2020/07/12 のログ
ご案内:「訓練施設」に金剛 経太郎さんが現れました。
金剛 経太郎 > ──訓練施設の自販機で売ってるスポドはたまに《アタリ》がある。

寮でそんな話を聞いた経太郎は、半信半疑ながらも妙に気になった。
気になって明日の試験対策の勉強も手につかなそうなので、思い切って真偽を確かめようとこうして訓練施設へと足を運んだのだった。
決して勉強が嫌で逃げ出した訳ではない。決して。断じて。

「……そもそもスポドのアタリって何さ。」

自販機の前で立ち竦みながら、ぽつりと零す。
アタリ、と呼ばれるものがどういうものなのか、詳細はさっぱり聞いていなかった。
そもそも誰も知らないからこそ噂として成立しているのかもしれない。

金剛 経太郎 > (ま、買ってみるしかねえか……)

ポケットから小銭を取り出し、自販機に投入。
液晶に浮かび上がった商品の中から、噂のスポーツドリンクを選ぼうとして……

「──いや、どれだよ!!!」

スポーツドリンク三種類くらいあった。
三種類の内どれがアタリのあるスポーツドリンクなのか、
それとも三種類とも等しくアタリが含まれているのか。
結局噂は噂、試験期間中のストレスが生み出したはた迷惑な与太話なのだろう。

「見事に釣られた馬鹿がここに居ると──」

大変な虚しさが経太郎を包んでいた。

金剛 経太郎 > 「ま、乗り掛かった船だし?
ここに来るまでで汗かいたし何か飲んで帰ろーっと」

ちぇい。
三種類のうち一種類を好みで選んで購入。
液晶から商品一覧が消え、取り出し口にボトルが現れる。
これを回収してベンチで休憩がてら飲んでやろう、と経太郎が意気揚々と取り出せば、

「えっ?……うわ、めっちゃぬるい……」

ボトル越しでも分かる壮絶な生温かさ。
あたたか~い と つめた~い の中間があるならまさにこの感じといった具合。
人肌の温もりが欲しい人には丁度良いかもしれない。よくない。

「……もしやこれが、アタリ……?」

そんな馬鹿な。
得体の知れない生物を見る目で、経太郎は手に持ったスポーツドリンクのボトルを見つめる。

金剛 経太郎 > 「ま、まさか……な……」

ふらふらと近くのベンチに座り込む。
しょうもない噂話を聞いて、暑い中訓練施設まで来て、小銭を消費して手に入れた物が

>>>ぬるいスポーツドリンク<<<

さすがに笑う気力も泣く気力も沸いてこない。
ついでにこのスポーツドリンクを飲む気力も沸いてこない。

「……大事な試験期間に何やってんだ俺……」

本当にな。

金剛 経太郎 > どのくらい放心していただろうか。
5分?10分?もっと長い時間な気もするし、短い気もする。
我に返った経太郎は、ぶつぶつと悪態を吐きながらもボトルのキャップを開ける。

「……飲むしかないだろ!」

ぐい、とボトルに口をつけ、何も考えず中身をあおる。

(めっちゃぬる~い………)

ぬるいスポーツドリンクが喉を通って行く。
吸収には良さそうだな、とどうにか利点を探している自分にまたやるせない気持ちになる経太郎だった。

金剛 経太郎 > 「帰ろ……」

ぬるくてもスポーツドリンクはスポーツドリンク。
飲めば多少の気力回復効果はあるらしい。なんか負けた気分。
ベンチからよろよろと立ち上がると、経太郎は出口へと引き返し始めた。

(……もう試験期間中は余計な事考えねえ。絶対に。)

試験への集中を確固たるものにして、経太郎は訓練施設を後にするのだった。
途中、異能制御の試験会場を参考程度に見学したりなどもしつつ。

ご案内:「訓練施設」から金剛 経太郎さんが去りました。