2020/06/28 のログ
■セレネ > 「あまりにも忙しいのであれば、お手伝いしに行きますよ?
そ、添い寝…?! ――ま、まぁ?貴方がそれで良い睡眠を摂れるようであれば…検討しなくもないですけど?
………。そう、ですか。良かった…。」
ホッと胸を撫で下ろす。
まぁ、それはそうだよな。もしモテていたのならとっくに…。
「貴方にとっては、ただの生徒かもしれませんけどね。
…私にとっては、ただの先生ではないかもしれないって事ですよ。」
どうせこう言っても、伝わらないのだろうけど。
「危険な魔術や異能は持ち合わせておりません。
そして自ら危険な場にも、今の所は行こうとは思っておりません。」
きっぱりとそう言う。
「外国へ旅行にでも?
…そうですね。5年程は日本に住んでるので、まぁ難なく話せますし文字も書けますが。
それでもやはり、ロシア語や英語の方が楽ではあります。」
時折一拍間を挟むのは、母国語に翻訳して日本語に再翻訳しているから。
元の意味での異邦人には、一つ頷きを。
■暁 名無 > 「おっ、良い?助かるわー、他の生徒はみんな試験勉強で忙しいっつーしさ。
冗談だって、冗談。なぁにそのツンデレムーブ。可愛いじゃん。
……んん?」
何も良くないんじゃが???
何で俺が非モテでホッとしてるんだこの子。
「それってどういう……ああ!
なになに、まだ授業もそんな出てないだろうに、もうお気にの先生指定?」
あらやだ、参っちゃうなーと頬に手を当ててわかり易く照れる俺。
いやまあ俺ってばモテはしないけど生徒から慕われる先生だし?悪い気はしないって言うか?
「うんまあ、個人の意識の上ではそれで良いんだが。
セレネ自身が危険でないとしても、危険の方が自ら突っ込んでくることもあるから……
そん時の対応とかの為にな。ま、俺に言わんでも良いからさ。」
むしろ言われたらそれを報告に行かなきゃならないので手間が増える。
今日はなるべく面倒な事はしたくないのでそんなのはパスだパス。
「まあ、旅行……みたいなもんだな。
そうかそうか、三か国語も使えりゃ充分凄いわ。
俺なんてもう殆ど覚えてないしな……読み書きは元々出来んかったけど。」
遠い目で天井を見上げる。
この学校を卒業して、そのまま世界中を見て回ったんだっけか。
まだ10年かそこらくらいの昔の話だし、今この瞬間からしてみれば、まだまだ未来の話だけど。
■セレネ > 「試験勉強自体は難しいものでもないですからね。
むしろ、独学で勉強するより遥かに楽ですよ。
じ、冗談?!こっちは、貴方の為を思ってですねぇ…!
――何ですか、何か文句でも?」
此処まで誑しな言葉を無自覚に言えるのなら、一種の才能であろう。
「…。
えぇそうですよ。今の所はそういう事にしといてあげます。」
……悔しい。
元から土俵に上がれていないのなら、いくらアピールをした所でそうみられる訳はないのだ。
言いたい言葉を飲み込んで。
「危険が舞い込んできた際の対処法も心得ているつもりです。
それとも、私に何かあった時は貴方が守ってくれるので?」
腕を組んでは尋ねてみた。
視線はやはり上から目線。
「そうですか。
可能ならもう少し色々覚えたい所ですけどね。
共通言語は英語ですし、まぁ苦労はしませんけど。
私が教えましょうか?それくらいなら大して手間でもないですし。」
天井を見上げる相手に首を傾げる。
覚えていて損という事は決してないのだし、相手がその気があるなら構わないぞと。
■暁 名無 > 「そりゃあ独学よりはマシだろうなあ。
生徒たちにもお前さんの勤勉さを見習って貰いたいもんだ。
いやいやいや、相手の為を思っても普通添い寝とかそう簡単に許すもんじゃないぞ。
……や、特に文句は無いデース。」
そこまでの奉仕精神はむしろ危険だと思う。
人の厚意に付け入る輩もたくさんいるのだから。俺みたいな。
「お、おう。
じゃあそのうち配られる校内アンケートに好きな先生は暁先生ですって書いといてくれな♪」
査定に少しは響いてくれるかもしれない、と期待しつつ。
なんだか凄い恨みオーラを放ってるセレネに冷や汗が頬を伝う。いやホント俺何したっけ……?
「それが出来れば苦労は無いんだけどなー?
まあ、俺でなくても守ろうと動く人らはいっぱい居るから、その人らの判断を惑わさないためにな?」
守って貰う側の言いぐさじゃないな、と思いつつ。
相変わらず腕組みすると目立つなあ、と視線が自然と落ちる。
「まあ、覚える分には何の不都合も無い訳だしな。
あ、俺?
いやあ、しばらく海外に行くことも無いだろうしなあ。」
うーん、生徒とはいえ美少女のマンツーマンレッスンは非常に興味があるのだけれども、だ。
■セレネ > 「何かを教えてくれる指標がある、というのは恵まれていると思いますよ。
何故です?貴方は”先生”なのですから生徒には手出しは出来ないでしょう?」
半ば自身を道具と考えているからか。
割とそこら辺はあまり重要だと捉えていない。
「…そうですね。
暁先生と、ラピス先生の事について書くのも良いかもしれません。
どうしました。顔色が優れないようですが。」
先日出会った、背の小さな先生。
彼女はとても可愛らしくて話していて楽しかったから、彼女を重点的に褒める形で書く方が良いか。
目の前の相手はついでで。
冷や汗を流している相手には、少し鋭い目つきのまま首を傾げて。
「自らの命は自らで守るのが一番でしょうに。」
己はその為に、様々な事を学んできたというのに。
下がる視線にはどこを見ているのだろうと不思議そうな。
「海外に行く事はなくても、私のような外国人は恐らく此処にも居るはずです。
…何故嫌がるのですか。私が嫌いなのであればそうだと言えば良いじゃないですか。」
何が問題なのかと眉間に皴を寄せる。
■暁 名無 > 「そりゃあ確かにな。まったくだ。
……お前さん、それ“この前の事”を思い出した上でもう一回言える?
それに、手を出す様な輩に出くわす可能性もあるでしょーが。
それとも何かい、俺相手なら添い寝しても良いとでも思ってるとでもいうのかい。」
互いの立場の事を持ち出すならなおさらだ。
真面目な割にどこかズレてる。そうだった、そういう子だったこの子は。
「へぇ、ラピス先生にも会ったのか。
だったら俺の方は良いからラピス先生を優遇してあげな。
……別に、如何もシマセンデス……。」
ラピス先生。直接話した事は無かったが、なかなかに敏腕な薬剤関係の先生だと聞く。
セレネが俺と並べて評価するような先生なら、噂通りの先生なのだろう。
……、……。
……いや俺の評価不当に高くねえ?
「まあ、極論そうなるよな。
ただ色々な責任問題とか発生するから仕方ないんだ、少なくとも学校内は。
めんどくさいよなあ……。」
セレネの言う事は尤もだ。
だけどそれだけで済ませられないような規則が暗黙の了解で存在する事もある。
……なんて事を女生徒の胸元を見て考えるのはみっともないので止めましょう、俺。
「いや、別にセレネの事が嫌いと言う訳じゃないんだが。
言語に関しても、異世界の未知の言語ならともかく、既に認知が広まってる言語なら翻訳魔術で何とかなるしな?」
うーむ、と腕組み。そこまでして覚える必要があるのか、という疑問がどうも踏ん切りの付かない理由の大半だ。
■セレネ > 「――っ!
あ、あれは…っその…!
ぁ、貴方だけの責任ではないと言いましたし。
それに、仮に私がそういった人に手を出されたとしても。
貴方には関係がないではないですか。そういう人を見抜けなかった、自分の責任です。
……そう、だと言ったら。どうしますか。」
少し、声が震えた。
「私、不平等なのは嫌いなのです。
まぁ?全面的に応援するのはラピス先生ですけれど、貴方の事も悪い先生ではないと書いてあげても良いでしょう。」
学問として成立しにくいと、初めに説明した相手の専門を支持する為の協力だ。別に相手の為ではない。そう、学問の為だ。
「組織というのは大変ですね。」
ルールに縛られているから、ある程度の安全も保障されているという形になるけれど。
規則の全てを把握するには己はまだ期間が短い。
「……そうですか。分かりました。
どーせ、私は先生のお力にはなれませんよ。」
不必要であれば仕方がない。
他の方法を探そう。
■暁 名無 > 「分かりやすく動揺するなぁお前さん。
どうしますかも何も、看過出来るわけないだろそんなの。
まあ確かにお前さんの責任で、お前さんの人生だから口出しする義理は無いかもしれんがな?
……もう少し自分を大事にした方が良いぞ?
そんな風に生きるつもりなら、その前に手を出すぞ、俺なら。」
勿体無いもんなあ、と笑いながらセレネの頭を撫でようと手を伸ばす。
撫でられるの好きだったもんな、こいつ。
「いや、不平等というほどの事でも無いだろ。
そんな事言ってたらこれからもっと色んな先生と知り合うだろうしな?
全員書いてたら枠足らねえし。だから、好きかどうかの感情論で選べばいいんだよそんなのは。」
遠めにだが姿を見た件の先生は、非常に小柄で生徒からも可愛がられるだろうな、という印象の先生だった。
だからまあ、俺よりはよっぽど好印象を持たれるだろうし。
何をムキになってるんだセレネは……。
「全くだ。出来ればさっさと教師なんて辞めて研究に没頭してたい。」
没頭したいが──お金が無い。
というわけで研究費を下ろして貰う為にも教員として働かなければならない現状だ。
「えっ?なんでそこで拗ねんの?
……お前さん、もしかして何か俺の役に立とうとしてる……?」
何がどーせ、なのかさっぱりなんだが。
いまいち真意が掴めないが、何か俺の役に立ちたい……のだろうか。
■セレネ > 「貴方は貴方の。私は私の人生があります。
子どもではないのですし、自分の責任くらいは自分で取るつもりです。
…自分を大事に、自分の幸せを願った結果。
裏切られたんです。ただの都合の良い道具だと、ただの捌け口としか見られていなかった。
……私なんて、見た目くらいしか良い所はないじゃないですか。
だから、そう生きるしかないんです。」
伸ばされた手は、己の頭に。
震える声はいつしか涙に変わって頬を伝い落ちていく。
「…。」
そんな簡単な理由で良いのだろうか。
と、頭で思ったものの口に出す事はせず。
「人の役に立つのが私の生きがいです。
言語が駄目なら魔術を教えた方が良いですかね。
まだ扱った事のない魔術もあるって言ってましたし。」
その通り。
相手の言う通りだ。
■暁 名無 > 「あー………」
どうやら良からぬスイッチを入れてしまったらしい。
有体な言い方をするなら地雷踏んだ気がする、というやつだ。ていうか踏んでる。
にしても、何と言うかすごいヘビーな話を聞かされてる気がするんだが。
……この話、俺Tシャツとハーパンで聞いてていいやつ?
「それは……何と言うか。
俺には想像も出来ないような、と言ってしまえば簡単なんだが。
流石に、その結論は早計だと思うんだよなあ。」
身をかがませるか、その場にしゃがんでみるか、どちらが良いだろうかと考えて身を屈める。
なるだけセレネと目の高さを合せつつ、頭を撫でながら、
「一度くらい裏切られただけで自分の価値を決めるな。
お前さんまだ10代だろ?これからだ、これから。
まだ何度か話しただけだけどよ、それでもお前さんの真面目さはよーく伝わったし。
今日び中々居ないぞ、セレネみたいに真面目な奴は。」
片手で頭を撫でて、もう片方の手で頬の涙を拭おうと
「人の中身なんてそう簡単に決まるもんでも定まるもんでも無いからな、見た目と違って目に見えるもんでもない。
これから幾らでも良い所なんて作れるんだから、そんな風に自分で自分の未来を閉ざすな。
せっかく見た目は良いんだから、負けない中身を詰め込んでよ、裏切った奴をぎゃふんと言わせてやりゃあ良いじゃねえか。な?
大丈夫だ、お前さんなら見た目も中身も良い女になれるって。この学校で色んな女の子を見て来た俺が言うんだ、間違いないぞ。」
俺なりに精一杯誠実さを込めて語りかける。
いやまあ、何と言うか、身につまされる話ではある。
俺自身セレネの外見を見てたという自覚はある訳だし……。
「ほら、人の役に立とうとする気概とか、真面目な顔して愛嬌のあるところか、お前さんの良い所は見た目以外にもあるぞ。
きっと物を教えるのも上手いんだろ?自分から申し出るくらいだしな。」
■セレネ > めちゃくちゃ重い話をして申し訳ないと思っている。
止めようと思った時には時すでに遅しだった。
腰を屈め、視線を合わせてくれる相手。
変わらずに頭を撫でてくれている。その優しさが、痛い。苦しい。
「一度だけじゃない…!
私は…”私”は…何度も、何度も同じ思いを…。」
拭われる涙は止めどなく溢れ。
相手の言葉を受け止めていく。零れないよう、一つずつ。
「……先生。
独りは寂しいです。
寂しくて、仕方なくて…だから、私、優しい先生に甘えたくて…、
貴方なら私を否定しないって…だから…だから…。」
独りにしないで。
否定しないで。
寂しいのは嫌だ。
苦しいのも嫌だ。
相手が拒絶をしないのなら。
場所も人目も弁えずその首に抱き着こうとするだろう。
■暁 名無 > 「おう、そっかそっか。
そりゃあしんどかったな、辛かったな。」
一度じゃなかったぁぁぁぁ……いやホントどんな人生歩んで来たんだこの子。
バツイチって聞いてたから、てっきりその辺りの話だと俺は思ってたんだけどな!
と、内心色々な感情が渦巻いている俺だけど、表面は努めて平静を装う。
むしろ余裕で微笑みすら浮かべちゃう。アルカイックなやつ。
「ああ、そういうことか。
だからこないだも、居場所が出来たって、そうか。」
セレネの独白を聞き、合点がいった。
ずっと独りだったんだろう、この子は。
自分で言っていたように、幸せになりたくてもなれなくて、ずっと一人ぼっちで居たのだろう。
そう思い至ると、遠い昔の今に置いてきた、あの人の姿を思い出す。……あの人には、俺は結局最後まで手を取り続けることが出来なかったけれど。
「よーしよし、大丈夫だ。もう独りじゃないぞ。
俺が居るし、きっとお前さんを受け入れてくれる人は此処ならいっぱい居る。
だからもう、泣かなくて良いんだ。」
こないだはあんなにに振る舞ってたくせに。
あれも寂しさを紛らわせるためのものだったのだろうか。
抱き着いて来たセレネの背を軽く撫であやしながら、そんな事を考えて。
■セレネ > 相手のアルカイックスマイルは、残念ながら涙で滲んで見えなかったけれど。
突き放す事は無く、そうかと受け入れてくれて。
嬉しかった。やはり優しい人だと感じた。
「…っ」
そう。初めての、この世界での居場所が出来て安心したのだ。
だからつい、こうやって甘えてしまっている。
相手の優しさに付け込んでしまっている。
我ながら酷いと思った。
相手の首筋に顔を埋め、ぐりぐりと押し付けたりしながら。
強気に振舞うのも寂しさの裏返し。
此処で、こんな所でふと爆発してしまった。
あやすような手つきには父の面影を感じてしまい、それが更に涙を助長する。
暫くして、これ以上は迷惑だろうと思い。
ゆっくりと身体を離そうとして。
■暁 名無 > 「難儀な性格だな、お前さんも。」
強い子だと思ってた。
歳の割にしっかりしていて、知的探究心や向上心も備えてて。
多少の事にも動じず、いっそふてぶてしくすら思える程に、
芯の強い少女だと、感心したものだったけれど
「そうでもならないと、耐えられなかったんだな。」
現実はほぼ知り合って間もない相手に対してこんなに無防備に泣けるくらい。
弱くて儚くて、ありふれた普通の女の子だった。
「……もう落ち着いたのか?」
身を離そうとするセレネに、俺はそっと問い掛ける。
きっと、突然泣き着かれて俺が迷惑してるんじゃないか、とか。そんな風に考えているのだろうから。
「遠慮なんてしなくて良いんだぞ?
もう泣かなくて良くなるんだ、折角だし思い残すことが無いくらい泣いとけ?」
■セレネ > 本当に、自分でもどうしてこんなに面倒な性格をしているのか不思議でたまらない。
辛い事は見ないように。
悲しい事を思い出さないように。
寂しい事がないように。
辛い、苦しい事なんて口に出さないように。
そうやって振舞って
そうやって自分を欺いてきたけれど。
やっぱり…駄目だった。
未だ引き攣る喉の奥。
嗚咽を噛み殺しながら涙目で相手を見る。
――そんな事を、今の状況で何の気なしに言うなんて。
なんて優しくて、残酷で。
「本当に…好きになってしまったら、どうするんですか…」
傷心中の女の子に優しい言葉をかけたら、惚れられる確率が高くなるらしい…という話は聞いた事がある。
今その体験をしている。身を以て。
■暁 名無 > 「えっと………どう、しようね?
正直、この状況でそんな事言われるとは思ってなかったので……」
冗談なのか、本気なのか、正直判断に困る。
困る、が……返す言葉が無いわけでもない。
「……無責任な言い方かもしれないが、俺にはどうする事も出来ないよ。
お前さんの感情に指図出来るほど偉くは無い。だから──」
多分自分でも非道いことを言っているな、と思う。
ただ、正直な気持ちとして、伝える努力はしないといけない事は分かる。
「それは、お前さんが決めな。
好きになるのも、ならないも、セレネ、君の自由だ。
ただ、俺はお前さんの事をまだほとんど何も知らないので──」
俺の方はまだ未定、としか言いようが無い。
嫌いではないのは確かだけれど。
難儀な性格なのはお互い様かもしれないな。
■セレネ > 「私は、確かに一人の生徒ですけど…。
でも、その前に一人の女なんですよ?
…貴方は、そんな事関係なく接してましたが。」
これは確かに、状況が悪い。
それは困るのも頷ける。
「…。」
困惑していても、それでも答えてくれる相手は有難くて。
うやむやにされたり、白黒はっきりさせない答えを言うより納得出来た。
「分かり、ました。
…じゃあ。まずはお互い知ってもらう所からですね。
頑張ってアピールしますから、覚悟してて下さい?」
涙はまだ乾いていないけれど。
口の端を上げて勝気に笑った。
■暁 名無 > 「学校では一人の生徒である事を優先してくれないかな……!
まったく、真面目な顔してなんて子だ。」
接し方は大体誰に対しても同じ感じだろうと自分では思ってる。
それこそ男子女子問わずに、だ。流石に先生方にはそれなりに変えるけども。
「ああ、うん、そう。そうだな。
お互いを知るところからだ。……少なくとも、俺がセレネの事を知るところから。
セレネの事を知ったうえで、その時にまだお前さんにその気があるなら改めて考えよう。」
まあ、此処は学校だ。
セレネと同じ年の子は沢山居るし、俺なんかよりもよっぽど彼女に相応しい男も居るだろう。
「まあ、それなりに覚悟はしておくさ。
今の時点で俺から言えるのは、しっかりと学生生活を謳歌してくれ、くらいかな。」
まだ顔べしょべしょにして何言ってんだか。
呆れながらも俺は髪紐代わりにしていたスポーツタオルを解き、セレネの顔を拭いてやろうとする
■セレネ > 「…”学校では”そうしますけど。
それ以外なら生徒である必要はないですよね?」
基本は生真面目ではあるのだけど。
好きな人には一直線です。
「私にもまだワンチャンあるって事ですね。
…俄然やる気が出てきました。
私の思いの強さがどれくらいか、見せてあげますよ。」
言ってはもう一度抱き着こうと腕を伸ばそうとし。
無事に抱き着けたなら、先程よりも強く腕に力を込めよう。
「青春も恋愛も、一つの醍醐味って聞きますしね。
――あぅっ!」
徐に相手が髪を纏めていたタオルで己の顔を拭ってきた。
うーと唸りながらも大人しく顔を拭われ。
■暁 名無 > 「そういう事になるけども……!」
ついでに言えば学校の外では俺も先生という肩書きは外すけれども。
……うぅ、なんか自分の首絞めてないか、俺。
「その思いの強さがいつまで持つかだなー。
真面目な性分が悪い方に働いてないか?大丈夫?」
正直今まで居そうで居なかったタイプというのもあって当惑しきりだったりする。
めっちゃポジティブじゃない?
え、普通さっきの言われ方だと脈なしって……いや無い訳じゃないけど、普通思い込まない?
抱き着いてくるセレネの顔をタオルで迎え撃ちながら俺は密かに肩を竦める。
「人のシャツ涙でべしょべしょにしておいてよく言うわ。」
まあ、それでも泣き止んでくれたようで良かったよかった……のか?
■セレネ > 「…ふぅん。
あ、そうだ。先生、折角ですしこの島の事案内してくださいよ。
暇な時で良いので、時々デートしませんか?」
思えば学校と寮、図書館以外は行った事がない。
丁度良い機会ではないか?と、尋ねてみて。
「こんなかわいい子から一途に思われるんですよ?
むしろ先生が泣いて喜ぶくらいでは?」
だってほら独り身ですし。
仮に脈無しだったのならにべもなく断っている筈だし、
それなら0.1%でも可能性があるならそれに賭けた方が楽しく暮らせる。
湿ったタオルが己を包む。とりあえず、見れる顔にはしなければ。
「そのシャツ洗って返すので私に下さい。
それなら文句はないでしょう?」
今此処で脱げとは言わないけれど。
■暁 名無 > 「友達作って友達に案内して貰えよぉ……
って言ってもお前さんの事だから曲げないだろうしな……
……分かった分かった、俺に時間がある時な。」
これからしばらく暇にならないと思うんだが、と軽く頭を抱える。
絶対同級生と行った方が良いと思う……まあ、連中もテスト前なんだけど。
「自分で言っちゃうのそれ……
ていうか何でそんな妙に上から目線で言えるの……」
可愛いのは否定しないが、何だか釈然としない。
まだべそかいてた方が心動かされるものあるとすら思う。
わしわしとタオルでセレネの顔を拭きつつ、溜息一つ。
「俺が言ってるのはシャツ濡らされた事じゃなくてだな……!
……うん、よし。これでべそかき娘じゃなくなった。」
タオルを再び首から掛けつつ、セレネを見る。
ほらー、濡れてるシャツに抱き着くからセレネの方も濡れて来てるー。
■セレネ > 「私の事分かってきてるじゃないですか。
はい、無理に時間を作れとは言いませんし、私に出来る事があれば
出来る限り手伝いますので。」
お互い試験で忙しいだろうし。
同級生とは…まぁ、出来たらその時に考えよう。
「…んー。
貴方だから?先生らしくないですし。」
普通だったら多分言わない。
この人なら言っても大丈夫みたいな、変な安心感があるからか。
「…?ならなんですか。
――あと、その。色々と有難う御座いました。
お陰でスッキリしました。」
己の涙で制服が濡れた。
…まぁ、パーカーで隠せばいいや。
ジップを上げて。
離れる間際、礼の意味も込め頬に口付けをしようとするだろう。
それに気づいた相手から止められれば大人しく引き下がるが。
■暁 名無 > 「じゃあ試験勉強の合間に余裕がある時に来てくれ。
その時に多分手伝い頼むから。」
と言うとほぼ毎日来そうな気がする。
まあさすがに試験前だから毎日は無理だろうけれども。
……って待てよ、流石に編入したてなら前期試験は免除じゃないか……?
「先生らしくなくても一応年上男性だからね俺!?」
敬えとは言わないけど、それでも少しくらいそれ相応の態度を取って貰いたい。
というか、好きにならせてやろうって相手にそのスタンスはどうなんだ……?
……分からない、あまりにも今までにないタイプで全く読めない。
「──いや、ううん。ある意味お前さんの言う青春ぽくはあったかな。
青春が教師に泣き着いてシャツをべしょべしょにする事かどうかは置いといて。
……ああ、良いって事よ。」
おっと、パーカーで隠される前に咄嗟に目に焼き付ける。
相変わらず透明感あふれる白い肌しやがって……。
「……と?」
そんな風に意識を散らしていたら、頬に柔らかな感触が触れる。
そちらへと視線を向ければ、間近にセレネの顔があって。
■セレネ > 「分かりました。
まぁ基本は暇なのですがね。」
学業以外は、部活も委員会にも所属してないから時間は有り余っているし。
「…はーい、分かりましたよー。」
せめて年上らしく扱えとの言葉にはちょっと唇を尖らせつつ。
調子に乗っているのは自覚している。
「泣かせたのは誰のせいですかね。
…まぁ、良いのですけど。独りじゃないって言ってくれましたし。」
パーカーのジップを上げれば胸に沿うようにパーカーも形を変え。
「お礼、です。」
軽く触れるだけの、口付けを頬に。
少し恥ずかしいから、赤く染まる顔を相手から逸らして相手から一歩後ろに下がった。
■暁 名無 > 「授業はちゃんと出て受けろよ。
友達も作れよ、今日俺の前で晒した醜態に比べりゃどうって事ないだろ。」
まったくもう、と初めて会った時よりもだいぶ年相応の顔をするようになったセレネを見て肩を竦める。
こちらが本来の彼女の性格なのだろうか。まだ分からないけど。
「割と、お前が、勝手に泣いたぞ。
まるで俺が泣かせたみたいに言うなよな」
まったくもう、とセレネの頬が触れた唇に手を当てる。
まだ少し感触が残ってる気がした。
「恥ずかしくなるなら最初からやるなっ
……ほら、早速だけど仕事手伝え、どうせこの後も暇なんだろ?」
そう言って俺は施設のエントランスへと向けて歩き出すのだった。
■セレネ > 「勿論です。
…さっきの事は、秘密でお願いします。友達も作りますから。」
人差し指を己の唇に寄せ、秘密の仕草。
だいぶ素の顔が出てしまっている。泣いた事で吹っ切れたからだろうか。
「あー何にも聞こえません!」
両手を耳に当て、塞ぐ素振り。
まだ目も顔も赤いけれど、にひひと悪戯っぽく笑って。
「不意打ち作戦ですよ。
確かに暇ですけど――
あ、先生。この間の約束守って下さいよー?
髪結わくって話!」
今日も持って来たんですからねとポケットから折り畳みの櫛と
青のリボンを取り出しては歩き出す相手の背を跳ねるように着いていき――。
ご案内:「訓練施設」から暁 名無さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」からセレネさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に黒藤彩子さんが現れました。
■黒藤彩子 > 異能。異なる能力。
人間には元々無いもの──だから、どんなに慣れていても、制御が手から零れてしまう事がある。
学園だと制御も大事なことで、色々な方法で色々な生徒が異能とお付き合いをしている。
例えば、異能に名前をつけて当人の認知力を上げる。
例えば、魔術とかで異能に方向性をうんたらかんたら。
例えば、地道に練習して使いこなせるようにする。
他にもステージ説とか、ランクで分けるとかで向上心を促して。なんてのもある。
「んーむむむ……」
きちんと制御出来たり、使えたりする。のは大事なことで、この島だと当たり前。
訓練施設だって凄く充実していて、使いやすい──筈なんだけど、機械の操作はちょっぴり苦手で唸っちゃう。
「ボールを出すのはどれじゃーい……あ、これかな?」
日曜日のお昼頃。私は動きやすいようで動きにくい真っ黒いトレーニングウェア姿で機械の画面とにらめっこ。
画面には鮫のマスコットが操作方法を示唆してくれているけど、ぶっちゃけ邪魔で見辛さが勝っちゃう。
■黒藤彩子 > なんとかかんとか設定が立ち上がって、ちょっと広い教室くらいの室内の向こう側の床がせり出して機械が出てくる。
ピッチングマシーンみたいな奴が3台で、形そのままにゴムボールをぼんぼこ出してくる奴だ。
「セットは10秒後……よしよしおけまるおけまる。そんじゃあ元気にいってみよーう!」
両手を広げ、周囲に異能の白色光を瞬かせる。私の周囲を巡るように星々にも似た光が漂う。
視線の先は3台の機械。見て、視て、観て。視線を合わせて意識する。
白色色の群は収束し、その色を白から黄へと変えた。
■黒藤彩子 > 「──ほい!」
カウントが終わり真ん中の機械からゴムボールが緩やかな速度で飛んで来る。
何もしなければ当たる感じで、けれども私に当る前に色相を変えた光に触れて弾かれ割れ爆ぜる。
「──ほほい!」
次は右、同じように緩やかな速度で放物線を描くゴムボールが、私に視られた物が光に阻まれる。
「──おまけに~ほい!」
左も同じ。来ると判っているなら、認識出来ているなら、視得ているなら、私には届かない。
「ん~彩子ちゃんやばすぎるっぴ。これは実技試験もばちこりOK貰えるのでは?」
なんのこっちゃいと言えば、所謂バリアみたいなもの。何だか難しい名前も聞いたけど忘れちゃった。
今はきちんと3回連続で弾けた事が嬉しくて、その場でくるくる回って踊るみたいにしてみせて
「おうっ!?」
4回目のゴムボールが頭にぼんと当たって変な声。
痛くはないけど、機械のセッティングを間違えちゃったみたい。
■黒藤彩子 > 「うむ、機械に裏切られる……何だかこの間見た映画にそんな事があったような……?」
腕を組んで首を傾げる。その頭に五つ目のゴムボールが柔らかく当たる。
確か機械の寿司職人が魚を仕入れに行ったら市場で鮫と戦って、故障して人類に敵対する奴。
結構面白かった気がするような、そうでもないような。一緒に見ていたトダーリンの顔が面白かったのは憶えているんだけど。
「そういえば釣りに行くって言ってたっけ。今夜はお魚、お刺身、活け造り──っと!」
六つ目のゴムボールが一際派手に弾かれる。私は得意気に鼻を鳴らしてポーズの一つも決めてみて
「………」
通路を歩く知らないお姉さんに笑われてちょっと身を屈めた。
ガラス張りで廊下から丸見えなのを忘れていた。さげぽよ。
■黒藤彩子 > 予定の弾数を射出し終えたのか機械がうぃんうぃんと下がって行って、手広なお部屋はがらんどう。
けれどもけれども、訓練施設と銘打つだけあって壁は何だか柔らかいし床もなんだか柔らかい。
なんでも力持ちさんが暴れても平気なように、衝撃を吸収する素材で出来ているのだという。
「ふんふん……これは中々良い感じかも……」
どうしてそうしたのかって誰かが訊くなら私はきっと何となくって答えること。
自分の布団があるけど何となくトダーリンのベッドで寝たり、
自分の布団があるけど何となく壁と箪笥の隙間に挟まってみたり、
自分の布団があるけどお湯の張ってない浴槽に収まってみたり、
何となく、そう思うからそうしてみる。
具体的には床にべったり寝っ転がって、頬とか擦って柔らかさの確認をしている。
言葉通りに、中々どうして心地よい。この素材のクッションとか欲しくなってきちゃう。
■黒藤彩子 > 「そういえば新しいデパート?出来たんだっけ。今度行ってみるのも良さそうかなあ」
ごろごろと転がったかと思えばはたまた足を180度に開いて俯せの姿勢。
閉じたらお尻を大きく上げて猫のようにしてから立ち上がる。
考えてみたら、こういった広い所で自由にじたばた出来る事はあんまりない。
そう考えると訓練施設というのは、中々どうしてストレス解消にも良いおけまるな所なんじゃ?と首を傾げる。
「クッション……枕?抱き枕とか中々良さそうな……ん~でもなあ、お財布さんは寂しがっている……」
ひょいと倒立の姿勢になって天地さかさまのまま考え事。
■黒藤彩子 > そんな事をしていたら突然ブザーが鳴った。
お部屋のレンタル時間の終了を告げる音だ。
訓練施設は設備が整っていて、整っているから使いたがる人は沢山いる。特に日曜日は。
「ぬおうっ……もうそんな時間かあ。ま、でも日曜日だもんね。それに実技試験はばちこり大丈夫でしょう!」
バランスを崩して倒れても痛くない。衝撃はきちんと吸収されて何事も無い。
ふと、廊下をガラス越しに見ると次の利用者さんかは判んないけど、ジャージ姿のお兄さんがいた。多分上級生。
「ごめんなさーい!今でまーす!」
声をかけて手を振って、慌てて交代して私は更衣室へと向かうのだった。おしまい。
ご案内:「訓練施設」から黒藤彩子さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に織機 雪兎さんが現れました。
■織機 雪兎 >
期末試験も近付いたこの週末。
風紀委員の問題児かつ補習授業の常連生徒である織機雪兎は訓練施設にいた。
織機雪兎の異能は言うなれば「超魔力」とも言えるもので、シンプルに圧倒的な魔力量だ。
ただしその魔力の質は液体爆薬のようなそれ。
対策無しでいれば周囲の魔術に反応しそちらへ流れ込み、確実な暴発を招く。
そのため普段は魔力が外へ漏れ出ないように、結界のような作用を持つピアスで封じている。
だが、自身の身体にため込む量にも限度がある。
限界を超えれば結界はいともたやすく破れるし、そうなればその後の参事は火を見るよりも明らかだ。
しかも期末試験中にそれが起これば。
「ふー……はー……」
だから月に一度、こうして誰もいない頑丈な訓練施設で解放を行う。
魔術の下手な自分でも、強く集中すればダメージを伴わない自爆ぐらいは出来る。
裸なのは集中を妨げないためと、しくじった時に制服が駄目になるのを防ぐためだ。
ちなみに脱いだ服は折り畳み、部屋の隅の厳重に防御を施した退避エリアに置いてある。
■織機 雪兎 >
「――よし」
覚悟は決まった。
自身の周囲に全魔力を放出し、それに火を付けるイメージ。
全身から勢いよく魔力を吐き出し続け、部屋の中に濃い魔力が充満していく。
「はっ、はっ――」
呼吸が浅く早くなる。
全身から汗が噴き出る。
一歩間違えれば文字通りの自爆、命の危機だ。
緊張しないわけがない。
あらかた魔力を吐き出して、ぎゅっと目を瞑る。
全身に力を入れてイメージを保ったまま頭の中の引き金を落とし、
■織機 雪兎 >
部屋が爆炎と轟音に包まれ、周囲の空間そのものが爆発する。
■織機 雪兎 >
それは一瞬の出来事で、煙も熱も一切残さない。
部屋の中の魔力はすっかり消え失せ、あふれ出しそうだった保有魔力はその量を大きく減らしている。
「はっ、はっ――は、はは……」
呆然と乾いた笑いを浮かべる。
今回も生き延びた。
こんなことをこれからの人生で何度やらなければならないのか。
いつ足を滑らせてもおかしくない自爆行為を。
いつも決まって直前までそんな考えばかりが浮かぶのだが、終わった直後に思うこともいつも同じ。
「い、いきてる……」
今回も生き延びた。
今回は足を滑らせなかった。
「いきてるうううううううううううううううううううう!!!!!」
ほんの少しだけ長く生き永らえた喜びをかみしめながら、絶叫。
■織機 雪兎 >
だが頭ぷーたりんなこの少女が、いくら命がかかっているとはいえ万事全てを完璧にこなせるはずもない。
確かに魔力解放作業そのものは完璧に終わった。
厳重な防御設定のおかげで部屋の隅に置かれた制服も訓練施設そのものも被害は一切ない。
だが、一点。
ただ一点のみ、この少女は失敗した。
建物に致命的どころか軽微な被害があるわけではない。
自分が命を落とすようなヘマをしたわけでもない。
「ウオオアアアアアアアアアアアア!! 僕は生きてるぞオオオオオオアアアアアアアアアアア!!」
一糸まとわぬ姿で天に向かって雄叫びを上げながらこぶしを突き上げるこの少女は。
■織機 雪兎 >
部屋に鍵をかけ忘れている。
ご案内:「訓練施設」に日下 葵さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に加賀見 初さんが現れました。
■日下 葵 > 訓練施設。
異能や魔術を自由に発揮できるこの場所は、風紀委員をはじめとしていろいろな人が利用する施設だ。
もちろん危険な異能を使用することもあるため、
そういった利用をするときは事故防止の観点から内側から鍵をかける方針になっている。
逆に鍵がかかっていなければ、先客がいても入れるし、安全に配慮すれば先客と手合わせもできる。
「先客がいる。まぁ、ダミー人形を相手にするよりいいですかね」
そう言って、ドアを開けると……そこには一糸まとわぬ少女が雄たけびを上げて拳を天につきあげていた。
「……?
ん?ん?
んー?」
一度扉のノブに手をかけ、半歩だけ室内に脚を入れた状態で思考が固まってしまった。
「不審者?」
今の状況で言えることは挨拶でもなんでもなく、思考がはじき出したそれらしい推測を口にすることくらいだった>
■加賀見 初 > 最近、ちょっと運動不足が気になり始めてきた。
早くは走れないまでも、広い場所でゆっくりと体を動かしたりじっくりとランニングくらいならできるだろうし。
そう思って施設に入り、鍵がかかってない場所を探したのはいいのだけれど。
入り口に人が止まっている。
「……どうかしましたか?」
ひょこっと顔を出して、隙間から中を覗いて。
「斬新な露出狂、ですね?」
通報……とはいえ、迷惑をかけてるわけじゃなさそうだしなぁ と考えてはいるけれど。
あんまり表情は動かない。
■織機 雪兎 >
「ん?」
なんか音がした気がする。
はて、と音がした方を見れば、新たな利用者だった。
なんだ誰か入ってきただけか。
「――――――は?」
■織機 雪兎 >
「ウオアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?!?」
■織機 雪兎 >
叫び、自身の裸体を腕で隠すようにしながら背を向ける。
ダメだ隠れるわけねぇ。
でもなんとか隠すしかねぇ。
■日下 葵 > 「……斬新が過ぎませんかねぇ?
いや、待ってください。利用者名簿利用者名簿……
織機雪兎、所属:風紀委員
風紀委員?」
硬直していると後続で女性が来た。
斬新な露出狂とはまた斬新な表現だが、見たままを言えばそう表現せざるを得ない。
通報はどうにでもなるので、ドアわきにかけてある利用者名簿をパラパラとめくれば、
その暫定露出狂が風紀委員だとわかった。
「……君、手帳は?」
風紀委員なら持っているだろう。
「すみません。ちょっとロッカーを見てきてもらっていいですか?
もしかしたら彼女の服か、荷物があるかもなので」
そう言って、後続の褐色肌の女性に頼み事。
一緒に自身の風紀委員の手帳も渡しておく。
それでロッカーの電子錠は開くはずだと伝えて。>
■加賀見 初 > 「……よく通る声ですね」
意味のない叫びだけど。
襲われてもすぐに助けが来きそう なんて感想を抱きつつも。
「わかりました、ロッカーですね。」
手帳をカバンに入れて、松葉杖を突きながらロッカーに確認をとりに向かおうとして。
「あ」
「このタオル、大きいので彼女に使ってもらってください。」
白地に黒文字で 流線形 と書いてある謎のバスタオル。
■織機 雪兎 >
「手帳もなにも持ってねぇのわかるでしょおおおおおおおおお!?!?!?!?」
こちとら裸やぞ。
舐めんな。
背中を向けて必死に僅かな面積を腕と脚で隠しながらにじりにじりと彼女らとは反対側の部屋の隅に少しずつ移動する。
二人が女の子で本当に良かった。
いや良くはないけど男の子だったら想像するだけで恐ろしい。
ロッカーの中には雑に畳まれて放り込まれた制服と風紀のジャケット、あとは風紀の腕章と色気もへったくれもない下着。
開いた形跡がほとんどない手帳はスカートのポケットに放り込まれているだろう。
■日下 葵 > 「あなたが来るのがもう少し遅かったら、叫び声を聞いた警備が来て私が不審者扱いだったかもしれませんねえ」
何てことを笑いながら言えば、褐色肌の彼女からバスタオルを渡される。
「おやおや、やさしい。
これ、彼女からのやさしさです。いくら同性と言えど、さすがに何も思わないなんてことはありませんし、
思わなかったとしても問題はあるのでひとまずつかってください」
ロッカーに向かった彼女に渡された”流線形”のバスタオル。
これはこれで斬新なデザインである。
「手帳は肌身離さず携帯してください。
ここで何をしていたかは知りませんが、下着は脱いでも手帳は携帯するように。
あと、私は風紀委員の日下です」
風紀委員の手帳はそれ一枚で一般人よりも強い権限を有する。
もちろん所属や階級にもよるが。
そんなお説教をして、自分の名前を言う。>
■加賀見 初 > 「……いや、さすがに……」
まずドアを開けたら5秒で全裸とか想定できない。
してたらきっと変態だ。
なれた様子で移動して、こちら側のロッカーを確認するけれど。
置いてないのが確認とれただけであった。
「着替えとか手帳、ありましたー!」
ちょっとだけ大声を出して、伝える。
さて、それらを持って合流だ。
合流すれば。
「……辛いことがあるなら、話を聞くよ?」
それはそれは慈愛に満ちた顔だったという。
■織機 雪兎 >
「あっどうも……」
渡されたタオル。
広げればデカデカと書かれた「流線形」の文字。
誰の身体が流線形だ。
そんな意図はなかろうが、なんだかちょっとだけイラッとしつつそれを身体に巻く。
「いや別に好きで露出してたわけじゃないからね!?!?!?!?」
クワッと目を見開き叫ぶ。
その必要性があったからしぶしぶそうしてるだけだ。
「僕はただ魔力抜きをしてただけで……あっこれなんて説明すればいいんだくそっ説明がめんどくせぇ!! とにかくめちゃめちゃ反応性が高い魔力が大量に溜まるからそれを抜くために魔力を暴発させると服がダメになる可能性が高いしそもそも失敗して死ぬかもしれないから脱いでただけで別にやましいことなんて何もないよ風紀委員の織機雪兎ですゆっきーって呼んでねあと服と下着ちょうだい!!!!」
状況説明と自己紹介と自身のあだ名の指定と着るものの要求を一息で。
色々と余裕がない。