2022/09/30 のログ
ご案内:「産業区/農業区」に北上 芹香さんが現れました。
北上 芹香 >  
ライブハウスででっかくライブをしたい。
とりあえず曲は完成したので、おバイト。

私は色んなところでバイトをしている。
常世ディスティニーランドだったり、コンビニのアビスマートだったりする。

今回は初めて入るバイト。
その名も………『中華まんのラインに入ってピザまんの頂点に竹串と食紅で延々と赤い点をつける仕事』だ。

北上 芹香 >  
この中華まんのラインに入ってピザまんの頂点に竹串と食紅で延々と赤い点をつける仕事、
とにかくシンプルと聞いた。
なにせ中華まんのラインに入ってピザまんの頂点に竹串と食紅で延々と赤い点をつける仕事なのだから。

中華まんのラインに入ってピザまんの頂点に竹串と食紅で延々と赤い点をつける仕事って
いつ見ても募集があるんだけど難しいのだろうか。

北上 芹香 >  
おっと、私のターンだ!
眼の前のコンベアが流れてくる。
ピザまんの上にちょこっと竹串で食紅をつけた。
あとは延々とピザまんが流れてくるだけ。

これは楽なバイトなんじゃない?
なーんにも難しいことなんてないし!!

北上 芹香 >  
10分経過!
20分経過。
30分経過…………

えっまだ30分しか経ってないの!?
それでも目の前のピザまんは尽きることはない。
無限にピザまんはコンベアで流れてくる。

お、お金もらってるんだから根性!! ド根性!!

北上 芹香 >  
40分経過…………
私は今…時空間異能の能力者に拷問を受けている……
休憩まであと20分…………

きっと世界には
無限にピザまんの需要があり、
無限にピザまんの材料があり、
無限にピザまんを置いておけるスペースがあるのだ。

そうでなくては……この無限牢獄に理由がつかない…

北上 芹香 >  
50分経過…………………
あと10分流れてくるピザまんの上に竹串と食紅で赤い点をつけたら…
10分休憩して………
また1時間流れてくるピザまんの上に竹串と食紅で赤い点をつける………

ダメだね。この仕事してたら頭がおかしくなるね。

パーになっちゃうううううううううううううううう!!!

心の中で悶絶しながら時間が過ぎるのを待った。
時計はあるけど1秒が長く感じる……

北上 芹香 >  
1時間経過………座って休憩できる…
周りを見ると、他の人とは休憩の時間が違うみたいで。
一心不乱に……というほど集中できる仕事じゃないけど…
真面目にラインに向かっている。

10分の間……私はどうするべきなのだろう…
なにこれ、哲学か?

そうだ……歌おう…
私には歌がある………
朦朧とした意識で喉の奥に空気を送り込んだ。

「夏の空 あの人と 笑っていた いつまでも」
「青色が 続いていた 木陰から 眺めてた」

「二人で────」

「瞳を閉じれば 思い出せる あの夏の日々」

静かな工場にアカペラが響く。

北上 芹香 >  
魂が抜けたまま歌う。
タイトルは……なんだっけ…夏色の空、だっけ…

「砂時計が返せるなら 私はまたこの夏を願う」
「二度と戻らないのは 私がどんな罪を…ララ…」

ふと、涙が流れた。
周囲を見るとあまりにも寂しい夏の歌に。
ライン工の学生バイトたちも涙を流していた。

「ラララ ラララ ラララ……」

私とライン工たちの歌声が反響する。

北上 芹香 >  
凄まじい速度で工場の偉い人がかっ飛んできた。
私は怒られた。

 
 
なんとか一日分のバイト代を稼ぎ。
私はもうこの工場に来ることはなかった……

ご案内:「産業区/農業区」から北上 芹香さんが去りました。