2019/07/23 のログ
ご案内:「演習施設」にモーントさんが現れました。
モーント > 広い演習施設の真ん中、初老に見えるエルフが一人で立っている。

「少々無理を言いすぎたのかな。まあ、いつものことだけども」

演習場を少しの間貸切にして欲しいと頼んだら仕事の進捗はどうかと聞かれた。確かにデスクには書類が積まさっているのだが、頼みには関係ないと思う。
そんな旨の納得のいかない顔をしながら、とにかくエルフはスーツのジャケットを脱いだ。

「では少しだけとしようか」

モーント > 「結局貸切にはできなかったわけだからね」

ジャケットを虚空に掲げると、見えない誰かが受け取るように真ん中が折れ、そのまま掻き消えた。
左手にもつ杖をしっかりと地面に下ろし、義手の右腕を目の高さに持ち上げて息を吸う。


「[****** ** * ***** **]」


地球言語で言い表されない呪文。故郷の言葉とともに意識を集中させる。
程なくして、その掌に火種が生まれた。

モーント > 「[**** *** * **** **]」

木製の義手であるが、ある程度熟練した魔術の使い手であれば、自身を火達磨にするようなことは滅多にない。
続く呪文で火種は宙に浮き、そして急速に成長し始めた。

酸素を必要とせず、術者の魔力のみで膨れ上がっていく火球。
熱で老エルフの額にも汗が浮かび、魔力消費に応じて吸う息が深くなっていく。

モーント > 「[**** ** ** **** ******]」


火球が2階立ての家屋ほどになったところで手を下ろし、今度は思考のみでそれを移動させる。
集中のために老エルフが睨めつけ、トンボじみた軌道と速度で宙を舞っていた火球だったが、

「…!」

不意に、火球が消滅した。

モーント > 火球の消滅とほぼ同時に老エルフの体がぐらついた。
掴まっていたものが急にどかされた、といった風にたたらを踏み、杖の先を地に叩きつけて安定を図る。

「……いやはや」

純粋に魔力のみを餌とする火が消える原因はただ一つ。
意識したとたん、ずっしりとのしかかる疲労に杖を立てたまま座り込んだ。

「やはり空気が薄いな」

モーント > 座り込んだまま何度か深呼吸を繰り返し、立ち上がったのは10分ほど経ってからだった。流れるままにしていた汗も乾きかけている。
荒く上下するシャツの肩に、先ほど消えたジャケットが虚空から現れ、ふわりとかけられた。

「ありがとう。少し休んでいくことにするよ」

その現象へ、及びそれをやったものに対して礼を言うと、身体を引きずるようにして医務室へと歩いていった。

ご案内:「演習施設」からモーントさんが去りました。