2022/10/09 のログ
■エボルバー > 怪異を食い尽くした”別の怪異”は
相対していた人間の周囲から人間の前方へと移動する。
意思を持っているように動く漆黒の砂漠は
一つの地点に集まっていけばどんどん堆積してゆく。
ソレは何かを形作っていき、やがて人の形へと。
>超自然構造体を分解開始
>分解完了
「なるほど、興味深い。」
そこに居たのは、汚れがない小綺麗なスーツを身に纏った一人の男。
ソレはまるで食したディナーの感想を述べるように独り言。
しかし、やがてソレの関心はこの場に居る一人の”人間”へと。
「君も、興味深いものを持っているようだ。」
虚ろに輝く翡翠色の瞳が目の前の人間を射抜くように見つめる。
それは人間の持っている黄泉の戦利品か。
それともその人間自身か。
ソレは人間の様子を観察するように見つめている。
■『鎖蛇』 > (『いやいや…興味持たれても俺みたいな木っ端パシリ野郎に何を言ってるんだこのダンディーさんは…そもそも、どういう理屈とか原理だ?』)
周囲の怪異は残らず食い尽くされた…次は自分の番だろうか?
最悪、異能のステージを上げるしかないか、と覚悟を決めた所でこちらの前方へと集う漆黒の砂状物体。
それが一つの地点に集積し、人の形を作り出せば、仮面の奥で何とも言えない表情で心で突っ込みを。
「『――いや、そちらに興味をもたれるような事は何もしていないが?』」
一瞬、何時もの素の喋り方で応じそうになるが、ボイスチェンジャーと仮面まで使っているのだ。
なので、少し冷たい落ち着いた声色で応じてみる事にする。内心は何時もの少年だが。
(『明確な意志のある怪異とかそういうの?そもそも、俺は怪異じゃないから興味惹かれる理由あんのか?』)
別に怪異とは無関係だ。と、なれば今、リュックに抱え込んでいるお宝がもしくは――…
(『――こっちの異能に勘付かれたかね?いや、勘付かれてもどうしようもないけども』)
■エボルバー > ソレは無機質に目の前の人間を見つめ続ける。
スーツ姿のそれは不気味なほどに微動だにしない。
人間ならば必ず生じる動作のブレが一切感じられる事はない。
「君は、怪異と戦おうとしていたように見える。」
ソレは聞きやすい無機質な声で答える。
一般的に何の力も持たない人間が怪異と相対した場合、
一目散に逃走するという選択肢をとる。
しかし目の前の人間はそうではない。
応戦しようとしていた。
それは少しでも勝算があるという事の裏返し。
だからこそスーツ姿のソレは関心を持つ。
「質問する。君は強者だろうか?」
ソレは貴方に問う。
虚ろな視線は未だ貴方から動かない。
■『鎖蛇』 > こう見えても、それなりに戦闘経験はあるし死に掛けた事も何度もある。
――が、過去にイキっていた頃は兎も角。今の自分は己を強いなどと自惚れても思ってもいないが。
スーツ姿のダンディーな男、という佇まいの相手だが言葉も、意志の疎通も可能のようだが人間味が何処か希薄だ。
それこそ、まるで機械のようだ――と、いうよりも。
さっきの黒い砂状の物体の集合体、というのが男?の正体だろう。いわばこれは仮の姿か。
「『――残念ながら、私はそこまで強くは無い。応戦に見えたなら訂正する。ただ単に逃走の隙を狙っていただけに過ぎない。』」
そう、淡々と言葉を紡ぐ。この口調も久々だからいまいち慣れないが。
そもそも、逃走を図っていた矢先に漆黒の砂に取り囲まれたので逃げるタイミングを失った、という悲しい事実もあるが。
(『参ったなこれ。変に過大評価されるのは不本意だし、実際逃げるの最優先な訳で。』)
身の丈に合わない評価なんて重いし肩が凝るだけだ。
だから、続く男の質問には仮面の奥の右目を細めてこう答える。
「『――それは絶対に有り得ない。強者というのは幾らでも転がっているが、私は該当しない。』」
ハッキリと、言葉でも内心でもそこは否定一文字だ。
■エボルバー > 目の前の人間は自分を強者ではないと主張する。
逃走を図っていた割には冷静な佇まい、
現れたスーツ姿のソレを見ても、落ち着いて状況を判断している。
となると目の前の人間はこういった状況に慣れているのか。
そして、言葉を受けたソレは発言を変える。
「次に、君の持っているものが欲しい。」
男は指を指す。
指した先は人間の持つリュック。
更に言えば、中で眠る黄泉のお宝。
中には興味深い反応を感じるものがある。
「もし、渡さないという選択肢を取る場合。」
男の右腕が黒ずんでゆく。
先程の砂粒と同じような光も反射しない漆黒へと。
右腕の形が蠢く様に崩れていき別の形を形成していく、
時間をたたず、右腕は大きなブレードのような物体に変形を遂げる。
「君を、攻撃する。」
感情の籠らない言葉と視線が貴方へ向けられる。
■『鎖蛇』 > 実際は、結構驚いたり動揺はしているが、仮面で表情を隠し声色をボイスチェンジャーで偽り、と。
そういうベールがあって誤魔化せているに過ぎない。
とはいえ、それなりに”場慣れ”しているのはおそらく相手には気付かれただろう。
「『――人が苦労して探し当てた物を横取りとは感心しないな。欲しいなら自分で”そこ”に取りに行けば良いだろう。
私が手に入れた物よりもっと価値のある興味深いものがおそらく深奥にはある。』」
軽く右手の親指でくいっと背後の黄泉の穴を示して。
幾ら何でも、折角苦労して入手したアーティファクト等を丸ごと渡すのは納得行かない。
(『――とはいえ、下手に交戦してもこっちに勝ちの目はまず無いだろうけどな。』)
しかし、無情にも男の右腕が変化を遂げる。それを確認して仮面の奥で吐息を漏らす。
さて、どうする。命が最優先。最悪、全部提供してさっさと逃げるのがベストだろうか。
とはいえ、また手に入れられるとは限らない。かといって、アレと真っ向からやり合う気は無い。
(『…無機質な死の気配だから攻撃は”読みやすい”が、勝てるかどうかは別問題だしなぁ。』)
――僅かに悩んだ末に、リュックを一度左肩から下ろして。中身を確認しつつ。
(『しゃーない、魔導書の類は犠牲にして、アーティファクトだけ確保して全力逃走だな。』)
方針は決まった。そして、まるで手品のような鮮やかさでアーティファクト”だけ”を抜き放ってコートの内側に納めつつ。
残った中身は魔導書や小型のアーティファクト。それも十分貴重なものだ。興味ゼロではあるまい。
「『――仕方ない、ではこれを渡そう。悪いが私は勝ち目の無い戦いに挑むほど愚かではない。』」
と、言って無造作にリュックをそちらへと放り投げる。
■エボルバー > どうやら目の前の人間は今のところ
本当に”強者”の側ではないようだ。
戦う素振りを見せずソレの言葉に従い、
人間はリュックの中身を確認した後に
それをこちらへ放り投げた。
「君は、反撃しないのか。」
確実にモノを奪うのならばわざわざ攻撃を宣言したりなどしない。
その上で攻撃を示唆し、武器を見せたのは人間を試していたと見れる。
空中に弧を描き地面に落ちたリュックから人間へと虚ろな視線は戻る。
「しかし、その手際は素晴らしい。」
人間が直前にトリックの如き手法でアーティファクトを
抜き取っていた事には気付いていた様子。
スーツ姿のソレは物事を視覚だけではなく反応でも見ている。
確実に結果を残せるその工夫は興味深い。
■『鎖蛇』 > 勿論、強者ではないだけである程度は応戦、ないし回避中心の戦闘は可能である。
だが、少年はここに長居するつもりは無かった。
理由として、また怪異が急に発生する可能性が否めないのと、ここの魔力や空気は人間が長時間留まる場所ではない。
「『攻撃を仕掛けられれば避けはするが。そもそも今の最優先は離脱であって、戦闘ではない。
それに、ここに留まり続けるつもりもない。』」
あと、アンタのそれはフェイクであろうと脅しだろうが。とは言わない。
こっちは戦闘は全力で避けてひたすら逃げるのを優先するように立ち回る。
と、いうよりこの手の相手に興味を持たれても、後々に厄介だし、それこそ”相手が違う”。
(『手際も何も、こうでもしないと戦利品を丸ごと手放す事になるしなぁ。』)
相応に苦労したのだから、手ぶらで帰りたくは無いのだ。
とはいえ、大部分の戦利品は今、投げ捨てるように放り投げて地面に落ちたリュックの中だが。
(『結局そうそう上手く事は運ばない。か。でもこのアーティファクトは持ち帰る…っつー訳でだ』)
徐に、右手をあらぬ方角へと向けて。瞬間、男の黒衣の袖口から真っ直ぐ、凄まじい速度で鎖が飛び出して。
それは、瞬く間に遠く離れた場所にある廃墟の壁へと飛んで先端のフックが食い込むように突き刺さり。
「『――そういう訳で、お褒めの言葉は恐縮だが私はこれで失礼する。』」
軽く一礼をするのは何となくだ、。次の瞬間、延びた鎖が縮む――それに男の体が引っ張られるように真横に跳んで。
そのまま、凄まじい速度で遠くの廃墟の壁へとその身は飛んで行く。
(『――って、こええええ!?この距離だと流石に速度が速い!!!』)
と、情けない悲鳴を内心で漏らしながらも、態度だけは余裕を取り繕って、華麗?にその場を離脱せんと。
■エボルバー > 黄泉の空気は人間にとって害そのもの。
それがわからない機械は人間の意図など正確には汲み取れない。
間もなくして目の前の人間は鎖のような物体を射出すれば
それを移動手段として方角を定めて飛んで行く。
スーツの男が離れていく人間に何かするわけでもなく
ただただ虚ろな瞳が見つめるのみ。
「興味深い。」
見たことのない人間の移動方法にただその一言。
やがて場に残されたのは男のようなソレと
黄泉のお土産が入ったリュックのみ。
相対した人間の本質を理解し得ぬまま
進化する怪異は黄泉の空間に佇んでいたのだった。
■『鎖蛇』 > ちらり、と仮面越しに視線を向けるが追撃の気配は無い。
正直ホッとした。薄々感じていたが、引き際を弁えている、というよりも。
(『興味対象ではあるが深追いはしない?いや、まるで機械みたいな…つーか、判断が機械的か?』)
結局、それが新手の怪異なのか何らかの機械の類か、少年にも分からないまま。
壁に到達すれば、鎖を抜いてそのままの勢いで身を飛ばして、また別の廃墟の壁に鎖を突き刺して。
そうやって、アクロバティックな空中機動を駆使して、今度こそ少年は離脱していく。
名前一つも分からない状態だったが、今後は気をつけるとしよう。
骨折り損、にはアーティファクトを幾つか持ち帰れただけマシとなるだろう。
ご案内:「黄泉の穴」から『鎖蛇』さんが去りました。
■エボルバー > 「やはり、世界は面白いものに満ちている。」
鋭利なブレードと化していたソレの右腕はいつの間にか
人間のものへと戻っていた。
どこに向けられたわけでもなく吐かれた無機質な一言。
機械は進化という名の”変化”を求めてそのトリガーを探し続ける。
男の形がだんだんと崩れて黒い砂へと戻っていき
辺り一面の床を覆いつくす量のソレは
落ちたリュックを飲み込み、黄泉の穴深くへと姿を消していった。
ご案内:「黄泉の穴」からエボルバーさんが去りました。