2020/06/29 のログ
日下 葵 > 「まぁ、開放的な気分を味わいたいならせめて、もう少し人の出入りが少ないところで
 ……いや、そういうスリルを楽しんでいたならまぁ、
 こういうところを選んだというのも分からなくは……

 あら、てっきり好きでやっていたのだとばっかり」

そんな話をしながら、服を見つけたといわれて褐色肌の彼女のもとへ向かう。
松葉杖で荷物を全て持ってくるのは大変だろう。
荷物の運搬を手伝いながら、褐色肌の彼女のなまえを聞いてみる。

「ところで貴女、名前は?」

因みに織機雪兎の名前を確認した段階で、
彼女がどんな能力を持っているかは手元の端末で検索したので、
決して彼女が好きで全裸になっていたわけではないというのは承知だ。
知ったうえでからかっている。

「ところで、魔力抜きといい、驚いた反応といい、
 ”鍵をかけ忘れましたね?”」

その質問の声色は、ややどすの効いた重いトーンだ。
慈愛に満ちたやさしい、悩み事がないかを聴く彼女の声とは対極のものだった>

加賀見 初 > 「……それでも爆発から身を守ってくれるものは身に着けておくと死ににくくなるんじゃないかな?」

素朴な疑問を口にする。
事故が前提なら、対策も必要ではなんて空気を読まずにぶち込んでくる。

「加賀見 初。ここの生徒で、ガンショップ『オブシダン』の店長。
 運動不足だから、ちょっと体を虐めにきたんだよ」

名前を聞かれて答えない理由なんてない。
ちゃんと登録してる店だし、やましいところもなにもない。
正直に答えたあとに荷物を渡した。

織機 雪兎 >  
「違うっつってんだろォ!?!? その端末何のために持ってんだ!! そんな変態的な趣味はもってねェよォ!!!」

思わず叫ぶ。
自分だって風紀委員だからその端末の使い方は知っている。
名前を入れれば名簿が出てくるのだから、異能の事も知っているはずだ。

「いやあの、僕魔術ヘタクソで、服のこすれとか気になって集中できないから……」

防護服を着てうまく出来たとしても、うっかり防護服の中で爆発を起こしたら大参事だ。
訓練施設で防護服に詰め込まれた肉の塊が発見される大事件が起こってしまう。

「ウッ」

そして服を着ようとした瞬間低い声が聞こえた。
そう、自分は鍵をかけ忘れた。
今回は終わった後だったから良いが――いや良くないが――、もしこれが直前だったら。
サァ、と顔が青くなる。

日下 葵 > 「オブシダン……ああ、知ってますよ。
 私の同僚もたまに使うみたいですし、風紀委員を今後ともよろしくお願いしますね」

店の名前は聞いたことがあった。
自分は利用したことはなかったが、なるほど、彼女が店長なのか。
ならば、私もこの銃を手入れするために使ってみるのも悪くない、何て思って。

「……私の名前は日下葵です。
 ”私のような人間だったから”良かったですが、そこにいる彼女、
 加賀見さんは”私のような人間”ではありません」

何のための端末なのか。
そういわれて、今度は私の名前を入力して織機さんに見せてみようではないか。
最悪、私が爆発に巻き込まれてばらばらになっても問題はないが、
加賀見さんは違う。彼女はばらばらになれば死んでしまうのだから。

「お説教したい気持ちはやまやまですが、ひとまずは服を着てください。
 と、加賀見さんでしたか、いやはや、後輩がとんだご迷惑を。
 風紀委員も数がおおいですから、失態もあります。今回は多めに見てください」

そう言って、頭を下げる。
その表情はいつも他人を揶揄うニヤついたものではなく、真剣なものだった>

加賀見 初 > 「タイツみたいなのでも、ダメかな?」

全身にフィットする感じのものなら、擦れるのも極力ないんじゃないだろうか。
防護服に詰め込まれた肉の塊 と ただの肉片 だとどちらがマシかって話になるのかもしれないけれど。

「日下先輩、ですね。
 店に来てくれたら、珈琲くらいはご馳走します」

何にせよ、お客はありがたい。
弟にヒモジイ思いはさせられないし。

「私は別に構いません。だから頭を上げてください。
 けれど……例えば、シューティングレンジでの入室ミスなどで事故が起きた場合など例もありえますので、そこはきっちりとしておいた方が良いと思います」

真面目か。真面目だよ。

織機 雪兎 >  
「ウウッ」

ド正論である。
もう完膚なきまでに何の反論も出来ないほどにド正論である。
言われた通りに制服を着て地べたに正座。

「すいませんでした……」

そのまま二人に頭を下げる。
ジャパニーズ土下座。

「今後は施錠確認きっちりします……あとタイツもだめです気になっちゃうので……」

床に頭をこすりつけながら。

日下 葵 > 「それとは別に、全裸になる必要があるならそれも申請書に記入しておくのがいいでしょう。
 もし何かあったときに駆け付けるのが男性ではいろいろと不味いでしょう。
 今回は私たちだったからよかったですが」

土下座をする彼女の前にしゃがめば、頭を上げるように促す。
そして利用者名簿や申請書のDBを見てアドバイス。
嫁入り前の身体だ。異能の管理にせよ、もしもの時にせよ、大切にしてほしいものだ。

「はい、私としても後輩たちへの危機管理指導は徹底していく所存です。
 何はともあれ、面倒に巻き込んでしまいました。
 お詫びというわけではないのですが、次回は貴方のお店を使わせていただきましょうかね」>

加賀見 初 > 「ああ、ダメだったのか……」

異能に限らず、世の中は上手くいかないものだなぁ なんて零す。


「はい、今回は幸運な事故でしたから。
 来ていただけるのなら、きちんと整備に納入もお任せください。
 評判はいいんですよ。

 それでとりあえずは……まぁ、今回は無事でよかった」

二コリと花のように笑う。
表情こそ少ししたら戻ってしまうけれど。

織機 雪兎 >  
「ウウウッ」

二人とも優しい。
優しさが心に刺さる。
促されたので顔を上げて。

「いやうん、ホントあの、気を付けます……二人みたいなキレイでカワイイセンパイに怪我させたら大変だからね……」

そして中途半端にカッコつけた。
女の子の前でカッコつけるのはもう習性のようなもの。
ポケットに突っ込んでおいたピアスを取り出し、耳に付ける。

日下 葵 > 「あら、私のことはどれだけ傷つけてもいいんですよ?」

その一言は胡散臭い表情も相まって、とても気色が悪いが、
私の情報を見た後なら意味が分かるだろう。

「ただし、他の人はそうはいきませんから、本当に気をつけてください。
 あなたの力は怪我ではすみませんから。
 それと、さっきまで露出狂に間違われていた状態でその言葉は別途通報されかねません」

続く言葉は厳しい。

「そのようですからね。
 同僚から悪い話を聞いたことがないですから、
 お邪魔するときには期待していくことにしましょう」

ニッコリと笑う彼女を見て、こんな風に笑える人なのかと少し驚く。
何というか、自分と向きが違うだけで、あまり本心に近い表情を出さない人なのだと思っていたから>

加賀見 初 > 「異能や魔術が便利だから、銃そのものを使う人は少ないかもしれないけどね。
 時間があるなら、その時にお茶でも一緒に。珈琲くらいしかないけどね。」

待ってるよ と何時でもいいなんて約束を取り付けて。

「ボクこそ、カワイイ年下の子が怪我をしたり凹んだりを見るのは嫌だからね?
 ちゃんと格好よく気を付けてね」

優しく諭したところで、カバンの中からアラーム音が鳴った。
おや と取り出して時間を見たところで。

「……すまないね、そろそろ帰らないといけないみたいだ。
 タイムセールに間に合わなくなってしまう」

織機 雪兎 >  
「まさか! 先輩で、しかも女の子を傷付けるわけにはいかないよ!」

大げさに驚いて見せる。

「ウ゛ッ」

しかし露出狂、と言われて言葉に詰まった。
いやまぁ確かにそう思われても仕方ないのだけれど。

「それはもう、今回本当に思い知ったから……二度としないと誓うよ」

とにかく大参事は自身も避けたい。
カッコつけながら気を付けようと決めた。

「ういちゃんセンパイタイムセール行くんだ……」

なんかクールな彼女からタイムセールと言う言葉を聞くとなんだかこのカッコイイ人も人間なんだなと思ってしまう。

日下 葵 > 「おやおや、用事があるのかい?
 せっかく運動しに来たのに、なんだか申し訳ないね」

アラームを確認してセールに行くという彼女。
用事を一つ邪魔してしまったとわかれば、なおのこと彼女の店に行く必要があるだろう。

「身の丈にあった格好が一番格好いいからね。
 格好つけたいなら自分を磨くように」

そんな先輩風を吹かせるが、当の本人だって風紀委員の仕事じゃない時はひどいものだ。>

加賀見 初 > 「そういう時もあるさ。
 自営業だからね、安く買える時は買っておかないと。
 それに……ここから店までいい運動と思えば運動不足解消には丁度いいよ」

根っこがどうやっても運動部。

「それじゃあ、二人とも。またどこかで。
 それがお店だったら、ボクは嬉しいよ」

軽く手を振って、慣れた様子で松葉杖をついて去っていきました。

ご案内:「訓練施設」から加賀見 初さんが去りました。
織機 雪兎 >  
「自営業、大変だな……ういちゃんセンパイまたね!」

悠々自適で楽しそうだな、と言う印象はあったが、なるほどなかなか大変らしい。
立ち去る背中に手を振って。

「ウッグ……まもまもセンパイ優しいかと思ったけど結構厳しい……」

いや厳しさも優しさなのだけれど。
と言うかあの失態と裸を見られておいて今更カッコつけもクソもない。

「ところでまもまもセンパイは何しにここへ?」

ふと気になった。

日下 葵 > 「全部自分で管理しないといけないですからね。
 組織にいるよりもそういう意味では大変でしょう」

そう考えると、ある程度指示に従って活動すればいい我々風紀委員はまだまだ楽なものなのかもしれない。

「あら、私はやさしいですよ?
 甘やかして仕事中に殉職されては困りますから。
 私は格闘訓練でもしようかと。
 人形を相手にするより、人に手合わせをお願いしようとして扉を開けたら全裸で拳を掲げる貴女が」

ここに来た経緯を説明するが、そうするとおのずと彼女の失態を振り返ることになる>

織機 雪兎 >  
「アアアアアアアア……」

頭を抱える。
恥ずかしくて死にそう。

「かくとうくんれん……」

運動に自信はない。
どうやら力にはなれなさそうだ。

日下 葵 > 「まぁまぁ、そんなに恥ずかしがらずに。
 まだ同性だっただけラッキーだったとおもいましょう。
 それに、あなたの能力、というか、使い方だと服なんて気にしてられないでしょう?
 能力を使う上で仕方ないことなんだから、ある程度のあきらめは必要ですよ」

DBを見た限り、彼女の能力は使えば服が消し飛ぶ。だから脱いでロッカーに入れていたのだろうが。
そういう意味では、私も服に関してはあきらめている。
身体は回復しても、服は戻らないから。

「格闘は苦手ですか?では射撃は?
 射撃ができるなら、これ。
 私に向かって打ち込んでください」

そう言って渡したのはH&K P2000。
私が普段使っているものだ。もちろん、無理に訓練に付き合えとは言わない。
今の彼女としては休みたさもあるだろうし。>

織機 雪兎 >  
「や、消し飛ぶ、わけじゃないんだけど……」

事故れば消し飛ぶ、と言うだけだ。
こちらの異能はあくまで超反応性魔力と、それを大量に溜め込む性質。
消し飛ぶのは魔術の制御がヘタクソなせいだ。

「――え?」

銃を渡され思わず受け取る。
ずっしりと手に感じる人を殺す道具の重み。

「――いやいやいや!! そんなの出来るわけないでしょ!?!?!?」

人殺しは勘弁してほしい。

日下 葵 > 「でも、うまくいかないことも多いんでしょう?」

使いこなせていないなら、使いこなせるようになるまではあきらめねばなるまい。

「え?何でですか?動く人間に向かって実弾訓練ですよ?
 なかなかできませんよこんなこと」

驚く彼女を見て驚く私。

「私としてはですね、銃撃戦をすり抜けて自爆する訓練をしたいので。
 もう遠慮なくやってほしんですが。
 あ、それともアレですか?私の能力が信じられませんか?」

喜々として語るその様子は半ば狂気だ。>

織機 雪兎 >  
「うまくいかないことの方が多い、かな……」

何をどうやっても暴発する。
逆に言えば必ず暴発するので、最終手段としてぶっぱなす使い方は出来るのだが。

「人に向かって撃てるわけないじゃん!!」

今にも放り投げてしまいたいが、銃は投げない方が良いと風紀の研修で言われた。
なのでどうすることも出来ず、握って狼狽えるだけ。

「だってこれ、人を殺す道具だよ!?」

彼女の異能がどうとか言う話ではない。
人を殺す道具を人に向けてぶっ放せるわけがない。
そんな覚悟は持っていない。

日下 葵 > 「なら、やっぱり服はあきらめたほうが……
 なんなあらあたり一辺全部吹き飛ばして、目撃者すら残さないくらいの意気込みを持たないと」

先ほどまでは常識人ぶっていたのに、
こういう話になると途端にタガが外れるのは良くない癖だ。

「これ、人に向かって使う者ですよ?
 だって織機さん、もし相手がこういう道具を突き付けてきたらどうするんです?」

そう言って、太ももからもう一丁、P2000を取り出して彼女の肩に押し当てる。
もちろん薬室に弾は入っていないし、安全装置もかけてあるし、スライドも引いてある。
それでも、”人を殺す道具”を押し付けられるのはいい気分ではないだろう。

「こういう時に殺されないように、はたまた殺さないようにする道具です。
 うっかり打ちどころが悪くて殺しちゃったら嫌でしょう?
 それに私、基本的に死にませんから」>

織機 雪兎 >  
「いざとなったら、それも考えるけど……目撃者は消さないよ!?」

流石に毎月毎月制服をダメにするのは。
帰れないし、何より制服代も馬鹿にならない。
アレ結構高いんだぞ。
つーか物騒だなオイ。

「ッ――!」

ひゅっ、と喉が鳴る。
銃の事はよくわからないが、スライドが引いてあるときは撃てない、と研修で聞いた。
それでも身体は硬直してがちがちと歯がなる。

「そ、そん、はひゅ、だって、じゅう、うたれ、だって……」

軽いパニック。
こちらもそれに対抗できる武器を持っているのに、その使い方がわからない。
構えて引き金を引くだけ、と言うことはわかる。
わかるが、それをどういう気持ちで撃てばいいのか。
銃を胸に抱いて、肩に銃を押し付けられて、がたがた無様に震えるだけ。

日下 葵 > 「なら、能力を使わずにこういう道具で解決できるようにならないと」

物騒だな、という顔をする彼女を見て、だからこその訓練、という顔。

「おやおや?
 銃を向けられるのは初めてですか?」

身体が硬直して、軽くパニックに陥った彼女を見てどこか嬉しそうにする。
恐怖からがたがたと筋肉が硬直して震える様子は見ていてとても可愛らしい。

「そういう風にならないための訓練ですよ。
 もしかして貴女は血も見たことがなかったり?」

そう言ってスライドを戻す。すると薬室に弾が送り込まれ、安全装置を外した。
銃口を彼女の肩から、自分の顎に当てがって―――

バンッ

引いた。近距離で聞くにはあまりにも大きい発砲音。
そして弾丸は顎から脳天を貫いて天井にめり込んだ。
一瞬遅れて、身体が重力にひかれて倒れる。
スライドから弾き飛ばされた空薬莢がカラカラと転がり、静寂が訪れる>

織機 雪兎 >  
「えっ……」

自身の顎に銃を向ける彼女。
何を、と思う間もなく、

「ッ!!」

銃声。
至近距離で銃声を聞いて、身体が跳ねる。
爆ぜた彼女の頭から飛び散った血や血じゃない何かが、自身の顔にバタバタと降り注ぐ。

「――――え……?」

ゆっくりと倒れる彼女の身体。
何が起こったのか理解が及ばない。
わかるのは、彼女の身体が生命活動を停止したと言うこと。

「まも、せんぱい……?」

呆然と、彼女の名を呼ぶ。
パニックになって泣き叫ぶことも出来ない。

日下 葵 > 「………」

名前を呼ばれるが、もちろん返答はない。
脳の活動が止まってしまったのだから。
ところが、10秒もたつと変化が起こる。

「っと、あれ、汚しちゃいましたか。
 いやー失礼しました。側頭部から狙うべきでしたね」

突然、身体が動き出したかと思えば、血は止まり、顎から頭にかけて空いた穴がふさがっていた。

「こういう輩が風紀委員だけじゃなくて、島全体にいるんですよ。
 だから、慣れておいてくださいね。
 って、あらあら、怖がらせすぎましたか」

パニックになって泣くこともできないといった様子の彼女。
非常にいじめがいがあっていい子である。>

織機 雪兎 >  
「ひっ!?」

突然動き出す彼女だったもの。
自身の顔にべったり付いていた血はボロボロと崩れていき消えていく。
そうして彼女は彼女に戻っていた。

「っ、ぅ、ぷ――ッ」

余りにも異常な光景に、胃の中のものが逆流する。
そのままその場に崩れ落ち、

「――ぅ、げぇっ――!」

吐いた。
昼に食べた焼きそばが、半分ほど消化された状態で床にぶちまけられる。

日下 葵 > 「おやおや、大丈夫ですか?」

目の前の光景を見て、昼食と思しきものを吐き出してしまった彼女。
その背中をさすりながら、ポケットからハンカチを取り出して差し出す。

吐しゃ物に関しては特に何も思わなかったようで、気にする様子もない。
昔から自分の手足を取り外してきたのだ。
他人の吐しゃ物をみて気分が悪くなるようなタマではない。

「ほらほら、大丈夫ですから、私はちゃんと生きていますし、
 怖がらなくても風紀委員ですから化け物とかでもありません。
 安心してくださいな」

彼女を落ち着かせるために背中をさすり続ける。
これ、パワハラとかで訴えられないだろうか。なんて心配をしつつ>

織機 雪兎 >  
「ごめ、ごめんな、さ――ぅ、ぇえっ」

第二派。
さっきので粗方胃の中は空になったようで、胃液しか出てこない。
背中を擦られ、涙を流しながら戻す。

「ぅん、でも、せんぱ、しん、こわ、こわくて、ごめ、ごめんなさ……っ」

背中を撫でられながらべそべそと泣く。
再生が、と言うよりは、彼女が死んだ時の妙なリアリティ――現実だから当然なのだが――が恐ろしかった。
人はこんなに簡単に死ぬんだな、と現実を無理矢理見せられた感じ。
流石にハンカチは申し訳なくて受け取れない。

日下 葵 > 「正確に言うと死んではいないんですけどね。
 生きている細胞が死んだ部分を回復させるので、普通に切り傷が治るのと一緒です」

脳みそとかも治っちゃうのが異能としての特異性ですけど。
なんて加えれば、けたけたと笑う。

「いやー、ここまで慣れていないとは思いませんでした。
 ちょっと驚くくらいだと思っていたんですが、ひどいことをしました」

ひどいことをしたとは思うが、その反応が100点満点で個人的には大変良い。
そんな倒錯的な感情を抱えつつ、彼女がおちつくのを待とう。
ハンカチは……涙をふくのとかに使ってもらうことにした>

織機 雪兎 >  
「ふぇ……ふぇぇぇ」

とうとう泣き出してしまった。
異能とか再生とか死んでないとかもうなんかよくわからない。
わかるのは彼女が活きていると言うことと、彼女が「死んだ」時の衝撃だけ。

「せんぱいぃぃぃぃ……」

ハンカチでぐしぐしとゲロが付かないように涙を拭くのだが、拭いても拭いても次々と溢れてくる。
口の中がすっぱいし焼きそばもったいないし、感情がぐちゃぐちゃでどうしよう。

日下 葵 > 「あら、これは……
 後輩を泣かせたパワハラ上司になってしまいましたね」

ついに泣いてしまった。
わんわんとなく彼女を軽く抱き寄せると、まるで母親が子供をあやすように背中をさする。
内に秘める感情はそんなきれいなものとはかけ離れているが。

「まぁまぁ、落ち着いてください。
 怖がらせたのは謝ります。だから一度、ね?泣き止んでください」

彼女を虐めるのは楽しいが、この状態を見られてしまったら怒られるのは私だ。
何よりも、倒錯的な感情があるとはいえ、罪悪感がないわけではない。
思いのほか怖がらせてしまったのは申し訳ないとはおもっているのだ>

織機 雪兎 >  
「うえ、げほっ、おぇっ」

泣きすぎてえずいた。
それでもちょっと落ち着いてきて、べそべそと彼女の顔を見上げる余裕は出来て。

「だめですよう、しななくてじゅうでうったらいたいですよう……」

いや痛いかどうかは知らないし、そもそも普通あんなことをしたら死んでしまうので痛いもくそもないのだが。
けれどもこうして復活、と言うか再生?するのなら痛みはあるはずだし、それは想像を絶するほど痛いはずだ。
だってピアスの穴をあけるだけであんなに痛かったのだから。

「からだはだいじにしないとだめですよぅ……ふぇぇ」

彼女に縋り付いて、待たなく。

日下 葵 > 「うーん、まぁ確かに人並みに痛みは感じますし、
 回復するときのほうが痛いんですけどねぇ?」

だから訓練した。
痛みや、死ぬことに対する訓練をかなり長いことやった。
結果として痛みは自分にとって甘いとか、苦いとか、まぶしいとか、うるさいとか、
いい匂いとか、その程度の意味しか持たなくなった。
命に係わる感覚とは思えなくなったので、今となっては理解しがたい感覚である。

「人を驚かせるのにいいんですよ。
 人質の解放とか。そういうところで役立ってます。
 本当に身体を大事にしないといけないのは、回復しない一般人ですしねえ?」

自分の身体は元通りになるのでいいのだ。
そんな理由で風紀委員をやっている。>

織機 雪兎 >  
「じゃあもっとだめですよぅ……」

死ぬより痛いってどのぐらいだ。
死んだことないからわからない。
とにかく、痛いのはよくない。

「だめですよぅ、回復するからこそ大事にしなきゃダメだってなんかどっかで誰かが言ってましたぁ。痛いのは生きてるからだって、痛くなくなったら死んじゃうって、ききましたよぅ」

べそべそのままぐいぐいと彼女の服を引っ張って。

日下 葵 > 「痛みは感じてますよ?それに私は死んでませんし。
 他の人よりもちょーっと派手に怪我をしても大丈夫なだけです」

それこそ、腕一本残っていれば回復するのだ。不死身みたいなものだ。

「足が速い人が陸上選手になって、
 格闘技が得意な人が格闘家になって、
 それと一緒ですよ。適材適所。
 今日のお詫びはちゃんとしますし、私は大丈夫ですから、頼むから泣き止んでください」

個人的にはもっと泣いているところは見たいが、
今は風紀委員。見られれば問題だ。>

織機 雪兎 >  
「……」

じい、と見る。
ちょっと納得いっていないような、そんな顔。

「――お詫び、はいいです。代わりに、もっと、大事にしてください。自分の事」

ぐすっと鼻をすすって。
適材適所、確かにそうだ。
自分が戦闘を出来ないように。
けれども、それでも。
再生するからと彼女が自分の身体をそういう風に使うのは。

なんだか違う気がしたから。

日下 葵 > 「………」

沈黙。怒られてしまった。
きょとんとした表情で彼女を見やる。

「いや~!可愛いですねぇ!
 可愛がりがいのある後輩じゃあないですか!
 いやぁ~!いいですねえ!気に入りましたよ!
 虐めたくなるその態度!もう百点満点です!

 仕事柄身体を傷つけないというのは無理ですが、良いでしょう。
 可能な限り大事にしましょう」

ついに我慢の限界が来たのか、彼女に抱き着いてしまう。
まるでペットをかわいがるかのように。
こんな人間を本気で心配するような、いかにも風紀委員に向かなさそうな、
純粋な気持ちが何ともたまらない。>

織機 雪兎 >  
「ふへぁ!?」

いきなり抱き着かれた。
しかもなんか虐めたくなるとか言われた。
えっなになにやわらかいしいいにおいするいまゲロ吐いたばっかりできたないのにえっなに。
混乱。

「ま、もせんぱ、い? あの???」

抱き返して良いのかわからず、腕を彼女の後ろ側に浮かせたままきょどきょど。

「や、やくそく、です、よ?」

とりあえず身体は大事にしてもらえるらしい。

日下 葵 > 「ええ、ええ、いいですよ。
 可能な限り大切にしましょう。
 少なくとも、デモンストレーションで脳みそぶち抜くような真似はしません」

混乱する彼女を一度離して、目を合わせて約束する。
そしてニッコリと笑って――――

「ただし、貴女はもっと人を殺す訓練をしないと。
 今のあなたは誰かを守るどころか爆弾としてくらいにしか役に立ちそうにありませんから。
 私が余計に怪我をしなくていいように、ちゃんと”この手の武器”を扱えるようにしてください。
 あと、誰かが死んだり、怪我をしたときにいちいち動揺するのも。
 悲しんだり泣いたりするのは後からです。
 さっき、貴女が採るべき行動は救急車や医療従事者を呼ぶことでした」

突然始まる説教。
倒錯的な感情を持つ一方で、ガチガチに風紀委員でもあるのだ>

織機 雪兎 >  
「ほんと、ですよ?」

離れる彼女の身体。
しまったドサクサに紛れて抱きしめておけば良かったと後悔し、

「う」

お説教を喰らう。
確かに、風紀委員をやっているならさっきの行動は適切じゃなかった。

「――怪我、とか、血とかには、頑張って、慣れます。銃、も……こわい、けど、がんばり、ます」

そう言えばずっと持っていた拳銃。
気が付かなかったけれど、ガチガチに固まって指をはがすのにも一苦労だ。

「でも、人を――ころ、す、訓練は、したくない、です。僕は、風紀委員、なので……」

ゆっくり、がちがちになった指を一本ずつ、反対側の手で開いていく。

「ぼくは、人をまもる訓練を、します。ごめんなさい」

そうして拳銃を彼女に返す。

日下 葵 > 「ふむ、まだよくわかっていないようですが……
 人を助けるためには殺し方も知っておいたほうがいいんですよ。
 弾の入っていない拳銃でも人は殺せます。
 だから犯罪者から皆を守るには、
 そもそも銃のような鈍器として代用できるものを与えてはいけない」

彼女がやっとの思いで手放した拳銃。
そのグリップで彼女の額を軽く小突くと、それだけでも中々に痛いだろう。

「殺せと言っているわけじゃないんですよ。
 敵を知りなさいと言っているんです。

 危険を、殺し方を知れば、その防ぎ方もわかります。
 私は死にづらい存在ですし、痛みにも鈍い。
 それでも、人の殺し方を知っているし、どうすれば苦痛を与えられるかも知っている。
 だから現場に出られるんです」

「なんなら私が一から訓練に付き合ってあげてもいいですよ。
 その辺の風紀委員よりも『人間についていろいろと詳しい』ですから」

痛みに耐える訓練で、およそ人間に苦痛を与える方法をほとんど試した。
そういう知識はとても豊富だったりする。
そう言って、また彼女を抱きしめる。
これは純粋に可愛いからだ。>

織機 雪兎 >  
「あたっ」

銃で小突かれて目を閉じる。
その場所を擦りながら、彼女の言葉を聞いて。
言っていることはよくわかる。
守り方を知るためには守る場所を知らなければならない。
そして守る場所は人が死ぬ場所だから。

「――」

けれど、なんとなく嫌だった。
人の殺し方を知ってしまったら、何かが変わってしまう気がして。
素直に、頷けない。
悩んでいたら抱きしめられた。
びっくりするが、抱きしめ返すのもなんか違う気がして、されるがままになっている。

日下 葵 > 「ま、殺し方、って言い方が良くありませんでしたかね。
 Know your enemyですよ。
 知識程度には、お勉強しておいてください。
 必ず、役に立ちますから」

最後の一言は、何となく経験からくるもののように思えるが、
それを詳しく知る由は、目の前の彼女にはない。

「貴女みたいな、いじめがいのある子は何かと狙われやすいですから。
 少なくとも、自分の身は守れるようにしててくださいよ?
 拳銃、ナイフは風紀委員の十八番ですし」

困惑する彼女の頭をポンポンとなでる手は、少なくともやさしさにあふれるものだった>

織機 雪兎 >  
彼女は、何回も「死んで」来たのだろう。
そしてたぶん、わからないけれど、きっと何人も殺してきたのかもしれない。
だからその言葉はすとんと自分の中に入ってきた。

「――運動は、苦手なので……銃の撃ち方を、教えてください」

だから覚悟を決めた。
こんなに優しい彼女なら、きっと信じて大丈夫だと思う。
きっと人を殺さないで済むかもしれない手段を教えてくれるかもしれない。

「あと、あの、僕、あなたじゃなくて、ゆっきー、です」

頭を撫でられてちょっと顔を赤くしながら。

日下 葵 > 「いいですよ。拳銃を人並みに使えるようになったら、他の銃も試してみますか。
 意外と狙撃とかに才があるかもですし」

人なんて殺そうと思えばいくらでも殺す方法があるし、
世界にはぞっとするような殺し方や、痛めつけ方がある。
それを身をもって、体系的に経験したのは自分以外にほとんどいないだろう。
そんな自負があった。

「ゆっきー。なるほど。さすがに先輩後輩の仲でその呼び方は憚られますから、
 雪兎さんと呼びましょうか。私のことは自由に呼んでください。
 ではまぁ、いったんは落ち着くために出ましょうか。
 雪兎さんもいろいろ手直しや、身だしなみを整えたいでしょう?」

そう言って、立ち上がると立てる?と聞いて手を差し出す>

織機 雪兎 >  
「ど、どうだろ、やだなぁそんな才……」

バンバン銃をぶっぱなしながら戦う姿が想像できない。
と言うかあまりしたくもない。

「僕は憚らなくてもいいと言うか、まもセンパイにそう呼んでもらえると嬉しいと言うか……」

差し出された手を見る。
床を見る。
やきそばだった残骸がある。

「――そ、その前に、掃除、していいですか……?」

流石にこれをこのままにしておくのはちょっと。

日下 葵 > 「狙撃手はうまくやれば殺すことなく相手を無力化できる最大の攻撃力を持ちますから。
 命を守る最後の砦だったりしますし」

私みたいに爆弾抱えて特攻なんてしなくていい分、随分平和なように思う。

「あら、それは雪兎さんが私にとってそれほどまでに仲良くなった時の為に残しておいてください。
 今はまだ訓練を行う先輩と後輩なんですから」

そんな”含み”のある言い方をすると、
床に散らかっている吐しゃ物を見て思い出したかのような反応。

「じゃあ外で待っていますから、片付けだけやってください」

手伝っても良かったが、下手に先輩に手伝わせるのは、
後輩としてはそれはそれで気まずいのかなと、ちょっと気を遣ってみる>

織機 雪兎 >  
「そげきしゅ……」

なんかかっこいい。

「えっそれはつまりそう言う仲になるのもやぶさかではない的な」

顔を見上げる。
良いのか???
期待していいのか?????
この先輩とにゃんにゃんするような事態を期待していいのか??????
とでも言いたげな顔。

「あっはい」

手伝ってくれると思ってた。
でも吐いたのは自分だし。
先輩に手伝わせるのを気まずく思う繊細さなど持ち合わせていなかった。

「ぞ、ぞうきん、借りてきますね」

そう言って事務室へ行って、雑巾いくつかとビニール袋、水の入ったバケツを持って戻ってくる。

日下 葵 > 「そういう仲、というのがどういう仲なのかは分からないけれど、
 雪兎さんが私の期待に応えるような子なら個人的に仲良くなってもいいよ?」

というか、個人的にはもっと虐めてみたいという下心にも似た、というか下心があるのだけれど。
期待というのはそういう加虐心をあおらせてくれるかどうかとか、
風紀委員としてちゃんと働けるかどうかとか、色々な評価がある訳だけれど。

「うん?うん。頑張って」

ちょっと期待外れ、肩透かし、はしごを外されたような表情の彼女。
その表情から手伝ってもらえるものだと思っていたという意図は十分に伝わってきた。
が、あえて手伝うことはしなかった。
だって、虐めるのが楽しいんだもの。
ちょっと肩を落として事務室に向かう後ろ姿が可愛らしい。
そんなことを思いながら、彼女が掃除をする様子を眺めていた>

織機 雪兎 >  
「ウヒャッ」

変な声が出る。
なかよくなりたい。
綺麗なおねえさんはだいすきです。

そして黙々と掃除を進めて。
雑巾はいくつかダメになったけど、床は綺麗になった。
制服は幸いゲロがかかっていなかった。
雑巾と袋とバケツの水を捨て、事務室に返してきて、ついでに手を洗って口をゆすいで。

「おまたせしました」

そしてちらっちらっと先ほど差し伸べられた手を見る。
ちらっちらっ。

日下 葵 > 「君、もしかして下心で風紀委員になったわけじゃないだろうね?」

浮かれた様子の彼女をやや呆れた目で見るが、まぁ多めに見ることにしよう。
風紀委員として一人前になる様に責任をもって指導しなければならない。

「手がきになるのかい?それとも手をつなぎたいのかい?」

そして、ちらちらと手を見てくる彼女。
その視線に気づくと……

「………お手」

手のひらを上に向けて、ちょっと試すようなことをしてみる。>

織機 雪兎 >  
「ギクゥッ。まままままままさかそそそそそそんな」

はい下心でなりました。
いや全部が全部じゃないけど。
だってモテそうじゃん、風紀委員。

「えっ、いやあのその」

そして差し出される手。
じっと見る。

「……わん」

誘惑に負けた。
右手を重ねる。

日下 葵 > 「まぁいいけれど。私も似たようなものだからね。
 ただ、命にかかわるような危険もあるから、その辺は覚悟しておくんだよ」

わかりやすい反応にさらに呆れてしまう。
まぁ、下手に正義感の強い新人より、こういう新人の方が殉職率は低かったりするのだけれど。

「鳴けとまでは言っていないんだけど?」

期待以上だ。
これは”教えがい”がある。

重ねられた手を握れば、「いこっか」といって手を引く。
反応が面白くて、指を絡ませるいわゆる恋人つなぎとか、
絡ませた指を握ったり、そんな風に遊んでみたりして>

織機 雪兎 >  
「は、はい」

ちょっと脅されたような感じになり、身体を縮こませる。
命に関わると言われれば、流石にちょっと怖い。

「い、いや、お手なら犬かなーって……」

確かにお手としか言われてなかったけど。
ちょっと調子に乗り過ぎたかな、なんて考えていたら、

「フヒャォウ!? ままままままもせんぱい????」

手を握って引っ張られた。
しかも恋人繋ぎだったり指を握ったり、ものすごくどぎまぎする。
その後何かしら弄るたびに「ふぇあぉ!?」とか「ふゃんはひ!?」とか変な奇声をあげながら、二人で仲良く?帰ったとかなんとか。

日下 葵 > この子、もしかして女好きなんだろうか。
しかも経験が浅いんだろうか。
そんなことを考えながら、さてさてどう教えていこうかと思案する。
その思案は下心と訓練と、いろいろなものが混ざり合っているが。

「ま、風紀委員はある意味犬だからね。
 うんうん。犬らしくて大変よろしい」

そんなことを言って、指を絡めるたびに大げさに騒ぐ後輩を、
新しいおもちゃのように弄びながら帰った。

余談だが、同僚に見られないよう、見回りのルートを完璧に避けて帰るという徹底ぶりは、
ある意味犯罪者並みなのかもしれない。
それに彼女が気付いたかどうかは……考えるまでもないだろう>

ご案内:「訓練施設」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から織機 雪兎さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に矢那瀬陽介さんが現れました。
矢那瀬陽介 > 真白の壁と床に覆われた無機質な訓練施設の扉が開く。
引き締まった上半身に張り付くようなタンクトップとゆったりとしたカンプーパンツを身に着けた少年は何もない宙空に指を翳す。
四角く描いて表れるのは液晶の光を放つタッチパネル。

「これで良かったっけ?」

指を押しては引いて、眉間に皺を深めながらタッチパネルに指を馳せる度、白壁に映し出されるコンクリートの壁や地平線まで見渡せる草原。
室内の投影装置にポチポチと指を馳せながら変わりゆく光景と指先を交互に見渡す。
やがて映し出されるのは白亜の土壁に木張りの床。投影された丸窓からは風にそよぐ竹林。
風もないのにどことなく涼しい心地に目を細め。

「これでいいか」

小さな呟きは床に座る音に掻き消される。
胡座を組んだ少年は気息を整えながらゆっくりと瞼を閉ざす。
そうして胡座の上に置いた手も、身体も、彫像のように微動だにせずに瞑想に入った。

矢那瀬陽介 > 静かなる空間に羽音らしきものが聞こえてきたのは瞑想に入ってから数刻。
予め時限制で攻撃命令を下した訓練用ドローンが胡座を組む己の回りに飛び回る。
視覚に頼らずに敵を叩く訓練の一貫。
廻る羽音を頼りに位置を把握。
しかし、不規則に動く飛行音は壁や床に反射して正確な位置が掴めない。

(落ち着け……)

そう自分に言い聞かせて瞼をぎゅっと瞑り心頭滅却。
鏡水の如き心で気息を調えて全身を神経の針にして周囲を探る。

戦闘用ドローンから非殺傷の銃口が向けられたと同時――

「そこだ!」

(※4以上で成功)
[1d6→6=6]
矢那瀬陽介 > 膝立ちとなり水月に払った手刀はドローンの胴体に直撃
機体は羽蟲の如く地に叩きつけられて動かなくなった。
瞼を開いてそれを確認したのならば腕を持ち上げて。

「やった。初めて成功。今日の俺は冴えてるかもね」

撃ち落としたドローンを抱えて訓練場を後にした。

ご案内:「訓練施設」から矢那瀬陽介さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に涼風 雷火さんが現れました。
涼風 雷火 > 「ルルルー……ルルルルー……ル、ルールールー…ルルルー……」

ギターを弾きながら、少女が現れる。
どことなく物悲しげな歌であった。

「……あれ? なんでボク、こんなところにいるんだろう?」

ふと我に返ったように辺りを見回す。
周りには誰もいない。
慌てて、何処であるか確認するように建物を探し回る。

「んー……『くんれんしせつ』……? あー、訓練に来たのか!」

やっと探し当てた表記。
一人、勝手に納得して準備を始める。

「えっとー、じゃあちょっと基本からやってみるかなあ」

じゃらり、と小さな玩具のようなスティックを取り出す。
左腕にも玩具然としたアイテムをつけている。

涼風 雷火 > 「よし、これだ!」

選びだしたのは二本のスティック。
それぞれ赤と緑の色をしている。

「いくぞ!」

がちゃり、と左腕の《データドライバー》を開く。
そこには、二箇所の挿入口。
迷うことなく、二本のスティックを挿し込んでいく。

《フレェイム!》
《ストォォム!》

スロットにスティックが刺されるごとに機械音声が流れる。
これは儀式だ。とても大事な。

《ロード!》

ガチャン、と《データドライバー》を閉じれば更にデータがロードされたことを伝える音声。

「よし、行くぞ!!」

涼風 雷火 > 「まずは……」

キッと眼の前を見据える。よし、誰もいないな。
安全を確認して――腕を突き出す。

「フレイムバースト!!」

高らかな宣言とともに、高熱の炎が突き出した手の先から吹き出る。

ごぉぅっ

轟音を上げて吹き出る炎は、辺りを舐め――そして、消える。
残った熱気と風が少女のポニーテールを揺らした。

「ん、上々!」

その様子を眺めて少女は屈託なく笑う。

涼風 雷火 > 「でも、これでいいのかなあ……今日の目的って……」

ふと疑問に思ったのかぼそりとつぶやく。
しかし、それに答えるものは誰もいない。

「そもそも、訓練っていってもコンボ試すくらいだよねえ。
 なんかもうちょっと、こう……なんかないかな……」

いそいそと訓練施設の説明書きを見に行く。
なにか面白い訓練方法とか無いものか。

涼風 雷火 > 「お? 『練習用サンドバッ君1号』……?
 あったあった! そうそう、こういうのこういうの!」

それらしいものを見つけてはしゃぐ。
いかにも「少女」らしい仕草だ。

「えーっと、こうして……こうだ!」

コンソールを操作すると、訓練場の真ん中にサンドバックを模した何かが現れた。
何故か鉢巻をつけ、顔が描いてある。

「よし、『サンドバッ君1号』! 今から本気を打ち込むからね!」

ソレを目の前にして、また高らかに宣言する

涼風 雷火 > 「さて、ちょっと難しいコンボだぞ……っと。」

がちゃがちゃと、先程しまい込んだスティックを取り出して探る。
その中から、青と濃い赤、黄土色のものを選び出す。

「よし、と。」

キッと。目の前のサンドバックに目を向ける。
その目はとても真剣だった。

「では……」

がしゃり、と再び《データドライバー》を開ける。
そこから赤いスティックを取り出し、代わりに青いスティックを挿し込み、閉じる。

《ブリザァァド!》
《ロード!》

機械音声が再び流れる
おもむろに両腕をあげて、前に突き出す。

「ブリザードストームッッ!!!」

宣言とともに、両腕の間から強烈な氷の嵐が湧き出る。

ごぁおぅっ

吹き荒れる嵐が、サンドバックを巻き込み宙へを放り上げる!

涼風 雷火 > 「お次は……っっ!」

ガシャリ

《フレェイム!》
《ロード!》

「こっちだ! 今度は熱いよ!」

瞬間的に《データドライバー》の中身を入れ替え……
その勢いで素早く腕を交差させ、×の字のような形を作る。

「ファイヤーストォォム!!」

ごぁっ

突然吹き荒れた炎の嵐が、宙に浮いたサンドバックを無慈悲に包む。

涼風 雷火 > 「で、最後!」

ガシャリ

取り出したのは二本。濃い赤と黄土色のスティック。
手元をろくに見ず、訓練された動きで寸分違わず挿し込まれたスティックを抜き、入れ替える!

《パゥワァー!》
《アァイアァン!》
《ロード!》

「よしっっ!!!」

じっと、中空に浮いたサンドバックをにらみつける。
距離よし、角度よし。狙い……よし!
あとは力をためて……
ぐっとしゃがみ込む。

「せぇぇぇのっっっ!!!」

溜め込んだ力を解放し、宙へ、跳ぶ!

「ハイパァァッッキックッッッ!!!」

勢いそのまま、足から突っ込んでいく。
それはもはや、キックと言うよりは弾丸のようで――

バギィっっっっ

そのまま、サンドバックを貫いた

涼風 雷火 > 「やった、うまくいった!」

サンドバックが砕け散るさまを背後に見て、歓喜の声を上げる。
しかし――

「……あ。 ちょっと、跳びすぎた、気が……あ、ちょっ、おち、落ちる!?」

高く 高く 跳んだ彼女
しかし悲しいかな 重力の軛からは逃げることはできない

「あ、えっと、あれ。どうしよう、待って!
 え、え、あー?!」

手足をバタバタさせながら騒ぐ。

涼風 雷火 > 「えっと、これじゃない、コッチじゃない、ええっと、待って、アレ、待って、これ、こっちじゃない、えーっと……」

がさがさとしまってあったスティックの束を大慌てで探す。
さほど数はないが、混乱をしている様子。
あわや、という瞬間

「…………… 周囲索敵 無人 緊急回避 始動」

瞬間、少女は無機質な声でつぶやく。

《エスケイプ》

今までとは違う、無機質な機械音声
次の瞬間、少女の姿は消え――

激突するはずであった地面からわずか離れた場所に立っていた。

「おーちーるーっっっっっ!?
 ……あれ?」

きょとん、とする。
まるで何事もなかったかのように立っている自分に驚いた。

「……あれー? ボク、落ちてたような……まあ、いっか。
 コンボが上手く行ってすっきりしたし。かーえろっと」

驚いたが……まるで「何事もなかった」かのように、少女は立ち直る。
そのまま、訓練場を後にした。

ご案内:「訓練施設」から涼風 雷火さんが去りました。