2019/02/12 のログ
ご案内:「訓練施設」に暁 名無さんが現れました。
暁 名無 > 本日の試験日程を終えたばかり訓練施設。
今まさに試験を終え、三三五五に散っていく生徒たちを見送りながら、暁名無は小さく息を吐いた。

「今日もどうにか終わったか……はぁ、ま、実技関係の試験監督なら少しは気が楽だな。」

意味も無く首から下げていたホイッスルを手持無沙汰に弄びつつ、こちらへと挨拶をする生徒へ手を振り返したりして暫し待つ。
理由は単純にして明快、所用でこの施設を利用するから、だ。

暁 名無 > 「よーし、粗方帰ったか。」

周囲を軽く見回し、よし、と一つ頷く名無。
試験会場として利用していた、体育館ほどの広さの一室の中にぽつんと一人立つ姿は中々に目立つ。

「じゃ、始めますかねー……よっと。」

ポケットから数枚のカードを取り出すと、おもむろに歩き出す。
ぐるっと室内を壁伝いに歩き、部屋の四隅にカードを落して歩く姿は、ただ立っているよりもさらに目立つ。

暁 名無 > ぐるりと室内を一周し、元居た場所、出入り口の前に戻ってくると軽く手を叩く。
ただ歩いてきただけなのになぜか達成感を表情に滲ませつつ、

「よし、おっけえ。」

満足げに頷くと、今度は手のひら大のカードを一枚取り出した。
それを片手に、ポケットからライターを取り出すと徐にカードへと火を着ける。
音も無く燃え上がるカードを宙に放れば、カードは燃えながら空間を滑る様に部屋の中央へと移動して行き、

「さー、運動の時間だ。出てきていいぞー。」

そんな名無の声に応えるように、一際大きく燃え上がった。

暁 名無 > 燃え上がったカードは次第にその炎を大きくして行き、一つの形になっていく。
炎は一頭の馬の形を創り上げると、風に吹かれて消えるように散っていった。
後に残されたのは、名無と一頭の白馬。
それも普通の馬ではなく、大きな対の翼を持つ所謂天馬と呼ばれる幻想生物だった。

「いやー、厩舎から出て来るの久し振りだな。
 まああそこも十分広く創ったけどさ、たまにはこういうとこ出て来ないとな。」

へらへらと、普段通りの笑みを浮かべて声を掛ける名無を一瞥し、天馬は小さく嘶く。
鬣から尾の先まで、もちろん翼も真っ白な天馬だった。

暁 名無 > 「じゃ、ちょっと失礼して……っと。
 ははっ、こうやって乗るのも久しぶりだな。」

静かにたたずむ天馬へと名無が近づいても、特に警戒する様子も見せない。
そんな天馬に慣れた手つきで跨ると、名無は無邪気な笑みを浮かべた。
普段は名無が秘密裏に管理している“飼育室”の厩舎に居るこの天馬だが、厳密に言えば名無が飼い主というわけではない。

「寒いし目立つから、あんまり表は走れないもんなぁ」

翼の関係上、普通の馬よりもやや前寄りに乗った状態で名無は天馬の首を撫でる。
それに対し天馬の方は、あまり意に介していない様に小さく嘶くのみだ。

暁 名無 > 「なあ、ついでに聞いてくれよ。
 明日も明後日も試験監督させられるんだぜ、俺。
 もうやだよなあ、あんな教室ん中に喋る事も出来ず時間内ずっと座ってなきゃなんねーの。」

ぺらぺらと愚痴り出した名無を乗せ、全く我関せずといった顔で天馬は歩き出す。
不思議と蹄の音はせず、しかし普通の馬と同じ様に歩く姿は一見すれば名無が天馬を操っている様に見えるだろう。

しかし実際は、自分の背に跨って愚痴る名無を無視してただ天馬が歩いているだけ、だ。

暁 名無 > 「あ~……やだぁ~
 働きたくない~……働きたくないでござるよ~
 一日研究室引きこもってたい~……何か猫とか撫でながら寝て過ごしたい~」

延々愚痴り続ける名無を見事スルーして天馬は駆け足になる。
流石に揺れる馬上で脱力しているのは危険を感じたのか、渋々といった様子で名無は身を起こした。

「あんまり飛ばさないでくれよ、落ちたら痛いから。」

手綱もなしに器用にバランスを取りながら、そんな事を名無はぼやく。
そんな事も知った事か、と耳すら動かさず天馬はその走りを速めていく。

暁 名無 > 「あぁ~、なんかもう歩いて戻るの面倒だな~
 ……ちょいとひとっ走り研究室まで戻ってくれねえかいおウマサンよ……

 ……って嘘ウソうそ!!!
 ごめんて!流石に調子乗り過ぎたから全力で走るのやめて酔う酔う酔うウボァアァァァァアアァァ」

流石に聞き流しててもイラッと来たのだろう。
突如全力疾走を始めた天馬に半ばぶら下がる様にしがみ付きながら繰り返し謝罪を口にする名無。

それでも天馬は足を止めず、スピードを緩めすらせず、
自分の気が済むまで駆け回ってから半ば振り落す様に名無を解放したのだった。

天馬を元の厩舎に送還した後、しばらくの間室内でダウンし切っていた名無の姿があったという。

ご案内:「訓練施設」から暁 名無さんが去りました。