弾と違って破壊力が高いとなれば、手足で急所を守っても、その手足が吹っ飛ぶだけだ。
「だから、こうして向き合って、一瞬の隙でも見逃さないようにしてるんだ。まあそれも、無駄みたいだけどな。機械(マシーン)はそんなミスをしないから、機械(マシーン)だからな」
だから困ってる。どうやって切り抜けるか、に関してはどうしたものか、から進展なし。殺意や敵意があればいくらでもやり様があるんだけどなあ。
■エボルバー > 「何故、君は僕が機械であると、判断した?」
ソレが無機質な機械であることは間違いが無い。
しかし、ソレは一度たりとも自身を機械と発言してない。
また、機械と推察されるような形態変化も行っていない。
人間の身体のままだというのに。
人間味は無くとも機械以外の存在である可能性も十分に考えられる。
機械は青年の観察眼に興味を抱いている。
「・・・。」
そしてソレは少しの間、沈黙に入った。
>対象ロック
>再分析開始...
>高エネルギー反応検出
ソレが青年に声をかけた理由。
本当に普通の人間であれば意に介することなど無かっただろう。
感知される非生物由来の気配。
青年は自身を普通の人間だと言うが、真実はどうだ。
「君は、本当に自分が、普通の人間だと言うのか?」
ソレは青年に今一度問う。
■ジョン・ドゥ >
「……普通、の定義によるな」
肩を竦めてから、腕をくんで、首を回す。さて、思ったよりも妙な展開になってきた。
「少なくとも、俺は撃たれたら死ぬし、普通の人間は撃たれたら死ぬだろ。だから、俺は普通の人間って事で」
いい加減な三段論法。だが、この島において、普通の定義は複雑だ。俺からすると、銃弾一つで死ぬか死なないか。そこが大きな区別の一つって所だな。
「ちなみに、お前の事を機械だと思ったのは、動物的な、揺らぎ、ブレ、不安定さがなかったからだ。どうやっても、生物なら不安定さがどこかに現れる。それがお前にはない、もしくは俺が見つけられないレベルで少ないからな。そりゃあ、動物っぽくないな、ってくらいは思うだろ」
それが悪い訳じゃない。完全に動物に擬態するつもりなら、そういう不安定さまでエミュレートする必要があるだろうけどな。
「……で、結局なんなんだ、お前。俺はジョン・ドゥ、正規学生で、能力無しの一般生徒だぞ?」
■エボルバー > 普通の人間には絶対に無い要素を持ちながら
その自覚を持たず、自身を普通と言い放つ。
彼は自分の特異性に気付いていないのか。
「恐らく君は、君が思っている以上に特異な存在かもしれない。」
特異性があるといっても具体的に何なのか。
それはソレにとっても分からない。
少なくともここでは、可能性が示されただけだ。
「より精密な再現には、不安定さが必要か。
良い知見を感謝する。」
不安定さとは無駄のこと。
しかしその無駄な部分にこそ、人間味が表れる。
それは機械にとって理解が難しい領域である事は確かだ。
その言葉は遠回しにソレ自身が機械であることを肯定する。
「僕は変化を求めているモノだ。」
青年の存在を問う質問にはソレはそう答えるのみ。
■ジョン・ドゥ >
「ああ、この中の事か?」
人差し指で、頭を叩く。この中には、この島に連れてこられて埋め込まれた、特殊なチップが入ってる。おかげさまで、携帯端末をいちいち持ち歩かなくても電子情報をやり取り出来て便利なんだけどな。
「実は俺もよくわかってないんだよな。頭の中を好き勝手に弄られたのは間違いないんだが……それにどんな能力(プログラム)が入ってるか、知らないもんでな」
特異な存在と言えばそうなんだろうな。まあ、それでもこの島で実験動物(モルモット)なんて少なくもない。しっかし、味気ない自己紹介(セールス)だな。
「……そうかい。少しは変化のお手伝いが出来ましたかね?……帰っていいか?」
とりあえず、俺を殺すつもりではないらしい。となれば、こいつの気が変わる前にこの場を離れるのが得策だろう。なにせ、俺とコイツじゃ、圧倒的に相性が悪いわけだからな。
■エボルバー > 青年の頭部からは一定量の電磁波が検出されている。
その要素については青年の口から出た情報と一致する。
では、青年の身体全体から発されているエネルギーは?
まだまだ未知な点は多い。
「恐らく、その能力[プログラム]は、
決して小さくない影響力を持っていると推測できる。」
電子情報をやり取りするというだけにしては、
不可解極める機械的エネルギー。
その他の用途が有ることは想像に難くない。
そしてそれが、強力なものであることも。
「能力は、自覚を伴って使用してこそ、初めて強力なものとなる。」
ソレは期待する。
「君を試すには、早すぎた。」
ソレはそう言い残す。
変化のお手伝いにはならなかったが、大きな投資にはなった。
次第に男の身体は不気味に黒ずんでゆく。
やがて真っ黒な人型となれば、硝子質の金属音と共に
粉末状に崩れてゆき地面に広がる漆黒の砂溜まりと化す。
その奇妙な砂群は意思を持つように、組織的に散らばっていき
最終的にそこには何も残らない。
■ジョン・ドゥ >
「……たしかにな。そうでもなけりゃ、リスクを冒した投資なんてするはずもない、か」
恐らく俺の頭、だけじゃなく体にも何らかの影響は出てるんだろう。具体的にはわからないが、コイツの目からすれば、見てわかるほどに何等かの状態が示されてるんだろう。
「……それ、また来るって意味か」
滲んで沈んでいくように消えた男を見送って、頭を掻く。困ったもんだ。
「自覚をもって、ね」
それが出来るならいいんだが……一体何なんだろうな、このチップの中身は。
「それにしても……」
妙な奴に気に入られたもんだ。俺は肩を竦めてから、盛大にため息をついた。さあて、次に会った時は同じ失敗はしないようにしないと、な。
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