2020/08/31 のログ
ご案内:「黄泉の穴」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 「……相変わらず、此処は空気が重い」

周囲を警戒していた同僚にIDを提示し、施されたバリケードを通り抜ける。
この『穴』に侵入して何時も思うのは、単純な空気の重さ。押し潰される様な、それでいて、引き込まれる様な。どろどろとした空気。

「……『黄泉の穴』への突入に成功した。今のところ、特に異変は見受けられない。予定通り、此れより調査を開始する」

雑音混じる通信機に、訥々と言葉を紡ぐ。今のところ、まだ外と通信は出来ている様だ。
『コキュトス』の一件以降、怪異の発生報告や異常等の報告は無い。だからこそ、夏季休暇最終日である今夜。風紀委員会は明日からの所謂"新学期"に備えて、黄泉の穴の調査を断行した。
問題が無ければそれで良し。問題があれば、その場で可及的速やかに『対処』する事。

特段立候補した訳でも、手を上げた訳でも無い。
しかし、此の任務に当たる様にと己に告げた小太りの上司は、何処か忌々し気な、腹立たしささえ感じさせる様な、珍しい表情をしていた。
きっと彼は、己を此の任務につけたくはなかったのだろう。忠実な手駒を、彼の利益に繋がらない危険な任務に送りたがる様な性格をしてはいない。

大方、何かしらミスでもして、その取引材料にでも使われたのだろうと小さく溜息を吐き出して――『穴』の奥へと、歩みを進める。

神代理央 >  
嘗て調査隊が築いてきた穴に降りる道を、高価な革靴で踏み締めて進んでいく。コキュトス以降、平穏を保っている此の場所は、驚く程静かだ。魔導書やアーティファクトを求める者も、穴から発生するという怪異も、今のところ見受けられない。
其処に在るのはただ、じゃりじゃりと大地を踏み締める己の足音だけ。無音、と評しても良い程の静寂。

「――変わらず、魔力の濃度が濃い。また、異能の発動に対してこう…何となく、嫌な予感がする。現在、異能を発動して召喚物を生成してはいない。その必要があれば、そうするつもりだが」

意外と。寧ろ、不気味なまでに雑音が減り始めた通信機に、言葉を吐き出す。まるで独り言を呟いている様だな、と内心苦笑い。
普段は、醜くも強大な異形を護衛代わりに引き連れているが――今日は、己一人。
何となく、異能を発動する事すら躊躇われる様な――そんな空気の重さを、僅かに感じ取っていたから。

神代理央 >  
順調過ぎる程に穏やかな散策。
調子の良い通信機。
荒事や危険地帯に"慣れて"しまっていた事。

それ故に、少年は穴の奥へと引き込まれる。
訪れた調査隊が遺した道を踏み越えて、それでも尚続く"整備された"かの様になだらかな道を進んで、穴の奥へ。底へ。導かれる様に。

「――地図に無い道だ。調査隊以外に、此処を訪れた者が踏破を試みた跡だと思われるが………おい、聞こえているか?通信状況は悪くない筈――」

低い男性の声 >  
 
 
『そうやって、何事も思い通りに行くと慢心するのは、貴様の悪い癖だ。理央』
 
 

神代理央 >  
「―――っ!?」

思わず、通信機を放り投げる。
先程迄通話していた本庁の同僚の声では無い。
そも、今夜のオペレーターは女子生徒だ。男性ではない。

何より、今の声には聞き覚えがあった。嫌になる程、聞いてきた声だ。己を縛り続けている、あの男の声は――

「……とう、さま…?」

放り投げた通信機に茫然と視線を向けた儘、よろ、と後退る。

神代理央 >  
通信機は、それ以上何も音を発しない。
本庁からの音声も、雑音すらも発しない。
『穴』に響くのは、僅かに乱れた己の吐息のみ。

「……いや、こういう場所だ。何が起きようと、おかしくもない。精神攻撃の類やも知れぬし、警戒を――」

通信機を手に取り、深い溜息を吐き出した瞬間。
穴の奥から蠢くナニカが、群れを成してゆっくりと、緩慢な動作で少年へと近づいて来る。
先程迄はいなかった筈のもの。目を凝らさずとも、それらが何なのか、一目で判別がつく。

「……アンデッド?ゾンビ、の類か…?」

衣服を纏った儘、所々腐敗したかの様に見える人型のナニカ。
其処だけカメラで映せば、ホラー映画の1シーンにすら見える様な、死者の群れ。

「……まあ、何でも良い。目に見えて、弾が当たるのであれば、どうとでも、幾らでもなる」

パチリ、と指を鳴らして異能を発動する。
普段より早く、何時もより迅速に、通常よりも多く。
鋼鉄の異形の群れは、少年を取り囲む様に顕現する。
先程迄感じていた空気の重さも、それとなく感じていた嫌な予感も、全て払拭する様な万能感。
――やはり、己は鉄火場の方が向いているのだろうかと、首を傾げつつ。

「……殲滅せよ!」

鋭く叫んだ主の命に従って、轟音と共に砲火が放たれた。

神代理央 >  
戦闘開始から、30分程経過した頃。

「……キリがないな。殲滅し損ねれば、バリケードを突破するやも知れぬ、か。かといって、何時までも此処で戦い続ける訳にもいかぬし…」

巨大な砲身が火を噴けば、アンデッドの群れは木の葉の様に吹き飛んでいく。針鼠の様な機関砲が電動鋸の様な銃声を絶え間なく響かせて、のろのろと迫る死者の群れをなぎ倒していく。
戦闘に全く問題は無い。アンデッド達は、最初に視界に捉えた場所を未だ突破せず、死体の山を堆く積み上げては吹き飛ばされるばかり。

しかし、その数が一向に減る様子が無い。
視線の届かぬ穴の奥から、無限に湧き出ているのではないかと思う程に、死者の群れは延々と続いている。
まるで『何者かに呼び出されている』かの様に――

「…面倒だな。火力を上げても良いが、しかし…」

未だ顕現させていない真円の異形。その火力を持ってすれば、死者の群れを狩る速度は更に上がるだろう。
しかし、異能の調子が奇妙なまでに良いとはいえ、過信する事も出来ない。
どうしたものかと、異形達による砲撃を続行しながら少し迷う。
此の場が動く何かが起こる可能性もある。大楯の異形に守られながら、周囲に何かしらの変化は無いかと、僅かに視線を巡らせるが――

ご案内:「黄泉の穴」にアーヴァリティさんが現れました。
ご案内:「黄泉の穴」に燈上 蛍さんが現れました。
アーヴァリティ > 「やあ神代君。大変そうだね、手を貸してあげてもいいよ?」

ニヤニヤと笑いながら神代が来た道を辿るように彼に歩み寄る少女こと怪異アーヴァリティ。
既知の仲...と言うよりかは親しい友人のように振舞う怪異であるが、以前戦った時とは声色も容姿も違う...とはいえ調子は同じだからすぐに誰かわかるかもしれないが。

自由である怪異の行き先が今日は偶然黄泉の穴であったと言うだけで、決して風紀の探索に合わせたと言うわけではない。
ここでかつて戦った相手である神代と出会ったのは偶然と言うやつだ。
奇跡とでも言い換えても良いかもしれない。
奇跡ついでに声をかけただけであるが...なんだか大変そうだなあなんて思っており。

神代理央 >  
「……何処の誰かは知らん、と言いたいところだが。
其処まで気安く話しかける風貌の知り合いは、私にはおらぬ。そして、その口調と、風貌を自在に変えられる知古の怪異なら、心当たりがある」

「……久しいな、アーヴァリティ。そして、手を貸すとはまた、随分と殊勝な言葉じゃないか」

アンデッドへの砲撃を続けながら、声をかけて来た少女に言葉を返す。手を貸す、という言葉には少し意外そうな表情を浮かべているだろうか。

燈上 蛍 >  
──放り出された通信機の場所。

魑魅魍魎の声と、少年と、少女の所に、もう一人。


「…この辺……と言わずとも、目立ちますね。」

頭に白い花を冠した青年。
少年と同じ風紀委員の制服だった。

同学年の神代理央と通信が途絶えたからとこちらに連絡が入ったのが少し前。
自分は普段はこれほど深い所まで警邏やらに来ない。

しかし、今日は違った。

『鉄火の支配者』こと神代理央の知名度的に、
こちらが一方的に彼のことを外面的に知っているぐらいだ。

そして、辿り着いた場所には、遠くからでも目立つ……しかし、誰かと親し気に話している、同僚。


「……あぁもう、煩いですね…。」

こちらに気付いて仕掛けてこようとするアンデッドに、
手に持っていた頭に冠しているモノと同じ白い花が、紅い装丁の本に変わる。


──二人の傍らで、火の手が上がった。

神代理央 >  
突如、二人の傍らで巻き上がる焔。
その熱波に瞳を細めつつ、言葉の聞こえた先に視線を向ければ。

「…増援か?有難い話ではあるが、良くもまあこんな危険な場所へ一人で訪れたものだ」

「今のところ、敵対勢力はアンデッドと見做されるモノ。動きは鈍重で攻撃方法も大した事は無いが…如何せん数が多い。範囲攻撃に徹するか、私の援護をして貰えれば有難いが」

と、其処で今更気が付いた、と言わんばかりの表情を青年に向けて――

「……ああ、名を名乗っていなかったな。私は神代理央。風紀委員の二年生だ。同僚として、是非力を貸して欲しい」

力を貸して欲しい、という言葉は真剣なものなのだが、如何せん態度と言葉遣いは尊大極まりないものであっただろう。

アーヴァリティ > 「あ、ばれちゃった?前もすぐばれちゃったしまあそうだよねー
久しぶりだね、神代君。元気にしてる?

前は見上げてたのに今は見下してるって不思議な気分だなぁ」

ケラケラと軽やかに笑いながら神代の傍で足を止めれば見下ろして。
幼女姿の時は見上げていた神代も今は見下せる。不思議な気分だ。

「まああれだよあれ
気分ってやつ。大変そうじゃー」

なんて意外そうな表情を浮かべる神代に気遣いの言葉を投げかける...が表情は完全に面白がっている。
彼の異能を知る故だ。殲滅に適しているだろうに。
まあ、その言葉を最後まで紡ぐことは叶わなかったが。

正面のアンデッドと神代にばかり意識を向けていた怪異は、背後の風紀に気づかず。
炎に驚いてバッと振り向き臨戦態勢をとるがー

「あ、神代君の知り合い?びっくりしたじゃんもう...」

なんて、少し情けない声を漏らして臨戦体勢を解いた。

「僕はアーヴァリティだよー」

なんて炎の風紀に向けて雑に名乗った。