2020/08/11 のログ
ご案内:「黄泉の穴」にサクヤさんが現れました。
サクヤ > 落第街の奥深く、未だに大変容の爪痕として残されている『黄泉の穴』。
本来、荒事に向かない自分がこうしてここを訪れたのは祭祀局の仕事である。
施されている魔術バリケードが緩んでいないかどうかの確認だけなのだが
風紀委員などに任せるにしても夏季休暇中は人手が足りないのでこうして手伝いに来たのだ。

特に結界が緩んでいることはなかったが、何人か人が訪れた痕跡がある。
きっと遺留物や珍しい魔道具を狙った人々が訪れたのだろう。

真っ黒なブラックホールを思わせる未解析領域を眺める。
まるで心まで吸い込まれてしまいそうな気がした。

ご案内:「黄泉の穴」に黒井結城さんが現れました。
黒井結城 > スラム街の奥地にあると言われる危険地帯に僕はやってきました。
シャドウゴーストが潜伏するには持って来いの場所であり、実際に人の出入りを目撃したと言う情報も耳に入りました。

空振りの可能性もあるのですが、新聞部でもある僕は最悪何かネタになればと思ったのです。

早速、袴姿の人影を見つけました。
僕は数メートルほど後ろから声を掛けました。

「あの、ここの方ですか?」

我ながら声の掛け方が下手くそです。

サクヤ > ぼんやりしていたので黒井が接近するのに気づかず、
声をかけられれば驚いて振り返った。
そこにいたのは同い年くらいの少年であった。

「ひゃ……、あ、ごめんなさい……。
 ここの方……スラムの住人という意味ではちがいます。
 ぼくは祭祀局所属のサクヤというものです。
 祭祀局のお仕事として『黄泉の穴』の魔術的バリケードが緩んでいないか、確認しに来ました」

念の為、1mほどの距離をとって相手に自分の端末の祭祀局員である証明書を見せる。

「……そういうあなたは……ここへはどうして?
 一般生徒の立ち入りは学園で禁止されていますよ」

相手がスラムの住人であったなら、急いで逃げなければならないが
一般生徒ならば、一緒にここから立ち退いて移動を促そうと考える。

黒井結城 > 声を掛けると言うのはいつも思うのですが、本当に難しいです。
今から声を掛けますよ~~っと声を掛けた時点で驚かれるの確定ですし。
いきなり触られると尚の事驚きますよね。

今回も背筋をピンを伸ばしてから、相手がこちらに顔を向けます。
綺麗な容姿です。女の子っぽいですが、男の子と言っても通じそうです。

「こちらこそごめんなさい。
僕は一年の黒井結城と言います。
サクヤさんは祭祀局の人なんですね。
凄い、祭祀局の証明書なんて初めて見た。」

僕は1メートルの距離を保ったまま証明書を眺めます。
真偽の程は分かりませんが、刺客ではなさそうな。

「僕、事情がありまして刺客に追われているんですね。
だからこういう潜伏していそうな場所はたまに見て回ってるんです。
サクヤさんこそ、お仕事があるなら僕に構わずどうぞ。
僕はこれでも自衛くらいはできますから。」

僕も証明書を持ってくれば良かったかと思いましたが。
結局のところ、学園の許可を得ていない行動なので意味はないでしょう。
そして、僕は僕でここでやるべきことがあります。
なので、距離を保ったまま周囲を見て回ります。

サクヤ > 驚いてしまったことに相手に失礼になるかな、なんて思って
丁寧な自己紹介に慌てて頭を軽く下げた。

「これはご丁寧にありがとうございます。
 一年生の黒井さん……ですか?
 いえ、祭祀局員であるからといってすごいとは言えませんが……」

実のところ自分は備品扱いであり、与えられる仕事も雑用が多いのですごいとは思えない。
他の局員と比べれば雲泥の差だ。
黒井の事情を聞いて、「刺客」という言葉にびっくりしたように目を丸くする。

「刺客、ですか……?
 あの、黒井さんのご事情はよくわかりませんが、追われるということはただなりません。
 風紀委員などにご相談はされましたか?
 それから、今ここにはたぶんサクヤ以外はどなたもいないかと思います。

 もし、黒井さんがご迷惑でなければ一緒にここから退去して
 風紀委員に相談されることを提案します」

なんて、言ってるうちに黒井は彼のやるべきことをするために周囲を見て回っているらしい。
どうするべきか、悩む。自分は風紀委員のように強制退去の権利があるわけではないので
なるべく穏便に提案して促すことしかできないが、さて。

黒井結城 > いきなり声を掛けたのはこっちなのに、頭を下げられてしまいました。
僕も慌てて頭を下げます。

「祭祀局員さんってことは学園の生徒なんですよね?
普段はどこにいらっしゃるのですか?」

僕は折角お会いしたサクヤさんに尋ねながら周囲の瓦礫や、足跡を確かめます。
人数は少数でしょうか。どうやら今日も空振りのようです。
これはこれで安心するべきなんでしょうが。

「相談はしたことないんですけど、風紀委員会さんも学園を守るのに忙しいんじゃないんですか?
個人的な事情ですし、あまり大きい話にしたくないんですが。」

これは正直な所、僕なりに考えての事です。
風紀の方も公安の方もそれぞれ思惑に沿って動いていると聞きます。
僕みたいに気儘に自衛だの人助けをしているような人間は距離を置いた方が良いような気がします。

いきなりサクヤさんにこんなことを言う訳にいかないので、笑みを浮かべたまま曖昧に答えますが。
あまり長居すると迷惑になりそうです。
でも、ちょっと気になることも。
僕はサクヤさんの顔をじっと眺めていました。

サクヤ > お互い向かい合って相手に気を遣って頭を下げている。
お互い様なので、自分から先に頭を上げた。

「いえ、サクヤは祭祀局員ですが正確には『備品』です。
 生徒とも教師ともちがいますが、人権などの一般的な権利は与えられています。
 普段は祭祀局に出向き、常世学園の霊的守護を担うお仕事をしています」

黒井が地面や瓦礫を見て、何かを調べているのを少し距離を近づけて観察する。
人の足跡であるのはわかるのだがそれ以上のことはサクヤにはわからない。
これが黒井の言う『刺客』なのだろうか。

「学園に所属している以上、風紀委員は風紀――生徒の安全や生活を守るためにお仕事をされると思います。
 相談も決して無駄ではないと思いますが、黒井さん個人が大事にしたくないのならば……」

個人の事情にもそれぞれ理由があり、踏み込まれたくないこともあると
サクヤは学んでいるので、黒井が相談しないと選択したならばそれ以上は何も言わない。
しかし、じっと自分の顔を見つめる黒井に不思議そうな顔を浮かべた。

「黒井さん? 何かサクヤの顔についていますか?」

黒井結城 > 「え、備品!?」

いきなり耳を疑う様な単語が飛び出してきました。
人権が保障されている備品ってどういうことですか?
ロボットとは違うんですよね?
僕は頭が痛くなってきたような気がして、思わず額に右手を宛てます。
こっちでもこういう話はあるんですね。

僕が足跡を調べている所をサクヤさんが見ています。
あちら仕事は大丈夫なのでしょうか?
それとも、僕が居ると出来ない仕事なのでしょうか。

「それはそうですけど、そうなるとそれこそ風紀委員会さんの監視下になりませんか?
僕は今の所は僕一人でやっていきたいのでこちらから関わり合いにはあまりなりたくないです。」

心配頂いて申し訳ないのですが、これは僕なりの考えです。
なのでサクヤさんの提案はお断りさせて頂きました。

「あ、言ってもいいのかな…。」

気づかれてしまいました。
僕は胸の中で生じた感情に戸惑いながら、慎重に口を動かします。

「その、サクヤさんっておいしそうって言われたことないですか?」

サクヤ > 驚く黒井を別に不思議なことなんかない様子でサクヤは淡々と説明する。

「はい、備品です。
 サクヤは過去在籍していたとある生徒のクローン体です。
 今の世界事情ではクローン体に対する人権整備、法整備、倫理的な問題のクリアなどが整っていないので
 暫定的に常世学園内でのみ人権を認められています」

自分の胸に右手を当てる。
詳しい事情をこれ以上説明するには流石に祭祀局の許可がいるが。
黒井が自分の仕事をしている最中、こちらを気にしてくれたので軽く説明する。

「お気になさらず。サクヤのお仕事は魔術的バリケード、いわゆる結界の緩みがないかの確認です。
 結界は変わらず敷いてありますので、これを祭祀局へ報告するだけです。
 むしろ、黒井さんの身に危険がないかどうか、
 結界を預かる身としてはお守りすることも仕事だと思います」

微笑んで、そう説明してみせる。とはいえ彼にとっては余計なお世話だろうか。

「風紀委員会の監視――、そうですね。刺客に追われているとなると
 身の安全の確保のために監視下に置かれる可能性は高いです。
 わかりました、黒井さんがお一人でやられるというご判断をされたのなら、
 サクヤからは何もいいません。

 ただ、困ったことが起こったら、個人的なご相談としてサクヤがお手伝いしても構いませんでしょうか?」

それから、彼から「おいしそう」と言われればぱちりとまばたきをして、
少し考えた後、「はい」と頷いた。

「サクヤは異能の影響で異能者・異形・悪魔・魔術師・神性などの相手に対して
 そのように思われることがあるそうです。
 ただ、肉体の構成はおおよそ人間と変わらないので人肉食の趣向がなければそのまま食すのはおすすめしません。

 ……あ、そのような質問では、なかったでしょうか?
 ごめんなさい、ぼく、まだ学習中の個体なので……」

黒井結城 > 「はぁ~~…。」

クローン人間か…こっちの世界でもわざわざクローンを作るんだ。
僕はサクヤさんが当然のように説明される話を口をぽっかりと開けた状態で聞いていました。
僕も人造人間なので似た様なものなのですが。
おまけに島の中でないと暮らしにくい状況も同じようです。

「そうなんですか、パッと見て分かるなんてやっぱり凄いんですね。
あ、僕の方も終わりましたので大丈夫です。
今の所は刺客の出入りしている様子もなさそうです。
なので出た方が良いのなら今日はもう帰ります。」

無理やり追い出すようなことをしないでくれたサクヤさんに笑みを向けます。
余計な手間をかけてしまって申し訳ないです。

「一人ではどうしようもなくなった時に考えてみますね。」

この話はこれで終わりとばかりに軽く頷きました。
それよりも。

「あ、おいしそうってのは語弊がありますけど。
サクヤさんがご自身が言われているように特殊な力をお持ちなんですね。
僕の居た所でもそう言った研究があったので、サクヤさんもそんな能力を持っているのかなって。」

具体的な方法は食す以外にもっとリスクの低いやり方があったはずです。
思い出してしまい、僕は顔が熱くなりました。

サクヤ > 「……ごめんなさい、事情が事情でびっくりされましたよね。
 でもそのわりに黒井さんはあまり驚かれていませんね……。
 顔にはあまり出ないタイプでしょうか?」

顎に人差し指を当てて、首をひねる。

「す、すごいでしょうか? サクヤにとってはあたり前のことなので
 すごい事かは分かりかねます……!
 あ、黒井さんのご用事も終わりましたか?
 では、あまり長居するのはいけないと思うので一緒に帰りましょう」

危険な区域なので、黒井少年の身の安全を確保する意味で一緒に途中まで帰ることを提案する。
断られたならば、ちょっと寂しい表情を見せるだろうか。

「はい、サクヤの異能については祭祀局の許可がなければお答えできませんが
 おおよそそのような異能だと思っていただけるとありがたいです。
 黒井さんのいた所……、黒井さんはもしや異邦の方でしょうか?」

質問を投げかけながら落第街を抜ける道を歩いていく。
と、顔が熱くなって赤くなる黒井にまた不思議そうな顔を向けて

「どうしました、黒井さん? 夏の暑さで熱中症……でしょうか? 顔が赤いです」

黒井結城 > 「まあ、僕も人造人間なので。
クローンではないのですが、逃げ出した理由もその辺なんですよね。
だからあまり驚かなかったですね。
人権が保障されているだけこっちの方がいいと思います。」

腕を組み、ため息を吐きます。
どこも似た様な話はあるのですね。

「僕は見てもあまりわからないので、凄いですよ。
そうですね、サクヤさんを困らせるのも悪いですし。
一緒に帰りましょうか。」

一緒に買えるのならばもう少し近くに居てもいいかな。
そう判断した僕は漸くサクヤさんの隣へと近づきます。

「そうですよ、別世界の人間です。
だから送られてくる刺客も別世界からの刺客です。
流石にそんなに頻繁には来ないですけどね。」

聞かれたことに応え乍ら、落第街へと向かいます。
途中、顔を見られる視線を逸らしました。

「いや、その、僕の所でやってた力を与える方法ってのが結構衝撃的だったんですけど。
サクヤさんはそういうの既に経験あるのかなって。」

他人の経験はどうしても気になります。
相手が同世代位なら尚の事。

サクヤ > 「人造人間……、そうでしたか。
 黒井さんは自分を作った場所から逃げ出したのですね。
 それは、倫理的な問題があったからでしょうか?
 それとも人権が保証されていなかったから……でしょうか」

黒井の身の上話を聞きながら、自分と似たような存在が居たことに軽く驚いている。
とはいえここは常世学園、クローンも異邦の世界ならその技術もあるのは不思議ではない。
一緒に帰ることになれば嬉しそうに黒井の隣を歩いていく。
ゴミゴミした落第街までの道行きもどこか楽しそうな素振り。

「そう、だったのですか。
 黒井さんはこの世界に来て、元の世界の刺客とお一人で戦って……
 心細くはありませんか?」

少し、心配になる。正確には同い年ではないけれど
同世代の少年がそんな心細い戦いをしているのならば、なにか手助けが必要だと思ったからだ。
顔を逸らされると、首を傾げ

「衝撃的な方法……? ごめんなさい、具体的にどんな方法か教えていただけますか」

不確定なことには上手く答えられないのでそう聞き返す。
それから、赤い黒井の顔をもう一度見るべく回り込み、
「失礼します」と断ってから彼の額に右手を伸ばして熱を計ろうとする。
炎天下の中、熱中症であったなら大変だからだ。

黒井結城 > 「倫理的な問題はわからないですけど…。
戦闘マシーンのように人殺しを共有されたら逃げたくなりませんか?
結局こっちに来て刺客と戦っているから似た様なモノかも知れませんが。
あ、当然人権なんてありませんよ。」

サクヤさんは僕との会話で楽しんでくれているのか、
足取りも身振りも軽いです。
僕もこんな時間は珍しいので、思わず頬が緩んでいます。

「そうですね…敢えて言うのなら、お友達が欲しいかなと。」

これは僕の直近の重要課題です。
なので今日もいの一番で口にしました。

「えっと…その……。」

こちらを覗き、具体的にと聞いてきます。
思わず視線が泳いでいると、額に手が触れます。
熱中症はまるでないのですが、ひんやりした皮膚の感触に肌が泡立ちました。

「つまりその、セックスとかの経験はありますか。」

いつもならアレとかで暈すのですが、具体的にとのことでしたので思わず直球で尋ねます。
人気のない通りとは言え、僕は外で何を口にしているのでしょう。

サクヤ > 黒井の過酷であった環境を聞くとみるみるうちに悲しそうな顔になる。

「それは……確かに、逃げ出したくなります。
 倫理的にも大問題だと思いますし、人権が保証されていないのなら尚の事。
 ……ごめんなさい、本当は黒井さんの環境を同情すべきではないのですが
 サクヤはそうではなくてよかった……と思ってしまいました」

恥じるようにうつむいて、それから友達が欲しいという黒井にまた不思議そうな顔をする。

「黒井さんは常世学園に来たばかりでしょうか。
 おおよそ学園での半年が過ぎたと思いますが、お友達はできませんか?

 えっと……サクヤは備品ですから、お友達には不適当かも知れませんが
 それでもよければお友達になります」

少年の前に回り込んで額に手を当てて熱を計る。
ひんやりとした手のひらが、暖かな額に触れた。

「うーん、熱はありませんね……。でも今年の夏も熱いですから
 あまり炎天下の中で動き回るのは良くないですね。
 はやく日陰の涼しい場所に移動しちゃいましょう」

熱を計り終えてまた、黒井の隣に移動すれば
黒井の口からかなり直球の質問をされる。

「せ、っくす……?」

ぽかんと口を開いて何を言われたのかを反芻すると
みるみるうちに今度はこっちの顔が赤く熱くなった。
うつむいて、もじもじと両手を合わせながら

「……性交渉、は……経験ありません……
 サクヤは、その……性別が……」

言いづらそうにもごもごと言葉を小さく零すだけ。
しかし、キッと顔を上げると恥ずかしそうに

「く、黒井さん。初対面の相手にセンシティブな質問をするのは
 場合によってはセクシャルハラスメントに当たります!
 そ、そういうの……、気をつけたほうが、ぼくはいいと思います……!
 えっちなのは、いけません!」

そう勇気を振り絞って言い放つ。

黒井結城 > 「別に深刻な事態になる前に逃げ出したし。
今は養父母の所で暮らしているから大丈夫ですよ。
幸いこの島に居る限りは普通に暮らせますから。
それにサクヤさんの言う通り、サクヤさんが同じような境遇じゃなくて良かったです。」

僕はあっという間に喋ってました。
多少なり早口になっていそうです。
やっぱりこの話は聞く人によってはヘビーな話なのでしょうか。
この島なら他にも酷い境遇の人が居ても可笑しくはなさそうなんですが。

「最近来たばかりだったのと、最初の頃に上手く動けなかったので
友達居ないんです。 サクヤさんが良かったら是非!」

額を触れられている間、僕は静かに右手の拳を握りしめました。
やりました! 初めてのお友達です。

「多分暑さの所為じゃないと思うんですけど。」

通りを歩きながら、今度は僕がサクヤさんに視線を向けます。
どうやら向こうが赤くなる番のようでした。

そして、この反応は本人が言っているように経験がない様子です。
僕も未経験なのでお互い様なんですが。

「具体的にって言ってきたのはサクヤさんですよ?
と言うか、僕の居た所はそういうやり方で力を授ける研究もしてたから聞いたのに。
サクヤさんは教わってないんですか?」

サクヤ > 「そう、でしたか……。
 ご両親がいらして、今普通に暮らしているのならすごく良かったです。
 あ、でもご両親を悲しませないためにも本当に危ないことは避けてくださいね?」

明らかにホッとした顔で黒井に微笑みかける。
それから、友達になったのなら、少し困ったような微笑みを見せ

「でも、サクヤはあくまで生徒ではありませんから……
 ちゃんと学園の生徒の方でもお友達を作ってくださいね」

そう老婆心ながら助言した。
暑さのせいで赤くなっているわけではないと黒井が答える意味が
サクヤにもようやく分かった。

「そ、それはそうですけれど……でも、その、もう少し言い方や恥じらいが……。
 う、うーん。……いえ、サクヤも自分の異能を把握するため
 きちんとした性教育は受けていますし、そういう方法で力の受け渡しをすることも聞いています……
 でも……あの、ぼくは……本当に力を必要としていて、正しいことのために使える人にしか
 そういうことはしたくないです……」

恥じらったまま小さな声で呟いて。

黒井結城 > 「そこはこの島に感謝してます。
他の場所ならこんな風に落ち着いて暮らしてるなんてできないでしょうから。
はい、気を付けます。」

安堵の表情が垣間見えると、僕も気持ちが楽になります。
その後のお小言には舌をペロリと覗かせて。

「2学期が始まったら頑張ります。
今は夏休み中でしょう?
修了式までに接点を作れなかった僕にはどうしようもなくて。」

頬を染めているサクヤさんを前に、力なく笑いました。
普通は一学期中にどうにかするんだと、夏休みに入ってから知ったのです。

「でも、具体的に言わないと通じなかったでしょう?
一目のある所で聞きなおされるよりもましです。
別に僕とそういうことをしようって話じゃなくて……したことあるのかなと思っただけで。
あ、でもサクヤさん可愛いのは、間違いないですよ。」

何を言っているのか自分でもよくわかりません。
とにかく、外の熱さとは関係ない理由で頭の中でショートしてしまいそうです。

サクヤ > 「……はい、常世学園が、ひいては常世島全体が異邦人さんたちの、
 なにより黒井さんたちの落ち着いた場所、受け皿となれるのならば
 サクヤにとっても誇らしく、嬉しい気持ちになります」

サクヤにとって生まれてから世界の全ては常世島、常世学園だけであるから
それが褒められているのは素直に嬉しいしそうした島のシステムとして役に立てていることは誇らしいことである。

お小言には2学期から頑張ると宣言する黒井に、大きく頷いて

「そうなんですか? サクヤは生徒ではないので学校に通ったことがないから
 わかりませんが、でもきちんと約束してくれるなら友達としても安心できます」

結果がどうあれ、努力しようとしている姿勢は褒めたい。

「……それは、そうですけれど……。
 ここだって、ひと目があるといえばあるんですから。

 黒井、さんと……?」

自分と目の前の少年が体を重ねる姿が想像できなくて
何より自分の体の秘密を明かしたくなくて、困ったような悲しいような表情をしてしまう。
「可愛い」と言われても、なんだか複雑そうにうつむいて

「……サクヤは、オリジナルの生徒が男性でしたから
 自分もそうあるべきだと思っています。
 ”可愛い”と言われても、どう、答えていいか……」

もじもじと指先を合わせたまま、困ってしまって口をつぐむ。
それから、もう落第街の出入り口に着いたのだと気づけば
話題を強引に切り替えるように顔を上げて

「さ、着きました!サクヤは祭祀局へ帰りますが、ここからは別の道でしょうし
 ここでお別れしましょう。
 黒井さん、お会いできて光栄でした。またお会いしましょう」

そう言って微笑んで手を振った。

黒井結城 > 「これからもお世話になりますね。」

僕はそういうと、サクヤさんに再び頭を下げました。
島を維持しているのはサクヤさんたちの努力の賜物であることを今日改めて実感したからです。

「でも、たまにはどこか遊びに行きませんか。
と言っても島の中ですけど。」

まだまだ夏休みです。
折角友達になったのだし今度どこかに行きたいです。
スイカを食べるとかでも十分楽しめます。

「あ~、そうなんですか。
それは悪いことをしました。
でも今どきって男でも可愛いは可愛いって言いませんか?」

どうやら男らしい、格好いいを求めているようです。
僕は気まずい空気が漂い始めたことに気づき、口数が減ってしまします。

「そうですね、また会った時に。
送って頂きありがとうございました。」

僕もまた、両手を振って見送ります。
とっても楽しいひと時でした。

サクヤ > 「遊びに……あの、ぼく遊びと言われましてもよくわからなくて
 あ、でもご迷惑でなければぜひ誘っていただけたら嬉しいです」

備品の自分が遊ぶ。もちろん自由時間や行動は許されているけれど
イマイチ遊んだことがないのでわからない。
嬉しくないわけではないが、本当に自分なんかと遊んで楽しいだろうか?
不安は尽きない。

「あ、いえ、褒めてくださっているのはわかるんです。
 ですから……本来なら『ありがとうございます』と答えるべきでしたね。
 それに正確にはサクヤは男性でも……いえ、何でもありません」

慌てて気まずい空気を打ち消すように笑って、
それから最後の別れの挨拶。
ぺこりと頭を下げたあと、委員会街へと向かってあるき出し
その小さな姿はすぐに見えなくなっただろう。

ご案内:「黄泉の穴」からサクヤさんが去りました。
ご案内:「黄泉の穴」から黒井結城さんが去りました。
ご案内:「黄泉の穴」に持流 童男さんが現れました。
持流 童男 > 「はぁ・・・はぁ・・・・」

心が磨り減っている、駄目だ、心が・・・壊れそうだ・・!

どうすればいいんだ・・

「だれか・・・たすけて・・・」

圧倒的な怪異の数、憔悴仕切っている心は、怪異に取って好物だ

怪異の波が押し寄せる

目を閉じて、覚悟を決めようとした時。

持流 童男 > ーーーー意識を失った
持流 童男 > ベルトが出現した、そのベルトはいびつで、磨り減っていた。しかし、意識を失った持流の体がひとりでに動く

[・・・・・・・]

「しばらく、お前の体を借りる・・」


「「「ーーーー変身」」」」

血涙をながして

磨耗の刻、黄昏時、逢魔時!!絶対、絶滅 、寂滅、必滅、列滅、

ノイズがかかった荘厳な音楽が流れるとともに地面に凄まじい圧力がかかり黄昏れが持流を包んでいく


「ゔぁーじん」「あぽかりぷす」

「キング」


そして黄昏の中から現れたのは血涙を流すかのごとくの黄昏のマントを纏った、魔王のような
姿の異形だった。