2020/08/18 のログ
ご案内:「黄泉の穴」に紅月 純さんが現れました。
紅月 純 > 「待ちやがれ!!」

一人の男を、金属バットを構えたチンピラが追いかける。
落第街、スラムではそれなりに見かける光景。
そのきっかけは珍しい部類だが。

「クソ博士め!相変わらず面倒な案件をぶち込んできやがる……!!」

クソ博士 >  
回想。

『いやぁ、参ったもんだね』

からからと笑うおっさん。
周囲には散らばった書類。

『研究の資料はともかく、実験に使う道具は破損。精霊は逃げる。貴重な素材は盗まれた!いやぁ、わざわざ研究室というピンポイントな場所を狙うかなぁー?してやられたわぁ』

もう笑うしかない、という状況のようだ。

『まぁ、君なら魔法使えば追えるよ。発信機もある。そう簡単に持ってかれてたまるかという意地が役に立ったね』

紅月 純 > 「あーもう!クソが!どいつもこいつもクソだなおい!!やってられるか!!」

障害物を抜け、直線しかない場所に追い込み、ようやく捕縛できるチャンスが来た。

「お縄にかかれやぁ!『ADD-FORCE-Z』!!一発殴らせろぁ!!」

魔法を詠唱、踏み込んで正面に加力。
自分の体を吹き飛ばした勢いのまま、背を向ける盗人の後頭部に拳をぶつける。

紅月 純 > ゴッ、と重い音を立てて転がる盗人。
それをさらに蹴り飛ばすことでを慣性を削ぐ。

「……ふぅ」

満身創痍の盗人から荷物を丸ごと持っていく。
どれが盗まれたもんかわからんし、何よりも面倒臭い場所に逃げ込んだ迷惑料だ。許さん。

「……で、初めてきたが、これが」

紅月 純 > 黄泉の穴。
なんか色々あって生まれたやべー穴。
昔そこで活動してたヤツの遺産とか間接的に生まれた怪異の巣窟とかがあるらしい。
いわゆる、裏ラスボスのダンジョンとか(人生の)エンドコンテンツとかそういう認識でいる。

無論、入れないように魔術的なバリケードとかがあるが、これを抜けて入り込む猛者や馬鹿者がいるとかいないとか。
モチっぽいヤツがいたという噂もある。

「……穴そのものは見えんが、大分近いとこまで来てるんだろうな。
ここらでもやべー雰囲気してるし」

……、ここには用がない、と思いたい。
もしこの中で敵と鉢合わせするんだったら俺は相当な準備が必要だろうよ。

とまれ、依頼は達成だ。帰ろう。

紅月 純 > 「……」

背を向けて、自分の拠点まで立ち去ろうとして。
足を止める。

「おいおい」

向こうから、見られている。

紅月 純 > バットを担いで、いつでも振れるようにする。
深呼吸をして、緊張を解く。
こちらを見ているものが動き、近づいてくるのろひたすらに待つ。

「……おいおい」

少なくとも人間じゃない。
どいつかの遺産か、怪異か、住み着いた化け物か。
振り向いて構え、臨戦態勢に入った瞬間。

何かを持ってかれた。

紅月 純 > 視線の先には、浮遊する霧のような球体。
目はないのに、こちらをずっと見ているような感触。
そして、何かを持っていく能力。

「まじで何だこいつ。気味悪い」

俺から何を持っていった。
生命力吸収とは何か違う、別の感覚だった。

目の前のソレは、霧を密集させ、姿形を変える。
質量を持つ生命体の真似事をして、地面に立った。

「……まじか」

それは、俺の嫌いというか、苦手というか、恐怖を与える容姿をしていた。

紅月 純 > 「は、はは」

忘れるわけがないぜ、その姿。
当時、俺は勝てる気がしなかった。

「やっべ」

『ルール』のある世界だから勝てなかったのか。
単純に俺が弱かっただけなのか。

「『ADD-FORCE-Y』!!!ウオオオォォォオオオオオ!!!!」

そんなものはどうでもいい。
俺は全力で逃げ出した。

紅月 純 > 「なんでだよなんでだよなんでだよ!!!
こっちにゃいねーと思ったのに!!あれは無理だ!!!
『ADD-ふぉ』お゛っ……!?」

真上に飛んで空の彼方へ逃げようとしたが、遅かった。

そいつは武器を構えていた。
その時点でもう俺の体は状態異常になり、動きが鈍くなる。
魔法詠唱をする余裕もない。

ヤツはもう目の前だ。

それは、野菜だ。
野菜に手足が生えて、立っている。
その手には武器が。
自分と同じ野菜を剣として振るう、ファンシーな容姿。

その見た目から想定できぬ、恐怖の技。

「俺は、また負けるのか」

野菜が、振るわれる。

紅月 純 > 轟音。

周囲の瓦礫と共に打ち上げられる。
そいつは、まだやる気のようで、俺に畳み掛ける。
連続行動によってコンボが、技のレベルが上がっていく。

建物よりも高く打ちあがった俺に、ヤツがトドメをさしてくる。
真横に振り払われた剣。
その一撃で、俺は遠くまで吹き飛ばされた。

紅月 純 > ……。

…………。


「はっ!?」

目が覚めたら、そこは落第街の廃墟の中で。
俺が降ってきたであろう穴も開いていた。
全身ボロボロだ。麻痺も残っている。

「……記憶と、恐怖を持ってかれたのか。
だからって、あれはないだろう……」

コピーというかトレースというか。
あれをまた目にするとは思ってなかったわ。はぁ……。

何にせよ、やはり相応の準備が必要なのだろう。
痺れる体で立ち上がり、クソ博士に依頼達成の報告をしよう。

しばらくは長ネギを見るのが嫌になりそうだ。

ご案内:「黄泉の穴」から紅月 純さんが去りました。