2020/07/15 のログ
■東雲 七生 > 相手が何か言いかけた事は察した。
大体見当もついてるが、敢えて口を噤んだ相手の意を汲んで此方も何も言わない事にした。
かわりににこにこと笑みを浮かべるのみに留める。
以前ほどでは無いが留年を生徒の意思で決定できるようになってからは、選択肢の一つとして上がる様にはなっているらしいと聞く。
「ふぅん……端くれ、かあ。」
血色の瞳が、紫陽花の身体をぐるりと見回す。
思う所は多々あったが、本人がそう言うのならそれで良いか、と口にしないことにした。
武芸者というのはえてしてそういうものなのかも、と。
「ん?あ、あー……あはは、そうなんだよねー。」
悩みがあるのか、と問われ瞠目した後バツが悪そうに肩を竦めて笑う。
悩んでいた事、複数あった。一番大きなものは、他人に相談するような物でも無くて。
その代わりに、と
「今回の異能の実技はどんなネタで行こうかなーって。
ほら、こればっかりは毎年やらなきゃだから、どうしてもネタが尽きてくると言うか……」
あははー、と気楽に笑う。
ちなみに去年は自身の血液操作の異能を用いて体高10mほどの怪獣を作って動かした。
試験自体はパスしたものの、加減しろと怒られたりもしている。
■紫陽花 剱菊 >
────端くれ、とは言うが腐っても武芸者を自称した。
其れなりに武芸、或いは其れに精通するもの、観察眼が在れば分かる事。
男は始終隙を作る事は無く、今此の瞬間"戦闘態勢"に入れる状態だ。
行住坐臥、男にとって其れは戦場で在り、ともすれば油断とは如何なる状況では微塵も無いのは必定である。
「…………。」
些か、言葉に歯切れの悪さが残る。
"それもそう"なのだろうが、あの時感じたものとは些か"ずれ"を感じる。
尤も、出会って間もなければそうでもあるし、躊躇なく悩みをひけらかす事が出来るなら、悩みに等なりはしない。
「……飽く迄名目上は異能の制御……芸を披露する場所に非ず……分相応の技を見せれば良い……。」
代わりに、其の遊び半分な気持ちに釘を刺しておいた。
毎年同じことをやるだけでも、其れは制御の安定に他成らず、其れだけで充分だ。
……まぁ、折角なら一つ鼻を明かしてやろうという気持ちは分からなくはない。
だから、最後に"程々にな"、とため息交じりに付け加えた。
「……そろそろ、別の試験が始まる。そろそろ行くとしよう。……其方も余り、うつつを抜かさぬように精進めされよ。」
一礼。
会釈と共に踵を返せば、男は静かに立ち去っていくだろう……。
ご案内:「訓練施設」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
■東雲 七生 > うーん、これがプロかあ、と七生は密かに舌を巻いた。
紫陽花の隙の無さは映像資料などで見た刀剣士のそれと近しい。
実物を見ると圧が違うなあ、とぼんやり感嘆しつつ。
「……うぐっ、ま、まあその通りなんすけどね?」
しっかりと釘を刺されて言葉に詰まる。
同じ事を繰り返せば良い、と去年の試験官にも言われたのだが、
「いやまあ、制御って事は何処まで暴走させないかっていう閾値を見る物なんでしょう……?」
ぶちぶちと言い訳がましく呟いていたが、ほどほどに、と言われればにぃっと笑みを浮かべて。
「はあい、わかってまーす!
……おっと、お疲れ様アジバナさん、まったねー!」
一礼にこちらも軽く頭を下げ、その後去りゆく背中に手を振って見送る。
そして自分も上着とスーパーボールの回収をして、ぱたぱたと訓練施設を後にしたのだった。
ご案内:「訓練施設」から東雲 七生さんが去りました。
ご案内:「実習試験会場【イベント】」にマディファ=オルナさんが現れました。
■試験官 > 「それでは生徒名『マディファ=オルナ』の異能制御確認試験を行います。
用意された照明器具を左から順に点灯させていき、LEDモニターにカタカナのイを点灯させ、
常世ホタル、発光異能所持者である田所さんまで点灯させてください」
試験会場にマイク音声での指示が流れてくる。
様々な照明器具、ディスプレイ、虫かごに入ったホタル。
そして禿頭の中年男性がそこに居た。
■マディファ=オルナ > そしてそれらに正対して、マディファ=オルナ。
「2つほど疑問があるがよろしいかの」
承諾の返答。
「まず、なぜモニターにカタカナのイなのじゃ?
日本語の筆頭はアではないのか?」
「もう一つは、そこな男性。
突っ込みどころしか無いんじゃが選定基準はなんじゃ?」
■試験官 > 「日本語の文字をすべて使ったいろは歌の最初の文字がイです。
い、ろ、は……といった順番付けは頻繁に用いられていますのでご了承ください」
「次に、田所さんにあってはあなたの異能制御試験のために協力を要請しました。
遠慮なく光らせてください」
その声に応じて、中年男性が掛けている眼鏡をクイッと上げる。
■マディファ=オルナ > 「後半が返答になっておらぬ気がするがまあ良いわ。
では、参る!」
と、異能を使い照明器具たちを左から次々と点灯させていく。
それらは電池と回路でつながっているものも、全くつながっていないものも。
通常点滅させて運用するものも、回転灯も。
純粋な光源としてのみ点灯されていく。
■マディファ=オルナ > そして、モニター。
筆で描くように、イの文字が点灯される。
常世ホタル。
きっちり光った。
そうして、ラストの田所さん。
(……いや本当に良いのか?)
そう一瞬考えてしまったが。
だが試験官は遠慮なく発光させろと言った。
ならばあとの責任は試験官が取るのだろう、マディファが異能を行使した。
■田所さん > マディファが異能を行使した瞬間。
「ふっ!!」
ポーズを取った。
■マディファ=オルナ > 田所さんは光った。
そこ光って良いのって疑問に思う禿頭から光が放たれている。
そしてその発光に合わせてポーズを取った田所さん。
「『ぶっふぉ!!』」
マディファと試験官が吹き出した。
■試験官 > 「お、お疲れさまでした……
異能制御、確認試験、終了です……
田所さんは、ありがとうございました」
笑いをこらえながらもアナウンスが流れる。
■マディファ=オルナ > (この結末は安直すぎじゃろうになぜ予測せなんだ!!)
腹を抱え、へたり込んでいるマディファ。
予測はできたが試験である以上回避不可能だった。
■田所さん > 「お疲れさまでした。
しかし見事に発光だけするのですね……少々お待ち下さい」
賑やかな音楽とともに赤い太字の「オツカレサマドスエ」が立ち上がってくる。
■マディファ=オルナ > 「『ぶっふぉ!!』」
追撃の異能で二人の腹筋は崩壊した。
ご案内:「実習試験会場【イベント】」からマディファ=オルナさんが去りました。